小森海斗(こもりかいと)
セイゼル・リオ
アルスト・レイス
シルドア・ジェネル
ラズフィルド・オリエラ
リブルズ・セイラ
メイルド・ジュドル
A(エース)
架月静流(かつきしずる)
ミシュス・セルジア
リヴェル・ミスター
市ノ瀬龍史(いちのせりゅうし)
花田春十(はなだはると)
架月時亜(かつきときあ)
市ノ瀬圭(いちのせけい)
水沢霊(みずさわれい)
星原光(ほしはらひかり)
シリアス・フェリア
リスト・ファシス
リスト・ヴァーノ
堺和砂(さかいかずさ)<マイル・スネック>
紅(こう)
黒士(こくし)
白士(はくし)
小森海斗(色<いろ>)
人生に諦めていた。
そのたびに自分を嫌っていた。
何のために生きているのか。考えても、解らなかった。
人、モノ、感情。
何もない。
そんな世界で、僕は一体、どうすればいい。
朝、目覚めていつも思うことは、寒さや、静けさ。
光の暖かさや、空の鮮やかさ。
「今日は何だか雨が降りそうだ」
窓から見た空は、青黒く、厚い雲が空を被っていた。
小学生の頃、祖母は言っていた。
『見上げて御覧。空は何時も同じ場所に居る。色や雲の形、色々なもので、私達に今を伝えてくれているんだよ』
その言葉がいつも頭に響いている。
今日の暗い空は、何を伝えようとしているのだろうか。僕らにはまだわからないと思う。
「おはよう」
僕は空を見たあと、仕度をして学校へ向かう。
僕の両親は13歳の頃に交通事故で死んだため、今は一人暮らしをしている。
学費等は、祖父が出してくれているが、顔は見に来ない。
僕は、愛されずに生まれてきたのだから。
「行ってきます」
誰もいない部屋にそう告げて、いつもの道を歩いていく。
その途中のコンビニで、大好きだったミルクパンを買う。朝と昼の分を2つ。
ヘッドフォンを耳に当て、また歩き出す。
ミルクパンを口に入れる。ほんのり甘い味が広がる。
何故か分からないが、昔からこのパンが好きだった。
甘いものが好きだったからなのかもしれないが、毎日食べても飽きない味で、もう10年近くこのパンを食べている。
考え事をしながら歩く。
そうするとパンを食べ終わる頃には、学校に着いていた。
僕は真っ直ぐに、保健室へ向かう。
扉を開けると、薬の匂いと、窓際に置いてある花の香りが漂っていた。
そして『おはよう』と声がする。
「おはようございます。先生」
僕は近くのデスクに置いてある写真の前に立つと手を合わせる。
『李和(りお)も、毎日君の顔が見れて嬉しいだろうね』
「そうだと嬉しいです」
写真に写っているのは、保健の先生。
去年病気でなくなった、恩人(かぞく)。
いじめにあって生きる気力をなくしていた僕を、保健室へと導いたのは、紛れもない先生だ。
友達にもなってくれた。
僕は、先生にたくさん助けられた。
だから毎日、手を合わせ『おはよう』と、声をかける。
今は、李和先生の兄の[水澤零(みずさわれい)]さんが、僕の世話をしてくれている。
「今日もよろしくお願いします」
『じゃあ、今日は歴史を勉強しようか』
先生は、教え方が上手く、分かりやすいため、テストの点がよくなっている。
勉強を楽しいと思えるようにもなった。
だからすぐに時間が経ち、1時間目が終わってしまう。
僕は授業が終わるとふぅと息を漏らした。
するとベッドの下にいる猫が顔を出し、ニャアと鳴いた。
「その猫、大きくなったね」
優しい声で先生が言う。
この猫は、僕と李和先生が飼っていた猫で、家に置いて行くのは可愛そうだと思い、保健室におかせてもらっているのだ。
猫と遊んでいると、デスクの電話が鳴った。
「私は今から少し先生方と話をしてくるね。2時間目には戻ってくるから」
「あ、はい。いってらっしゃい」
「いってきます」
そして、扉が閉まる。
先生は何かと謎の多い人だ。
零先生と李和先生は一緒に暮らしていたらしいが、家の場所も、年齢も、なかなか教えてはくれない。
何か事情でもあるのだろうか・・・
静かになった部屋に『ニャー』と猫の声だけが響く。
それと同時に、足音が聞こえた。
僕はとりあえず猫を隠し、保健室へ入って来た時に怪しまれないよう、一応ベッドに横になる。
やはりここだった。
ガタンと扉が開き、中へ入ってくる。
そして
「時が来ましたよ」
そう言われ、起き上がり横を見ると、親友だった和砂(かずさ)がいた。
「やぁ」と声を出そうとしたが、和砂の手が顔を覆い、無理だった。
直ぐに、意識も何処かへ飛んだ。
目覚めると、暗闇が広がっている。
(どこだよここ・・・)
僕は辺りを見渡すが何処にも光が見つからない。
なにも見えず、名前を叫んだ。
「和砂、居るんだろ!」
すると声が聞こえてきた。
『封印されし悪魔よ、心眠る主への統結を』
その声と共に、僕の周りに紅い光が現れ、複雑な陣を描(えが)いていく。
僕は、動けない。
陣が完成し、目の前に、仮面を付けた紫色の髪の人が現れ、話を始める。
「私は、リスト。ここは魔界だ」
よく分からず、僕はぽかんとしていた。
「何で僕は、魔界に・・・」
「マイルの言っていた通りだ」
「マイルって、一体」
「カイト・・・」
「・・・っ」
僕は何が起こったのか分からなかったが、徐々に考えることが出来なくなっていく。
「何時かまた会おう」
そう聞いて闇の中へまた落ちる。
その時に見えた。
リストという人物の隣にいたのは見覚えのある顔。
(か・・ずさ・・・)
僕の意識は、先生の声で戻された。
「大丈夫ですか、海斗君」
「はぁっ!・・・せ、先生・・・っ」
今のは、夢なのか。
「どうしました、うなされていましたが・・・」
言うべきか言わざるべきか。
僕は少しの間を置き、大丈夫と答えた。
(心配はかけられない)
ベッドの下から猫を呼び、抱き上げた。
その時、先生が僕の腕を掴んだ。
腕にはあの時見た赤い陣が現れていた。
(なんで・・・)
「海斗くん。君はさっき、何を見た・・・?」
先生は、静かな低い声で僕に尋ねる。
「それ・・は」
「早く!言うんだ!」
先生の声が急に太く響いた。
驚いてしまい、声が震える。
「ま、魔界・・・」
そう言うと先生の顔が一層恐くなる。
「人に、会わなかったか!?」
僕は、リストの名前を出した。
すると、ため息をついて口を開く。
「なぜ、今頃・・・。誰が貴方を魔界に」
「・・・和砂」
「か、ずさ」
先生は考え込んでいたが、マイルと言う名前を聞いた途端に顔色を変えた。
「海斗君。契約を結びましたね・・・」
僕はよく分からず首をかしげる。
「紅い、陣を見たでしょう」
僕は「はい」と答える。そしてすべてのことを話していった。
「先生がここから出て行ってすぐ同じクラスの和砂が来たんです。そして『時が来た』と言われて口を塞がれて・・・」
「和砂がマイルだったとは・・・」
僕は、何故先生は、こんなに色々な事を知っているんだろうと疑問を抱いた。
だとすればただ者では無いだろう。
先生は僕の心を悟ったのか、やれやれと諦めたかのように話し始めた。
「私は、天空[ジアナ王国]の案内人。貴方の使人(つかいびと)として、お守りしています。王子」
僕を王子と呼び、話を続ける。
分からない事だらけで、先生に尋ねる。
「王子って?天空って?何を・・・」
先生は、僕の手を掴み術を唱えた。
「地に降りし女神(ガデス)よ、聖身(せいしん)への力を」
言い終わると共に、体に凄まじい痛みが走り、内側が焼けるほど熱くなった。
「くっ・・・」
「大丈夫ですよ」
そう言って優しく抱き締め、それと同時に意識がまた薄れていく。
宙を浮くような感覚。
それは直ぐに終わり、光が差した。
『いらっしゃい!』『今日も元気だねぇ』『急げ、遅刻だぁっ』
「ここはっ・・・」
人々の明るい声が聞こえ、色鮮やかな風景が見える。
そして先生が言った。
「ようこそ、ジアナ王国へ」
僕は、すたすたと歩く先生をじっと見ていた。
いつもは短い黒髪でメガネをかけている、その先生が、全くと言って良いほどに変わっていた。
「先生、髪、伸びてる・・・」
「あ、あぁ、これはじきにわかります。まずは城(フェスト)へ行きましょう」
とりあえず、疑問は引き出しに押入れ、後をついていく事にした。
数歩、歩いた。
すると、白く冷たいものがチラチラと降ってきた。
(雪だ)
「今、春だよね」
「ジアナ(ここ)は、季節が存在しないのです」
さあ、と言って手を掴み歩き出す。
僕は好奇心と不安を抱きながら、一歩ずつ城へと足を運ばせた。
15分ほど歩いただろうか、目の前に、大きな十字架のある建物が見えた。
「あれが城か・・・」
「城は、教会をイメージして作られたそうです。十字架、綺麗でしょう」
太陽の光で、きらきらと輝く。綺麗という言葉しか、浮かばなかった。
「さあ、入りましょうか、カイト君。話は中でしましょう」
そう言って進んでいくが、辺りには扉の様なものが見当たらない。
先生は白い手袋をはめ、止まった。
「離れていて下さい」
その場所は、女神の像が左右に置いてある壁の前。
「女神(じょしん)召喚」
先生がそう唱えた。
直後、2つの女神の像の目が光り、動く。まるで、人間のように。
『扉の再現を実行します』
2つの女神が言った。
女神は、素早く扉へと形を変えていく。
「さぁ、どうぞお入り下さい、王子」
「あ、う、うん」
中へ入ると、数体の女神像が並んでいる。
「女神よく見るけどさ、なんで女神?」
「国王の趣味です」
そう言って先生は右側にある階段を上がっていく。
僕は、見失わない様に急いで後を付いていった。