東方二次創作~愚かなモノ~   作:聖瑞水琴

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 それでは、これより残酷で救いのない物語の始まり始まり……


愚かな人間その1

 宵夜は今の状況にすでに絶望と憤怒に呑まれていた。

 

 宵夜の絶望する顔を眺めて満足したのか鬼は宵夜に向かって襲い掛かった。宵夜からすれば認識することも出来ず成すがまま鬼の拳を腹に受けた。

 

「かはっ!?」

 

 肺から空気が押し出される。辛うじて意識は落ちていないが今までに感じたことのない痛みで逃げることができず、その場でのた打ち回るしかできない。鬼は宵夜の様子を楽しむ。宵夜は痛みと恐怖の中この理不尽に対しての憎悪が芽生え始めた。なんで自分がこんな目に合わなければいけないんだ。その理不尽を壊したい。その思いが辛うじて宵夜の生への執着をさせている。

 

 鬼は宵夜へと無造作に近づくと頭を片手で持ち自らの顔の前へと持ってきた。今まで食べた人間は毎回これで心が折っていたので今回もこれで心を折れるだろうと信じていたのだ。

 

 宵夜は鬼の目を見つめながら自分の心の奥にある憎悪をこれでもかと込めて鬼を睨んだ。鬼は今まで見たことのない瞳の人間に目を細めた。鬼は宵夜の眼が気に入らず頭をつかむ手に力を込めて握り潰した。

 

 無残に脳汁をまき散らした人間を担ぎながら己の住処へと歩みを進めた。

 

 頭をつぶされた宵夜は即死だった。それは誰だろうとそう判断することである。しかしその判断が間違いだったと証明されてしまう。鬼に担がれてる宵夜は失ったはずの意識で現在の状況について考察を続けていた。状況というのはなぜ死んでいないのかである。しかし実際に宵夜は本当に死んでいるのは確かである。

 

 宵夜は死んだはずの意識の中自分の中にある奇妙な感覚を知覚していた。これはなんだ。そう思い意識を研ぎ澄ますとその感覚の正体を掴むことができた。それは自らの力である。それの使い方を宵夜は知っている。感覚が宵夜に向けて叫びあげる。さぁ、今こそ私に全てを委ねよと。宵夜はその感覚に身を委ねた。

 

 鬼が森を歩いていると急に左腕に激痛を感じた。鬼はうめき声を挙げながら左腕を見るとそこには左腕が無くなっていた。そして視界の端に一人の人間が立っていた。それは先ほどまで鬼が担いでいた人間だった。その人間の右手には鬼の逞しい腕が掴まれていた。鬼は怨嗟の声を挙げ人間へと襲い掛かった。どうやって腕を斬り落とされたのかを考えることもなく、なぜ殺したはずの人間が生きているのかを考えることなく。

 

 襲い掛かってくる鬼は”今の”宵夜にとっては余裕をもって対処できる程度の速さと髄力でしかない。襲い掛かる鬼の右腕を自らの左腕で掴み取る。鬼はまさか自らの拳が防がれるなど思っていなかったようで一瞬呆然とした。その一瞬は鬼にとって致命的な隙となる。今の宵夜にとってはその隙さえあれば鬼を仕留めるには充分である。宵夜は右脚で鬼の胴体を薙ぎ払った。鬼は一瞬の拮抗も許されずに上半身と下半身が別れた。

 

 宵夜は上下の分かれた鬼を無機質な瞳で覗きながら近づく。上半身に近づいた宵夜は己の顔の前へと鬼の顔を掴み上げた。驚くことに鬼の顔は見る見るうちに変わっていき怒りから一変恐怖へと変わった。

 

 鬼は心の中で考える。自分はいったい何に手を出してしまったのかを。しかしそんな思考をしたところで遅い。鬼の恐怖をみた宵夜は鬼の頭を持つ手に力を込めた。鬼のそれと違い少しずつ、少しずつ鬼の頭をつぶしていく。

 

「があああっ!!」

 

 鬼は必死に右腕で抵抗するが、それを煩わしく思った宵夜が右腕を手刀で斬り落とした。今度こそ鬼は抵抗する力を失った。それでも鬼は叫び続けた。

 

「があああああああぁぁぁぁ……。」

 

 やがて鬼の叫びは小さくなりついに鬼の頭は潰れ死亡した。鬼の脳汁を浴びた宵夜は表情を一切変えずに鬼を地面に投げ捨てた。

 

 しばらく鬼の亡骸を眺めていると、遠くから複数の足音が聞こえた。もしかしたら鬼の仲間かもしれないと思った宵夜は、鬼の上半身を掴み上げると、足音の聞こえる方向へと投げた。

 

「これで俺のほうに来てくれると嬉しいな。」

 

 宵夜は無意識に笑みを浮かべていた。宵夜の思惑通り足音は宵夜に気が付いたらしくもの凄い速さで宵夜の元へと向かってきた。

 

「はん、やっぱり鬼共か。」

 

 宵夜の前へと表れたのは先ほど殺した鬼と同じ様な見た目の鬼だった。宵夜は鬼たちへと憎悪と悦楽の籠った瞳を向けて姿勢を低くする。

 

「さぁ、俺の糧となってもらおうか」

 

 宵夜は先頭にいた鬼との距離を一気詰めその頭部へと強力な拳を放った。続けざまに後ろにいた鬼の顔を握りつぶした。

 

 ここまで来てようやく宵夜の異常性に気付いた鬼たちは最大限警戒して宵夜を包囲した。宵夜は何をしてくれるのかを楽しみにしながら鬼たちの準備が終わるのを待った。

 

 鬼たちが宵夜を包囲して数秒後、一人の鬼が宵夜へと突撃してきた。その鬼は宵夜の懐へと一瞬で入ると鳩尾に拳を突き出す。宵夜は拳を手で受け流しそのまま鬼の腕を掴み地面に叩きつける。ほかの鬼たちはただ見てるだけではなく宵夜が鬼の腕を掴んだタイミングで二人が宵夜の背後からそれぞれ襲い掛かった。

 

 宵夜は背後からの攻撃を避ける事が出来ずまともにくらってしまい囲んでた鬼の足元へと吹き飛ばされた。

 

「があっ!」

 

 足元に飛んできた宵夜を鬼は力いっぱい蹴り飛ばす。宵夜は初めの場所へと飛ばされてそのまま動かなくなった。

 

 鬼たちは呆気ない敵の最期にまぁ、人間ならばこんなものかと宵夜の元へと近づいた。

 

 遠巻きから鬼と宵夜の戦いを視ていた一人の鬼は人間にしては強い宵夜を観察してた。それ故にその鬼は最も早く気づく事が出来た。もっとも、気付いただけで何もできなかったが。

 

 すぐ近くに鬼の存在を感じた宵夜は一気に起き上がると近くの鬼の頭部を潰し、さらにその近くにいた鬼を蹴り殺した。何が起きたのか理解できずに反応の遅れた残りの三人もすぐに宵夜の手によって殺され、残るは宵夜を観察していた一人だけとなった。

 

「さて、これで残るはお前だけか。」

 

 宵夜はゆっくりと最後の鬼へと歩む。鬼は人間とは到底思えない目の前の存在に理解のできない恐怖に囚われその場に座り込んでしまった。

 

「はぁ、最後の一匹はとんだ腰抜けだな。」

 

 鬼はその言葉に肩を震わせ宵夜の顔を見上げた。宵夜の瞳には軽蔑が含まれたいた。鬼は恐怖に耐えられなくなったのか、勢い良く立ち上がると宵夜へと拳を振り上げて、そこで動きは止まった。宵夜は鬼の拳が届く前に鬼の胸を手で貫いていた。

 

「ざまぁないな。逃げ出せばまだ生伸びれたかもしれんものを。」

「さて、これからどうするかな。やっぱりまずは現状の把握からか。」

 

 夜宵は気が付いたら森の中にいた。それも直前の記憶を持たないまま。

 

「さっきの鬼、あんなの現代にいるわけないし、まさかほんとに異世界転移しちゃったのか?」

 

 夜宵はもしかしてとも思ったが、自分でその考えを否定した。

 

「うん、とりあえずだれか人間を探すか。」

 

 夜宵はとりあえず人を探すことにして、森の中を歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

「はぁ、全く見つからないな。それどころか森が全く途切れないし。……ん? あれはなんだ。」

 

 一時間ほど歩いても森は途切れることはなく嫌になってきた夜宵の視界に建物らしきものらが目に入ってきた。

 

 森の中の開けた場所に建物が1軒立っていて、少し不自然な気もしたが、夜宵は建物の近くによって叫びあげた。

 

「あ、やっと人の痕跡を見つけたか。すみませ~ん!」

 

 夜宵が叫ぶと建物中から小さな少女が出てきた。

 

「こんなところに人間が来るなんて珍しいな。迷い込んだのか?」

 

 少女は薄い茶色のロングヘアーで赤い目をしていた。しかも頭頂部には二本の角があり、それが人間ではないということを証明している。

 

「というか血塗れだな。何があったんだ?」

 

 夜宵は明らかに少し前に殺した鬼の同胞だと思われる少女に正直に言うか迷ったが、仮に襲われたとしても返り討ちにできるだけの自信はあるので正直に言うことにした。

 

「あぁ、さっき鬼に襲われてな。この血は鬼たちのだ。」

 

 すると少女は急に殺気を発し始める。

 

「つまり……殺したということだな?」

「あぁ、そういっている。」

「そうか。」

 

 少女は一言呟き足を踏み込み夜宵を殴り飛ばした。

 

「ぐはっ!?」

 

 夜宵は何が起きたかを認識できずに殴り飛ばされた。

 

「今回はこれで我慢してやる。死にたくなければ去れ人間。」

 

 夜宵は少女の言葉でようやく何が起きたのかを悟り戦慄した。自分よりも圧倒的な強者である目の前の少女はすでに背を向けて建物へと戻っていった。

 

「ふざ、けるなっ!」

 

 夜宵は、強者である少女にいいようにやられ憎悪に支配されている。もちろん心の中では恐怖も感じているがそれとは別に少女への憎悪があふれてきた。このまま逃げるなど言語道断だ。そんな内心をもとに立ち上がり少女へと殴りかかる。

 

「死ねっ!」

「お前が死ね人間。」

 

 夜宵の拳は鬼の顔へと向かったが、それを少女は左手で掴み右手で夜宵の頭を殴る。夜宵の頭は少女の拳に耐えることなく消し飛ばされた。

 

「ふん、馬鹿な人間だな。」

 

 今度こそ少女は建物の中へと消えていった。

 

 その場に遺された夜宵の体は痙攣をしていたが、それに反応するものは誰もいなかった。

 

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