悪い子まみみと良い子りょうすけ   作:天邪じゃく

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283プロ所属前編
悪い子と幼馴染み


「どうもすみません、ありがとうございました」

 

 そう言って最早顔馴染みとなってしまった警察官二人組にお礼を述べる。

 時刻は夕暮れ時を越え、煌びやかなネオンライトが夜の街を照らす。

 

 教えてもらった場所を目指して、それなりに人が行き交う道を一人走りながら目的の人物を探し回る。

 結構な時間、走り回っていたため汗だくになってしまったが関係ない。

 

「(ふぅ、毎回うろつく場所が変わるとさすがに手間が掛かるな……)」

 

 パトロール中の警察官に、今自分が探している人物の所在地を聞いた結果、今回は自動販売機の横でしゃがみながら缶ジュースを飲んでいるらしい。

 人通りもそこそこあるため、注意深く見ていなければおそらく気付かないだろう。

 

 毎回探す身としては、日に日にうろつく所が見つけにくくなっている。

 正直、警察の人と仲良くなっていなければ最後まで見つけることも出来なかったかも知れない。

 

 勿論、それを自称『悪い子』を公言しているあの子は意図的に行っているのだろうが……

 

「(えっと、ここを右に曲がって……あった! あの白色の自動販売機だな)」

 

 目的の目印となる自動販売機を発見すると、その横にはしゃがみ込んで道行く人をぼんやりと眺めながら缶ジュースを飲んでいる幼馴染み――田中摩美々の姿があった。

 

 スクールシャツを少し着崩し、緑色のジャージをだらしなく羽織る。首には黒いチョーカーを付け、両脚にカラフルなニーソックスを履いている、パンキッシュな格好。

 

 摩美々は自分を見つけると、それまでのアンニュイな表情を一転させ、いつもの悪戯っ子の顔になる。そして小悪魔のような笑みを浮かべながらこちらを見つめてくる。

 

「ふふー、今日はぁ、随分と遅かったですねー」

 

 可愛くも小馬鹿にしたようないつもの物言い。その容姿と格好も相まって不快感はあまり感じない。……もしくは、幼馴染みとして言われ慣れていると言うことかも。

 

「そう思うなら、もっと見つけやすい場所に居てくれないか?」

 

「えー……でもぉ、それだとツマらないんですケドー」

 

「いや、そう言う問題じゃなくてだな……そもそも夜遅い時間に女子高生がこんな所をうろつくなと言ってるんだ。何かあってからじゃ遅いんだから」

 

 摩美々が夜に出没する場所は、そこそこ人通りもあり巡回する警察官も存在するため、ある程度は安全と言えるかもしれないが、危険な目に遭う可能性が0と言うわけではない。

 

 また、そのパンキッシュな見た目が注目されがちだが、顔立ちやスタイルも悪くない。

 むしろ人気アイドルと並ぶぐらいの美少女と言っても過言ではないと思う。まあ少し身内びいきも入っているが。

 

「それを言うならぁ、良介も私と同じ高校生でしょー?」

 

「同じ高校生でも男と女じゃ危険度が全然違うってこと。まして摩美々の容姿なら尚更だ」

 

「……ふふー、それってまみみが可愛いからぁ、心配してるってことー?」

 

「うぐっ……! い、いいから馬鹿なこと言ってないで早く帰るぞ」

 

 『可愛いから』なんてそんなもの、好きな子なら当然可愛いに決まっている。

 ……実際には口が裂けてもそんな言葉は言えない、仮に『可愛い』なんて摩美々に言ったらからかわれるのが関の山だろうな。

 

 恥ずかしがる自分に対して『ふふー』と満足そうに笑みを浮かべると、摩美々は今まで飲んでいたジュースをこちらに手渡してくる。

 

「まみみのこと探してくれたお礼に、それあげるー」

 

「……二回目は騙されんぞ。前にも同じようなことしてきて中身は空だった――ん?」

 

 手渡された缶ジュースは中身が半分ぐらいある重さだった。と言うことは……

 

「本当に入ってたのか……」

 

「私のこと探し回ってノド渇いてると思ってー。汗もかいてるしー」

 

 だったらお前の飲みかけじゃなくて新しいのを買ってくれよ……そのまま俺が飲んだら間接キスになるだろう。

 多分摩美々のことだから俺の反応を見て楽しむ気だな、その手には乗らんぞ!!

 

「……あの、やっぱり私が口つけた物なんて飲みたくないよねー……」

 

 この状況にどう対応しようか難しい顔で考えていたところに、急にしおらしくなった幼馴染みが遠慮がちに問いかけてくる。

 あれ?なんか反省してる時の表情と似てるし、純粋に俺のことを考えて渡してくれたのかな?

 

「ごめんなさい。嫌なら――」

 

「違う、違う! 嫌じゃないんだけど……ほら、このまま飲むと俺はいいとしても摩美々が嫌かなと思ってだな」

 

「なにがー? 私は別に気にしないケドー」

 

 それって単純に異性として見られていないってことか……。

 

「やっぱり飲みたくないー?」

 

 摩美々も気にしてないみたいだし、実際に喉渇いているのは本当だしな。

 まあ、ありがたく頂くか……間接キスとかそう言う邪な考えはないぞ?

 

「ん………」

 

 貰った缶ジュースに口をつけると、いろんな果物が混ざったような味。

 恐らくはフルーツミックスジュースだろうか?

 

「ふふー……」

 

 飲み物で喉を潤していると、不敵な笑みと共にこちらに近づいてきた摩美々が耳元でボソボソっと言葉を発した。

 

「まみみと間接キス、しちゃいましたねー」

 

「ぶっ! ごほっ……ごほっ!!」

 

 気にしてないと思っていた人物から放たれた発言に、思わずジュースを吹き出しそうになるが寸前のところで押しとどめる。その結果、喉に詰まってむせてしまう。

 

「良介大丈夫ー? 優しいまみみが背中をさすってあげますよー」

 

 優しいならこんな(俺の)心臓に悪い悪戯をするんじゃない!

 楽しそうに背中をさする姿を見てようやくからかわれたことに気付く。

 と言うか一体何年こいつの幼馴染みをやっているんだ俺は……また引っ掛かったんだが。

 

「お前なぁ……」

 

 喉が落ち着いてきたので文句の一つでも言ったあと叱ってやろうと思い言葉を続けようとすると、不意に摩美々が自分の右手を握ってくる。

 

「ほらぁ、早く帰りましょー」

 

「……手を握ることで、全部うやむやにしようとしてもそうはいかないからな」

 

「えー……、また良介のお説教聞かなきゃいけないのー?」

 

 お説教と聞くと普通ならマイナスイメージしか思い浮かばない言葉だが、摩美々にとっては少し違う。

 悪戯をしたり困らせたり、からかったりする(全部ほぼ俺限定)のも叱られるのを目的としてやっている節がある。

 

 実際、今もいつものようにくどくど注意しているのだが、当の本人は楽しそうに聞いているところを見ると効果があるのかどうか……。

 今まで本当に危ないことは起きていないから少しは聞いてくれていると思う。多分。

 

「そういえばぁ、良介に訊きたいことがあるんだけどー」

 

「ん、なんだ?」

 

「……良介は、どうしてそこまでしてくれるのー? どこにいるかもわからない私のために、汗だくになって必死に探してくれたりー、私のこと、心配してくれたりするケド……」

 

「それは……」

 

「昔、私の両親に頼まれたからぁ?」

 

 それも理由の一つではあるけど、俺が摩美々のためにここまでする理由なんて――

 

 

 

「(田中摩美々が好きだからに、決まってるだろ)」

 

 

 

 正直にこの言葉を言いたいが言えない。言ったら恐らく今の心地良い関係が崩れてしまうから。

 あと俺自身が告白する勇気が出ないヘタレって言うのもあるけど……

 

「良介?」

 

「摩美々のご家族に頼まれたから――それも理由の一つだけど……そう、だな、やっぱり大事な幼馴染みだから、ここまで心配するし叱ったりもするよ」

 

 『好き』とストレートに伝えることは出来ない。かと言って興味がないような言い方もしたくない。

 今自分に出来る精一杯の『好き』の伝え方はこれが限度か……なんか情けないな。

 

「ふーん、それじゃあ、まみみがこういうことしてる限りは、良介を独占できるってことですねー」

 

「独占って……まあ、あながち間違いではないけれども」

 

「ふふー、よかったですねー。まみみのイタズラを独り占め出来るなんて、良介の幸せ者ー」

 

 捉え方を変えれば俺も摩美々を独占できてるってことになるから、まあ幸せ者ではあるのかな?

 ただ、本人に『幸せ者です』なんて正直に伝えることは、からかうエサを与えるようなものだからな。

 

「はいはい、可愛い幼馴染みを独占できる自分は世界一の幸せ者ですよー」

 

 だから、本心を少し皮肉っぽい言い方で伝えた。

 その言葉を聞いた摩美々は『ふふー』と笑って繋いだ手を強く握ってくる。

 

 この日も心の中でいつもと同じ心地良さを感じながら、二人で帰路につく。

 二人で一緒に帰ったり、過ごしたりすることで毎回強く実感する。

 

 

 

 ――やっぱり自分は、田中摩美々が大好きなんだな、と。

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「……ふふー」

 

 良介と共に帰宅した後、お風呂から上がりパジャマに着替えた摩美々はベッドに寝転がりながらスマホをいじっていた。

 顔をほころばせながらトークアプリのLIMEを眺める。

 

 内容は明日、摩美々の両親が仕事の都合上、朝早く家を出てしまうため朝食を良介の家で食べることになると言うもの。

 これに対し良介は『なにかリクエストは?』等を訊いてくれ、家にある食材で摩美々の食べたい物を作ろうとしてくれている。

 

 リクエストに『チョコレートパフェ』と答えたら、怒ったカメレオンのスタンプが返ってきた。

 正直、良介が作るならどれも美味しいのでなんでも構わない摩美々。むしろ――

 

「(良介と朝ごはん、久しぶりー)」

 

 大好きな幼馴染みと一緒に食事できることの方が重要である。

 

「(……そういえば、今日私のジュース飲んだ時、少し顔赤くなってたケド、意識とかされてるのかなぁ……)」

 

 ふと、少し前に自分を見つけてくれた時に仕掛けたイタズラのことを思い出す。

 もしそうなら嬉しいが、実際のところは本人しかわからない。

 

「(恥ずかしかっただけかも。まぁ、良介は私と違って良い子ですからねー)」

 

 悪戯をしたり、からかったりする摩美々とは反対に、良介は品行方正な優等生タイプかつ人当たりも良いため周囲の評価も高い。

 実際に男子クラス委員長もやっている。ついでに眼鏡も掛けている。

 

 本人曰く『普通にしていたら誰でもそれなりに良い子に見える』らしい。

 砕けた喋り方をするのは摩美々や一部の仲のいい友人のみ。

 

 ただそれ以上に、摩美々にとって一番の問題は女子人気も高いと言うところ。

 性格、容姿共に一般的な高校生と比べ少し老けているのだが女友達曰く、ここがポイントらしい。

 

 老けていると言っても良い意味で、性格はより大人っぽく、容姿も18歳にして学生と言うよりも成人男性に近い顔つき。

 容姿端麗な同年代の若い子をイケメンと評するなら、良介は大人びたカッコよさと言えるだろう。

 

「(でも、まみみが『悪い子』でいる限りは――)」

 

 

 

 ――良介はまみみのモノ、ってことですよねー。

 

 

 

 こんなやり方で大好きな幼馴染みを縛るのは卑怯かもしれない。

 いっそ告白をして気持ちを伝えられればどんなに楽か。

 

 実際に何度か『好き』と言う気持ちを伝えようとしたが、最終的に自分から『ウソですよー』などの、いつも通りのからかいの言葉ではぐらかしてしまう。

 

「『大事な幼馴染み』なんだし、普通の人よりは意識してくれてるよねー、きっと……」

 

 自分に言い聞かせるように呟くと同時にLIMEのメッセージ通知音が鳴る。

 

 

『明日寝坊はするなよ』

 

 

「ふふー、ふふふー」

 

そのシンプルなメッセージを見て楽しそうに笑った摩美々は、いつものようにこう返信した。

 

 

『どうですかねー、まみみ悪い子なんでー』

 

 

 




・鈴木 良介(すずき りょうすけ)
物語の主人公。人当たりが良く周囲の評価も高い――いわゆる良い子。
本人としてはそこそこ真面目で、特段良い子でもないと思っている。

・田中 摩美々(たなか まみみ)
この物語のヒロイン。悪戯と人をからかうことが趣味の自称『悪い子』
詳しくはシャニマスで。ちなみにまだアイドルスカウト前です。



 シャニマスのss全然ないじゃん!と思って大好きな摩美々とイチャイチャする物語を執筆し始めました。

 拙い文章ですが、よろしければお付き合いくださると嬉しいです。
 興味を持ってシャニマスをプレイして頂けると更に感謝感激です。

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