悪い子まみみと良い子りょうすけ   作:天邪じゃく

4 / 11
遅くなりました、すみません!



悪い子とデート

 週末の日曜日――それは学生と社会人にとって日々の疲れを癒し、自分自身をリフレッシュさせる貴重な休日。

 時刻は午前十時過ぎ、駅前に設置された円形ベンチに腰かけながら、周囲を観察するように眺める。

 

 おしゃれな格好をした若者、どこかへ出かけるのか楽しそうに歩く親子、腕を組みながら甘い雰囲気を振りまくカップル、休日出勤であろうビジネススーツ姿のサラリーマンなど多種多様。

 

 勿論、自分のお目当ての人物は見つからなかった。

 約束の時間はもう過ぎているのだけれども……

 

 念のため携帯を確認するが連絡はなし。

 まあ『悪い子』だから多少遅れるのは仕方ないか。

 

「ふぅー」

 

「うひゃあ!」

 

 俯きながら携帯のチェックをしていた所、突然耳に息を吹きかけられる。

 噂をすればなんとやらと言うもので、今の行為で待ち合わせの人物が来たことを確信した。

 

 ただ、いきなりの出来事でおかしな声を上げてしまったため、周囲の視線が集中し少し恥ずかしい。

 とりあえず時間に遅れた事と、今恥ずかしい思いをした分の文句を言おうとして後ろを振り返る。

 

「ふふー、いい反応ですねー」

 

 そこにはクスクスと愉快に笑う摩美々が立っていた。

 叱るために声を上げようとしたが、その奇抜なファッションを見て、言おうとしていた言葉が喉元辺りでとどまる。

 

 服装全体のコーディネートはいつもと同じパンキッシュ系。

 下はペンキペイント風デザインのデニムスカートと所々破けた網タイツ。上は黒色のハーフトップ、更に中央にチャックが付いた透明なキャミソールを着て、その上にジャケットをだらしなく羽織っている。

 

 履いている網タイツは所々破け、丸くあいた穴から素肌が見えている。

 破けていると言ってもダサい感じではなく、ファッションの一部として充分通用するレベル。もちろんそれを分かって摩美々もそうしているのだろうが。

 

 あと、黒のハーフトップ。

 これは見方によっては下着にも見えるんだが、女の子はみんなこんな感じで着こなすんだろうか?キャミソールの肩紐をわざとずらしているのも相まって、なんだかいやらしい感じが半端ないな……。

 

 今日の格好、今までの摩美々のファッションでも見たことがないほどの……トリッキーな格好、とでも言えばいいのだろうか?

 正直、洋服のセンス等がない自分では、語彙力がないためこんな表現しかできない。

 

「……あの、そんなにじっと見られると恥ずかしいんですケド………」

 

 叱れると思い身構えていた摩美々は、黙って凝視されることで少し恥ずかしそうな表情を見せながら、自分の髪をいじっている。

 

「ああ、ごめん。なんて言ったらいいのかな……今日の摩美々の服装、結構気合い入ってるなと思ってさ」

 

「えー、そんなの当然でしょー。だって今日はデートですからねー」

 

 いつもの悪戯好きな表情に戻ると、デートの部分をわざと強調するように言う。

 まあ確かに見様によってはそうかもしれないが、実際は荷物持ちの意味合いが強い。

 

 二人で出掛ける目的は、自分と摩美々の洋服選びのため。

 昔、摩美々に『良介のセンスはよくないですからぁ』と言われた通り、服装のコーディネートに関しては下手で、自分で組み合わせると他人にも『うーん……』と微妙な顔をされる。

 

 それ以降、買う洋服や上下の組み合わせ方などは、すべてこの幼馴染みからの助言を受けている。正直、言う通りにするだけで周囲の評価が180度変わった時は驚愕してしまった。

 

「ふーん……良介も似合ってるんじゃないですかぁ?」

 

 そんなことを考えていると、先程の自分と同じようにこちらを凝視していた摩美々が今日の服装に評価を下す。

 

 今の服装は、ロング丈Tシャツの上にネイビー色の半袖スウェットを着て、モカベージュ色の長袖カットコーディガンを羽織っている。

 下は摩美々曰く、着回しやすさと万能性を兼ね備えているらしい黒のスキニーパンツ。

 

 ちなみにこのファッションのポイントは色合いもそうだが、主にコーディガンが優し気な雰囲気を演出するため、親しみやすさを感じさせるらしい。

 隣で『良い子にぴったりですねー』と言っているのは、この服装を選んだ張本人。

 

「摩美々のファッションセンスなら似合っていないわけないだろ?」

 

「さぁ、どうですかねー」

 

 褒められたこと自体は興味なしと言った様子で、携帯を確認する幼馴染み。

 同じく腕時計で時間を確認すると十時半過ぎ。自分はそんなに時間をかける必要もないからいいとして、摩美々の時間は多めにとれるよう動かないとな。

 

「そろそろお店まで歩こう、午後はなるべくお前に時間を使いたいし」

 

「ふふー、まみみの彼氏は優しいですねー」

 

 そう言って腕を組んでくる悪い子。この前、朝起こしにきた悪戯に比べればまだ大丈夫なレベルだ。……胸は当たってるから、ドギマギするけれど。

 

「ところで時間に遅れた事と、さっきの悪戯について弁明はあるか?」

 

 内心の動揺を表情に出すことなく、平静さを意識しながら問いかける。

 叱られると分かった本人はどことなく嬉しそうに言い訳を述べていく。

 

 そんな摩美々の楽しそうな声と、腕に心地良いぬくもりを感じながら、最初の目的地であるお店へと歩を進める。とりあえず今日は楽しいデートにしてあげないとな。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 駅前で摩美々と合流したあと、まずは自分の洋服選びのため予定していたメンズファッションブランドへと向かうことに。

 午後の予定等も考えるとここに時間をかけるつもりはなかったのだが、ファッションに関して妥協を許さない幼馴染みは納得がいくまで自分をコーディネートし続けた。

 

 着せ替え人形になった気分でいろいろな服を試着し、解放されたのは午後二時過ぎ。

 そのあと遅めの昼食をとり、次の目的のお店に足を運んだところ――

 

「やっぱり少し並ぶことになるか……」

 

 そこは摩美々のお気に入りブランドのアクセサリーショップ。

 服だけでなくピアスやネックレス、チョーカー等の、コーディネートを引き立たせる小物の類にも精通している幼馴染みと行列の中で順番待ちをしている。

 

 お目当ての物は若いモデルがよく身に付けているレディースのネックレス。

 大体の服に合う汎用性とシンプルな見た目でありながらアクセントの一つとして充分に機能するところが売りで、いま若い子を中心に口コミで人気が広まっているらしい。

 

「入荷直後の一時過ぎだったらぁ、そんなに並ばなかったかもー」

 

 本来の予定であれば午前中だけで自分の方を済まして、昼食後に向かえば一時過ぎに来れる計算ではあったのだが、真剣な表情で自分をコーディネートする摩美々を無視することもできず、結果的に二時間以上遅れることになってしまった。

 

 個人的にこちらはとてもいい物を購入することができて大変満足している。

 ただ、そのせいでこの行列に並ぶことになった摩美々が退屈していないかが心配だな。

 

「良介、なにか考えごとー?」

 

「ああ、結局並ぶことになってお前が暇していないかどうかをな。出来れば楽しませてやりたいし」

 

 そう答えると、若干不機嫌な表情へと変化する摩美々。

 やっぱり行列で待ってるだけなのは飽きるよな……。

 

「それじゃあ良介は、いま楽しくないってことー?」

 

「そんなことあるわけないだろ。ただ、摩美々がお昼をとっている間に自分がここへ来て並んでいれば、疲れることなく品物を手に入れることができたかなと思ってさ」

 

 自分の返答で更に機嫌が悪くなる。

 呆れたようにため息を吐くと、こちらに向かって一言。

 

「良介って、ほんと女心がわかってないですねー」

 

「フフ、それは私も同意見かな」

 

 自分たちの会話に入ってきた聞き覚えのない声は、摩美々の言葉に賛同する。

 背後から発せられた声に、二人で後ろを振り向くとそこには高身長で、モデルのように整ったスタイルを持つ女性が笑みを浮かべながらこちらを見ていた。

 

「ああ、驚かせてしまったかな? 恋人同士の会話に横槍を入れるのは不躾だと分かっていたけれど、そちらの可憐なお嬢さんの表情が曇り始めていたからね」

 

「は、はぁ……?」

 

 女性ながら王子様のような立ち振る舞い、低トーンボイスから繰り出される独特な台詞回しに、たじろいでしまう。

 そこに端正な容貌も合わさると、一般にイケメンと呼ばれる男性より魅力的なのでは……?そんな考えさえ浮かんでしまう。

 

「わかりますかぁ、ほんとダメダメな彼氏なんですよー」

 

 悪ノリし始めた摩美々は組んでいる腕を、更にぎゅっと力を込めて絡める。

 

「そうだね。確かにさっきの発言は頂けないかな」

 

「えっと……『摩美々がお昼ご飯を食べている間に、自分一人がここへ買いに来る』と言ったことですか?」

 

「ああ。思い出したのなら、その言葉で彼女が不機嫌になってしまった理由を考えてみるといい。彼氏であるキミなら、きっとわかるはずさ」

 

 いや、そんな断言されても……。

 とは言え考えてみないことには始まらないので、先程の会話を頭の中でもう一度振り返る。

 

 機嫌が下がったのは、摩美々の質問に『並ぶことで摩美々が暇していないかどうか』と答えた時。

 次に『摩美々がお昼ご飯を食べている間に、自分一人がここへ買いに来る』と言ったら、更に機嫌が悪くなって………――あ。

 

「デートだから、俺と一緒にいたかった……とか?」

 

「うーん、正解と言いたいところだけど、答えに自信なさげな感じは彼女に対してよくないよ?」

 

「まぁ良介なんで、おまけで許してあげますねー」

 

「……ありがとう」

 

 なんとなく不服ではあるが、一応感謝の言葉を述べる。

 摩美々のことだからデートと意識させるのは、からかいの意味かと思っていたのだけど………不味い、このまま考えていると本当に恋人として捉えてしまいそうだ。

 

「フフ、美男美女の仲を取り持つお手伝いが出来てなによりだ」

 

「はは……。ん? どうした摩美々?」

 

 困惑する自分をよそに、じっと目の前の女性を見つめる幼馴染み。

 しばらくしてなにかわかったような表情に変化するとそのまま口を開く。

 

「思いだしたぁ。この人、少し前に読んだ雑誌に載ってましたねー」

 

「そうだとすると、えっと……お姉さんの職業はモデルですか?」

 

「今は元モデルかな。この前、素敵なお仕事のお誘いがあって、そちらに興味を惹かれてしまったからね。それとお姉さんは少しくすぐったいな、私はまだ高校生だからキミたちと歳は変わらないと思うよ。

 でもキミのような可愛い女の子に顔を覚えてもらえているなんて光栄だ。フフ、彼氏がいるのは本当に残念だな、フリーなら私が付き合いたいくらいさ」

 

「そこまで――」

 

「摩美々は俺の彼女なんで、あきらめてください」

 

 王子様の雰囲気を感じさせる女子高生の付き合いたい発言は、なんだかイケメンが言っているように思えてイラッときたため、摩美々の言葉を強引に遮って彼氏宣言をしてしまう。

 

「ふふー、ごめんなさいー。まみみの彼氏はぁ、独占欲が強いのでー」

 

 その言葉を聞いて上機嫌になると頭を俺の肩にのせ、ニヤニヤしながら言い放つ。

 

「クス、これは参ったな」

 

 そんな自分たちの様子を見て嬉しそうに笑う女子高生。

 お目当ての品を買う順番が回ってくるまでの間、知らぬ間に仲良くなった女性を含めた三人で雑談をしながら待つことで、退屈しないどころか楽しく時間を潰すことができた。

 

 ちなみにこの女子高生の名前は白瀬咲耶と言うらしい。

 下手なイケメンよりカッコよくて、女性人気も高そうな人だったな。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「ほらほら、カフェでお茶するくらいいーじゃん! ボクらにつきあってよー」

 

「あ、あの……わたし、ここで待ち合わせをしていて………」

 

「マジ! もしかしなくてもキミの女友達とかっしょ?! てか、キミ包帯してるけど怪我してね? オレらで看てあげるから場所かえよーぜ」

 

「……その、ケガをしてるわけじゃ、ないんです……」

 

 アクセサリーショップで欲しかった商品を手に入れたあとの予定は、摩美々の好きなブランドで洋服選び。

 白瀬さんと別れ、目的のお店に行く途中のコンビニで小休止している最中の出来事。

 

 コンビニ前に立っていた儚げな女の子を、少し前から大学生二人組がナンパをしていた。

 少女はおとなしい、もしくは弱気な性格ながらもちゃんと断っているのだが、男二人のチャラっぽいノリと声の大きさで、その意見はことごとく無視されている。

 

 ナンパの方があきらめるか、女の子が自力で追い払えれば理想的なのだがそううまく事は運ばない。しばらくその様子を観察していたが、痺れを切らした二人組は手を掴んで強引に連れて行こうとしていた。

 

「お兄さん、お兄さん」

 

 そんな大学生の背後から声をかける。

 二人は女の子に夢中なのかすぐに気付いてくれなかったので、何度か呼びかけこちらに振り返ってもらう。

 

「……んだよ、イマこの子とカフェにいくとこ――ゲッ!!」

 

「どしたの~? お邪魔虫――って、警察の犬じゃん!!」

 

 邪魔をされ不機嫌になった二人は自分を確認すると表情が一転、会いたくない人に遭遇してしまった時の気まずい雰囲気を顔に出す。あと別に警察とはなんの関係もないんだけどな……

 

 警察の人たちには、主に摩美々関連でお世話になり、一緒に探してもらったりしたこともある。

 たまにそのお礼として簡単なお手伝いとかをしている内に自然と仲良くなっていった。

 

 ちなみにこの二人に会うのはこれで三度目かな?

 一度目と二度目はお手伝いの一環で、迷惑行為(ちなみにその時もナンパ)の取締りを行った際に出会った。大学生と言うことぐらいで名前とか年齢は知らないけれど。

 

「お久しぶりです。ナンパするのは構いませんが、強引な行為は駄目ですよ?」

 

「チッ……そこまでムリヤリでもねーし。オイ、べつんトコいこーぜ」

 

「あーあ、可愛い子と出会えたとこまではよかったのに……ついてないなー」

 

 自分の言葉に、軽く文句を言うとその場から去っていく二人組。

 残された少女は戸惑っているのか、腕に巻いた包帯を押さえながらこちらをチラチラと見ている。

 

 先程までは男二人の体に隠れていたため、顔以外よく分からなかったが少女の着ている白いワンピースは儚い部分をより際立たせ、雰囲気と非常にマッチしていた。

 それ以外で特徴的なのは肩から肘にかけて巻かれた包帯と、おでこや腕に貼られた絆創膏。

 

「もう大丈夫。それと人を待っているなら、コンビニの中の方がまだ安全だと思うよ」

 

 そう言って、一言だけアドバイスをする。

 そして元居た場所まで戻るためにその子から離れようとすると、女の子は引き止めるようにして声を紡ぐ。

 

「……あの、助けてもらったお礼……ちゃんと言わせてください……!」

 

 助けたと言うより向こうが国家権力に物怖じしただけで、俺は何もしていないから感謝されるのは心苦しいな……。

 

「いや、自分は――うぉ?!」

 

「彼女のことほおっておいて、他の女の子口説いてるとか最低なんですケド」

 

 背中にいきなり強い衝撃を受け、少しよろめく。

 後ろを振り返ると、背中に抱きついた幼馴染みがジト目をこちらに向けていた。

 

「放っておいたんじゃなくて、摩美々のトイレが長い――痛い痛い! 耳を引っ張るな!」

 

「そ、その……わたしは、助けてもらっただけで……」

 

 

「おーーい!!」

 

「霧子ー!」

 

 

 状況を説明しようとした少女の言葉を遮る声。

 聞こえた方向を見れば、手を振りながらこちらに向かって走る男女二人組。

 

 男性の方は長身で、キリッとした魅力的な男顔が印象に残る。

 スーツ姿であることや、その雰囲気などを考えるとおそらくは社会人だろう。

 

 その隣の女性は、モデルやアイドル並のスタイルの良さが一際目を引く。

 可愛らしいその容姿を見る限り、摩美々と歳はそこまで離れていないと思われる。

 

「遅くなってすまん、霧子!」

 

「もー、プロデューサー! 忘れ物で遅うなるなんて、うちのこと言えんばい!」

 

「はは……ところで二人は霧子のお友達かな?」

 

「いえ、自分たちは――だから痛いって! 少し大人しくしていなさい!」

 

 二人から霧子と呼ばれているのは先程ナンパされていた少女。

 その霧子さんの知り合いで待ち合わせ相手であろう二人に、これまでの経緯を説明しようとするとまた耳を引っ張られたため、いつものように叱ってやめさせる。

 

 お互いの自己紹介後、大学生二人組にナンパされていたことや、その様子を見ていた自分が助けたことなどを、霧子さんを交えて一から話し始める。

 ちなみに摩美々との関係は恋人と言っておいた。そうしないと話がややこしくなりそうだし。

 

 ただ、会話中にプロデューサーと呼ばれた男性が、摩美々のことを興味深く観察していたのが気掛かりだけど……。

 

「そうだったのか……ありがとう二人とも。霧子も、遅くなったせいで怖い思いをさせて悪かった」

 

「い、いえ……わたしは、良介さんに助けてもらったので……」

 

「ばってん霧子が無事でよかったばい。ありがとうね~」

 

 詳細を聞いたプロデューサーさんは再度、幽谷さんに謝罪。

 そして月岡さんから、アイドル仲間を助けてもらったことに感謝される。

 

 自己紹介の時に分かったことだが、幽谷さんと月岡さんは283プロダクションのアイドルらしい。

 プロデューサーさんから『アイドルやユニットはもうすぐ発表できると思うから、それまで他言無用で頼むね』と言われたけど、ユニット名は三峰の話で知っている。

 

「………話が少し変わるけど、君、アイドルに興味はないかな?」

 

「私ですかぁ?」

 

 和やかな空気を破ったのは、プロデューサーさんの摩美々に対するその一言。

 

「綺麗なのは勿論だけど、そのパンキッシュな格好や、服装に負けないくらい独特の雰囲気を持ってる……一目見て、素質があると思ったんだ!」

 

 先程の優しげな雰囲気とは打って変わり、本職の真剣な表情で摩美々をスカウトしている。

 ……そう言えば三峰が、田中と和泉がアイドルにスカウトされるのは時間の問題とか言ってたな。

 

「……ふふー、でもまみみには彼氏がいるので、アイドルにはなれませんねー」

 

 とは言えこの子がアイドルなんてやるわけないか。

 ポテンシャルは確かにあるかも知れないけど、毎日練習とか面倒臭いと思っていそうだし、やる気で駄目だろう。

 腕を組んできた上、胸を押し付けてくる悪い子に対し、そんなことを考え気持ちを落ち着かせる。うん……駄目だ落ち着かない。

 

「ああ、それは最初から分かっていたから大丈夫。俺としては『彼氏持ちの悪い子アイドル』として売り出していきたいと考えているんだ。だから、鈴木君と付き合ったままで問題ないし、むしろそこがアピールポイントだと思ってる」

 

「……彼氏持ち、アイドル……」

 

「おおー、ばりおもしろそうなアイドルやなぁ」

 

「いやいや、それは無理がありません?」

 

 暗黙の了解としてアイドルに恋愛はご法度。

 確かにこのアイドル戦国時代で、多種多様なキャラや属性があることは知っている。知っているがさすがに彼氏持ちアイドルなんて聞いたことないぞ?!

 

 内心では非常に驚きながらも、平静を装いプロデューサーさんに問いかける。

 と言うか現役アイドル二人もそんなに驚いてない……俺がおかしいわけじゃないよな?

 

「そんなことはないさ。アイドルと言っても一人の人間、恋愛もするだろうし、いつかは結婚だってありえる話だ。実際に結婚後、活動しているアイドルもいるしな」

 

「仮にプロデューサーさんの言うアイドルになったとして、世間から受け入れられるものなんですか?」

 

「そこら辺に関してはちゃんとリサーチしたり、他プロダクションの先輩から意見を聞いたりしたから問題ないよ。田中さんが全面的に受け入れられない――なんて結果にはまずならないはずさ」

 

 確かに最初から公言しているなら、その時点でファンの選別は出来る。

 『彼氏持ち』と言う点が嫌なら好きにならないし、活動中に彼氏が居ることが発覚するよりは何倍もマシだろう。

 

「……勝手に話を進めてますケド、まみみアイドルになるなんて言ってませんよー」

 

「それじゃあアイドルになれば、なにかやりたいことが見つかるって言ったらどうする?」

 

「え――」

 

「ともかく名刺だけでも受け取ってくれ。少しでも興味が出てきたら連絡してくれると嬉しいな」

 

 そう言って自分の手に名刺を握らせる。

 そして再度、幽谷さんの件でお礼を言い、三人は駅前方面へと歩いて行く。

 

「………」

 

 先程までアイドルになるなんて、まったく興味のなかった摩美々。

 今、その摩美々の視線は自分が持っている名刺に注がれていた。

 

 




・白瀬 咲耶(しらせ さくや)
アンティーカメンバー。女子人気も高い王子様アイドル。

・幽谷 霧子(ゆうこく きりこ)
アンティーカメンバー。包帯や絆創膏の理由はプレイ推奨。

・月岡 恋鐘(つきおか こがね)
アンティーカのリーダー。長崎弁の方言女子。
卑しかーっ!

三人とも詳しくはシャニマスで。


 冒頭にも書きましたが、すみません遅くなりました。
 一週間に最低でも1回は更新(出来れば2回したい)を心掛けているのですが、ギリギリです……
 頭に浮かんでいたりプロットは出来ていても、文章に表すのは難しいですね。

 ちなみにデート時の摩美々の服装はトリッキーナイトの物です!

――追記
恋鐘の方言ですが、完全な長崎弁ではなく原作と同じ、分かりやすさ重視で書いていきます(恋鐘弁って感じですね)。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。