悪い子まみみと良い子りょうすけ   作:天邪じゃく

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悪い子と告白

 283プロダクションの人たちと別れ、最後に回るお店は摩美々行き付けのゴシックブランド。

 ダークな雰囲気の店内に流れるミステリアスなBGMをバックに、数名の女性客は自分が惹かれた商品を手に取って睨めっこしている。

 

 レディース専門店のため当然ながら男性客は俺一人だが、幼馴染みに連れられ、ここ以外にも様々な場所を経験しているので恥ずかしさ等は感じない。むしろ今は――

 

「………」

 

 どこかぼんやりしながら、適当に洋服を取っては元の場所へ戻す行為を繰り返している摩美々が心配だな……。

 自分の好きなブランドで、これから着ることになるであろう洋服選びをしていると言うのに、俺をコーディネートしていた時より遥かにやる気がない。

 

 原因は分かっている。

 あの時のプロデューサーさんが放った一言。

 

 

 

『それじゃあアイドルになれば、なにかやりたいことが見つかるって言ったらどうする?』

 

 

 

 小さい頃から甘やかされ、何をやっても褒められる。

 失敗しても怒られず、悪戯をしても周りは見て見ぬフリ。

 もちろん俺は、厳しくする時もあれば叱ることもある。

 

 だが、俺以外の大半が肯定的な環境で育った摩美々には、どこか虚しさのようなものを感じることがあったのかも知れない。

 

「(そう言えばあの時も……)」

 

 中学三年生の頃、一度だけ摩美々と大喧嘩をしたことがあった。

 その時の自分は生徒会とバスケ部で忙しかったこともあり、幼馴染みにあまり構ってあげられない時期が続き、色々な意味ですれ違いを起こしてしまう。

 

 結果的には元の鞘に収まったため、今もこうして良好な関係が続いているのだが……

 

 

 

『生きている意味がわからない、は大げさですけどー、なにかをやりたいって思ったことがなかったんですー』

 

 

 

 大喧嘩をした際に言われた摩美々の本音。

 その言葉の通りであれば、おそらく今もやりたいことは見つかっていないのだろう。

 だからこそ、プロデューサーさんの言葉が引っ掛かっている。

 

「(それに加えて、多分この前二人で見に行った765プロのライブも原因の一つか?)」

 

 今や誰もがその名を知っている一線級の人気アイドル――765PRO ALLSTARSの十三人。

 本来であれば、あの三峰でさえチケットを取ることが難しいライブに行く予定はなかったのだが、二日目の方に急遽行けなくなった三峰とその姉――結華さんから二人分のチケットを貰ってしまったので、幼馴染みを誘い二人で観に行くことにした。

 

 俺も摩美々も、アイドルのライブには何度か参加したことがあるため、上記のライブが初めてではない。

 ただライブに参加する度、ステージの上で輝きを放つアイドルを見て、稀に羨ましそうな表情を浮かべる点は少し気になっていた。

 

 そして今回の765PRO ALLSTARSのライブでは、終始舞台から目を離すことなく羨望の眼差しで、十三人のアイドル達が紡ぎだす歌と、一人一人の個性が色とりどりに光る姿を見ていた摩美々。

 

 終演後は、今まで観たライブの中で一番の余韻に浸っていた自分とは裏腹に、あきらめにも似た表情で唇を噛みしめていた。

 

「(やっぱり摩美々は――)」

 

 そんなことを考えていた矢先、自分の携帯の着信音が静かな店内に響き渡る。

 ……お店の中で話すとうるさいだろうから、外で話した方がよさそうだな。

 

「摩美々、ここだと他のお客さんに迷惑だろうから外で話してくる」

 

「はーい……」

 

 ちゃんと聞こえているのか怪しい、呆けたような返事を聞き心配ながらも、かけてきた相手を無視するわけにもいかないので、そのまま店外へと向かっていく。

 着信メロディが鳴っている携帯をズボンのポケットから取り出し、画面に表示されている名前を見る。

 

「(そうだ、この人に相談してみよう)」

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

『やっほー、りょうたん! あなたの大好きな三峰お姉さんですよー』

 

「こんにちわ、結華さん。先日はライブのチケット、ありがとうございました」

 

 電話をかけてきたのは三峰真幸のお姉さんで、名前は三峰結華さん。

 弟がイケメンならば、その姉も例に漏れず美人な女子大学生。

 

『いいって、いいって~、お姉さんと弟君の仲じゃない!』

 

「結華さんの弟は三峰真幸で、自分じゃありませんよ?」

 

『……実は今まで秘密にしていたんだけど、三峰の本当の弟はりょうたんだったの!!』

 

「はは……もしそうなら嬉しいですけど、冗談でも弟にバレたらショックで自殺しそうなので自重してくださいね」

 

 ああ見えて、あいつは重度のシスコンだからな。

 そこも残念なイケメンたる所以なんだろうけど。

 

『おっけおっけ、わかってますよ』

 

 耳に当てたスマホから軽快なトークが聞こえてくる。

 自由奔放でノリがいい結華さんはコミュニケーション能力も高く、初対面の人とも気後れせずに会話ができるため、人と仲良くなるのも早い。

 

『ところで、我が弟分はな~にを悩んでいるのかな~?』

 

「いや、用があるのは結華さんの方では?」

 

『おやおや~? お姉さんに隠し事とは生意気だぞ。さあ、正直に白状するんだ!』

 

 この人と仲良くなってしまえば、小さな変化も見逃してもらえないらしい。

 ただノリがいいだけでなく、人のことを非常によく見ているため、どんな細かい部分も鋭い目線で発見してしまう。

 

 今回は電話越しだけれど、声色あたりから気付いたのだろうか?

 自分ではいつもの調子で話していたはずなんだけれども……。

 

「……本当に、よく分かりますね。エスパーなんですか?」

 

『ふっふっふ、バレては仕方がない。実は三峰、サイキックパワーの持ち主で――』

 

「はいはい。まあ、悩みと言うより相談があって……」

 

 おふざけ発言に対し食い気味に返事をしたあと、本題を話し始める。

 幼馴染みが283プロにスカウトされた先程の出来事、アイドルのライブを観る度に見せる羨望とあきらめの表情など、関係がありそうなことは包み隠さずに伝えた。

 

 自分が話し終わったあと、相槌を打ちながら聞き手に徹していた結華さんは、考えをまとめているのかしばしの沈黙。

 数秒ほどして、相変わらず口調は軽いが、いつもよりトーンの下がった真剣味を帯びる声で会話が再開される。

 

『なるほどねー、その幼馴染みちゃんについては弟とりょうたんから聞いてたけど……うん、やっぱり三峰の考えもりょうたんと一緒かな』

 

 俺と結華さんの結論として、摩美々はアイドルになろうかどうかを迷っている、それは間違いない。

 なりたい理由は、夢や憧れではなく今まで見てきたアイドルたちは皆『やりたいこと』を心の底から楽しそうに行っているから――実際にライブを観ればお客の自分たちにもそれがひしひしと伝わってくる。

 

 最初は三峰の付き合い程度で参加していたはずの俺も、いつの間にかライブを楽しむようになり、アイドルにも好意を持つようになった。

 気持ちが変化した訳は、月並みな表現になるが観ていると元気が出たり、勇気をもらえるからだと思う。

 

『もっとも、決めかねている一番の理由にりょうたんがいると思うけどね』

 

「自分……ですか?」

 

『そうそう。と言うか、りょうたんこそどうなのさ? 大好きな幼馴染みがアイドルになるって決まった場合『彼氏』が嘘だってちゃんと説明する必要もあるだろうし』

 

「あ……そう、ですよね……」

 

 元々はプロデューサーさんが俺たちの関係を勘違いしているだけであって、実際にスカウトを受けることになったらきちんと説明しないといけないのか。

 ……でも、その場合は彼氏持ちじゃないアイドルとしてデビューするんだよな……。

 

 それがアイドルの在り方として当たり前だと言うことは分かっている。

 受け入れれば、摩美々との距離も遠く離れてしまうだろう。

 

「(一般人とアイドルの関係になれば、当然だよな……)」

 

 好ましくない考えばかりが、浮かんでは消えるを繰り返す。

 自分の中で肥大化していくメランコリー状態を打ち破ったのは、結華さんが放った一言。

 

『そんなわけだからさ、告白しよっか』

 

「…………はい?」

 

 聞いた瞬間、憂鬱な気分はすぐに霧散する。

 いきなりなにを言っているんだこの人は?

 

『だからぁ、りょうたんが好きな子に愛を伝えるんだってば! このままだと「追憶のサンドグラス」ルートに突入しちゃいますよ!』

 

「告白する前から失恋確定させるのやめてもらえますか?」

 

 『追憶のサンドグラス』は765プロに所属するアイドルの一人――星井美希の持ち歌で失恋ソング。この前の765PRO ALLSTARSライブでも熱唱していたからよく覚えている。

 

『でもこのままだと、それに近い状態になるでしょ?』

 

「それは………と言うか、俺が摩美々を好きなこと知っていたんですね」

 

『ま、三峰お姉さんに隠し事は通用しないってね。実際、幼馴染みちゃんがアイドルに惹かれてるのは事実なわけじゃん? なら結果はどうあれ、自分の気持ちを伝えて笑って送り出すか、胸に秘めたまま後悔し続けるかの違いじゃない?』

 

 結華さんの言う通り、自分の片想いが成就するか『追憶のサンドグラス』ルートになるかは別として、想いを伝えなければ後悔の二文字が一生つきまとうことは間違いない。

 

 ……アイドルになって摩美々自身が『やりたいこと』を見つけられるならこの上なく嬉しいし、告白にしたっていつまでもくすぶっている自分に、神様が与えてくれたチャンスだと思えば………!

 

『ちなみに告白しないでヘタレた場合、りょうたんへの好感度は急降下一直線なんでそこんとこヨロシク!』

 

「はは……結華さんの中で、自分の好感度はそんなに高いんですか?」

 

『そりゃあもう! 具体的にはマップであと三回、三峰を選択してくれればルート確定ぐらいかなー』

 

「……ごめんなさい、そのルートには入れません。それとありがとうございます、結華さん」

 

『ん~? 三峰あんまし頭がよくないから、なんでお礼を言われたのかが分からないぞ~?』

 

 通話を切る直前でも、感謝の言葉を素直に受け取ってくれない面倒見のいいお姉さん。

 そして最後に激励の言葉を投げかけてもらい、会話が終了する。

 

 ………よしっ! 俺も覚悟を決めよう!

 フラれたとしても摩美々が自分の道を見つけて幸せになるのならそれでいいじゃないか!

 

「……まあ失恋の時は、気持ちの整理がつくまで時間が掛かりそうだけど………」

 

 そう言えば結華さんの用件を聞いてなかったな。

 俺の相談が優先ってことは、後回しでもいいような内容だと思う……多分。

 次、電話をかけてきた時か会った時にでも訊いてみよう。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「あーあ、結局大事なこと伝えそびれちゃったなぁ……」

 

 さっき電話したのは相談に乗るためじゃなかったんだけど……可愛い弟分の一大事ならしょうがない。三峰的には一肌脱ぐ理由しかないもんね。

 

 三峰がアイドルになったって言うサプライズは次回の楽しみにとっておきましょう!

 

「でもりょうたん真面目だからなー、驚くより自分のことのように喜びそう。と言うか、その様子が容易に想像できちゃいますよ」

 

 それにしても、まさかりょうたん意中の相手がスカウトされるなんて予想外だったな。

 ま、結果的に告白の流れまで持って行けたなら、万事オッケーってね。

 

 あの子は鈍感難聴系キャラじゃないんだけど、幼馴染み限定でそれに近い――すれ違いのような感じが続いている。

 『好き』だと言うのに一歩踏み込めないから、自分の気持ちは理解できても肝心な幼馴染みの気持ちは理解できない。明らかに気があるであろう言葉も、まったく別の意味で捉えてしまう。

 

 親愛と恋愛の境界線が曖昧になっているところも含めて、長年一緒にいた弊害なのかな?

 まあ弟や本人から聞いた話を総合すると、相思相愛で間違いないんですけどね。

 

「こうなったきっかけが、三峰秘蔵のレアアイテムのおかげとはねぇ……」

 

 りょうたんに譲った765PRO ALLSTARSの二日目のライブチケット。

 本来は弟と一緒に両日参加の予定だったんだけど、直前で346プロの外せないライブと被っちゃって……二日目に参加できなかったのは断腸の思いだったよ………。

 

 そう言えばプロデューサーも、二日目に参加したとか言っていたような……。

 確かあのあとぐらいから『アンティーカ最後の一人はやっぱりあの子しか……』とか声をかけなかったのを後悔してる呟きだったけど、もしかして――

 

「おや、もう来ていたんだね、結華」

 

「あ……遅くなってごめんね、結華ちゃん……」

 

 そんなことを考えていると、事務所の扉が開いて顔見知りの四人が姿を現す。

 ん~、遅くなった理由はPたんのせいかな?

 

「いろいろあって、約束の時間ば過ぎてしもうたね」

 

「だが思わぬ収穫も………と、悪い結華。待たせることになってしまって」

 

「も~、三峰寂しくて死んじゃいそうだったんだぞ、Pたん! ついでに年下の彼氏にもフラれちゃうしさー」

 

「うっ……すまん。……ん? ちょっと待て! 今、彼氏って言わなかったか?!」

 

 おおっ、ここまで食いつかれるとは……彼氏持ちアイドルとして想定していたのは、りょうたんの幼馴染みだけだったってことか。やっぱり二日目のライブで目を付けていたんだね、Pたん。

 そう考えると、初対面で彼氏がいることに動揺することなく、スムーズにスカウト話に持って行けたのも納得だよ。

 

「やだなぁ~、三峰を待たせたPたんへの冗談に決まってるじゃないですかー。でも少しは反省してくださいよ? じゃないと本当に彼氏作っちゃいますからね!」

 

 冗談だとわかった瞬間、心の底から安堵するプロデューサー。

 さっすが三峰演技派~。

 

「結華ちゃんも……彼氏持ちアイドルに、なるのかな……?」

 

「それやとキャラって言うものが被らんと?」

 

「フフ、なら私が結華の恋人役に立候補しようか」

 

「こらこら、悪ノリしないでくれ、咲耶。まあ遅くなった原因の俺が言うのもなんだが、おかげでアンティーカ最後の一人が決まりそうだ」

 

 その人物は間違いなくりょうたんの幼馴染みだよね。

 でもこれで283プロの四ユニット全部が完成か~、ようやくアンティーカ始動!って感じ。

 

「そうなったらよかばってん、断られんと? なりたかねら即答するやろうし」

 

「確かに、プロデューサーも彼女がどこか迷っていると言っていたね」

 

「摩美々ちゃん……受けてくれるといいな……」

 

「はいはーい、三峰はメンバー入り確定だと思いまーす! なぜなら三峰の第六感がそう叫んでいるから!」

 

 呆れた視線を向けるこがたんとプロデューサー。苦笑するさくやんときりりん。

 ふっふっふ、ネタバレしている三峰にはすべてが視えているのだよ!

 

 ……なーんて、ホントはりょうたん次第なんだけど。

 ともあれ背中を押したのは三峰ですから、陰ながら応援しなくっちゃね。

 

 

「(――頑張れ、良介)」

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「へぇー……こんな場所あったんだぁ………」

 

 高台から見る街を照らす色とりどりの光は、まるで七色の蛍が点滅する様を見ているかの如く一瞬で目と心を奪われる――そんな絶景を見下ろせる秘密の穴場。

 

 ここは数年前までお世話になった女性警察官の人に教えてもらった場所で、その人曰く『ここで告白すれば、女の子のハートは撃ち抜かれること間違いなしよー!』とテンション高く力説していたような……。

 

 あのあと緊張しながら、摩美々に大事な話があることを伝えた俺は告白のプレッシャーに押し潰されそうな気持ちを鼓舞して、なんとかここまで来ることができた。

 

 道中、二人に会話はなく無言のまま。

 俺はこのあとの告白のせいで緊張状態が続いていたため、なにか気の利いたことを話せる余裕はなかった。摩美々は………多分、アイドルのことだろう。

 

「それでー、話ってなんですかねー?」

 

 口調はいつも通りだけど、さっきいたゴシックブランドショップと同じで、心ここにあらず――そんな感じがする。

 

「あ、ああ。その……アイドルにスカウトされたことについて、なんだけど」

 

「………」

 

「摩美々はさ、アイドル、やってみたいのか?」

 

「……んー、アイドルってー、学校終わりとかに毎日練習するんでしょー。それはちょっとめんどくさそーな感じなんで、断ろうかなぁ」

 

「そっか。面倒臭くなければ、やりたいってことなんだな」

 

「あ……」

 

 図星を突かれた摩美々は、俺から視線を逸らすと気まずそうに自分のツインテールをいじる。……やっぱり、やってみたいってことだよな。

 

 結華さんは迷ってる一番の理由は自分だと言っていた。

 あの電話のあと、その事を考えてみたけれど結局わからず仕舞い。

 摩美々本人に訊いたところで、教えてくれない可能性しかない。

 

 それなら――こうしよう。

 俺の幼馴染みは悪戯好きで、とっても優しい悪い子だから。

 

「それじゃあ今から俺が、アイドルとは関係ない方の話をする。正直、結構恥ずかしいと言うか……勇気がいる感じで、言いにくいことなんだ。だから摩美々も迷っている理由、教えてくれないか?」

 

「……良介の言うこと次第ですかねー」

 

 いざ告白の瞬間がやってくると、わかっていても心臓はバクバクと高鳴り、ひどく口が渇く。覚悟を決めていようが、どうにもならないところはあるようだ。

 

 とは言え、結華さんにあれだけ発破をかけてもらって、今ヘタレてる場合じゃないよな……!

 

「えっと……その………小さい頃かりゃ、たっ、田中摩美々のことが大好きでした! 幼馴染みじゃなく恋人として、これからも一緒にいさせて下さい!」

 

 長年ためこんだ想いを言い切った俺は、そのまま摩美々のことを見つめながら返事を待つ。

 正直、恥ずかしさで顔が赤くなり、告白相手から視線を外したい衝動に駆られるがぐっとこらえる。

 

 突然の告白に、摩美々は先ほどから「あ……」とか「……え」などの言葉しか発していない。しばらくすると、ようやく現状を理解した摩美々がゆっくりと口を開く。

 

「……あ、その……今すごく恥ずかしいので、ちょっと目をつぶってほしいんですケド……」

 

「わっ、分かった! 大丈夫になったら教えてくれ!」

 

 長年一緒に過ごしてきた幼馴染みでも見たことがない、可憐に恥ずかしがる表情。

 そんな姿に動揺して、すぐさま言う通りに目を閉じる。

 

 体感時間では、摩美々が落ち着きを取り戻すまでとても長い時間経過していると思った。

 沈黙に耐え切れず、声をかけるために言葉を紡ごうとして唇に意識を集中させると――

 

「ん……!」

 

 摩美々の小さく漏れる息と共に、押し付けられる柔らかい感触。

 えっ?! いや、これって――そういうことだよな?!

 

 何をされたのか頭で理解していても、現実の処理が追いつかない。

 そんな驚き戸惑う自分に、更に追い打ちが加わる。

 

「………むぐっ!!」

 

 口内に摩美々の舌が侵入してくると、拙い動きながら俺の舌を吸うように絡めてくる。

 口の中の水分や今の気持ち、その他もろもろを一気に吸い取られ、現状の把握は困難に。

 

「………ふふー、もう目をあけてもいいですよー」

 

 あまりの出来事に放心状態だったこともあり、反射的に摩美々の言葉に従う。

 そこには悪戯好きな表情で、不敵に笑う幼馴染みの姿。ただ頬が紅潮していたのはいつもと違うところ。

 

 『おもしろい表情ですねー』とクスクス笑いながら観察されていることに気付くと同時に、今この状況に対する意識もはっきりとしてくる。

 

「……お、おまっ! 舌――」

 

「まみみも『小さい頃かりゃ』大好きでしたよー。これからはぁ、恋人としてよろしくお願いしますねー、良介」

 

 俺の噛んだ告白をいじりながらの、摩美々らしい返事。

 だけどそんな意地悪が気にならないくらい、可愛く嬉しそうに微笑む姿に目を奪われる。

 

 

 

 ――この日、俺と田中摩美々は恋人同士となった。

 

 

 




・三峰 結華(みつみね ゆいか)
アンティーカメンバー。サブカル方面に強い女子大生。
詳しくはシャニマスで。


 一週間に2回更新とか言っておきながらこの体たらく……。
 助けて……真乃……めぐる……灯織……!

 それと、これにて283プロ所属前編は終了となります。
 感想や評価、お気に入り登録もそうですが、なによりいつも読んで下さっている皆様、本当にありがとうございます!

 また評価バーも赤を頂けて感謝感激です!

 摩美々アイドル編からようやくアンティーカ以外のシャニマスキャラと絡ませられるので作者もテンション上がってます、むんっ!

 よろしければこれ以降もお付き合いくだされば幸いです。
 とりあえずシャニマスプレイしてきますねー
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