宇宙人丸山と人間嫌いな俺   作:テレサ二号

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どうもテレサ二号です!

初めましての方はよろしくお願い致します。

この小説の主人公の詳細を簡潔に下記に記します。

名前:古澤 晃(ふるさわ あきら)
身長:178cm
学年:高校2年生
髪型:黒髪ショートマッシュ
趣味:読書、音楽鑑賞、ネコと戯れる
特技:バイオリン、通訳
得意科目:英語、音楽
苦手科目:国語




♪1 気になる転校生

「なぜ、お前はいつもそうなんだ!!なぜ兄さんのようにできないんだ!!」

 

「お父さん、ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

「お前なんか生まれてこなければ良かったんだ。お前がいるからみんなが不幸になるんだ!!お前なんかいなくなればいいんだ!!」

 

そうして俺の景色は全て真っ赤に染まった。

 

___________________________

 

 

「またあの日の夢か」

 

俺は目を覚ますと汗をぐっしょりかいていた。

最近は夢なんて見ないようになってたのに、今日は転校初日ということもあり心のどこかに不安があるのかもしれないな。全く情けない事だ。

 

体を起こし、身だしなみを整える。

新しい学校の制服に着替えて家を出る身支度をする。

 

「おはよー少年。今日から新しい学校だって?」

 

この人は小野寺 香菜(おのでら かな)さん、バリバリのキャリアウーマンで某企業の国際営業部で仕事をしている。

両親がおらず、親戚関係を転々としていた俺を半ば強引に引き取り一緒に暮らしている。

 

「それが新しい制服だね?中々凛々しいじゃないか!うんうん!」

 

「おはようございます香菜さん。今日から新しい学校に通わせていただく予定になってます」

 

「そっかそっか!新しい学校では友達沢山できるといいね」

 

「いえ、友達なんていりません。俺に関わると不幸になりますので」

 

「またそんな事を言って……。それじゃあ、僕が君に関わっても不幸にならないって証拠にならないとね!」

 

「香菜さんも俺と暮らしたくないと思ったらいつでも仰ってください」

 

「バカを言っちゃいけないよ。こんなにも可愛い義弟と暮らしたくない訳が無いさ」

 

「またそれですか」

 

「そんな事より朝ごはんできてるよ!」

 

「ありがとうございます。冷めてしまっては悪いのでいただきましょう」

 

「「いただきます」」

 

 

俺と香菜さんは朝食を食べ始めた。

先ほどの俺の会話が気になったのか、香菜さんはとんでもない提案をしてきた。

 

「そうだ少年。新しい学校は元女子校で女の子が多いって聞いたよ?」

 

「らしいですね。俺には関係のない話ですが」

 

「あれ?じゃあなんでこの学校にしたんだい?」

 

「…………。女の子が多い方がハッピーだろうと香菜さんが勝手に決めたんですよ」

 

「そうだっけ?だったら少年も恋愛をしなさい!!」

 

「唐突にどうしたんですか?」

 

「恋愛は灰色の世界に彩りを加えてくれるって言うだろ?」

 

「誰の言葉ですか?」

 

「私の言葉だよ!」

 

「……………………」

 

「よし、少年の今年の目標は彼女を作ることにしよう!!」

 

「香菜さんに彼氏ができたら考えますよ」

 

「う…………、痛い所を突くね君は。まぁ、僕は仕事が恋人のようなものだからね!!」

 

「香菜さん、世間ではそれを社蓄と言うんですよ」

 

「ほほう、少年も言うようになったね。それで?どうだい?彼女を作ってみたら?」

 

「善処してみます。…………ご馳走さまでした。それでは学校に行ってきます」

 

「あぁ!ちょっとだけ!ちょっとだけ待って!!」

 

「???」

 

出掛けようとした俺を香菜さんは引き留め、満面の笑みで弁当を差し出して来た。

 

「愛妻弁当だぞ♪」

 

「香菜さんは妻ではありません」

 

「ぶーー。ツレないなぁ…………。まぁ気をつけて行ってきなよ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

俺は弁当をカバンに入れると花咲川学園へ向かった。

 

___________________________

 

学校に向かう途中、俺は素通りできない状況に遭遇した。

可愛い可愛い子猫を中型犬が吠えて威嚇している。

今にも飛びかかりそうだ。

 

  素通りする

 →猫を助ける

 

大好きな猫が襲われているのに見て見ぬふりをすることは俺にはできなかった。

 

「さてどうしたものか……」

 

俺はブレザーを脱ぐと右腕にぐるぐる巻きにして犬と子猫の間に割って入った。

良くか悪くか犬は飛びかかってきたので右腕のブレザーに噛みつかせ、振り回したあげくブレザーごと投げ飛ばした。

それに驚いた犬はその場から走って逃げていった。

 

「もう大丈夫だよ」

 

「にゃー♪」

 

か、可愛い……。

撫でてやると手のひらを舐めてくる。

このままだと無限に可愛がれそうなのだが、時計を確認すると予定よりだいぶ遅れている。

 

「バイバイ」

 

俺はボロボロになったブレザーを拾うと学校へ向かった。

 

「ブレザーどうしよう……。香菜さんに謝るかな?」

 

 

 

花咲川学園に着くと早速職員室に向かい、自分のクラスは二年B組と説明を受け早速教室に案内された。

クラスの担任に教室の前で待っているように指示され、HRが始まると簡易的な紹介の後に教室に入るように促された。

教室に入ると生徒の視線が俺に注がれる。

珍しい動物でも見るような視線に正直嫌気が差した。

 

「では自己紹介をお願いします」

 

「古澤 晃です。よろしくお願いします」

 

「古澤君?他には何か無いの?」

 

「ありません」

 

「そ、そうですか……」

 

これでいい。

余計な情報は掴み所を作るだけ。

掴み所が無ければ余計な会話をしなくて済む。

 

「で、では丸山さんの隣の席へ」

 

俺の自己紹介に担任も含め皆少しひいているようだ。

それでいい。誰も俺に興味を持つな。

得意気に椅子に座ると隣の女子が声を描けてきた。

正直意外だった。

 

「私、丸山彩。よろしくね古澤君」

 

「どうも」

 

俺から"よろしく"という言葉は返さない。

彼女は"え?"と言った表情を見せた。

これできっと俺に関わって来る事はないだろう。

 

そんな俺を含め授業が始まった。

最初の授業は国語だ。

正直国語は嫌いな教科だ。

特に嫌いなのは心情問題。

[この時の碧志君はどう思いましたか。]

そんなもの知らない。

碧志君に聞いてくれって感じだ。

一度テストでそう解答した所、翌日先生から呼び出された事がある。

発言の自由は憲法で認められているはずなんだが。

 

 

そんな事を考えていると隣から丁寧に折り畳まれた手紙が飛んできた。

飛んできた方向を見ると丸山さんがこちらを見ていた。

どうやら彼女からのようだ。

 

『やっほー\(^^)/

まん丸お山に彩りを♪丸山彩です♪

古澤君って音楽聴いたりする?

どんな音楽が好きなのかな?』

 

冒頭の呪文のような言葉は何だ?

俺は手紙の余白に返事を書くと折られていた通りに戻し丸山さんへと投げ返した。

丸山さんは嬉しそうに手紙を開いたがその表情は一瞬で暗くなった。

 

『授業に集中してください』

 

俺からはこれだ。

これできっと彼女が俺に関わって来ることは無いだろう。

俺は授業に集中しているフリをして丸山さんからの視線を受け流した。

 

国語の授業を終え、数名の女子が俺に興味を示している素振りを見せたので俺はそそくさとイヤホンを取り出し、外の世界と自分を切り離した。

音楽を聴きながら小説を読む。

これで誰も俺と関われない。

案の定、俺に声を掛けようしていた女子達は皆散って行った。

 

次の授業中、またしても隣の丸山さんから手紙が回ってきた。

…………。この人はあれか?宇宙人なのか?空気が読めない困ったちゃんなのか?

あれだけ関わるなオーラを出したのにまだ関わってくるとは普通の人間ではないな?

 

『さっきイヤホンで何聴いてたの?』

 

これは俺の失態だ。

さっき自分で掴み所を作らないと言っていたのに、丸山さんからの手紙の内容を忘れていた。

これでは仕方がない……。

 

『クラシックです』

 

手紙を投げ返すと恐る恐る手紙を開封すると嬉しそうにこちらを見た。

悔しいがちょっと可愛い気もする。

続けて何かを書いてこちらに投げてきた。

 

『クラシックってカッコいいね!

 どんな曲を聴くの?

 アイドルソングとか興味無いかな?』

 

『バイオリン協奏曲が多いです。

 アイドルソングにはあまり興味無いです』

 

『そっか……残念。

 今度オススメのバイオリン協奏曲があったら

 教えてね♪

 古澤君ってバイオリン習ってるの?』

 

自然な流れでこの質問はおかしくない。

しかし俺はどう答えたものか悩んでいた。

それが仇となった。

背後から近づく男に気づかなかった。

 

「古澤……楽しそうだな。ん?」

 

「…………スミマセン」

 

「手紙の相手は誰だ?」

 

「前の高校の友達です」

 

「授業中だぞ?」

 

「そうですね」

 

「廊下に立ってなさい」

 

今時そんな文化あるんだな。

俺は席を立ち廊下に向かう、ドアに手をかけた時丸山さんが立ち上がった。

 

「あの!手紙は私が勝手に書いて渡したんです!だから古澤君は悪くありません!」

 

「いえ、俺が返事を返したのが悪いんです」

 

「では二人とも廊下に立ってなさい」

 

「「…………はい」」

 

正直訳が分からない人だ。

俺はバラすつもりもないので廊下に立つ必要が無いのにわざわざ自己申告してくるなんて。

この人はMなのか?もしくは一周回ってSなのか?

 

「ゴメンね古澤君」

 

「??」

 

「私がしつこく手紙を送ってたから先生に怒られちゃって」

 

「別に問題はありません。そもそも英語の授業は特に受ける必要性を感じませんので。ただ丸山さんが自ら名乗りを上げたのが理解できません。黙っていれば廊下に立つことも無かったのに。廊下に立つことに憧れでもあるんですか?」

 

ん?

今度は丸山さんが俺の質問の意図を理解しかねるといった表情をしている。

 

「だって私から始めたのに古澤君だけが怒られるのっておかしくない?」

 

「そうですか?そもそも手紙が見つかってしまったのは俺のミスです。なので丸山さんが責任を感じる必要はありません」

 

「ううん。そんな責任を擦り付けるようなことはできないよ」

 

「あなたの信条は分かりました。ですがこれで分かったと思います、俺と関わると不幸になるので俺と関わらない事を強く勧めます」

 

俺は隠し持っていた小説を取り出し読み始めた。

これ以上はあなたと議論を交わすつもりはありませんという意思を態度で示した。

 

「ねぇねぇ古澤君」

 

俺は言葉と態度で関わらないと示したはずだ。

やはり彼女には俺の意図が伝わらないようだ。

 

「私とお友達にならにゃい?うぅ……なんで大切な所で噛むかな……」

 

話の流れが全く理解できない。

先ほどからあんなに言葉や態度で関わらない方がいいと示しているのに、何故執拗に関わってくるのか。

彼女の気持ちや考えは理解できない。

しかし俺の答えは決まっている。

 

「………………」

 

俺は彼女の提案を拒否できなかった。

何故かは自分でも分からない。

友達になりたいなんて人生で一度も言われたこと無いし、言われないようにしてたから戸惑い、納得のいく答えが得られるまで保留にしておきたかったのかもしれない。

きっとそうだ。

 

___________________________

 

 

そんなこんなで昼休み。

さっきからの答えが全く思い浮かばない。

とにかく香菜さんが作ってくれた弁当を食べよう。

 

「………………!!」

 

俺は開いた弁当を瞬時に閉じた。

恐ろしいことにご飯に桜でんぶでハートマークがデカデカと書かれていた。

周囲を見渡したが誰とも目が合わない…………。

良かった、誰にも見られてないようだ。

隣を見ると丸山さんがこちらを見ている……。

見られたか?見られてないか?

今の俺にそれを聞く勇気は無い。

仕方ないので人気のない所で昼食を食べよう。

 

 

俺は屋上に向かった。

屋上には鍵がかかっている。

しかし屋上前の踊場は事務員によって綺麗にされていて、その上窓や蛍光灯もあり明るい。

しかも予備の机と椅子があり、とっても一人で過ごすには持ってこいの場所だ。

 

「今日からここを楽園(エデン)と呼ぼう」

 

「エデンってどういう意味なの?」

 

「うぉ!!ま、丸山さん!?」

 

「こんな所で一人で食べないで一緒に食べない?」

 

「お断りします。俺は一人になりたいんです」

 

「どうして一人になりたいの?」

 

「先ほども言いましたが、俺に関わると不幸になるんです」

 

「そっか……」

 

どうやらやっと納得してくれたようだ。

 

「そういえばさっきのお弁当可愛いかったね?」

 

「み、見ていたんですか!?」

 

「愛妻弁当かな?」

 

「いえ、ただの義理の姉の嫌がらせです」

 

「ふーん、ねぇ?お弁当の事、紗夜ちゃんとか燐子ちゃんとかに話してもいい?」

 

丸山さんが俺を試すような視線で見つめてくる。

それは困る。ただでさえ丸山さんが関わってくるのも問題なのに他の人まで関わってくる可能性はどうしても摘んでいたい。

 

「1つ…………」

 

「???」

 

「俺に出来ることなら何でも言うことを聞きます。だからこの事は丸山さんの胸の内に閉まっておいてくれませんか?」

 

「何でも?」

 

「俺に叶えられる範囲なら」

 

「だったら私とお友達になってくれない?」

 

「またそれですか……」

 

「何でも言うことを聞いてくれるんでしょ?」

 

これは身から出た錆び。仕方ない。

 

「分かりました。ただし条件があります」

 

「条件?」

 

「1つ、丸山さんが友達を辞めたいと思ったらすぐに言うこと。2つ、俺が話したくないと言った事は追及しないこと。3つ、他の友達との用事があるときは必ずそちらを優勢すること。この3つです」

 

丸山さんは真剣に悩んでいる。

おそらく俺の言葉を一つ一つ自分の中に閉まっているのだろう。

本当にいい子だと思う。正直俺なんかが関わっていい部類の人間ではないだろう。

 

「分かった。私からも1つ条件を出してもいい?」

 

「構いませんよ」

 

「嫌な時は嫌だって言ってくれていいから、嘘だけは付かないで?」

 

「俺は器用な方ではありません。俺の本音が貴女を傷つけるかもしれませんよ?」

 

「うん。嘘をつかれるよりずっといいよ」

 

「分かりました」

 

「じゃあ約束ね♪」

 

丸山さんは小指だけ出した手のひらを差し出してきた。

 

「これは?」

 

「指切り!!」

 

「指切り?」

 

「ほらっ!古澤君も!」

 

丸山さんは俺の小指と自分の小指を絡めてくる。

 

「ゆ~びきりげんまん♪嘘ついたらハリセンボンのーます♪ゆびきった♪」

 

可愛らしい歌声で歌い上げた後、少し照れながら丸山さんは指を離した。

 

「えへへ♪」

 

生まれて初めてした指切りはとても柔らかくてどこか暖かかった。

 

 




いかがでしょうか?

これから少しずつ書いていけたらなと思っております。
次回を気長にお待ちください。
もう一作品、バンドリの小説を書いておりますのでそちらも是非!!

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特に評価・感想は執筆の励みになりますのでよろしくお願いしますm(_ _)m

それではまた次回!ほなっ!(^^)ノシ

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