英雄伝説 異能の軌跡   作:ボルトメン

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自由登校日です。

肩の力を抜いたら緩くなりました。

キリコのルームメイトはウェインとスタークに決めました。




自由登校日

4月16日

 

[キリコ side]

 

目覚まし時計が鳴り、ベッドから身を起こす。

 

隣では戦術科のウェインは起き上がるのが億劫そうになっており、主計科のスタークが眠そうな顔をしていた。

 

「すまない、起こしたか?」

 

「ふあぁ……いや、今日から部活だからね。むしろ清々しいくらいだ」

 

「うう……て、帝国男子なら早寝早起きは当然だからな」

 

「無理をするな」

 

「うん。見ていて辛いからね」

 

「す、すまん。昨夜、筋トレをしていたんだが納得がいかなくてな」

 

「いわゆる筋肉痛というやつか」

 

(やけに遅かったのはそのせいか……)

 

「そう言えば、キリコはどこの部活に入ったんだ?」

 

「技術部だ」

 

「へえ、そうなのか。ちなみに僕とウェインは水泳部だ」

 

「キリコはその…体を鍛えようとは思わないのか?オレは恥ずかしながら水泳が苦手でな、それで入部しようと思ったんだ」

 

「俺も鍛えようと思ったからなんだけどキリコはなんで技術部に?」

 

「俺は機械をいじっている方が性に合っている、それだけのことだ」

 

「なるほど、技術肌なんだな」

 

「そういうことか、いや別に他意があるわけじゃないんだ。ただ……」

 

「わかっている」

 

「え?」

 

「ウェインもスタークも間違ったことは言っていない」

 

「キリコ……」

 

「だがウェイン。価値観の押し付けは止めておけ」

 

「あ、ああもちろんだ。帝国男子たる者、そうでなくてはな」

 

「…………………」

 

「ウェイン……そう言う事じゃないんだが……」

 

どうやら通じなかったようだ。

 

「そろそろ行くぞ」

 

「そうだな、朝食も自分たちでなんとかしなきゃな」

 

「うーむ…料理は経験がないんだが」

 

俺たちは手早く着替えて一階の食堂で朝食を取った。

 

 

 

寮を出て格納庫を目指して歩いていると、

 

「あ、キリコさん。少しよろしいでしょうか?」

 

ミュゼがパタパタと寄って来た。

 

「どうした?」

 

「いえ、大したことじゃないんですが。今日の午後にクラブハウスの一番奥の教室に来てください。実は頼みたいことがありまして」

 

「……ここではダメなのか?」

 

「はい、午後でないと」

 

「…………どうしてもか?」

 

「はい、どうしてもです」

 

「……………わかった。クラブハウスの奥の教室だな」

 

「うふふ、お待ちしてますね」

 

そう言ってミュゼは雑貨屋に入って行った。

 

今日1日は格納庫にいるつもりだったのだが、返事をしてしまった以上、行かなくてはいけない。

 

(相談と言っていたが内容は聞きそびれたな……)

 

俺は先ほどの事を片隅に追いやるように頭を振り、格納庫を目指した。

 

途中、武器屋を見かけたがまだ開いていなかった。

 

[キリコ side out]

 

 

 

[ミュゼ side]

 

「マヤさん、これはここでよろしいでしょうか?」

 

「はい、そこに置いておいてください」

 

私は戦術科のマヤさんと主計科のカイリさんと茶道部を作ることになりました。

 

元々東方の文化に興味があったのですが、こちらでは東方文化はあまり浸透していません。

 

現にリィン教官の太刀は武器というより、美術品として扱われています。

 

しかし、マヤさんは東方の血を受け継いでいるので東方文化には私よりも豊富でした。

 

なので茶道に必要な物はマヤさん主導で揃えることができました。

 

「なるほど、これが東方の"お着物"なんですね」

 

「ええ、こちらは女性用、カイリ君の持っているのが男性用ですね」

 

「へえ、綺麗ですね」

 

唯一の男子であるカイリさんは帝国男子としての憧れがあるみたいですが、なんだか背伸びをしすぎているように見えます。

 

そこで私とマヤさんで「東方の文化で男子として磨いてみては?」と声をかけてみたら、悩んだものの了承してくださいました。

 

「あれ?着物がもう一着ある……」

 

「本当ですね。しかもカイリ君のより大きい」

 

「一着余計に頼んでしまったんでしょうか?」

 

実はこれはわざとです。あの人に着てほしくて余計に注文しました。

 

「まぁいいでしょう。それではミュゼさん、カイリ君。さっそく、作法から参りましょう」

 

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

「はい、よろしくお願いしますね」

 

キリコさん、早く来ないですかね。こうしてカメラも用意してるのに。

 

ドキドキするのは……気のせい、ですよね?

 

[ミュゼ side out]

 

 

「キリコさん、何をしてるんですか?」

 

パソコンの前で作業しているキリコの様子が気になったティータは缶コーヒーを手にキリコに聞いた。

 

「シュミット博士からの課題だ。実験用機甲兵の新機能のアイデアを出せだそうだ。いずれ新造される新型機とその生産に備えてな」

 

「あはは……お疲れ様です。これどうぞ、キリコさんコーヒーが好きだってミュゼちゃんから聞きました」

 

「貰おう」

 

「それでキリコさん、これはなんですか?」

 

「機甲兵の行動パターンだ」

 

「行動パターンですか?」

 

「あぁ、どれほど強固な機甲兵でも人間が動かすことに変わりはない。だが完全なマニュアルではパイロットの負担が大き過ぎる。そこであらかじめ行動パターンをこのミッションディスクに設定することで機甲兵を半自動化して行動時間と生存率を延ばすことができる」

 

「でもでも、そんな機能を付けたら肝心の機甲兵のスペックはかなり下がるんじゃ……」

 

「背中に火器管制を兼ねたコントロールボックスを背負わせる。また今までのスクリーンモニターを廃止して、ターレットスコープにより視覚情報がダイレクトになる以上、余裕があるはずだ」

 

「す、すごいですね……」

 

ティータはこの時までキリコは単に機械が得意なだけだと思っていた。

 

しかし、蓋を開けてみれば、自分以上の才能を惜しみなく発揮していた。

 

まるで、あらゆる機械に順応できるかのように。

 

アガットからの連絡と先日の実力テストの会話を聞いてキリコがただ者ではないことはわかっていた。

 

だが実際に見るのと聞くのではあまりに違い過ぎた。

 

ティータは分校に来て初めて負けたくないと思った。

 

「キリコさん」

 

「なんだ?」

 

「私、負けませんから!」

 

「?」

 

「あっ!ご、ごめんなさい。私キリコさんがすごいと思ったんです。だから、負けたくないって思ったんです」

 

「そうか」

 

「キリコさん、これからよろしくお願いしますね」

 

「あぁ」

 

キリコはティータの誓いを聞いて返事をした。

食堂で昼食を取っていると、主計科のパブロから鉄道部に誘われたがキリコはきっぱりと断った。

 

 

 

時計を見ると、1時を過ぎようとしていた。キリコはミュゼとの約束を思い出した。

 

(面倒だが行くしかないな……)

 

キリコが作業を中断して席を立つとティータが、

 

「あっ、キリコさんお疲れ様です。どこかへ行かれるんですか?」と聞いてきた。

 

「あぁ、クラブハウスにな。少し席を外すが大丈夫か?」

 

「わかりました!まかせてください。それと今日の夕食は私とサンディちゃんとフレディ君で作るんですけど、苦手なものはありますか?」

 

「特にない(こちらにホヤはないだろうしな)」

 

「そうなんですね、楽しみにしててください」

 

そう言ってティータは作業台に戻った。

 

(行くか。クラブハウスの奥の教室だったな……)

 

キリコはパソコンの電源を切って格納庫を出た。

 

 

 

クラブハウスの奥の教室の前にやって来たキリコはドアをノックしようとすると、中から声が聞こえてきた。

 

「やはり思ったのですが、カイリ君も女性用の着物は似合うと思います」

 

「私もそう思います」

 

「ちょ、ちょっと──僕はこう見えてもれっきとした男ですよ!?」

 

(…………帰るか)

 

キリコは足音をたてないようにその場を立ち去ろうとするが、床の軋んだ箇所から音が出てしまい、気づかれてしまった。

 

「あっ、キリコさん。お待ちしてましたわ」

 

「あれ?Ⅶ組の………」

 

「たしか、キリコ・キュービー君でしたか」

 

キリコは出てきたミュゼに驚いた。

 

「変わった格好だな」

 

「うふふ、似合いますか?東方のお着物です」

 

「そうか。それで、俺に頼みというのは……」

 

「はい、こちらのお着物を……「断る」」

 

「キリコさんお願いです。この着物を着てくれませんか?」

 

「なぜ俺がそんなものを着なければならない」

 

「そんなもの呼ばわりされては東方の名誉に関わります。着てください」

 

「だ、男子たる者、女性の頼みはきくべきだと思います!」

 

ミュゼだけでなく、マヤとカイリも援護に加わる。

 

遂に根負けしたキリコは着物を着ることになった。だが……

 

「これはどうやって着るんだ?」

 

「ミュゼさん教えてあげてください」

 

「ええっ!?私がですか!?」

 

(キリコ君の着物姿は私も興味あります。だから呼んだのでしょう?)

 

(で、ですが、殿方とは……)

 

(何もキリコ君を見なくてもいいんです。基本的には女性用と変わりはありませんから。ほら、屏風越しなら)

 

(は、はい そうですよね……何も見る必要はないんですよね……)

 

(ミュゼさんとマヤさん、さっきから何を話してるんだろう?)

 

キリコは屏風越しにミュゼから着物の着方、帯の結びかたを聞きながら着物に袖を通した。

 

10分後

 

屏風から出てきたキリコを見て、彼女たちは息を呑んだ。

 

藍色を基調とした涼しげな着物とキリコは見事にマッチしていた。

 

加えて1.8アージュの高身長と精悍な顔立ちは見る者に偉丈夫を連想させる。

 

「……………………」

 

「これほどとは、見事ですね」

 

「うぅ……僕なんかよりずっと男らしいです……」

 

一方のキリコはというと、

 

「もういいか?」と早く終わらせたかった。

 

だがここで、

 

「わぁ!キリコ君、その着物すごく似合ってるよ!」

 

トワが入って来た。

 

「ハーシェル教官もそう思いますか。しかし、よく着物を知ってましたね?」

 

「うん、私のおじいちゃんが東方の出身なの。だから聞いたことはあるよ」

 

「なるほど、そうでしたか。後で色々教えてください」

 

トワとマヤが東方の話で盛り上がっている横で、

 

「帰らせてもらう」

 

「ま、待ってください!せめて一枚………」

 

「…………………………」

 

「すいません。何でもないです………」

 

「キリコ君、気持ちは分かるけど、女の子を睨んじゃだめだよ」

 

その後キリコは元の制服に着替えた。

 

件の着物は受け取ることになった。

 

 

 

[キリコの着物]を手に入れた。

 

 

 

キリコはごめんなさいとミュゼから謝られたが「もういい」と言って格納庫に帰った。

 

憮然とした表情で戻って来たキリコを見て、ティータは何か聞こうとしたがシュミット博士から仕事を言い付けられたため聞けずじまいだった。

 

 

夕食にはティータとサンディのごく普通の料理とフレディの昆虫食が出てきたがキリコをはじめ全員が昆虫食を食べきれなかった。

 

(味は悪くない…………わけではないが、砂モグラの方がはるかにマシだな)

 

キリコは前世で口にした、原始惑星特有の生物の肉を思い出した。

 

風呂に入り、部屋で復習をしていると、ウェインとスタークが戻って来た。

 

ウェインの暗い顔にキリコは気になった。

 

「どうした?」

 

「ああ、今日は良いことがなくってな……」

 

「水泳部にⅦ組のアルティナが入部したんだ。ウェインは彼女の半分くらいしか泳げなかったんだ。そしてフレディの昆虫食だな。あれには僕も参ったよ」

 

「まさか、彼女にも劣るとは思ってもいなかったんだ。そしてさっきの昆虫食……思い出したくもない…………」

 

「そうか……」

 

「まぁ、明日からは出ないと思うよ。さっきⅨ組の二人がフレディに約束させたみたいだしね」

 

(本気でそう信じたいものだな)

 

「ほら、ウェインもいつまでも落ち込んでないで風呂に行ってきなよ」

 

「ああ、そうさせてもらうよ……」

 

スタークに促され、ウェインは着替えを持って出ていった。キリコはコーヒーを飲み一息ついてからまた、机に向かった。




次回、光るカメラアイから、キリコに熱い視線が突き刺さる。



閃シリーズの私服ですが登場人物のみんなはどうやって管理してるんでしょうね?
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