というのも初日の夜と上手くリンクさせるにはこれしかないと判断した次第です。
リィンたち一行は南サザーラント街道に出た。
「さて……街道に出てきたな。野生の魔獣も徘徊しているみたいだな」
「この景色、少し憶えがあります。たしかセントアークとパルムを結ぶ街道だったはず」
「えっと、まずは北のセントアークを目指すとして……そもそもなんでこんな街外れに線路が通っているんですか?」
「ふふ、こちらはTMPで敷いている特別路線になります。本来の路線が使えない場合や様々な作戦行動で機能するものを演習用に提供させていただきました」
「なるほど、本来表に出ない裏の路線というわけですか」
(政府の息がかかっているのは間違いないな)
「そういえば私も以前、別の地での共同任務で利用しましたね」
アルティナの言葉にユウナとクルトはキョトンとする。
「共同任務って……TMPに同行を?」
「まさかクレア教官と……ってどんな任務なのよ!?」
「まぁ、色々と」
「ふう、アルティナちゃん……」
淡々と機密を口にするアルティナにクレアは額に手をおく。
(ミリアムといい、クレア少佐の苦労が窺えるな……)
「教官、行かなくていいんですか?」
「ふう、こっちは変わらずか……そうだな、このまま街道を北上する。魔獣に気をつけて進むぞ」
「了解しました」
キリコの進言で再びセントアークを目指す。
「わあ…!すっごくのどかで気持ちいいかも!」
ユウナは街道の光景に目を輝かせる。
「ああ、魔獣さえいなければピクニックにはもってこいだな」
「ふふ、そうですね…」
「はしゃぐのはいいが、油断するなよ」
「わ、わかってますよ!ていうかキリコ君も、気持ちいいとか思わないの?」
「魔獣がいるのにか?」
(キリコはどこまでも冷静だな……)
キリコの変わらぬ様子にリィンは苦笑いを浮かべる。すると、リィンの顔つきが変わる。
「みんな、どうやら魔獣に気づかれたらしいな」
「えっ!?」
リィンの指さす方には五体の魔獣が待ち構えていた。
「さっそく手荒い歓迎ですね」
「ついでに情報収集もできそうですね」
「うんうん!望むところよ!」
「邪魔するなら、迎え撃つだけだ」
「気合いは十分みたいだな。クレア少佐、お願いできますか」
「もちろんです」
Ⅶ組は武器を構え、魔獣との戦闘を開始した。
[キリコ side]
アインヘル小要塞にいた魔獣と違い、野生の魔獣は限度というものを知らない。
小要塞の魔獣は博士から何らかのコントロールを受けているのに対して、当然だが野生の魔獣にはそれがない。
戦闘をしている最中に、偶々通りかかった商人などに突然ターゲットを変えることもざらにある。
俺たちが相対しているポムというやつは体力を削るだけでなく、EPやCPをも吸収する性質をもっている。
だが俺や、それなりに場数を踏んだユウナやクルト、経験豊富なアルティナとリィン教官とリーヴェルト少佐の敵ではなかった。
「ハンタースロー」
先ほど習得した投擲ナイフによるクラフト技『ハンタースロー』をヒットさせ、戦術リンクを結んだユウナの止めでポム二体を撃破する。
隣のクルトとアルティナも同様にポムを二体倒す。
「こっちは終わった」
「こちらも終わりました」
「教官たちは……ッ!?ってなにあれ……」
「あれは……」
ユウナの指さす方を見ると、リィン教官とリーヴェルト少佐が一糸乱れぬ連携で増援のポム三体を撃破した瞬間だった。
「さすがですね」
「リィンさんこそ、お見事です」
戦闘が終わり、ノートにメモをとると、ユウナは真っ先にリーヴェルト少佐の元へと向かう。
「クレア教官!やっぱり超っ絶カッコ良かったですっ!」
「ふふ、ありがとうございます。短い間ですが、皆さんもオーダーなども遠慮なく頼ってくださいね」
「ええ、頼りにさせてもらいます」
(やはり相当の凄腕だな……)
俺はリーヴェルト少佐の銃の腕前と計算されたクラフト技に舌を巻いた。さすがにあれは俺にはできそうにない。
「よし、目的地はこの道の右手にある。少し遅くなったがセントアーク市に向かうぞ」
「了解しました」
俺たちはその後、何度か魔獣の襲撃にあいながらも、遂にセントアークの城門が見えるところまで来た。
「見えてきましたね。あれがセントアーク市の南門です」
「現在0650……予定通り到着できそうですね」
「待て、何か来る」
俺は咄嗟に銃を構えた。
「ッ!総員戦闘準備!大型魔獣が来るぞ!!」
俺たちの後ろから巨大なサイのような大型魔獣が狼型魔獣を引き連れてやって来た。
「強敵だ、気をつけろ!」
「ここは一気に倒しましょう」
リーヴェルト少佐は『パーフェクトオーダー』を発動させる。どうやら猛攻態勢に移行させるオーダーらしい。
大型魔獣との戦闘が始まった。
[キリコ side out]
キリコたちは狼型魔獣を殲滅させるが、大型魔獣の厚い外殻に手こずっていた。
「硬いな……」
「キリコ君のアーマーマグナムでも通らないなんて」
「僕の剣でも歯がたたない。アルティナはどうだ?」
「クラウ=ソラスをも弾くとは…なかなか厄介ですね……」
「では、ここは私が……」
クレア少佐はそう言って、前に出る。
「目標を制圧します。ミラーデバイス、セットオン!オーバルレーザー照射!ミッションコンプリート、どうか安らかに……」
クレア少佐のSクラフトは瞬く間に大型魔獣を撃破する。
「うわぁぁ……!」
「ユウナさん、目がハートになってます」
「だがすごいな…あれほどの繊細かつ複雑なクラフト技は見たことがない」
(一つ一つを計算してやっているのか……だがあれは普通の人間には不可能なはず……何かを持っているのか?」
ユウナたちが称賛する中、キリコはクレア少佐のSクラフト『カレイドフォース』の過程から彼女が異能か何かをもっているのではと推測する。
「?? キリコさん、どうしましたか?」
「いや、なんでもない。それより教官、ここが……」
「(……?)ああ、ここがセントアークだ」
午前 7:00
Ⅶ組はセントアーク市に到着した。
「うわぁ~……雰囲気のある街ねぇ。でも"白亜"という割にはくすんだ灰色の町並みだけど」
「ああ、かつて帝都に災厄があった時、時の皇帝がこちらに遷都された……その時には光輝く白い町並みだったらしいけどね」
「はは、詳しいな」
クルトの説明にリィンは感心する。
「帝国の五大都市の中では帝都と同じくらい歴史がある街ですね」
「いや、帝都は一度改築されているから一番歴史があるといっても過言じゃないな」
「はー、なるほど」
「……………」
(キリコは全く興味なさそうだな……)
クルトは平常運転のキリコに思わずため息をつく。
「ふふ……」
「クレア教官?」
「いえ、公務で寄るのも久しぶりなので」
「ハイアームズ候の城館は大聖堂を左手に抜けた北西区画、いわゆる貴族街の奥にあります。よかったらご案内しましょう」
「ええ、よろしくお願いします」
Ⅶ組はクレア少佐に案内され、ハイアームズ侯爵へ謁見する。
執務室に通されるとそこには年配の男性と執事らしき男が待っていた。
「いや、本当によく来てくれた。サザーラント州の統括を任されているフェルナン・ハイアームズだ」
「リィン君は久しぶりだな。パトリックが随分世話になったようだ」
ハイアームズ侯は柔和な笑みを浮かべ、リィンに話しかける。
「いえ、こちらこそ。御子息には、得難き友として色々と助けていただきました」
「はは、そう言ってくれると息子としても光栄だろう。セレスタンからの話だと色々と無礼を働いてしまったそうだが……」
「いえ、互いに若気の至りでしたから。むしろあの一件がなければ友になれることもなかったと思います」
「そう言ってもらえるとありがたい。今は海都にいるが……それも知っているのだったね?」
「ええ、ちょうど赴任先に行く時に同行していたので」
リィンは次に執事の方を向く。
「セレスタンさんも本当にお久しぶりです」
「ええ、リィン様」
執事の男、セレスタンは恭しくお辞儀をする。
「去年、パトリック様を残してセントアークに戻ってしまいましたが立派に成長されて卒業なさった様子。リィン様を初めとするご学友の方々には感謝してもしきれません」
「はは、大げさですよ」
リィンは右手を差し出し、Ⅶ組の生徒を紹介する。
「は、初めまして。ユウナ・クロフォードです」
「クルト・ヴァンダールです。……お初にお目にかかります」
「アルティナ・オライオン。よろしくお願いします」
「キリコ・キュービィーです。初めまして。」
「ふふ、君たちが新たな《Ⅶ組》というわけか。まさかヴァンダール家の御子息までいるとは思わなかった。お父上には前にお世話になったお目にかかれて嬉しいよ」
「過分なお言葉、恐縮です」
ハイアームズ侯はⅦ組との挨拶を済ませ、クレア少佐の方を向く。
「さて、リーヴェルト少佐。例の話だが……先にリィン君たちへの話を済ませても構わないかな?」
「ええ、勿論です。詳しい状況も知りたいので可能なら同席させて頂けると」
「ああ、構わないだろう」
ハイアームズ侯とクレア少佐のやり取りが終わったことを確認し、リィンは自分の胸に手を当て、
「──ハイアームズ侯爵閣下。トールズ士官学院・第Ⅱ分校、サザーラント州での演習を開始した事をご報告申し上げます」と宣言した。
「了解した。よき成果が得られることを願おう」
「──それと"要請"だが…… ──セレスタン」
セレスタンは は、と返事してリィンに青い封筒を渡す。
リィンは「拝見します」と断りを入れて確認する。
いくつかの要請の中に、重要調査案件と書かれた書類があった。
「重要調査案件……」
「な、謎の魔獣……?」
「閣下、これは……」
「ここ数日、サザーラント州で不審な魔獣の情報が寄せられてね。場所は、このセントアーク近郊、そして南西のパルムの周辺になる。──できれば君たちに魔獣の正体を掴んでもらいたい」
「正体、ですか」
「……重要案件というからにはただの魔獣ではない可能性が?」
「ああ……寄せられた情報によると……"金属の部品で出来たような魔獣"だったらしい」
ハイアームズ侯の言葉にリィン、アルティナ、クレア少佐が反応する。
(機械の魔獣………まさかアレか?)
キリコはハイアームズ侯の情報と三人の反応から予測する。
「勿論、見間違いの可能性もあります。ですが、歯車の回るような音を聞いたという情報もありまして」
「領邦軍にも調査させたがいまだ確認はできでいなくてね。……もっとも内戦以降、州内の兵士も大幅に減っている。正直な所、十分な調査ができていないという状況なんだ」
「…………………」
ハイアームズ侯は肩を竦め、クレア少佐は表情を暗くする。
「領邦軍の縮小ですか……」
(やはり相当な狸だな。ハイアームズ侯爵というのは)
「よく分からないけど……変な魔獣がうろついているから調べるって話ですよね?気味悪がってる人もいそうだし、放ってはおけませんね!」
「ああ……当然だ。──承知しました。他の要請と合わせて必ずや突き止めてみせます」
リィンの言葉にハイアームズ侯も微笑む。
「ありがたい……どうかよろしく頼むよ」
そしてⅦ組の方を向き、
「Ⅶ組特務科の諸君──サザーラント州での特務活動、どうか頑張ってくれたまえ」と激励する。
クレア少佐とはここで別れることになった。
「リィンさん、ユウナさん。アルティナちゃんにクルトさんにキリコさんも。どうか気をつけて──演習の成功をお祈りしています」
「は、はいっ!」
「ありがとうございます。……機会があれば、また」
クレア少佐と別れた後、Ⅶ組は今後のことで話し合う。
「……なんか思わせ振りな話が多かったですけど……」
「結局、その魔獣の調査と何をすればいいんですか?」
「他の案件というのもあるようですが?」
「ああ──改めて説明するか。4人とも、これを見てくれ」
リィンは先ほどの書類を見せる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
薬草の採取代行 [必須]
お祝いのご馳走 [任意]
迷い猫の捜索 [任意]
染料の原料調達 [任意]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「これは……」
「………………」
「……軍務とは無関係のただの手伝い、ですか?」
「特務とは名ばかりの雑用か……」
「ああ、市民からの要請や大聖堂からの要請みたいだな。"必須"と書かれたものはなるべくやった方がいいが……"任意"と書かれたものはやるもやらないも自由だ。ただし広域哨戒の観点からセントアークの街区は一通り回っておくべきだろう。──それから、こちらが先ほどの重要調査項目だな」
リィンはもう一枚の書類を見せる。そこにはハイアームズ侯からの情報の他に、目撃地点も記されていた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
目撃地点は以下の三箇所。
①セントアーク北西
②パルム東
③パルム南
──以上三箇所の調査をお願いする。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「この①の魔獣の調査も含めてやるべき"要請"をクリアしたら‘南にあるパルムへ移動し……そこでの要請も検討しつつ、②と③の魔獣調査を遂行する。──一日目の特務活動はこんな流れになりそうだな」
リィンのプランに全員が呆れる。
「さ、さすがにハードすぎるような……」
「……強行軍ですね。どこまでやり切る必要が?」
「そうだな、任意の要請については君たち4人の判断に任せよう。俺はあくまで教官として見守らせてもらうだけにするから話し合って決めるといい」
「……なるほど。そういう方針ですか」
「まずは市内からか……」
「そもそも必須でないなら対処する必要もないのでは?」
「い、いやいや!困っている人がいるならそうも行かないでしょ」
ユウナはそう言って、三人の方を向く。
「まだ8時前だし、時間の余裕はあると思う。可能な限り全部、やってみるべきじゃないの?」
「異存はないが、時間以外に体力的な問題もあるだろう。全部が全部、やり切れると思わない方がいいじゃないか?」
「……わたしはどちらでも皆さんの判断に委ねます」
「って、ダメだってば!」
「君も意見くらいはちゃんと出すべきだろう」
「………落第したいならそうしろ」
「…………」
「キリコ君……」
「……………」
リィンは初めての実習の出来事を思い出した。
「まあ、その調子で4人で考えておいてくれ。──それではⅦ組特務科、最初の特務活動を開始する。演習地に残った他のクラスにいい報告ができるといいな?」
「っ……言われなくても!」
「無論、最善は尽くします」
「当然だ」
「行動開始、ですね」
「では、どういうルートで回りますか?」
「大聖堂からの依頼は大司教様に直接聞きに行けばいいとして……"謎の魔獣"についてはまだわからないことも多いよね」
「まずは情報収集か……」
「セントアーク南の住宅街には宿酒場があったと思うし……聖堂広場にある老舗百貨店なんかも人が多いから候補に入れてよさそうだ」
「あ、そういえばクルト君ってこっちの出身なんだっけ」
「案内は任せていいんですね」
「まあ、異存はないけど。……そんな感じでいいですか?」
「ああ、いいと思うぞ。さっそく出発しよう」
[クルト side] [お祝いのご馳走]
まず僕たちは貴族街の邸宅にお邪魔した。
ここのメイドのイジーさんからの依頼で、レッドパーチというありふれた魚を釣って来ることになった。
さっそく街道に出て水場を発見すると、運悪く魔獣がいた。
近くで戦闘になれば爆音で魚が逃げてしまう恐れがある。
そこで釣りは教官に任せて僕たちが魔獣を引き付けて撃破する作戦を実行することになった。
結論からいえば作戦は成功した。
僕たちが戦闘から戻ると、教官がちょうどレッドパーチを釣り上げた時だった。
これはなかなか大きいサイズだな。
邸宅に戻りイジーさんにレッドパーチを渡した。
「わわっ、すごい!ホントに取れたてじゃないですか~!ありがとうございます!これでパーティーも大成功間違いなしですねっ!」
喜んだイジーさんはさっそくレッドパーチを料理する。
ただどうやらイジーさんはあまり料理が得意ではないらしい。
教官も思わず「前途多難みたいだな……」と言わしめたほどだ。
僕はただ、レッドパーチが無事に調理されることを祈ることしかできない。
[お祝いのご馳走] 達成
[クルト side out]
[アルティナ side] [迷い猫の捜索]
これは本当にやるべきことなんでしょうか……
わたしたちは住宅街にある宿酒場エイプリル二階で待っていたイヴァンさんとお孫さんのキミィさんでした。
要請内容は逃げ出した仔猫のフェリクスの捜索。
正直、やらなくてよいことですが、ユウナさんとクルトさん、そしてキリコさんまでもがこの要請を受けることを承諾。
こうなっては仕方がないので状況を聞くことに。
なんでも昨日の夜、下で食事中に酔っぱらいが足をふらつかせて仔猫の入ったケージをひっくり返してしまい、驚いた仔猫は宿の外に飛び出してしまったとのこと。
ここセントアークはかなり大きいので手がかりなしに探すのは時間の無駄です。
教官が昨日お二人が行った場所に心当たりがないか聞いてみると、キミィさんが「キレイな広場」イヴァンさんが「侯爵様のお屋敷の近くの広場」と口にしたので貴族街へ行くことになりました。
見つかることには確約出来ませんが、教官が「そこは気持ちだろう」と言いましたがよく分かりません。
貴族街を歩いていた貴族の方に聞いてみると仔猫は空港方面に向かったそうです。
空港前に着くと、さっそく捜索を開始しましたが見つかりません。もし空港の敷地内に入ったとしたら捜索は難航するでしょう。
「なに、ネコ探してるの?」
振り返るとそこには赤い髪の女性が立っていました。
年齢はおそらく教官とほとんど変わらないと思います。
それにあの赤い髪、どこかで見たような気がします。
女性はなんと探してる仔猫と遊んでいたらしく、南西の住宅街に行ったことを教えてくれました。
非効率的ですがユウナさんの言うとおり虱潰しに探すしかないようです。
そんな時、女性からアドバイスをもらいました。
迷ったとしたら人の少ない所を探すと良いと。
わたしたちはそのアドバイスを参考に住宅街へ向かうことに。
ただ、気になるのは教官とキリコさんです。
お二人はなんでもないと言いましたが、何か感じ取ったようです。
再び住宅街に戻り、人の少ない場所を探していると、閉まったお店の敷地内の木箱の裏側に仔猫が隠れてました。
ユウナさんがさっそく誘き寄せようとしますが効果はありません。
そこでさっきの宿酒場から依頼人を呼ぶことにしました。
依頼人のキミィさんが門に近づくと仔猫は走り寄って来ました。
これで要請は達成されました。
[迷い猫の捜索] 達成
[アルティナ side out]
[ユウナ side] [薬草の採取代行]
セントアークの任意の依頼を終えたあたしたちは必須の依頼を受ける前に情報収集をすることになったの。
宿酒場エイプリルで会ったのは教官と同級生で帝国時報の記者のヴィヴィさん。
ヴィヴィさんによると、謎の魔獣については知らないけど、なんか妙な連中がうろついているんだって。
しかも謎の魔獣が出た時期と一致してるとか。
聖堂広場の百貨店のケストナーさんによると、謎の魔獣についてはよく知っているらしくて、取引のある商人さんによると北東の街道で見たらしいの。
これらの情報から北サザーラント街道が怪しいことがわかったんだけど、まずは大司教様の依頼を優先することになったの。
依頼人の大司教様によると、エリンの花を摘んで来てほしいんだって。
なんでもサザーラント州でも特別な場所にしか生えていないラベンダーの一種で、沈静・安眠などの高い効果があるらしいの。
ただ、採取地付近の魔獣が凶暴化しちゃって近づくこともできないから侯爵さんに依頼を出したそうなの。
あたしたちはエリンの花が咲いているイストミア大森林に向かうことに。
大森林というだけあって、木が生い茂って別世界みたい。
クルト君が何かが出るって言うけどあたしはそんなの信じないんだからね!
大森林の入り口付近でトビネコと戦闘したんだけど、なんかヘン。
「い、今の魔獣……ちょっと不思議じゃなかった?」
「……ああ………トビネコの一種らしいが何か勝手が違っていたような」
(急所に当たったわけではないのに即死……たしかに変だな)
「教官、もしかして……」
「ああ、間違いない。どうやらこの森には上位属性が働いているらしいな」
教官とアルティナは知ってるみたい。
上位属性って言うのは、基本の地、水、火、風の四つの他に時、空、幻のこと。
そして上位属性が働いている場所では霊的な力をまとった魔獣が出たり、予想もつかないことが起きるんだって。
さっきキリコ君が放った弾丸はかすったけど、相手を即死させたのも偶然じゃないことがわかったの。
とにかく注意して進まないと。
その後、あたしたちは迷いそうになりながらもなんとか一番奥にたどり着けた。
そこには綺麗なラベンダーが沢山咲いていた。それにしても本当にいい香り……
その時ガサガサと蜘蛛の群れがやって来て囲まれたんだけど、教官もキリコ君も問題なさそう。
そのまま各個撃破で撃退した。
やっぱり……強いな……。
その後、皆で手分けしてエリンの花を採取。
「うん、こんなところね……!」
「一応、規定量は確保できたみたいです」
「──これで目標達成だ。あまり待たせても悪いし、セントアークに戻るとしよう」
「っ………!?」
これでやっと帰れるって思ったら教官が突然膝をついたの。
しかもなんか誰かいたかって聞いてくるし。
べ、別に怖いとかじゃないんだからね!
あたしたちはまっすぐセントアークの大聖堂に帰った。
そしたら、綺麗な音色が聞こえてきたの。演奏会でもやっているのかな?
大聖堂に入ると、そこには栗色の髪の男の人がバイオリンを弾いていたんだけど、教官はあの人のことを知ってるみたい。
「聞いたことがある、帝都でデビューしたばかりの天才演奏家がいるって。察するに教官のお知り合いですか?」
「ああ……」
「エリオット・クレイグ。トールズ旧Ⅶ組に所属していた君たちの先輩にあたる人物さ」
なんと、あたしたちの先輩でした!
あたしたちは他の人が帰った後、エリオットさんとお話することになったの。
「──初めまして。新しいⅦ組のみんな。前のⅦ組に所属していたエリオット・クレイグだよ、よろしくね」
「……お噂はかねがね。Ⅶ組出身とは知りませんでしたが」
「よろしくお願いします……!演奏、とっても素敵でした!」
「あはは、ありがとう。君たちのことは先週、リィンから聞いたばかりでね。アルティナ……ちゃんだっけ。うーん、ずいぶん雰囲気が違うねぇ?」
エリオットさんはホントに人当たりのいい人だった。
「まあ、以前お会いした時は敵同士でもありましたし。隠密活動に特化したスーツを着ていましたから」
「君は………」
だ、だから一体、何やってたのよ~!?
「あはは、相変わらずだねぇ。それより、君がキリコ?」
エリオットさんはなぜかキリコ君を知ってるみたい。
「ああ、俺がそうだが」
「ちょっと知り合いに聞いていたんだ」
「?」
キリコ君とエリオットさん……結び付かないけど……
「すみません、エリオットさん。子どもたちがそろそろ」
「あっ……はい。すぐに」
エリオットさんはこれからセントアークの子どもたちに演奏のコツを教えるんだって。頑張ってください!
最後に大司教様にエリンの花を届けて依頼達成!
[薬草採取の代行] 達成
[ユウナ side out]
必須の要請を終えた新Ⅶ組は、大聖堂を出た。
「それにしても、あんな優しげな人がⅦ組の先輩だったなんて」
「内戦時にもお目にかかりましたが正直、士官学生には見えませんでした」
「はは……強いぞ、エリオットは。"音楽の力"を信じて──俺たちと一緒に、数々の修羅場を潜り抜けてきた仲間の一人だ」
「……仲間……」
「そ、そうなんですか……」
(音楽の力……か……)
「……一つ、合点がいきました」
クルトは何かに気付いた。
「あの髪の色、そして"クレイグ"という名前──ひょっとして彼はあの《第四機甲師団》の……?」
「やれやれ、鋭いな」
(第四?俺にあの第四機甲師団の知り合いはいないが……)
「えっと、それよりこれからどうしよっか?」
必須を含め、セントアーク市内の要請は全て達成している。
話し合いの結果、北サザーラント街道へ向かうことになった。
「……情報通りなら謎の魔獣の目撃地点はこの先だな」
「金属で出来たような魔獣──そんな話でしたか」
「歯車の音とかしてたらしいし、相当珍しいタイプなんじゃない?とにかく気を引き締めていかないと!」
「……リィン教官」
「ああ……可能性は高いだろう。クレア少佐からの連絡はまだだが、用心しておいた方がよさそうだ」
「了解しました」
「……何の話ですか?」
「なんだかひそひそとイカガワシイんですけど」
「………………」
「いや、ただのもしもの話さ。………そろそろ出発しよう」
Ⅶ組は地図を頼りに目撃地点へと向かう。
途中、正規軍のドレックノール要塞を目にしたが、今回の演習範囲外なので一行は要塞と逆方向へ進む。
「えっと……このあたりが報告書にあった場所かな?」
「北サザーラント街道の外れ、旧都から50セルジュの地点……距離的には問題なさそうだ」
「……………」
「魔獣の気配はなさそうだが……」
「で、何なんです?さっきから二人して」
「どうやら謎の魔獣について心当たりがありそうですが?」
ユウナとクルトは先ほどからの二人の態度が気になって仕方がない。
その時──歯車の音が聞こえる。
「……!?」
「こ、これって……」
「お出ましか……!」
「的中ですか……」
「ああ──Ⅶ組総員、戦闘準備!」
すると、奥から見慣れない物体が現れた。
「機械の魔獣……!?」
「ち、違う……!もしかしてクロスベルにも持ち込まれたっていう……!?」
「ああ──結社《身喰らう蛇》が秘密裏に開発している自律兵器……"人形兵器"の一種だ……!」
「人形兵器……」
「『ファランクスJ9』──中量級の量産攻撃機ですね」
「ぐっ……こんなものがあるとは……」
「落ち着け」
「キリコ君……!?」
「ただの人形だ。気配は読みづらいが動きは単純のはず……ですよね、教官?」
「ああ、総員、戦闘開始!」
ファランクスJ9は両腕のガトリング砲で広範囲の攻撃を仕掛けるが、キリコの言うとおり動きそのものは単純だった。
最初こそ面食らったユウナとクルトだったがなんとか倒すことができた。
「っ……はあはあ……」
「くっ……兄上から話を聞いたことはあったが……」
「戦闘終了。残機は見当たりません」
「不意を突かれたが凌いだな」
「みんな、お疲れ様」
「って、それよりも!」
ユウナがさっそくかみつく。
「どうして《結社》の兵器がここにいるんですか!?」
「帝国の内戦でも暗躍したという謎の犯罪結社……まさかこの地で再び動き始めているということですか?」
「可能性はある──だが、断言はできない」
「横流しか……」
「ああ、開発・量産した人形兵器を闇のマーケットに流しているとも噂されているからな」
「以前の内戦で放たれたものが今も稼働している報告もあります。現時点での判断は難しいかと」
「……なるほど」
「はぁ、だからクレア教官もシリアスな顔をしてたわけね……」
リィンたちの推測に納得する二人。だがユウナには気になることがあった。
「キリコ君ってもしかしてあれと戦ったことがあるの?」
「内戦でな。もっとも分校長やウォレス准将は一機も使わなかったがな」
「まあ、あの二人なら納得だな」
リィンは改めてキリコの経験値に舌を巻く。
「──へえ、大したモンだな」
リィンたちの後ろから声がして、振り返ると中年の男が歩いてきた。
「おーおー、あの化物どもが完全にバラバラじゃねえか。お前さんたちがやったのかい?」
「えっと、そうですけど……」
「手こずりましたが、何とか」
中年の男は腕を組み、ユウナたちを見回す。傷だらけの腕だった。キリコは思わず警戒した
「お前さんたち、ひょっとしてトールズとかいう地方演習に来た学生さんたちかい?」
「知ってるんですか!?」
「どこかで情報を?」
「ああ、仕事柄そういう情報は仕入れるようにしててなぁ。しかし大したモンだ。随分、優秀な学校みたいだな?」
(この気配……仕事柄……まさかこいつ……)
「ま、まあ、それほどでも」
「まだまだ修行不足です」
「トールズ士官学院・第Ⅱ分校、Ⅶ組特務科です。自分は教官で、この子たちは所属する生徒たちとなります。あなたは……?」
リィンは自己紹介をして、中年の男を探ろうとする。
「ああ、俺はなんていうか"狩人"みたいなもんだ。さすがに魔獣は専門外だが手配されて、倒せそうだったら仲間を集めて退治することもある。この魔獣どもも、噂を聞いて調べに来たんだが、まさか機械仕掛けとはなぁ」
「確か《人形兵器》ってヤツだろう?」
「ご存知でしたか……」
「どこでその情報を?」
「いや、前の内戦の時に妙な連中が放ったそうじゃねえか。俺の仲間うちじゃずいぶんと噂になってたぜ?」
(仲間うち……やはりか……?)
「やっぱりそうなんだ……」
「……以前から各地で徘徊していたという事か……」
「ま、この辺りにはもういないみたいだし、他を当たって見るかね……って、ひょっとしたらお前さんたちも捜してるのか?」
「ええ……演習の一環としてですが。人形兵器に限らず、何かあったら演習地に連絡をいただければ。各種情報に、戦力の提供──お手伝いできるかもしれません」
「ハハッ、そいつはご丁寧に」
中年の男は笑いながら、断った。
「じゃあな──俺はもう行くぜ。お前さんたちも頑張れよ」
「あ、はいっ!」
「そちらもお気をつけて」
中年の男は去って行った。
「ふふっ……面白いオジサンだったね。大きいのに飄々としてたからあんまり強そうじゃなかったけど」
(やはり気づいていないか……)
「……少なくとも武術の使い手じゃなさそうだ。"狩人"と言っていたけど罠の使い手なのかもしれない」
「罠ですか」
「……………………」
(教官)
(気づいたか)
(あの男……ただ者じゃない)
(ああ)
「……念のため、近くに残存がいないか確認しよう。周囲1セルジュでいい」
(妥当だな)
「……?まあ、別にいいですけど」
「索敵を開始します」
「オイ」
ユウナたちが辺りを探っていると、キリコから来るように呼ばれた。
「どうしたの?」
「何かあったのか?」
「見てみろ」
「?」
ユウナはキリコの指さす方を見た。
「えっ……!?」
「ユウナさん?」
「いったいどうした──」
「「!!」」
クルトとアルティナは言葉を失った。
そこに人形兵器の残骸が積み重なっていた。
「さ、さっきの人形兵器……?」
「ああ……なんて数だ。僕たちの三倍はある」
「……まだ微かに煙を発していますね」
「─やっぱりな」
「や、やっぱりって……あのオジサン、何者なんですか!?」
「まさか結社の……いや──」
「結社の人間なら人形兵器を破壊するのは不自然かもしれません」
「あの男……おそらく猟兵(イェーガー)だ」
キリコの言葉にユウナたちは驚きを隠せなかった。
「り、猟兵って……あのオジサンが!?」
「たしかに武術家とは異質の気配を感じたが……」
「いずれにせよ、あの口ぶりだとパルム方面で遭遇する可能性もあるかもしれない」
「そうか、そっちは目撃情報が2件もあるんでしたっけ……」
「……そちらも人形兵器である可能性は高そうですね」
「要請も一通り達成したし、セントアーク周辺での特務活動はそれなりの成果を上げたはずだ。頃合いをみてパルムに向かおう」
「……了解しました」
リィンたちはセントアークに戻ることにした。
セントアークに戻ったⅦ組はパルムへ向かうルートを話し合っていた。
「パルムへは徒歩だと時間がかかるし、列車を使ったほうがよさそうだ」
「セントアーク周辺での必須要請は一応、クリアしたことになりますね」
「うんうん、心置きなく出発できそうね」
「準備ができ次第、駅に向かうぞ──」
「教官、あれを」
キリコは駅の方を指さす。どうやら人がつめかけているように見える。
「何だ?」
「何かあったのかな?」
「とにかく行ってみましょう」
リィンたちはセントアーク駅前へと向かった。すると駅前にヴィヴィがいた。
「あっ、リィン君たち。調査ってのは終わったの?」
「ああ、セントアーク周辺ではね。──それより、何かあったのか?」
「うん、それが……どうもパルム方面で列車の脱線事故があったみたい」
「脱線事故……!?」
「だ、大丈夫なんですか、それ?」
(タイミングが良すぎるな)
「うーん、あたしも今来たばかりで状況がよくわかんなくって。とりあえず復旧するまではパルム行きが運休になるみたいよ」
「そうなのか……」
「っと、こうしちゃ居られない。何とかネタを集めないと。それじゃ、またね!」
ヴィヴィと別れた。
「まさか脱線事故とはな……せめて怪我人が出ていなければいいんだが」
「ちょっと心配ですね」
「…………………」
黙っていたキリコが顔を上げる。
「教官、さっきの男との関係は?」
「俺もそう思った。だが仮に人為的なものだとしたら強引過ぎる。俺たちだけが狙いならわざわざ列車を巻き込む必要はないはずだが……」
「でも……猟兵ってそういう人たちなんじゃないんですか?お金と戦いしか興味ないって聞きましたけど」
「民間人を平気で巻き込むそうですが」
「たしかにそういったタイプが猟兵の一般的なイメージだろうな。でもなかにはそうじゃないタイプもいるのを忘れるな」
「彼女のことですね」
「???」
「とにかく、列車は今日中には復旧しない以上、徒歩で向かう必要がありそうだ。パルムには要請が一つ出ていたはずだしな」
「……非効率ですが他に選択肢もなさそうですね」
「──Ⅶ組の皆様、お困りのようですね?」
振り返るとセレスタンがやって来た。
「セレスタンさん。どうしてここに?」
「フフ、侯爵閣下の命により参上いたしました。市内での活動はどうやらお済みの様子。すでに手配は済んでおりますのでご足労ですが南口までお越しください」
南口に出ると、馬が三頭並んでいた。
セレスタンによると、ハイアームズ侯が脱線事故の報告を聞いてⅦ組に回したものとのこと。
「はぁ~、馬って初めて近くで見るけど、こんなに立派なんだ。でも知らない人がいきなり乗っても大丈夫かな?」
「よく躾られているみたいだし、暴れたりはしないと思う」
そう言ってクルトは馬に近づく。
「……うん。どれもいい馬だな」
「三頭の内、一頭は俺に任せてもらうとして、もう二頭はクルトとキリコ、頼めるか?」
「ええ、任せてください」
「……かなり久しぶりだな」
「キリコさんは馬に乗ったことがあるんですか?」
「内戦前は山奥の村に住んでいたからな。馬か導力車が主な交通手段だった」
「なるほど、なら大丈夫だな」
「あっ、ズルい!あたしだって乗りたかったのに!」
「いや、初心者がいきなりはさすがに危ないだろう。今回は手本を見せるから君は後ろに乗るといい」
「えっ、クルト君の後ろに?」
クルトの提案にユウナは頬を染める。
「えっと、それはちょっぴり抵抗があるっていうか……」
「? まあ僕はどちらでもいいんだけど」
「では、ユウナさんは教官かキリコさんの後ろになりますね」
「や、やっぱりクルト君の後ろで!」
アルティナの提案にユウナはクルトの後ろに乗ることになった。
「ハイハイ、アルティナもさっさと乗った乗った!」
「? はぁ。ではキリコさんお願いします」
「いや、教官の後ろに乗るべきだ」
「なぜですか?」
「さっきも言ったが、俺は馬などかなり久しぶりだからだ。一人でいい。それにけがを負わせるわけにはいかない」
「わかりました。では教官、お願いします」
「ああ、わかった。(やはり周りをきちんと見ているんだな)」
5人は馬に乗り込む。
「っと……どうどう」
「……やはりいい馬ですね」
「へえ、結構いい眺めかも!」
ユウナは初めて見る馬上の景色に興奮を覚える。
「……………」
「へえ、キリコも乗りこなせているじゃないか」
「お見事です。それにしてもこれなら昼過ぎくらいにパルムに到着できそうですね」
「ああ──だがその前に一度、演習地に寄った方がいいかもな。特に活動の途中経過も含めて報告しておきたいこともある」
「……わかりました」
「フフ、それでは皆様、どうかお気をつけて。また何かありましたらいつでもご連絡ください」
「ええ、ありがとうございました!」
Ⅶ組一行は馬に乗り、演習へと向かった。
最後の依頼はキリコ目線で書きます。
ハンタースロー
CP15
研ぎ澄まされた投げナイフを投擲するクラフト技