英雄伝説 異能の軌跡   作:ボルトメン

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幕開け

[キリコ side]

 

そこには俺が見慣れた光景が広がっていた。

 

燕尾服を着た白髪の男が壁にもたれ掛かり、メイドと思わしき数人の女が床に倒れていた。

 

軍服らしきものを纏った男たちが俺を守るように盾のようになっていた。天井の梁に押し潰されている者もいた。

 

皆死んでいた。

 

この時俺は、ある懐かしさを感じていた。

 

むせかえるような血と硝煙と死臭。忌まわしくも懐かしいあの匂い。戦場の匂いだ。

 

どうやら俺は、また地獄に迷い込んだらしい。

 

(生まれ変わっても、俺には地獄(ここ)が一番似合っているというわけか)

 

そのとき、何者がドアを蹴破って来た。

 

俺を守るように死んでいた彼らとは違う軍服を着た男たちが入って来た。

 

その内一人の壮年の隊長らしき男が俺を見つけた。

 

「誰か来てくれ。赤ん坊がいるんだ」

 

「はい、ハッシュ大尉殿。こ、これは…」

 

「きっと、この子を庇ったんだろう。残念だが生存者はこの子だけだ。っと、ライル・フラット少尉、悪いが少しこの子を頼む。少将に報告してくる」

 

「こ、この子を!? じ、自分がでありますか!? 」

 

「何だ、初めてか?」

 

「は、はい」

 

「なら、やってみろ。何事も実践だ」

 

「そ、そうは言ってもですね…」

 

「ゴチャゴチャ言うな。赤ん坊一人あやせないようで誇り高き帝国軍人といえるか?」

 

「り、了解であります」

 

壮年の男は、無茶苦茶な理屈をこねて少尉と呼ばれた若い男に俺を預けてその場を離れた。

 

少尉も釈然としないながらも上官の命令には逆らえないようで、苦笑しながら俺に「悪い人じゃないんだけどなぁ」と話しかけながら大尉の後をついていった。

 

後、何故か腹が立ったので少尉の横っ面をはたいてやった。

 

[キリコ side out]

 

 

[ライル side]

 

俺はエレボニア帝国軍第九機甲師団に所属しているライル・フラット少尉だ。

 

生まれも育ちも帝都ヘイムダルという正真正銘の平民だ。

 

このエレボニア帝国って国は貴族制があって帝国民は平民か貴族かに分かれている。

 

《四大名門》と呼ばれる四人の大貴族を筆頭に俺たち平民には覆しようもない権力を持った貴族たち。

 

事実、俺が今年の春に卒業した《トールズ士官学校》でも貴族のお坊ちゃん、お嬢さんが身分と家柄を鼻にかけて幅を利かせていた。

 

卒業後の配属先は幸か不幸か、あの第九機甲師団だった。

 

悪名高いとかそういうことじゃなく、平民貴族問わずほぼ体育会系で構成されているのがこの師団の特徴で脳筋部隊なんて言われている。

 

おかげで学生時代写真部だった俺は毎日の地獄の訓練と先輩の無茶ぶりに振り回されっぱなしだ。

 

何度心が乾いたことか。果たして慣れる日がくるんだろうか。

 

さて、今回は俺の初仕事だ。

 

最も実戦ではなく人命救助なのだが。いつものように行軍訓練をこなしていると上官のハッシュ大尉が訓練中止を叫んでいる。

 

ただ事ではない様子で整列すると、大尉が声高に、

 

「先ほど、この近くの集落が猟兵団の襲撃にあったという通報がはいった。我々はこれより現場へ急行し、人命の救助ならびに猟兵どもの排除を行う!総員直ちに現場へ向かえ!」

 

と命令した。

 

『イエス・コマンダー!!』

 

俺は同僚たちと共に襲撃現場へと急行した。

 

 

 

襲撃現場へ到着すると、そこには猟兵の姿はなく、住民の死体しかなかった。

 

一足遅かったようだ。

 

初めて見る現場の状況に思わず吐き気を催すとハッシュ大尉にぶん殴られた。

 

「下を向くな! 貴様も軍人なら前を向け!目を背けるな!我らの両肩には帝国の平和がかかっていることを忘れるな!」

 

「イ、イエス・サー…」

 

フラフラになりながら立ち上がる。そして前を向く。

 

二度とこんな光景は見たくないと思った。そのために俺はもっと強くなることを誓った。

 

俺、ライル・フラットが本当の意味で軍人になった瞬間だった。

 

 

 

焼け跡をさらっていると、ハッシュ大尉が呼んでいた。

 

行ってみるとそこには大尉と青い髪の赤ん坊がいた。

 

印象に残るような珍しい髪の色だと思った。

 

大尉によると赤ん坊の眠っていたベビーベッドを避けるように天井の梁が落ちていたそうだ。

 

その周りには赤ん坊を護るように軍服を着た者がいることからこの赤ん坊は貴族なのだろう。

 

唯一の生存者である赤ん坊をあやすように言われたのだが、いきなり横っ面をはたかれた。地味に落ち込んだ。

 

これが俺と赤ん坊、キリコ・キュービィーとの最初の出会いであり、長い付き合いになるとは俺でさえ思わなかった。

 

とりあえずこの子をどこか安全な場所に連れて行かねばならない。

 

(やはりあそこしかないな)

 

俺はハッシュ大尉に相談することにした。

 

[ライル side out]

 

 

 

[???? side]

 

「フゥー、勝手なことしないように言い聞かせたのになぁ」

 

「やっぱり、既存の猟兵団じゃなく僕の手持ちの猟兵団を作ってみようかな。うん、それがいい。まず名前を決めないと」

 

「僕の異名は《道化師》なんだけど…道化師…ジェスター…」

 

「うん、決めた。《ジェスター猟兵団》にしよう」

 

「あの子、偶然助かったみたいだし、正直奇跡だけど…本当に偶然なのかな?」

 

[???? side out]

 

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