英雄伝説 異能の軌跡   作:ボルトメン

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取引③

リィンたちはライル大尉に案内され、ドレックノール要塞に足を踏み入れた。

 

「ここが………」

 

「ドレックノール要塞………!」

 

「ガレリア要塞と同じくらい?」

 

「うーん、それ以上じゃないかなぁ」

 

「はは、我々も配属時にそう思いましたよ」

 

ライル大尉は入り口でリィンたちの許可証を受けとる。

 

「それにしても、キリコが学校に通っているとは思いもしませんでした。しかもあの灰色の騎士殿の教え子とは……」

 

「ライル殿はキリコの上官だったのか?」

 

「うーん、上官というわけではないですね。元々第九機甲師団の協力者でしたから」

 

「協力者?」

 

「おや?ご存知ないんですか?」

 

「ええ、恥ずかしながら。俺も詳しくは知りません」

 

「話しても構いませんが……辛い話になるかも知れませんよ?」

 

「いえ、大丈夫です。いつかキリコ自身が話してくれるまで待ちます」

 

「そうですか……。それもそうですね」

 

ライル大尉はそれ以上は問わなかった。

 

 

 

「そう言えば、どうして大尉たちは第四機甲師団にいるの?」

 

「………………」

 

「第九機甲師団は、わたしたちが帝都に突入する前に敗れたって聞いたことがある」

 

「フィー、さすがにそれは……」

 

「いえ……構いません。我々がここに居られるのは、クレイグ将軍閣下のおかげですから」

 

「父さんの?」

 

エリオットが父の名を聞いたと同時に、

 

「フラット大尉殿、ご苦労様であります!」

 

若い軍人がライル大尉に挨拶した。

 

「ん?おお、アラン准尉。ご苦労」

 

「え?」

 

「アラン?」

 

「元フェンシング部の?」

 

「ん?おお!Ⅶ組じゃないか!久しぶりだな、お前ら!」

 

「やっぱり、アランか!」

 

「久しぶりだな」

 

「元気そうだね」

 

リィンとアラン准尉が盛り上がる中、置いてきぼりを食らったライル大尉はアラン少尉に話しかける。

 

「え~っと……アラン准尉?知り合いか?」

 

「あっ!し、失礼しました!フラット大尉!」

 

「いや、別にいいんだが。そう言えば准尉はトールズ出身だったな。なら当然か」

 

「すみません、フラット大尉」

 

「いえいえ、構いませんよ。そうだ、准尉。俺は訓練の様子を見に行かなければならん。准尉は皆さんを閣下の元へとご案内してくれ」

 

「ハッ、了解であります」

 

アラン准尉はライル大尉に敬礼した。

 

「申し訳ありませんが自分はここで失礼します」

 

「いえ、わざわざありがとうございました」

 

 

 

「それにしてもみんな変わらないな」

 

アラン准尉はリィンたちに話しかける。さながら学生時代に戻ったかのようだ。

 

「アランこそ、第四機甲師団に配属されていたとはな」

 

「大変ではないか?」

 

「ああ、毎日しごかれてくたくただよ。でもあいつを守るためなら、これくらい乗り越えてみせるさ!」

 

「あいつ?だれ?」

 

「そう言えばアラン、ブリジットと婚約したんだってね」

 

「そうなのか!?」

 

「ほお~」

 

「おめでと」

 

「あはは、ありがとな」

 

アラン准尉は恥ずかしさをごまかすように頭をかく。

 

「それで、将軍閣下にお会いしたいんだな?」

 

「ああ、人形兵器の事は聞いているか?」

 

「ああ………それなりに」

 

「アラン?」

 

奥歯に挟まったような言い方にリィンたちはいぶかしむ。

 

「すまない。これ以上は俺の口から言えないんだ」

 

「いや、大丈夫だ。っと、あの人は……」

 

「ああ、リィンたちもよく知ってる人だ」

 

目線の先には、金髪の軍人が立っていた。

 

「よく来たな、トールズのⅦ組。エリオット坊っちゃんもようこそ」

 

「あはは、坊っちゃんはやめてくださいよ」

 

「お久しぶりです。ナイトハルト少佐。いえ、今は中佐でしたか」

 

「久しぶりだな、シュバルツァー。アルゼイドにクラウゼルも立派になったものだ」

 

金髪の軍人──ナイトハルト中佐はリィンたちを見回した後、アラン准尉に下がるよう指示した。

 

「閣下が中でお待ちだ。ついてきたまえ」

 

リィンたちはナイトハルト中佐について行った。

 

 

 

執務室に通されたリィンたちは手を後ろで組み、後ろを向いている赤毛の軍人の前で整列する。

 

「閣下、お連れしました」

 

「うむ、ご苦労」

 

赤毛の軍人はリィンたちの方を向く。

 

「よくぞ来たな、トールズのⅦ組」

 

「お久しぶりです。クレイグ将軍閣下」

 

「ご無沙汰してます」

 

「ども」

 

「うむ、変わりないようでなによりだ。そして──」

 

クレイグ将軍はエリオットの方を向き……

 

「よお~~~く来たなぁ~~!エェ~~リオットォォ~~!」

 

先ほどとはうってかわって柔和な笑みを浮かべ、エリオットを抱き締めようとした。

 

「はい、それはいいから」

 

しかし、エリオットは父のハグをさらりとかわし、背中を手でポンと叩いた。

 

「やっぱりエリオットのお父さんだ」

 

「相変わらずのご様子だな」

 

「…………………」

 

フィーとラウラが見慣れたやり取りの感想を言う横で、ナイトハルト中佐は頭痛のする額を押さえていた。

 

「うぅむ……。エリオットも大分逞しくなったな。父さんは嬉しいぞ」

 

息子の成長を感じたクレイグ将軍は再びエリオットを抱き締める。

 

「わわっ!?」

 

(フィオナさんもそうだが、エリオットは愛されているな)

 

「ゴホン……閣下、その辺りで」

 

ようやくナイトハルト中佐が止めにかかる。

 

「う、うむ。改めてよく来てくれた。だが、諸君らが望む答えは出せそうにないがな」

 

「え?」

 

「それはどういう?」

 

「息子の同窓である事は百も承知だ。だがそなたたちははっきり言って招かれざる客なのだ」

 

椅子に座り直し、リィンたちにハッキリと告げる。

 

「人形兵器がサザーラント州のあちこちで出没していることは既に情報収集で掴んでいる。昨夜、第二分校の演習地が襲撃され、生徒一人が重傷を負った事もな」

 

「だがそれでも動くわけにはいかんのだ」

 

「父さん!」

 

「なぜですか?サザーラントが火の海になるかも知れぬというのに」

 

「なんか理由でもあるの?」

 

「「………………」」

 

エリオットたちが必死に問いかけても、将軍たちは口を開こうとしなかった。

 

「……なるほど、そういうことでしたか」

 

「リィン?」

 

「正規軍は……いや、政府は待っているんですね」

 

「貴族派が今度こそ音を上げるのを」

 

「「……………」」

 

「リィン………」

 

「それは……」

 

「ビンゴ………だね」

 

「うむ、その通りだ」

 

遂にクレイグ将軍が重い口を開く。

 

「内戦以降、貴族派に対する風向きが強いことは知っていよう。皇族を監禁したカイエン公やケルディック焼き討ちを命じたアルバレア公をはじめとする大貴族が逮捕され、帝国のパワーバランスは逆転しかけているのだ。事実、帝国各地で平民と貴族のトラブルが多数報告されている。中には複数の平民が一人の貴族を吊し上げた事例もあるらしい」

 

「そんなことが……」

 

「以前と全く逆だね」

 

「無理もない……。それまで抑圧されていたものが一気に吹き出したんだろう。今までのツケが回ってきたと言えばそれまでだが」

 

「シュバルツァーの言う通りなのかも知れん。それだけ今の貴族派の力は落ちている。厳しい言い方だが、領地の治安維持に支障をきたすほどにな。そこで頃合いを見計らって我々が動けば………」

 

「力が無いと見なされた貴族派は完全に抵抗力を失うというわけですか」

 

「下手をすれば、陛下の御心情を損ねることになりかねんからな」

 

「仮に兵がいたとしてもその数はたかが知れてるから喧嘩にもならないか」

 

「おそらくはな。だが我々とて貴族派を滅ぼしたいわけではない。内戦では不幸にも二つに別れてしまったが、本来彼らは同胞であることに変わりはない」

 

「それはサザーラントとて同じことだ。この地でよからぬ企みが進行しつつあるならなおさらだ。だが──」

 

クレイグ将軍は一呼吸おいて続ける。

 

「だがそれでも我らは軍人だ。軍の総帥権を持つ皇族と国家機関である政府の決定に背くわけにはいかん」

 

「納得しろとは言わん。だが、わかってほしい」

 

「父さん……ナイトハルトさんも…………」

 

「……心中お察しする」

 

「とにかく、何かあれば演習拠点に連絡することは約束しよう。聞けばそちらにあのハーシェルがいるそうだな」

 

「はい。トワ先輩なら今は主計科の担当教官です」

 

「そうか……。彼女には何かと世話になったからな」

 

「ナイトハルト中佐がですか?」

 

「ああ………。お前たちが特別実習に行っている間、バレスタインの溜め込んだ雑務を嫌な顔一つせずこなしていたからな」

 

「そ、それは………」

 

「お疲れ様でした……と言うべきでしょうか……?」

 

「本当に申し訳なくなってきたな……………」

 

「………サラ、いっぺん死ねばいいのに」

 

遠い目をしながら語るナイトハルト中佐にリィンたちは同情し、同時にトワの有能さに改めて尊敬の念を抱いた。

 

 

 

「それで、お主らはこれからどうするのだ?」

 

クレイグ将軍は改めてリィンたちに問いかける。

 

「…………………」

 

(((コクン)))

 

リィンは仲間たちと頷き合い、クレイグ将軍に向き直る。

 

「でしたら、将軍閣下。俺たちに道を示してくれませんか?」

 

「!」

 

「閣下や中佐が動けない理由は分かりました。ですが、俺たちは貴族派と革新派のどちらにも着くつもりはありません。どちらの主義思想に囚われず、この帝国に忍び寄る危機を乗り越えるため、"Ⅶ組" だからだからこそできる"第三の道"を進み続けるためにも、どうか道を示してくれませんか?」

 

「身分も出自も異なる我らならできぬはずがありません」

 

「ま、わたしたちなら余計なしがらみとかないしね」

 

「それが僕たち"Ⅶ組"だからね」

 

「「…………」」

 

クレイグ将軍はリィンたちの言葉を目を瞑りながら聞いていた。

 

「フッ……」

 

クレイグ将軍は笑みを浮かべた。

 

「かわいいエリオットは勿論だが、皆いい顔をするようになったな」

 

「君たちをトールズ士官学院で教えていた事を誇りに思う」

 

「じゃあ……」

 

「よかろう。ナイトハルト、手紙とペンを」

 

「ハッ」

 

クレイグ将軍はナイトハルト中佐が持ってきた手紙にペンを走らせる。

 

「これは……」

 

「これをサザーラント州の統括責任者に渡してほしい。決してなくさぬようにな」

 

「統括責任者……ハイアームズ侯爵に………ですか?」

 

「実を言うと、我々は奴らが潜伏している場所に心当たりがある。だがそこはハイアームズ侯爵とドレックノール要塞の責任者双方のサインがなければ足を踏み入れることすらできんのだ」

 

「そんな場所があるんですか?」

 

「詳しい事は言えんが、とにかくこの書簡を届けてほしい。これがあればそなたらの進むべき道が開かれよう」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

「礼には及ばん。様々なしがらみに囚われた我々にできることはこれくらいだ。だがそなたらの行く道が茨の道であることは理解しているな?」

 

「はい。それでも、進み続けます」

 

「わかった。女神の加護を」

 

 

 

「閣下、一つだけよろしいでしょうか」

 

「ん?何かな?」

 

「先ほどライル大尉にお会いした時、第四の憲章と第九の憲章がありましたがそれは一体?」

 

「うん。それにライルさんも父さんのおかげでって言ってたけど……」

 

「ああ、そのことか……」

 

ラウラとエリオットの疑問にクレイグ将軍は納得したように答える。

 

「別に大した事ではない。友との約束を守っただけだ」

 

「約束?」

 

「うむ。私と第九機甲師団司令のゲルマックは軍学校の同期でな。当初は全くソリが合わず、よく取っ組みあいの喧嘩になったものだ」

 

「と、取っ組みあいですか……」

 

「ああ。戦術の有用性を説く私と兵士の質を説くゲルマック。今でこそ馬鹿馬鹿しい話だが当時は若かったからな。互いに譲らなかったのだ」

 

「勝利を左右する戦術とそれを行う兵士の質。どちらも正しいね」

 

「その通りだ」

 

クレイグ将軍は腕を組み、続ける。

 

「やつは厳しく鍛え上げることで兵士の生存率を底上げすることに心を砕いていた。事実、第九機甲師団は白兵戦に限定すれば帝国軍随一の実力を持っていたからな。我が第四機甲師団との合同演習で何度も破られた事があるくらいだ」

 

「第四機甲師団を………!」

 

「それはすごいね」

 

「もし第九機甲師団全員がアルゼイド流に覚えがあれば無敵の突破力を有していただろうな」

 

ナイトハルト中佐がラウラを見ながらそう言った。

 

「なんと……!」

 

「確かに無敵かも……」

 

「理想の兵士は普通の訓練では生まれない。やつの口癖だった。呆れたことにやつ自身も訓練に参加していたらしい。第九機甲師団が脳筋部隊などと言われるわけだ」

 

「聞いたことあるかも………」

 

 

 

「それで約束と言うのは?」

 

「うむ。内戦の少し前からやつは戦争になることを感じ取っていたようなのだ。そこで我々は一つ約束をした。もしどちらかが戦死したら、部下たちをまとめて師団に編入させるとな。そしてその結果は知っての通りだ」

 

「閣下……」

 

「フラット大尉によれば、ゲルマックは若い将兵を離脱させ、黄金の羅刹を相手に玉砕したそうだ。敗れはしたが、ラマール領邦軍全体に3割の損害を与えたらしい。後にゼクス殿が言っていたが、第九の命を賭けた防衛がなければ壊滅していたのは自分たちだったかも知れないと」

 

「第三機甲師団のゼクス将軍ですか」

 

「我らが帝都に顕れた煌魔城で死闘を繰り広げている裏でそのようなことがあったとは」

 

「そなたらが気に病むことはない。やつは帝国の未来に全てを捧げたのだ。そしてやつの武勇を風化させないようにフラット大尉たちに以前の憲章をそのまま使うよう指示したのだ。立場が逆だったとしてもそうしたはずだからな」

 

「父さん……」

 

「さて、話が長くなってしまったな。そろそろ行かなくてよいのか?」

 

「そう言えば……」

 

「今度はハイアームズ侯にお会いせねばならんな」

 

「確かに時間もなさそうだね」

 

「ああ、そうだな」

 

リィンたちはクレイグ将軍たちに向き直る。

 

「閣下、ありがとうございました」

 

「うむ、気をつけてな」

 

「先ほども言ったが、何かあれば連絡する」

 

「中佐もありがとうございます」

 

リィンたちはクレイグ将軍との会談を終えた。

 

 

 

「お疲れ様でした」

 

要塞の門の前でライル大尉とアラン准尉が導力車と並んで待っていた。

 

「ご苦労様です。大尉」

 

「それにアランもね」

 

「ああ、お疲れ様。長かったな」

 

「それより二人はどうして?」

 

「よければセントアークまで送って行きますよ。私もキリコのことが聞いてみたいので。ああ、演習地の視察のついでですからお気になさらず」

 

「演習地?」

 

「ええ、イストミア大森林でのサバイバル演習です。新兵訓練の一環で」

 

「なるほど、そうでしたか」

 

「ここはお言葉に甘えて乗っけてもらっちゃおうか」

 

「賛成」

 

「私はいいが、無下にするのも礼に反するからな」

 

リィンたちは導力車に乗りこんだ。

 

「全員、乗りましたね?アラン准尉、運転を頼む」

 

「了解であります」

 

 

 

「ははは、なかなか苦労なさっているようですね」

 

リィンからキリコの学生生活を聞いたライル大尉は思わず笑う。

 

「トールズ第Ⅱ分校に入って、技術部に所属。機甲兵教練では分校1位ですか。いや~、大したもんだ」

 

「とんでもない後輩ができたな……」

 

ハンドルを握るアラン准尉は思わず苦笑いを浮かべる。

 

「ええ。そう言えば機甲兵の操縦は貴方が?」

 

「いえ、私ではありません。なんと言うか……最初から乗りこなしていました」

 

「ええっ!?」

 

「最初から……?」

 

「し、しかし……一体どこで……」

 

「………………」

 

ラウラたちがそれぞれリアクションする中、リィンは目を瞑っていた。

 

「リィン?」

 

「教え子のことが気にならぬのか?」

 

「色々と気になるが、それはキリコ自身が話してくれるまで聞かないでおくよ。俺たちがそうだったように」

 

「そうだな」

 

「無理に聞くのも良くないか」

 

「そうだね」

 

「なんと言うか……すごいですね。あなた方Ⅶ組というのは」

 

「ええ……。本当にすごいクラスですよ」

 

「はは、ありがとうございます。後、アランもありがとな」

 

 

 

「リィン君よく来てくれた。おお、ラウラ君もよく来てくれたね。他の諸君らも久しぶりだ」

 

「お久しぶりです。侯爵閣下」

 

「お、お久しぶりです」

 

「ども」

 

ライル大尉たちに送ってもらった後、リィンたちはまっすぐハイアームズ侯爵の城館を訪れた。

 

「それで、私に届け物とは?」

 

「はい、こちらです。お受け取りください」

 

リィンはセレスタン経由でハイアームズ侯に手紙を渡した。

 

それを受け取ったハイアームズ侯はいぶかしみながらも封書を開く。

 

「っ!」

 

内容を見たハイアームズ侯は目の色を変えた。

 

「なんということだ。よりによってあの地を選ぶとは……!」

 

「閣下……?」

 

「いかがなされました?」

 

「ふ、普通じゃないのはわかるけど……」

 

「相当まずいみたいだね」

 

リィンたちの声にハイアームズ侯は我を取り戻す。

 

「ああ……すまない。取り乱したようだ」

 

「閣下……。もしやパルム間道の外れの門の事ですか?」

 

「その通りだ。あの門の奥はサザーラント州統括責任者とドレックノール要塞司令双方のサインがなければ足を踏み入れることが許されない。それだけの場所なんだ。よりによってあの地に陣を敷くとは……」

 

「父も言っていました。相当危険な場所と推定しますが……」

 

「あの門の看板には崖崩れとありましたが……」

 

「それは違う。崖崩れというのは真っ赤な嘘だ」

 

「では、なんのために?」

 

「その前に………君たちにはここで誓ってもらうことがある。これから私が話す内容を絶対に口外してはならない。もし口外した場合帝国機密法に抵触し、最悪国家反逆罪が適用されるかもしれんのだ」

 

「なっ!?」

 

「国家反逆罪……!?」

 

(ゴ、ゴクリ……)

 

「相当だね」

 

「わかりました。口外しないことを誓います」

 

リィンは胸に手を当て、誓いを立てる。ラウラたちもそれに倣う。

 

「よろしい。では話そう。あの門の先にはかつてハーメルという小さな村が存在した。そしてそこは帝国にとって闇の歴史とも言える場所なのだ」

 

『!?』

 

ハイアームズ侯の言葉にリィンたちは驚愕する。

 

「や、闇の歴史!?」

 

「そうだ。14年前に起きた百日戦役にかかわる場所だ。その場所は帝国にとってもリベール王国にとってもかなり都合が悪いものだった。両国の地図から抹消せねばならないほどにね」

 

「あの百日戦役の……」

 

「そこまでして隠したいものとは……」

 

「すまないがこれ以上は私の口から伝えることは出来ない。だがクレイグ将軍が君たちを信用しているならば、私も協力しよう。セレスタン、鍵を」

 

「かしこまりました」

 

そう言ってハイアームズ侯は手紙にサインをし、机から箱を取り出す。そしてセレスタンから受け取った鍵で南京錠を3つ外し、中から大きな鍵を取り出してリィンに渡す。

 

「わわっ!?」

 

「大きな鍵……」

 

「これは………」

 

「あの門の鍵だ。言うまでもないが絶対になくさないように。約束してほしい」

 

「承知しました。ありがとうございます、閣下」

 

「礼には及ばない。危険なのは重々承知だが、君たちに任せたい。Ⅶ組の諸君、頼んだよ」

 

「皆様、お気をつけください」

 

リィンたちは城館を後にした。

 

 

 

城館を出たリィンたちは近くのベンチに座っていた。

 

「フゥー……」

 

「とんでもない話だったね」

 

「まさか、エレボニア帝国にそのような場所があろうとは」

 

「疲れた……」

 

「ああ……お疲れ様。正直、俺もまだ混乱している。それほどの場所なら確かにハイアームズ侯とクレイグ将軍のサインが必要になるはずだよな」

 

「父さん……知ってたんだね」

 

「おそらく父上も存じているのだろう」

 

「ハーメルって村、団長から聞いたことあるかも……」

 

「とにかく、一度演習地に戻ろう。多分ミハイル教官も知っているはずだ」

 

「「「うん」」」

 

リィンの提案で、一行は演習拠点に馬を走らせた。

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