英雄伝説 異能の軌跡   作:ボルトメン

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いくつかオリジナルをいれています。


救出①

演習地に戻ったリィンたちは真っ先にミハイルたちに報告した。

 

そのあまりの内容にミハイルは茫然自失していたが、なんとか正気を取り戻した。

 

「まさか、よりによってあの場所を拠点に選ぶとはな」

 

「ハーメル……でしたか。何かの資料で読んだことがあるような」

 

「あの百日戦役に関係があるとはな。ミハイルの旦那は知ってたんだな?」

 

「フン、それなりにな。皇帝陛下は勿論、宰相閣下、正規軍の将官クラス、情報局、四大名門辺りは把握している。高位の遊撃士とて例外ではない」

 

「こ、皇帝陛下まで!?」

 

「そうだ。ハイアームズ侯爵が言った通り、ここは帝国の闇の歴史と言ってもいい。侯爵の書簡がなければ本来、君たちには話すことは禁じられている」

 

ミハイルはトワとランドルフを見ながら答える。

 

「フゥー……できれば聞きたくなかったぜ」

 

「確かにこんな内容は口外するわけにはいきませんね」

 

「ええ、下手したら帝国の存続も危うくなりかねませんね」

 

「その通りだ。だからこそ、君たちにもここで誓ってもらいたい。ここでのことを一切口外しないと」

 

ミハイルは強い口調で二人に問いかける。

 

トワもランドルフも強くうなずいた。

 

 

 

「それにしてもエリオットって言ったか。まさかお前さんがあの猛将クレイグの息子だとは思わなかったぜ」

 

(そうか……ランドルフさんはクロスベルにいたから)

 

「あはは、よく言われます」

 

「フフ、初見で見抜ける者はそうはいまい」

 

「たしかに」

 

「和むのはその辺にしてもらおうか。それよりシュバルツァー、先ほどの書簡をもう一度見せてくれ」

 

「ええ、いいですけど」

 

ミハイルはリィンから書簡を受け取り、透かすように見つめる。

 

「もしかして偽物だとでも思ってる?」

 

「一応、念のためだ。最近、書簡やサインを偽造する馬鹿者が摘発されたのでな」

 

「それって………」

 

「ルーレで起きた公文書偽造事件だね。確か一部の貴族も関わっていたとか」

 

「そうだ。首謀者はハイデル・ログナー。動機はラインフォルト社への復讐。契約や売上金に関する公文書を偽造して信用を失墜させることが狙いだったようだ。予定通りに偽造した公文書を流したまではよかったが、そこから足がついて逮捕・拘束された。この一件で現ログナー侯爵は謹慎期間をさらに延ばすと発表した」

 

「っ!その人は……!」

 

「うん……アンちゃんの叔父さんにあたる人だね」

 

「愚かな……」

 

「そう言えばマキアスが言ってた。帝都での山のような案件を終わらせた後、ルーレに急遽出張だって死にそうな顔してた」

 

「マキアス………」

 

リィンは司法監察官になった元副委員長に深く同情した。

 

「ちょっといいか?」

 

ランドルフが手を挙げる。

 

「なに?」

 

「ログナーって帝国の大貴族様だろ?シュバルツァーやトワちゃんたちは知ってんの?」

 

「あ、はい。アンゼリカ・ログナー。私の親友です」

 

「尊敬する先輩の一人です。趣味嗜好はともかく」

 

「性癖の間違いだと思う」

 

「カッコいい先輩なんですけど……」

 

「うむ、泰斗流の腕前は素晴らしいが………あれはな」

 

「な、なんか……大丈夫なのか?」

 

「簡単に言うと女の子が大好きな女子」

 

「理解したぜ………」

 

「あ、あははは………」

 

「ええい、いつまで和んでいるつもりだ!」

 

緩んだ空気にミハイルが一喝する。

 

 

 

「それで、君たちはハーメルへ向かうんだな?」

 

「うむ、かの地で何が待っているかはわからぬが、相手が悪事を企む以上、是非もない」

 

「遊撃士として、見過ごせない……!」

 

「父さんたちや貴族の人たちも動けない今、動けるのは僕たちⅦ組ですから」

 

「みんな……!」

 

「ったく、眩しいねぇ。よしわかった。この件はお前さんたちに任すぜ」

 

「まったく……。それよりシュバルツァー、これだけは言っておく。場所が場所だけに我々も表立って動くことはできん。せいぜい騎神を送ることぐらいだ」

 

「それだけでも十分です」

 

「では行くがいい。オルランド教官は予定通り戦術科と特務科を連れて機甲兵教練。ハーシェル教官はセントアークで実習。私は一度原隊に戻る。以上、解散」

 

 

 

(なるほど……そういうことでしたか)

 

列車の影からリィンたちの話を盗み聞きをしていた少女がいた。

 

(ハーメル村……確かにあそこなら隠すのに絶好の場所ですね。しかし、結社も形振り構わずですか。よりによってあの地に、いえ、あの地だからこそ都合がよかった……)

 

(まあ……流れは掴んでいますし。後は………)

 

少女は緑色の髪を弄りながら悪戯っぽく微笑む。

 

 

 

「ねぇクルト君、どうしたの?」

 

リィンたちが報告を終えて、馬でパルムを目指し、演習地を出た時、ユウナたち新Ⅶ組はクルトの部屋に集まっていた。

 

「ずっと考えていたんだ。教官の言葉の意味を」

 

「キリコさんがクルトさんより上だと言ったことですか」

 

「あんなの気にしなくていいのに。教官はあたしたちのことなんにもわかってないんだから」

 

ユウナは本心を押し殺し、明るく振る舞う。

 

「いや……そうじゃない。あの人は僕たちのことをよくわかっているよ。ああ、わかってるさ!僕がどれだけ中途半端かって。それに教官は僕たちを巻き込まないようにわざとあんな言い方をしたことくらい」

 

「クルト君……」

 

「教官についてはわかりましたが、キリコさんのことは………」

 

「……………ああ、わかってる」

 

クルトは椅子に座り、絞り出すように言葉を出す。

 

「僕は………キリコに、嫉妬していたんだ」

 

「えっ……」

 

「嫉妬……ですか」

 

「初めて見た時から周りとは違う、どこか異質な印象だった。小要塞での戦闘を通しても明らかに戦い慣れていた。それだけならこうは思わなかった。軍隊にいた事は驚いたけどね」

 

「だが機甲兵教練でアッシュを叩きのめした時、僕はアッシュだけじゃなくキリコにも眉をひそめた。不意討ちを平然と行ったアッシュと無抵抗だろうと銃撃を行ったキリコ。どちらも認められなかった。武を重んじる帝国人の風上にもおけないってね」

 

「だがキリコの言葉は正しかったよ。この演習で痛いほどにね」

 

「戦場、というより戦闘はゲームではない……そうかもしれませんね」

 

「………………」

 

「極めつけは昨日の人形兵器の時だ。増援が来た時、僕は諦めてしまった。だがキリコは諦めることなく立ち向かおうとした。僕はあの時状況がわかってないのかと聞いた。だがわかっていなかったのは僕の方だ。キリコも言っていただろう、「泣き言を言う前に、この状況をなんとかしたいとは思わないのか」って。その通りだ。くじけている場合じゃなかったのに」

 

「それがこのざまだ!」

 

クルトは両手を強く握りしめる。

 

「………………」

 

「クルトさん………」

 

「これでわかっただろう。教官がキリコの方が上だと言った理由が。キリコはとっくに覚悟を決めていたんだ。命を懸ける覚悟が。それに比べて僕は……薄っぺらで……中途半端で……」

 

「………………」

 

「事実、ラウラさんが加勢に来てくださった時、僕はほっとしたんだ。助かったことじゃなく、諦めていたことが有耶無耶になったことがね。僕は………卑怯者さ………」

 

「…………いわよ……」

 

「……………え?」

 

「ユウナさん?」

 

 

 

「ふざけんじゃないわよ!」

 

 

 

ユウナは両手でクルトの胸元を掴む。

 

「ユ、ユウナ……!?」

 

「何被害者面してるの!あたしだってわかってるわよ!教官やキリコ君に技術や心で敵わないことくらい………あたしじゃ追い付けないことぐらい、わかってるわよ!」

 

「ユウナさん………」

 

「だったら追いかければいいじゃない!教官やキリコ君をギャフンと言わせるくらいになればいいじゃない!」

 

「…………え?」

 

「薄っぺらだから何!?中途半端だから何!?そうじゃないでしょう?要はクルト君自身がどうしたいかでしょう!」

 

「っ!」

 

「それがさっきから……何様のつもりよ!」

 

ユウナは目を潤ませながらクルトに問いかける。

 

「ユウナ………」

 

「アルもほら!何かあるでしょう!」

 

「無茶振りですね。ですが……あの人と、キリコさんに追い付きたい……です」

 

「クルト君は?」

 

「……………」

 

クルトはしばし黙考し、目を開けた。

 

「僕は………。僕は強くなりたい。教官にもキリコにも認められるよう強くなりたい!」

 

「クルトさん……!」

 

「なら決まりね。それじゃさっそく──」

 

「──さっそく、何しようってんだ?」

 

振り返るとアッシュがいた。

 

「君は……」

 

「な、何よ。アンタには関係ないでしょ。それとも告げ口するつもり?」

 

「まさか。何やら面白そうな感じだからな」

 

「ふふ、素晴らしい演説でした」

 

そう言ってミュゼが入って来る。

 

「貴女は………」

 

「それより、リィン教官のことですが……どうやらパルムを経由して、パルム間道へ向かうみたいですよ」

 

「パルム間道……もしかして昨日の?」

 

「あの門の所か」

 

「へぇ、そんな場所があんのか(左目がいやに疼きやがる……まさか……)」

 

「多分、ううん、間違いないわね」

 

「でもどうやって行きますか?」

 

「私に考えがあります。主計科の実習の方が先に終わるので頃合いを見て私が迎えに行きます。皆さんはそれまでは何食わぬ顔で教練を受けてください。私が迎えに来たらそうですね……ドラッケンⅡを隠しておいてください」

 

「ドラッケンⅡを?機甲兵も持って行くの?」

 

「ま、さすがに生身じゃキツいだろ」

 

「わかったわ。近くの高台で落ち会いましょ」

 

「わかりました。ではまた(キリコさん、行ってきます)」

 

 

 

ユウナたちが演習地を出たのとほぼ同時に、キリコのARCUSⅡに着信音が鳴った。

 

(誰だ?)

 

未だ傷が痛む体を起こして、ARCUSⅡを開いてみるがそれは知らない番号だった。

 

さらにおかしなことに、通信ではなくメッセージだった。

 

『誰にも見つからぬように演習地を出ろ。そして線路を伝って南を目指せ。そこに貴殿の望むものが隠してある』

 

『追伸 なおこのメッセージは自動で消去される』

 

(なんだこれは……)

 

キリコは当初、手の込んだいたずらだと思った。

 

だがメッセージ通り消去されたのを見て、単なるいたずらとは思えなくなった。

 

(南へ行け……か。俺が望むもの……それは……)

 

キリコは上着を肩にかけ、医務室の窓から外を見渡す。

 

誰もいないのを確認したキリコは窓から外に出る。そしてメッセージ通り線路を伝って南サザーラント街道に出た。

 

 

 

[キリコ side]

 

「はあ……はあ……はあ……」

 

やはりキツいな。

 

今俺は頭部と胸部に包帯を巻いている。

 

夕べの傷はふさがりつつあるが体力が戻っていない。

 

もし魔獣に出くわしたらひとたまりもないだろう。

 

だが運よく魔獣の気配はない。どうやら魔獣どもは休んでいるらしい。

 

(それにしても、一体誰がメッセージを出した)

 

あの後、線路を伝って街道に出た瞬間、またメッセージが届いた。

 

内容は南サザーラント街道の地図だった。

 

地図にバツ印は刻んであり、ここへ向かえということだろう。

 

だが今の俺には遠すぎた。

 

昨夜シャーリー・オルランドに撃たれた弾丸は全部で4発。

 

その内の1発は心臓をギリギリ逸れていた。

 

おかげで俺は惑星オドンのレッドショルダー基地以来の苦痛を味わうはめになった。

 

弾丸そのものは全て貫通していたので、応急処置は早かった。

 

だがさっきまで寝ていたので体がだるい上に貧血のせいかふらつく。

 

だがそれでも進むのを止めるわけにはいかない。

 

 

 

やっとの思いで指定の場所にたどり着いた。

 

辺りを見回すと、大きなコンテナが見つかった。

 

ここは木々に囲まれていて、発見されないようになっていた。

 

すると、またメッセージが届いた。

 

『どうやら間に合ったようだな。コンテナのパスワードは23260707だ』

 

(この数字、どこかで)

 

俺は何か引っかかるものを感じながら、パスワードを入力。コンテナの扉を開く。

 

 

 

そこには俺が見慣れたものが置いてあった。

 

大きさとフレームは機甲兵のそれだった。

 

頭部にはカメラアイでなく、三つのレンズで構成されるターレットスコープ。

 

両腕には廃莢するための穴が空いている。

 

歩行よりローラーダッシュに特化した脚部。

 

そして緑に塗り込められたカラーリング。

 

それらは俺が一番見慣れたものだ。

 

ちなみに右肩は赤くない。

 

(これが実験用機甲兵──フルメタルドッグか)

 

俺は手慣れた手つきでコックピット内に入る。

 

コックピット内部は機甲兵と変わりないが、ドラッケンⅡのようにスクリーンモニターがない。

 

代わりにゴーグルがシートに置いてあった。

 

俺はゴーグルのコードをコックピットのコネクタに接続、ゴーグルを装着して周りを見る。

 

外の情報はターレットスコープからゴーグルを通じて、乗り手には肉眼でものを見るようにダイレクトに伝わる。

 

ターレットスコープを回転させると、望遠レンズ、赤外線、魚眼レンズとそれぞれの用途に応じて変わる。

 

(もはや機甲兵サイズのATだな。一体誰がこんなモノを造った。気にはなるが考えている暇はなさそうだ。武器はこれか?)

 

コンテナの奥には武器があったが、へヴィマシンガンではなかった。

 

代わりにロケットランチャーのような武器と弾倉が置いてあった。

 

(これは、ソリッドシューター………か?)

 

ソリッドシューター。

 

ATの武装の一つで威力は戦車の砲撃に匹敵する。

 

難点として、連射性の低さと装填が出来ないことだが、これは改良されているのか装填ができるらしい。

 

俺はマニピュレーターを操作し、ソリッドシューターを掴み、両脇に弾倉を取り付けた。

 

これにより機体の重量が増すが仕方ない。

 

またメッセージが届いた。

 

『望みの品は見たかな?これなら結社の執行者や鉄機隊の神速とて問題にならん』

 

(俺は監視、いや観察されているのか?)

 

俺は異能生存体を持つが故にレッドショルダーからバーコフ分隊に至るまでにペールゼンだのウォッカムだのから観察されてきた。

 

さすがに奴らはこの世界にはいないだろう。というよりいてほしくない。

 

メッセージが続けて届いた。

 

『これが最後のメッセージだ。機甲兵に乗って地図のバツ印の場所まで行ってもらう。ルートはこちらで指定する。貴殿の幸運を祈る』

 

『追伸 貴殿のクラスメイトが指定の場所に向かったらしい。救出するか見捨てるかは貴殿に一任する』

 

メッセージが消去されると、地図が送信されてきた。

 

(この場所は昨日の?)

 

指定されたルートでは、南サザーラント街道の裏道を通って向かえということらしい。

 

それにしてもユウナたちは何をしている。

 

大方リィン教官を追って行ったのだろうがあまりに無謀過ぎる。

 

だが俺には見捨てるという選択肢はない。

 

ここに何があるのかはわからないがこうなった以上、行くしかない。

 

たとえそこが禁断の地であろうとも。

 

[キリコ side out]

 

 

 

一方、パルムに到着したリィンたちはハーメルへ向かう前の最後の準備に取りかかろうとしたが、橋の所で困り果てる貴族と出会う。

 

[フィー side] [なくした財布]

 

わたしたちがパルムに着いた時、橋の所で貴族っぽい人とその奥さんらしい人とメイドさんが困ってるみたい。

 

昔のわたしなら流されるかスルーしているが、今のわたしは遊撃士。知らんぷりは許されない。

 

なのでさっそく声をかけることに。

 

「どうかしたの?」

 

(フィー……堂々としすぎじゃない?)

 

(これがフィーの美点なのだろう)

 

「む?君たちは……?」

 

「わたしは遊撃士協会の者だけどなんか困ってたから」

 

「おお!遊撃士だったのか。実は、妻が財布を落としてしまってね」

 

「うう……ごめんなさい……あなた。私がうっかりしていたばっかりに……」

 

「いえ奥様。私の方こそもっとしっかりしていれば………」

 

「この通り、二人とも落ち込んでいてね。二人とも、落ち着きなさい」

 

どうやら貴族にありがちな横暴さはなさそう。

 

奥さんとメイドさんの関係を見る限り、単なる雇い主と使用人というより家族に近い。

 

一応リィンたちに聞いて見ると、みんな協力することを確認。

 

「それでどこで落としたかわかる?」

 

 

 

財布の持ち主──クインズによると、パルムに到着してすぐ、娘さんにプレゼントする子供服を仕立て屋で注文した。前金を支払ったからこの時点では財布はある。

 

子供服が仕上がるまでの間は、市内の観光。お土産をいくつか見繕っていたらしい。

 

メイドさん曰く長い買い物だったそうだが、ここでも財布はある。

 

そうしているうちにアグリア旧道にある石碑を見に行ったそう。

 

家族写真を撮ったりいい時間を過ごせたとか。

 

パルムに戻ってお昼を食べようとしたら、その時初めて財布がないことに気づいた。

 

一度整理してみると、アグリア旧道で落とした可能性が高いと判断。市内の方は任せてわたしたちはアグリア旧道に出た。

 

旧道入り口から石碑の場所までをくまなく探すと、石碑の場所の草むらから藍色の長財布が見つかった。

 

おそらく、写真を撮るのに夢中で落としたことに気づかなかったのかもしれない。

 

リィンによると、昨日人形兵器に出くわしたらのはちょうどこの場所だったらしい。

 

ここは時々観光客も訪れるみたいだし、今後はギルドでも気をつけた方が良さそう。

 

パルムに戻るとクインズたちと小さな女の子が揉めていた。多分あの子が娘さんのルナなんだろう。

 

拾った長財布を渡すと、間違いなくクインズの物だと言う。

 

奥さんはお礼にミラを払おうとしたのだが、別にお礼がほしくてやったんじゃないと断った。

 

だが奥さんもそれでは気が済まないと譲らない。

 

その時、クインズがお守りとして買ったアクセサリを譲ってくれた。ミラじゃないしこれならいいかな。

 

これで依頼達成。ぶい、だね。

 

[なくした財布] 達成

 

[フィー side out]

 

 

 

リィンたちがクインズたちと別れた後、準備を再開する。

 

「おう、君たちか」

 

振り返ると、ガラート元締めがいた。

 

「あっ、こんにちは。元締め」

 

「ハイアームズ閣下から連絡は受けているぜ」

 

「えっ?」

 

「元締めはハイアームズ侯と親しいようだが」

 

「ハハハ、そんな大したモンじゃねぇよ。ハイアームズ閣下はパルムの領主にしてお得意先だからな。代々のハイアームズ侯爵から贔屓にしてもらってるのさ」

 

「なるほど、そうだったんですね」

 

「それで連絡というのはもしや……」

 

「ああ、教官さんの察するところだ。一つは昨晩の襲撃事件……。演習地ってところが襲撃されて、あのちょっと無愛想な学生さんが重傷を負ったらしいが、大丈夫なのかい?」

 

「キリコのことですね。大丈夫です。一命はとりとめました。演習は離脱してもらうことになりましたが」

 

「そうか、無事か。そいつは何よりだ。そしてもう一つはあの場所へ行く許可を出したってことだ」

 

「元締めはご存知なんですね?あの場所のことを」

 

「わしの口からはこれ以上は言えないがな。……なるほど、クルト君たちがいない理由がわかったよ」

 

「貴方は彼のことを……」

 

「ああ、クルト君のことは彼がまだ小さい頃から知っている。彼は剣術に優れるが、まだ本物の切った張ったは早すぎる気がしてな。っと、これはえらそうなことを言ってしまったな」

 

「いえ、お気になさらずに」

 

 

 

「それはそうと、お前さんはレグラムのアルゼイド子爵閣下の娘さんかい?」

 

ガラート元締めはラウラを見ながら言った。

 

「いかにもそうだが……元締めは父上をご存知か?」

 

「ああ、もう20年以上前になるかな。奥方と二人っきりでの旅行でパルムに来なさってな。その時織物を買ったんだ。あの時の奥方にそっくりだったからもしやと思ったんだ」

 

「そ、そんなことが………」

 

「とても仲睦まじい夫婦で、端から見ててアツアツだったよ」

 

「ち、父上、母上………」

 

ラウラは顔が真っ赤になった。

 

「おっと、話が長くなっちまったな。何が起きるかわからねえ。気をつけてな」

 

「はい、ありがとうございました。元締め」

 

 

 

リィンたちはなんとか門の前にやって来た。

 

「やっと着いたな」

 

「もうあまり時間はないかもね」

 

「………………」

 

「ラウラ?」

 

「な、なんだ、フィー」

 

ラウラの顔は少し赤かった。

 

「えっと……大丈夫?」

 

「…………大丈夫だ」

 

「大丈夫じゃないような気が……」

 

「だから大丈夫だと言っている!」

 

「………………」

 

その時、リィンはラウラの肩を掴む。

 

「………ラウラ。言いたいことがあるなら言ってほしい」

 

「リ、リィン!?」

 

「もしかして、俺たちには言えないことなのか。その……俺じゃ力になれないのか?」

 

「い……いや……あの……その………うぅぅ………」

 

ラウラはさらに真っ赤になって目を伏せる。

 

「リィン」

 

「時間がないよ」

 

長くなると判断したエリオットとフィーが止める。

 

「む……そうだな。ラウラ、辛いようなら言ってくれ。俺たちが支えるからな」

 

「あ……う、うん………」

 

(リィン………)

 

(相変わらずの朴念仁………)

 

二人から散々な評価を受けていることなど露も知らないリィンは門に近づく。

 

「おう、早いな」

 

振り返るとアガットが歩いて来た。

 

「あっ、アガット」

 

「お疲れ様です」

 

「おう、お疲れ。お前らもここにたどり着いたか。しかし、何かあったのか?ラウラお嬢さんの顔が真っ赤だが」

 

「ああ………気にしなくていいから」

 

「アガットさんの手を煩わせるまでもありませんから」

 

「………………………」

 

「??? まあいい。それよりシュバルツァー、鍵は持ってんのか?」

 

「はい、ここにあります」

 

リィンは懐から鍵を取り出す。

 

「なるほどな。よし、俺も行くぜ」

 

「え?」

 

「よいのか?帝国人ではない貴公が……」

 

「ああ……ちょいと事情があってな。それにこれでも遊撃士だ。何かあった時には頼ってくれて構わねぇ」

 

「なるほどね。確かにアガットはA級遊撃士。ぶっちゃけわたしたちより社会的地位は大きい」

 

「や、やっぱりそうなんだ……」

 

「わかりました、そういうことなら」

 

A級遊撃士アガットを加えたリィンたちは、門の鍵を開け、ハーメル廃道に足を踏み入れた。

 




原作でもログナー侯爵って謹慎してたので、本作では謹慎理由が皇室への裏切り(とっくに許されている)+公文書偽造事件という設定で書きます
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