英雄伝説 異能の軌跡   作:ボルトメン

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救出②

リィンたちが門を越えた所を見ていた者たちがいた。

 

「ここまでは気づかれていないみたいね」

 

「ああ……なんとかね」

 

「にしても離れすぎじゃねえか?」

 

「これくらい離れなければ、気づかれるおそれがあります」

 

「教官は勿論ですが、ラウラさんもいますからね。それに遊撃士の御二人にエリオットさんも侮れないかと」

 

「そうですね……とにかくわたしたちも出発しましょう。キリコさんがいないのは正直痛いですが」

 

「…………」

 

「チッ………」

 

「ちょっと、アル」

 

「まあまあ(キリコさん……)」

 

ユウナたちの中ではキリコの存在は大きくなっていた。だが、クルト、アッシュは目を背けていた。

 

「そう言えば、なぜ"アル"なんですか?」

 

「えっ?いいじゃない、細かいことは」

 

「細かいこと……でしょうか……?」

 

「ったく、ノーテンキ女が」

 

「なっ……なんですって~~!」

 

「静かに。バレるぞ」

 

「ユウナさん。女たるものいかなる状況でも凛々しくいるものですよ?」

 

「ユウナさんがオープンなのは周知の事実ですから」

 

「ううぅ……納得いかな~い!」

 

ユウナは地団駄を踏む。

 

「それじゃ、そろそろ僕たちも行こう」

 

「そうですね。ユウナさん、機甲兵の操縦お願いします」

 

「うん、任せて」

 

ユウナはドラッケンⅡに乗り込む。その横でアッシュは門を見つめていた。

 

「………………」

 

「アッシュさん、どうかしましたか?」

 

「いや………何でもねぇよ」

 

(アッシュさん……左目が疼くのですね。おそらく、それこそが……)

 

【おーい、二人とも~。行くよー】

 

「あ、はーい。アッシュさん参りましょう」

 

「あいよ。(こいつ……何企んでやがる……)」

 

 

 

一方リィンたちは、魔獣を退けながら廃道を進んでいた。

 

「魔獣はいるけど、静かだね」

 

「こうして見ると、のどかとしか言えねぇんだがな」

 

「しかし、崖崩れや山津波などの形跡はないな」

 

「ああ、ここまで登って来たが、そんな感じはしないな」

 

「むしろ手付かずだね」

 

「…………………」

 

アガットはリィンたちの方を向く。

 

「ここまでくればいいだろう。知りたいんだろ?ハーメルの秘密を」

 

「やはり、アガットさんもご存知でしたか」

 

「ああ、それなりにな。ただ、一つ言っておく。これから話す内容はお前ら帝国人にとっちゃツラい話になる。それでもいいか?」

 

「ええ、お願いします」

 

「覚悟はできている」

 

「わかった」

 

 

 

「今から14年前、この先にハーメルって村があったんだが、突然攻撃を受けた。帝国政府の調査によると、落ちていた装備品からリベール王国軍の仕業と断定。そのままリベールに宣戦布告。世に言う百日戦役が始まった」

 

「リベール王国軍の襲撃……!?」

 

「で……でもおかしくない!?」

 

「当時のリベールに帝国と戦争をする余裕はないはず」

 

「アガット殿、これは……」

 

「………その後、王国軍の反攻作戦で戦況が膠着状態になった頃、とんでもない事実が判明した。ハーメル村を襲撃したのは王国軍じゃなく猟兵崩れだったんだが、それを指示したのは他でもない帝国軍人だったのさ」

 

「なっ………!」

 

「ど、どうして……」

 

「当時の帝国正規軍は平民勢力、今で言う革新派寄りが台頭しつつあって、貴族派寄りが冷遇されていたそうだ。その貴族派寄りの帝国軍人たちが困窮する状況の打開策としてハーメル村の襲撃を計画、実行犯どもにわざわざ王国軍の格好までさせてな。なぜだか分かるか?」

 

「リベールと戦争を意図的に起こさせるため………」

 

「その通りだ。そして連中の意図した通り戦争が起きた。大方、戦争で手柄を挙げて自分たちの地位向上が狙い、そんなとこだろ」

 

「馬鹿な………」

 

「その後、事実が判明して帝国はリベールに停戦を持ちかけた。ハーメル村のことは互いに無かったことにしてな。リベールのアリシア女王も悩んだ末、これに同意。百日戦役は終結した」

 

「確かに百日戦役は互いに不幸な行き違いがあったとして終結しています。帝国はリベールに対して陛下自らの謝罪と多額の賠償金の支払いで合意していると」

 

「確かに歴史じゃそうなってるな。まあ、それは今はいいだろう。その後、帝国では軍事裁判が始まった。当然ながら、その貴族派寄りの軍人たちは全員有罪で極刑に処されている。罪状は言うまでもなく、国家反逆罪。そいつらの処理を終えた後、帝国はハーメルの真実を隠蔽した。地図から消してあんな門まで取り付けて存在そのものを消し去ったというわけだ」

 

「これがハーメルの真実だ。要するに正規軍内部の権力闘争にハーメル、帝国、リベールがそれに巻き込まれた。そういう事だな」

 

『……………………』

 

リィンたちはあまりに凄惨な内容に愕然とするしかなかった。

 

「その………話しといてなんだが、大丈夫か?」

 

「え、ええ………」

 

「そんな……そんなことって……」

 

「これが帝国の闇の歴史………」

 

「確かに表に出せないね……」

 

「あー……その……なんだ。お前らが気に病む事じゃねぇよ。戦争はとっくに終わってるし、帝国人の大部分が知らないことなんだからな」

 

「……ありがとうございます。アガットさん、一つだけよろしいですか?リベールとの交渉にあたった人物は分かりますか?」

 

「そりゃお前……鉄血宰相ギリアス・オズボーン辺りだろ?百日戦役終戦の直前に交渉役に任命されたらしいからな」

 

「百日戦役終戦の直前に?」

 

「ああ。調査によると、百日戦役開戦前から行方不明になっていたらしいが、ある日突然現れて交渉役に任命された。その後、リベールとの落とし所に上手く持っていった功績で宰相に任命されて、今に至るわけだ」

 

「……………」

 

「ここまではギルドが掴んでいる情報だ。でもなんでそんなことを聞くんだ?」

 

「いえ……なんとなく気になって………」

 

(リィン………)

 

「リィンは歴史学を教えてるんだよね?その一環じゃない?」

 

「なるほどな。そういうことか」

 

アガットはフィーのでまかせを信じた。

 

(すまない、フィー)

 

(気にしないで)

 

「っと……思ったより時間食っちまったな。そろそろ移動するぞ」

 

「うむ、時間もなさそうだしな」

 

リィンたちは移動を再開した。

 

 

 

【誰かもわからないまま、俺は実験用機甲兵に乗って地図の場所まで移動していた。人の手がかからず、眠っているかのような廃道。これからそれが叩き起こされる。そんな予感がしていた】

 

キリコは地図のルートに従い、フルメタルドッグに乗って移動していた。

 

【このルートなら後30分で到着できるな。おそらくそこに鉄機隊とやらがいるんだろう。誰だかわからないやつに従うのは気に入らないが、今は仕方ない。それにしても………む?】

 

キリコは望遠レンズで廃道の方向を見る。そこには……

 

【ハアアアッ……!】

 

「ユウナはそのままそっちを頼む。アルティナはクラウ=ソラスで援護を。アッシュは前衛、君は後衛に回ってくれ」

 

「了解しました」

 

「命令すんな、ヴァンダール!」

 

「今は揉めている場合ではないですよ?お二人共」

 

一機のドラッケンⅡと分校生徒たちが魔獣と交戦していた。

 

【あの武器はユウナか?こんな所まで来ているとはな。それにクルトにアルティナ。だがなぜミュゼにアッシュがいる?】

 

キリコはミュゼとアッシュが来ていたことに疑問を抱いたが、ある仮説を思いつく。

 

【物事の未来を見る異能……。おそらくミュゼ辺りが唆したのだろう。魔獣と交戦状態だがあの様子なら大丈夫か】

 

キリコは移動を再開した。

 

 

 

キリコが来ているとは夢にも思わず、魔獣を退けたユウナたちは僅かばかりの休憩をしていた。

 

【ふう……やっと半分くらいかしら。クルト君、教官たちは?】

 

「足跡はまだ新しい。このまま行けば追いつけるな」

 

「ったく、手間かけさせてくれるぜ」

 

「うふふ、後少しですね」

 

「それにしても、綺麗な場所ですね」

 

【うん。でも崖崩れなんか見当たらないけど……】

 

「それは僕も思った。崖が崩れた形跡すらない。なのにどうしてあんな看板があるのだろう」

 

「もしかして……フェイク?」

 

「うーん、どうなんでしょう……(ハイアームズ侯爵閣下には後で謝らなくてはいけませんね)」

 

「………………」

 

「アッシュさん?どうかしましたか?」

 

「なんでもねぇよ、ちびウサ。それよりとっとと進もうぜ」

 

「………そうだな。こうしている間に遅れてしまうしな」

 

【後少しだもんね。見てなさいよ、絶対に追い付いてみせるんだから!】

 

「そう言えば、演習地はどうなっているでしょう?」

 

「多分……大騒ぎかと」

 

 

 

一方、演習地ではアルティナの言うとおり大騒ぎになっていた。

 

「あいつら、やりやがった!」

 

「ど、どうしましたか!?ランドルフ教官……」

 

「Ⅶ組の連中、ドラッケンを持って消えたんだよ。おそらく、いや間違いなくシュバルツァーたちを追って行ったんだろうよ。おまけにアッシュもついて行きやがった」

 

「こっちもミュゼちゃんが見当たらなくて、探していたんですけど、もしかして……!」

 

「多分な」

 

「ミュゼちゃん……どうし「キャァァァッ!」悲鳴!?」

 

「列車の中からだ!」

 

ランドルフとトワは悲鳴のする方へ走った。

 

「ティータちゃん!?どうしたの!?」

 

「そ、それが………」

 

ティータは医務室を指さし、トワはそれを追う。

 

そこには寝ているはずのキリコの姿はなかった。

 

「……………」

 

「トワちゃん、どうした?何が……」

 

ランドルフも無人の医務室を見て、言葉をなくす。

 

「はぁぁぁっ!?」

 

「う、嘘でしょ!?あのケガでどうやって!?」

 

「は、博士の伝言を伝えようとしたんですが、物音一つしないので嫌な予感がしたので扉を開けたら……」

 

「いなかったってわけか。しかしどうなってやがる。普通なら下手すりゃ寝たきりだぞ」

 

「……今朝、キリコ君の健康チェックをした時に数値ではほとんど治りかけていました。何かの間違いだと思ったので安静にしているよう伝えたんですが……」

 

「薬がよほど効いたのか、機材のミスか……どっちにしろやべぇな。ミハイルの旦那は……」

 

「呼んだか?」

 

振り返ると、怒りを顕にするミハイルの姿があった。

 

「ミ、ミハイル教官……!」

 

「ハーシェル教官、オルランド教官。最初から説明したまえ」

 

 

 

説明を受けたミハイルは青筋をひくつかせながらも冷静に努めた。

 

「………それで、対策は?」

 

「とりあえず、あいつらを追っかけるのが先決っすからね。戦術科の編成を急いでるぜ」

 

「主計科は正規軍、領邦軍、鉄道憲兵隊、ハイアームズ侯爵閣下に連絡を入れました。後、ヴァリマールの準備も終えています」

 

「勝手なことを……。だが緊急事態にて不問とする。だがハーメルだぞ?いくら緊急だからといって……」

 

「それが……緊急事態ゆえにハーメル突入の許可を頂きました」

 

「なんだと?」

 

「今はもめてる場合じゃないと思いますがね?」

 

「クッ……。シュバルツァーからの連絡を待て。我々はその後動く」

 

「それと、ラッセル候補生の元に博士から通信があったそうだな。内容は?」

 

「はい。『実験用機甲兵が届いた連絡をもらった。どうするかはお前に一任する』だそうです」

 

「グッ、どいつもこいつも……。キュービィー候補生は重傷ではなかったのか?」

 

「俺らにもわかんないっすよ。何がどうなってんのか」

 

(キリコ君が普通の人より治りが早い?まさかね……でも、そうとしか………)

 

「とにかく、戦術科は編成を急がせろ。主計科も戦列に加われ。それまで待機とする」

 

ミハイルは疲れきった顔をしながら二人に指示を出した。

 

 

 

一方、リィンたちは遂にハーメル村の入り口に到着した。

 

「ここが……ハーメル……」

 

「見た目は素朴な山村といった感じだね」

 

「うむ。歴史を揺るがす事態とは無縁な風景だな」

 

「なんだか懐かしい」

 

「ああ……そうだな」

 

リィンたちは門を潜り、村に入った。

 

「大きな火事があったんだな。建物は全て焼失している」

 

「見て、あそこ」

 

エリオットが指さす方には、おもちゃの鳥があった。

 

「当然だけど、小さな子どももいたんだね」

 

「2、3歳くらいの子どもかな?」

 

「多分、そうだろう」

 

(? あいつの年齢はたしか……)

 

アガットは疑問を抱く。

 

一行はさらに村を捜索する。すると、古ぼけた木剣を見つけた。

 

「練習用の剣。相当使い込まれているな」

 

「燃えにくい素材でできているから形が残っているな」

 

(これはあいつらのだな。待ってろよ、エステルにヨシュア。シェラザードにティータ。ついでにスチャラカ皇子にジン。いつか全員で来ような)

 

 

 

村の奥に行くと、そこには見慣れた人物たちが祈りを捧げていた。

 

(あいつらは……)

 

(鉄機隊のデュバリィさんにシャーリーでしたか)

 

(戦気は感じられない。それよりあれは墓か?)

 

(みたいだね。どうするのアガット)

 

(死者の眠る場所で騒ぎは起こしたくねえ。あいつらも多分、そうだろう)

 

(では俺たちも祈りを)

 

リィンたちは得物を抜かず、デュバリィたちに近づく。

 

「遅かったですわね」

 

「やあ、昨日ぶりかな?妖精も久しぶり」

 

「久しぶりだね、血染めのシャーリー。いや今は紅の戦鬼だったか」

 

「何馴れ合っているんですの!」

 

「良いじゃん別に。それよりお兄さんたちも祈りを捧げるんでしょ?」

 

「まあな、ちょいとそいつには縁があってな」

 

「話は聞いています。重剣の異名を持つA級遊撃士、アガット・クロスナー。剣帝と渡りあったとか」

 

「け、剣帝!?」

 

「ずいぶん大仰な二つ名だが、もしや……」

 

「サラに聞いたことある。結社に剣の達人がいるって」

 

「ああ、結社《身喰らう蛇》の執行者No.2《剣帝》レオンハルト。リベールの異変で暗躍してた執行者の一人だ」

 

「そう言えば内戦の時、マクバーンがレーヴェって言っていたのは……」

 

「ええ………その通りですわ」

 

「No.1《劫炎》か……。会ったことはねぇが、相当ヤバそうだな?」

 

「ええ、内戦で何度か戦いましたが、次元が違いました」

 

「サラ教官を入れたⅦ組全員がかりで挑んでもギリギリだったもんね」

 

「しかも相手は手加減してた」

 

「ったく……どいつもこいつも化け物揃いだな」

 

「正直、彼らと一緒にされるのは心外ですが……。まあいいでしょう。それより祈りをすませるならどうぞ。わたくしたちは村の前の広場で待ってますわ」

 

デュバリィとシャーリーは行ってしまった。リィンたちはしばし、祈りを捧げて村の前の広場へ向かった。

 

 

 

広場ではすでにデュバリィが剣と盾を構えていたが、シャーリーは下がっていた。

 

「って……貴女が下がってどうするんですの!?」

 

「いや~、さすがにこの傷じゃ全力は出せないからね。あたしに傷を負わせた彼もいないし、今回は見学ってことで♪」

 

シャーリーは腹部の包帯を指さしながらあっけらかんと言った。

 

「な…な…な……」

 

「それより灰色のお兄さん、彼はどうしてるの?」

 

「無視!?」

 

「あ、ああ……キリコは生きてるよ。君たちが帰った後、目を覚ました」

 

「嘘!?ホントに?」

 

シャーリーは驚きながらも嬉しそうに反応する。

 

「なんで嬉しそうなんですの!?」

 

「いやだって……こんなの初めてなんだもん。あたしと引き分けた上に生きてるなんて。うふふ、ますます燃えるなぁ♥️」

 

「な、何この人……」

 

「純粋、いや無邪気なまでの闘争心」

 

「相変わらずの戦闘狂だね」

 

「これが赤い星座の副団長か……。心してかからねぇとな」

 

「だったら貴女も出ればいいでしょう!?」

 

「だ~か~ら~、万全じゃないから。灰色のお兄さんに妖精にアルゼイドのお姉さんだよ?加えてあの演奏家の彼にA級遊撃士が相手じゃさすがに無理だってば」

 

「ほう……なかなか頭も切れるな……」

 

「時にははっきりと割りきるのも猟兵の資質。特攻頼みじゃ生き残れない」

 

「ふふん、わかってるじゃん」

 

「ああもう!わかりました!貴女は下がってなさい!数の不利はこれらでカバーすればいいことです」

 

デュバリィが剣を掲げると、彼女の周りの空間が歪む。

 

「人形兵器か……!」

 

「彼女が使うのはたしか……」

 

「スレイプニルだったっけ?」

 

「その通り。せいぜい踊ってればいいのですわ」

 

彼女の周りに4体の人形兵器──スレイプニルが顕れた………が、突然機体に電流が走り、自爆した。

 

「………………へ?」

 

『……………………』

 

戦場に気まずさが立ちこめる。

 

「え、えーーと………」

 

「ええい、見るんじゃありませんわ!」

 

「うわ~~、カッコ悪」

 

「貴女も黙りやがれですわ!」

 

「ハッ、なめられたもんだな」

 

アガットは大剣をデュバリィに向ける。

 

「俺らごとき、不良品で十分ってことかよ」

 

「デュバリィさん、見損ないましたよ」

 

「今までは未熟故、どれほど暴言を吐かれても堪えてきた。だが……これほどの侮辱、許さぬ」

 

「あはは、僕もちょっとカチンときたかな」

 

「謝っても許さない」

 

「ま、待ちなさい!どうしてこうなったのかはわたくしにもわかりません!ここに拠点を置く際にメンテはきちんと済ませてますし、誰かが操作しない限りこんなこと起きるはずがありません!」

 

「…………嘘は言ってないみたいだけど」

 

「なら誰がってことになるよな」

 

「ここには我らしかいないはず。神速殿、これ以上ガッカリさせないでほしい。そなたのことは認めていた。だが先ほどからの行動はなんだ?」

 

ラウラは剣を納め、胸に手を当てる。

 

「あの真っ直ぐなそなたはどこへ行った?いや、もはや語るまい。神速は死んだ」

 

ラウラはデュバリィに哀れみの目を向ける。

 

「フ…フ…フ……」

 

デュバリィは突然、笑みを浮かべる。体は小刻みに震え、目にはひかるものがあった。

 

「さっきから……好き放題言ってくれますわね。ガッカリ?死んだ?小娘が……言ってくれやがりますわね。もう……いいですわ。あなたたち全員………

 

 

 

死になさい!!」

 

 

 

デュバリィは再び剣を掲げる。彼女の後ろが大きく歪み、空気が震える。

 

「なっ……なんだ?」

 

「この気配は……」

 

「何か来る……」

 

「チィ……こいつはまさか……!」

 

歪んだ空間から巨大なものが顕れた。それは、機甲兵や騎神を上回る大きさだった。

 

「こ、これは……」

 

「驚いたようですわね。これは神機アイオーンtype-γⅡ。結社の十三工房が造り上げた最高傑作。騎神など物の数にもなりませんわ!」

 

「さすがにヤバいかも……」

 

「目標を解析。対アーツ防御を確認。それにリアクティブアーマーと同じみたいだね」

 

「たしか、シュピーゲルと同じ?」

 

「結社は貴族連合軍に協力していた。技術が流れていてもおかしくない」

 

「いつまでごちゃごちゃ言ってるんですの!?あなたたちはさっさと……【教官!!】……!?」

 

突然、アイオーンtype-γⅡは攻撃を受けた。

 

声のする方を向くと、ドラッケンⅡに乗ったユウナとクルトたちが駆けつけてきた。

 

「き、君たちは………」

 

「追って来たんだ?」

 

「ふむ、少々無謀だが……」

 

「ナイスタイミング」

 

「ありがとうございます」

 

「なんとか間に合いましたね」

 

「ハッ、あのデカブツが相手か」

 

【気をつけて!あいつ、クロスベルで見たことある!】

 

「君たちは………。まあいい、説教は後回しだ」

 

リィンはARCUSⅡを取り出すと、どこかへ通信をする。

 

『もしもし、リィン君!?あのね……』

 

「ええ……わかってます。生徒たちは一緒です。それより彼を呼びます。準備をお願いします」

 

『うん!こっちはいつでも出せるよ!』

 

「ありがとうございます。ではまた……」

 

『待って!一つだけ約束して。全員で戻って来るって!』

 

「了解です」

 

リィンは通信を切る。

 

「悪いが君たちは少し下がっててくれ」

 

【な、何言ってるんですか!こんな時に!】

 

「リィン……呼ぶんだね?」

 

「ああ……」

 

「久しぶりだな」

 

「え?」

 

「まさか……!」

 

リィンは前に出て、拳を突き上げる。

 

 

 

「来い、灰の騎神 ヴァリマール!」

 

「応!」

 

 

 

相棒からの呼びかけに応え、灰の騎神が立ち上がる。

 

「これが……灰の騎神か……!」

 

「ひゅーっ!なかなかスゲエな」

 

ミハイルとランドルフが呆気にとられている横で、トワはヴァリマールに話しかける。

 

「ヴァリマール!」

 

「久しぶりだな。小さきキャプテンよ」

 

「ねぇ、お願い。リィン君を、みんなを守って!北方戦役のリィン君のニュースを聞いて私、どうにかなりそうだったの。今回もまた無茶したら……私……」

 

「案ずるな。リィンの苦しみを救ってやれなかった私にも責任はある」

 

「ヴァリマール……」

 

「そなたらは後から来るがよい。先に行く」

 

そう言ってヴァリマールは飛翔する。

 

「凄い……」

 

「ああ……全くな……」

 

「何を呆けている!全員これより出撃する!」

 

ミハイルの号令に全員、頭を切り替える。

 

 

 

数分後、ヴァリマールはリィンの元に降りる。

 

「これが……灰の騎神」

 

「ハッ、やっとお出ましかよ」

 

「綺麗な機体ですね」

 

「噂に聞いちゃいたが、本当に動くとはな」

 

「へーっ、これが騎神なんだ」

 

【クッ…………】

 

それぞれがヴァリマールを見つめる中、リィンは吸い込まれるように乗り込む。

 

「リィン、調子は?」

 

【問題ないさ。それよりまたよろしくな】

 

「うむ、だが心せよ。あの神機とやら、何かおかしい」

 

【そうか。ユウナ、援護を頼む】

 

【わ、わかりました!】

 

「そうは問屋が卸しませんわ!」

 

デュバリィは剣をヴァリマールとドラッケンⅡに向ける。すると、アイオーンtype-γⅡの背中から2機の円錐形の何かが展開する。円錐形の何かはヴァリマールとドラッケンⅡに光線を発射する。

 

【な……!?】

 

【なにあれ!?】

 

「驚きましたか?あれは対騎神用に開発された自律型支援武装『スクウェア』ですわ」

 

「自律型支援武装!?」

 

「クソが、厄介なもん造りやがって」

 

「対アーツ防御も搭載しているようですね」

 

「しかも空中、間合いが広すぎる」

 

「ふふふ、散々人を馬鹿にした報いですわ。おまけに身の程もわからない雛鳥ごときがわたくしによくも恥をかかせてくれましたわね。ここをあなたたちの墓場にして差し上げますわ!」

 

スクウェアはクルトたちに狙いを定める。

 

「さあ、死になさい!」

 

【しまっ………】

 

(ここまでですか……)

 

 

 

ズガーーーン!!

 

 

 

スクウェアは飛んできた砲弾が直撃し、爆発した。

 

「え?」

 

「どこからの攻撃だ?」

 

「方向は10時……」

 

「な、なんだあれは」

 

クルトが指さした方向には、見たこともない機甲兵が立っていた。左手には先ほど撃ったと思われるバズーカのような武器を持っている。

 

「チィ……余計な真似を!」

 

デュバリィは機甲兵?に剣を向ける。スクウェアはそれに合わせるように、光線を撃ち込む。

 

だが、機甲兵?は機体をローラーダッシュでスピンさせながら光線を全て避ける。

 

「なっ!?」

 

【ね、ねぇ。あの動き……】

 

「まさか……いや、そんな……」

 

「ありえません…………」

 

「じゃあなんだよ、あの動きは?あんなのできんのは一人しかいねえだろうが」

 

(世界の……流れが変わる……)

 

新Ⅶ組は知っていた。

 

【……………】

 

「リィン?」

 

「そなた……知っているのか?」

 

「あり得ない。でも、そうなんでしょ?」

 

リィンは絶句し、フィーは確信に至る。

 

「あははは!来てくれたんだ♥️」

 

シャーリーは歓喜する。

 

回避に専念していた機体兵?は攻撃に転じる。そして僅か2発の砲弾で最後のスクウェアを撃墜した。

 

「あ、ありえませんわ!あなた誰なんですの!?」

 

【……………】

 

「返事くらいしなさい!」

 

【……………】

 

機甲兵?は答えずにデュバリィの足元に砲弾を撃ち込む。

 

「キャアァァァァァッ!?」

 

デュバリィは僅かに反応が遅れ、爆風を浴びる。

 

機甲兵?はそれを見ることもなく、クルトたちに近づき、

 

【無事らしいな】

 

ただ一言発した。

 

これで全員が確信に至る。本来、いるはずのない男を。重傷を負い、離脱したはずの男を。

 

そして、分校最強の男を。

 

『キリコ!!』

 




後半ギャグっぽくなりましたがこれもデュバリィさんの魅力ですよね?

後、スクウェアは英語で従者って意味らしいです。
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