邂逅①
七耀歴 1206年 5月 13日
ライノの花が完全に散り、春も終わりに近づいていた。そんな中でも、キリコたちは忙しい日々を送っていた。
[ユウナ side]
分校に入って1ヶ月以上経ったけど、授業の内容はさらに複雑になった。
今までのに加えて軍事学なんてのをやるんだけど正直解りづらい。
記号だの方向だの細かいし、専門用語が多すぎて理解が追いつかない。
それにあたしの……ううん、あたしたちの故郷を侵略した国の軍隊の勉強なんてやりたくない。
わがままなのはわかってる。だけどなんだかやるせない気持ちになる。
アルは情報局だから完璧みたいだけど、意外にもキリコ君は少し手こずってるみたいで、クルト君はなんとかついていってるって感じ。
だけど分校のみんなはあたしがクロスベル出身だからって何か言うことはない。
Ⅶ組のクルト君とアルとキリコ君をはじめ、テニス部のゼシカとルイゼも仲良くなった。
そういえばクルト君とキリコ君が仲直りしてからは寮生活でも実習でも息が合ってたりする。
クルト君、あんな態度をとってたのに。
男の子の友情ってやつ?
ちょっぴりうらやましい、かな。
[ユウナ side out]
[クルト side]
「ふうー………」
日課の鍛練を終えた。
いつもより乱れがなかったような気がするし、心に少し余裕ができた感じもする。
この前の演習で僕は失態を演じてしまった。
その結果、仲間を危険に晒し、教官にさえ見限られてしまった。
原因はわかってる。僕があまりにも中途半端だったからだ。
僕は体格が父上や兄上に劣ることからヴァンダール流の剛剣術を継げず、双剣術を修めた。
他でもない僕自身のことなのに、僕は少しみじめな気持ちだった。
それに加えて皇族守護の任を解かれたことも重なって、卑屈になっていたんだろうな。
演習ではそれが形になって表れたんだと思う。
初日は人形兵器に背後を取られたり、追い詰められて諦めかけたり散々だった。
ラウラさんが助けに来てくださらなかったら教官が封じていたあの力を使っていたかもしれない。
今思うとラウラさんに言ったことは僕自身の否定だった。
多分、あの時点で教官は見抜いていたんだと思う。
翌日、政府の要請で分校を離れることになった教官からキリコの方が上だと告げられた時、僕はすんなり受け入れた。
キリコと僕とでは覚悟が違ったからだ。
そんな時、折れかけた僕をユウナが叱咤し、励ましてくれた。
あれがなかったら完全に折れていたかもしれない。
その後、Ⅷ組のアッシュとⅨ組のミュゼとともに演習からエスケープして教官方に加勢。
復活したキリコも加わり結社を退けることに成功した。
その直後に色々と不可思議なことがあったが、最終的に僕はキリコと和解し、教官から認められた。
僕はもう迷わない。
たとえ剛剣術が使えなくても双剣術を極めてみせる。
それが僕の道だ。
「クルト side out]
[アルティナ side]
5月 12日、異常なし。
先月の演習では独断専行を犯してしまい、懲罰が課せられると思っていました。
しかし、アランドール少佐からはお咎めなしと告げられました。
不可解ですが、上官がそう言うので仕方ありません。
不可解と言えば、二つほどあります。
一つはキリコさんのことです。
紅の戦鬼に撃たれて重傷を負ったはずですが、キリコさんは一命をとりとめました。
それだけならまだしも、実験用機甲兵に乗ってハーメル村にまで駆けつけました。
その時点でキリコさんはほとんど完治してました。
しかし、キリコさんはわたしと違って普通の人間のはずです。
いえ、たとえホムンクルスであったとしてもあの回復力は異常です。
調査案件に加えるべきかもしれませんがわたしの任務はリィン教官の監視なので不要です。
もう一つはわたし自身のことです。
わたしはキリコさんが生きていた時ホッとしました。
そもそもキリコさんの負傷は独断専行の結果なのに、キリコさんを見殺しにしようとは思いませんでした。
また、ユウナさんからアルと呼ばれることに抵抗感を感じません。
わたしは任務のためだけに必要なはず。
なので他のことはどうでもいいはず。
なのになんなのでしょう、この気持ちは………。
[アルティナ side out]
HR直前
「ふぁ~、疲れた~」
「ああ、お疲れ」
「先月も同じ事を言ってましたね」
「いいじゃないのよ~。……同じと言えばキリコ君も平常運転よね?」
「そうだな」
「変わりませんね」
「ふう……。それにしても、なんだか内容が難しくなってない?」
「そうかもしれないな。まあ、入学して1ヶ月だからね。そろそろ慣れも出てくる頃だろう」
「5月病の予防ですか」
(メリハリをつけるためといったところか……)
「でもこの間に比べたらなんて事ないわ。こんなことでへこたれてる暇はないんだから!」
「そうですね」
「ああ、その通りだ」
「そう言えば、新しい人が二人も入ったんだよね」
「ああ、ハイアームズ侯爵家の執事のセレスタンさんが分校の用務員としてね」
「そうそう!セレスタンさん。でも侯爵さん困らないのかな?」
「いや、なにも執事はセレスタンさんだけじゃないだろう。なんでもハイアームズ侯爵家の三男にあたる方と教官は同窓生らしいんだが」
「へー、そうなんだ。つくづく驚かされるわね。それでもう一人は……」
「教官の同窓生のミントさんですね。確か技術スタッフとして」
「…………………」
「あれ?キリコ君、どうかしたの?」
「ああ、なんでもミントさんが肝心なところでミスをして、博士に毎日のように叱られているらしいんだが、そのとばっちりがキリコやティータに飛び火してるらしいんだ」
「かなり優秀な技術者のようなんですが……おっちょこちょいというか」
「あはは……キリコ君、お疲れ様」
「ああ」
「あっ、そうそう。キリコ君が乗ってたあの機甲兵ってどうなったの?」
「回収した後、修復された。記録データと俺の意見書を基に改修と新たな強化プランに回すらしい。後予備としてもう一機が格納庫に搬入されたそうだ」
「なるほどな」
「思ったのですが……最初から新型機甲兵を製造すれば良いのでは?」
「博士によると製造元がラインフォルトとは別口らしい。新造するより既存の機甲兵をベースにした実験機の方が安くすむそうだ。後いちいち造る手間も省けるとも言っていたな」
「なによそれ!?適当過ぎない?」
「兵器開発ならある意味当然の判断と言えますが……」
「コストをかけずにか、だが釈然としないな……」
「そんなものだ」
「後、ティータさんが言っていましたが、あの実験用機甲兵──フルメタルドッグでしたか。分校生徒で運用しようとしたら操作性が特殊過ぎてキリコさん以外に扱えないとか」
「僕もシドニーから聞いたことがある。分校長でさえ匙を投げたらしいが」
「め、滅茶苦茶ね………」
「必然的にキリコさん専用機というわけですか」
「………………」
話題は男女別れての授業についてになった。
「クルト君とキリコ君は導力ネットについてやったんだよね?」
「ああ。二人は調理実習だったか」
「あはは、うん」
5、6限
女子生徒は調理実習でお菓子を作っていた。
「──それじゃみんな、まずはレシピ通りに進めてね!お菓子作りは分量と手際が大事!経験者は教えてあげてね」
『はーい!』
[ユウナ side]
あたしとアルはティータとミュゼの4人で班を組んでお菓子作りやってたの。ティータはすごく手際が良くてミュゼはまあまあ、アルはちょっと危なっかしかったけど。
あたしもお母さんに一通り教わったんだけどティータには敵わない。
「ユウナさんは意外に女子力というものが高いんですね」
「意外にって何よ、意外にって!あたしだって下の子たちにお菓子を作ってたんだからね」
「ユウナさんご兄弟がいるんですか?」
「うん、弟と妹がね。ってアル!こぼしかけてる!」
危うく生クリームが台無しになるとこだったわ。
「ふふ、私も頑張らなくては。皆さんもリィン教官に美味しく召し上がっていただくためにでしょう?」
「なんでそんな話になるのよ」
「そもそもミュゼさんとリィン教官は接点がありましたか?」
「ふふふ、どうでしょう?」
なんか誤魔化された気がする……
「そう言えばリィン教官の女性関係ってあまり聞きませんね」
「演習の時に来てた人たちがそうだったよね」
「アルゼイド子爵家のラウラ様に遊撃士のフィーさんでしたか」
「あんな強くて綺麗な人たちとあんな風に親密だなんて……」
「後、エリオットさんもカイリ君みたいに可愛い系だし、色々と恵まれ過ぎでしょ、あの人!」
「落ち着いてください、ユウナさん」
「あ、それもアリですね♥️乙女の嗜みとしては!」
「な、何がなんだか……」
「理解不能です……」
うん、あたしも理解できない。ていうか同族扱いしないで!
「なになに、リィン教官の話?」
そしたらみんなが集まってきた。
「確かにカッコいいけど、この学院、他にもハンサムな人が多いよねぇ」
「ランドルフ教官もワイルドなイケメンだし、ミハイル教官もやかましくなければ悪くない顔立ちだね」
ランディ先輩はあの軽さがなければね。ミハイル教官には概ね同意かな。
「ふふっ、男子もなかなか粒揃いですよねぇ。クルト君みたいな綺麗系にアッシュ君みたいな不良系」
「確かにクルト君は反則かもね。女子より整ってるっていうか……。カイリ君くらい可愛いタイプだと逆に妬ましくないけれど」
「……アッシュさんは少し怖いです……」
「他の男子も分析すると───スターク君は知的スマート系、グスタフ君は寡黙ドッシリ系、ウェイン君は頑固暑苦しい系、パブロ君は剽軽お調子者系、フレディ君はワイルド野生児系──」
「あっ、シドニー君は残念二枚目系でしょうか?」
「……さすがに失礼なんじゃない?」
クルト君によると、シドニー君はモテたいからチェス部に入ったとか。
でもシドニー君がモテてるって話は聞いたことない。
「問題は後一人……」
「キリコ君ね……」
「キリコさんは……その……近寄りづらいというか……」
タチアナからはあまりいい評価じゃないわね……。まぁ、最初はあたしもそうだったし。
「キリコさんはとにかく不言実行がほとんどですね」
「クールっていうか、ドライっていうか……とにかく冷静沈着よね」
「授業でもスラスラ答えていますし、詰まったりした所は一度も見たことがありませんね」
「技術者としても私より上だと思います」
アルとヴァレリーとミュゼとティータはキリコ君の長所を挙げていく。
「ふむ。統合すると、キリコ君は孤高の天才系といったところでしょうか」
マヤの言うとおりかも。
確かにキリコ君って強いし頭も良いし機械にかなり強いしね。それに無口で愛想もよくないけどすごく頼りになるし。
「それに機甲兵なら第Ⅱ分校最強の腕利きだからねぇ。生身でも十分強いけどさ」
「ええ……あの冷静な判断力と大胆な戦法は凄いと思うわ」
レオ姉とゼシカはキリコ君のことを認めてるっぽい。
キリコ君に分校生徒全員で挑んでも敵わなかったりして。
「でもキリコ君ってなんかカッコいいよね」
「あっ、わかります。大人びてて陰がある感じですよねぇ~」
サンディとルイゼはそんなことを言った。
確かにキリコ君って同い年に見えないのよね。
「ほらほら、調理実習中だよ!」
すると、トワ教官から注意が飛ぶ。
「そう言えば、トワ教官ってリィン教官と仲がよろしいんですよね?」
「へっ……!?」
「あ、あたしも気になってました!それとティータちゃんと赤毛の遊撃士さんについても!」
「ふえっ……!?」
ミュゼとサンディの一言がきっかけで教室の空気が一変しちゃった。
こうなってくるともう調理実習どころじゃなくなちゃった。
「あんた、狙ってたでしょ?」
「ふふ、何のことでしょう?」
なんかはぐらかされた。
「あううっ……」
「ああもう……!みんな、静かにしなさ~い!」
トワ教官の言葉を最後にみんな戻ってお菓子作りを再開した。
調理実習が終わった後、トワ教官からお説教もされたけど。
ちなみに作ったお菓子はクルト君とキリコ君に配る予定。
教官は………………余れば。
[ユウナ side out]
一方、男子生徒は導力ネットの課題をこなしていた。
[クルト side]
僕たちはリィン教官とシュミット博士の指導で導力ネットについて学んでいた。
ただ、博士が『サルでも分かる課題プログラム』をおいてどこかへ行ってしまった。
僕たちは呆れるしかなかったが、リィン教官主導で進めることになった。
「やあ、キリコ。どんな具合だい?」
「スターク、それにウェインか。問題はない。そちらはどうだ?」
「ああ、さっぱりわからん」
「そっちも大変だな」
「ああ、クルトか。導力ネットがこれほど難しいとは思わなかったよ。まぁ、これからは帝国と言えど商取引は導力ネットが主流になるんだろうけどな」
「クロスベルではとっくにそうらしいがな」
クロスベル市は金融街としての一面を持っていたはずだな。
「それにしても女子はお菓子作りかいな」
「確かこの後、俺たちはカレー作りだったな」
「ううん……料理はちょっと自信が……」
パブロとグスタフが次の授業のことを話している横でカイリが暗くなってるな。
「フハハ、腕の見せ所だな!」
調理実習か……なんとかなるかな?あとフレディが変な物入れないかが問題だな。
「そう言えばクルト、お前は料理できるのか?」
「簡単なものしか作れないな。そういうウェインはどうなんだ?」
「ここに来るまで料理などやったことがないんだ。だがこれは実習。必ずやり遂げてみせる!」
「そ、そうか……」
気合いが空回りしないといいが。
「ところでアッシュ!君も少しは協力したまえ!」
ウェインがだらけているアッシュに注意を飛ばす。
「自分たちのような初心者でも力を合わせれば──」
「ハッ、くだらねぇな。これ以上は時間の無駄だ。バックレさせてもらうぜ」
そう言ってアッシュは出ていった。
憤慨するウェインを横にスタークはアッシュの端末の画面を覗くと、すぐに教官を呼んだ。
なんとアッシュは全問解き終わっていた。
さすがに全問正解ではないが十分及第点は取っていた。
教官の言うとおり導力端末を扱った経験があるのかもしれない。
「ふう……」
僕らを尻目にキリコは一息ついていた。
「お?キリコ終わったのか?」
「ああ」
「へぇ、どれどれ……」
シドニーがキリコの端末を覗きこむ。
「……………」
画面を見つめるシドニーは唖然としていた。
「なあ、キリコ……。これ、俺たちと違くね?」
「え……?」
「博士が勝手に操作したらしいな」
『は!?』
全員で見に行くと、僕たちよりはるかに難しい課題が写っていた。
というか博士は何しているんだ?
「これは……!」
「全問正解してる。こんな難しい課題を」
「マジか……」
「チキショーッ、イケメン補正かかりすぎだろっ!」
だから何なんだその補正は。
「──ほら、授業中だぞ!時間がかかってもいいから丁寧に解いてみてくれ。後半、難しいようなら遠慮なく質問するといい」
『は~い!』
その後は教官やキリコに聞きながら全員課題プログラムを終えた。
それにしてもアッシュ・カーバイドか……。
[クルト side out]
「へぇ~、そっちも大変だったのね」
「お疲れ様でした」
「はは、疲れたよ」
「……………」
「そう言えば男子の調理実習はどうなったの?」
「ああ、なんとか上手くいったよ。僕はパブロとシドニーと組んで、キリコはスタークとウェインだったか」
「ああ」
「クルトさんはともかく、キリコさんも料理できるんですね」
「うん、あんまりイメージがないよね」
「確かにキリコはコーヒーを豆から煎って、ミルで挽いてから淹れる姿しか見たことないな」
「それくらいしかできない」
「十分過ぎると思いますが……」
「あはは……。あっそうだ、これクルト君とキリコ君にお裾分け」
「どうぞ」
ユウナとアルティナはお菓子を二人に渡した。
「ありがとう」
「これはクッキーか?」
「うん。久しぶりだからわかんないけど食べてみて」
「いや、教室はまずいだろう」
「──教室での飲食は禁止だぞ?」
リィンがユウナを窘めるながら教室に入る。
「お疲れ。今日も盛りだくさんだったな。初めての男女別授業もあったが結構新鮮だったんじゃないか?」
「「……………」」
ユウナとアルティナはそろってジト目を向ける。
「えっと……」
(……クルト、キリコ。俺、何かやらかしたか?)
(知りませんよ……。どうやら女子の授業で盛り上がったそうですけど。教官は女難の相が強そうですし気をつけた方がいいのでは?)
(……………………)
「……フン、まぁ教官自身にそこまで非があるわけじゃないし」
「本人の自覚が薄い以上、気にするだけ損かもしれません」
「まあいい………部活も本格的に始まったし、ケガや体調管理は気をつけてくれ」
「それと──明日は自由行動日になる。趣味、遊び、部活など何をするかは各自に任せるが……週明けには機甲兵教練、週末には特別演習があるから注意してくれ」
「ふう……あっという間な気がしますね」
「ちなみに次、どこに行くかは教官も知らないんですよね?」
「ああ、俺たち教官陣も明日のブリーフィングでだな。前回のことを考えると一筋縄では行かない可能性もある。どうか英気を養っておいてくれ」
「了解」
「特務活動はともかく……結社の動向は心配ですね」
「うん……ロクでもないことをまたしでかしそうな気配だったし」
(幻焔計画だったか)
「──ちなみに次も帝国政府の要請があったらリィン教官だけ別行動を?」
「そう言えば……」
「実力不足は否定しませんが全く当てにされないのも……」
「…………」
「……正直に言わせてもらえば君たちの身を案じてでもある」
リィンは重い口を開く。
「だが、入学して2ヶ月近く、君たちも鍛えられてきたようだ。確約まではできないが、次は協力してほしいと思っている」
「あ………」
「言いましたね!?よーし、言質は取った!」
「……力を尽くします。稽古なども付けてもらえれば」
「ああ、考えておくよ」
そしてリィンはキリコの方を向く。
「キリコ、実験用機甲兵の運用実験についてだが……」
「ええ、聞いています。週明けに」
「週明け?機甲兵教練じゃないの?」
「何も演習中にのみやれとは言われてない」
「では……」
「ああ、フルメタルドッグで出る」
「なるほど。これは手強くなりそうだな」
「──HRは以上だ。アルティナ、号令を頼む」
「はい。起立──礼」
ちなみにHRの直後、アルティナと顔を赤くしたユウナはリィンにお菓子を渡した。
「キリコさん、ちょっといいですか?」
格納庫で作業していたキリコはティータに話しかけられる。
「どうした?」
「あの、明日帝都に買い出しに行きたいんですけどキリコさんも行きませんか?」
「買い出し?」
「はい。料理研究部の買い出しと技術部での必要なパーツの注文なんですけど……」
「男手ならフレディがいるだろう。それに午前に機甲兵のテストがある」
「あっ、午後で構わないんです。それにちょっとフレディ君だけだと荷物が多いので、なんとかなりますか?」
「………」
「ええっと………」
「………わかった」
「ありがとうございます!ごめんなさいわざわざ」
「気にしなくていい。それより外出届けはあるか?」
「あっ、今持ってきますね」
そう言ってティータは校舎へ向かった。キリコが作業に戻ろうとすると………
「キリコさん、ちょっといいですか?」
ミュゼが話しかけてきた。
「なんだ?」
「ティータさんと態度違いませんか?」
「…………」
「まあ、それはともかく、これどうぞ」
ミュゼはそう言って、キリコにお菓子を渡す。
「クッキーか」
「はい。キリコさんに召し上がってほしくて心を込めて作りましたわ♥️」
「……そうか」
「あっそれとコーヒーもどうぞ」
「いただこう」
(ふふっ、作戦成功、ですね♪)
キリコは作業を中断し、クッキーをかじる。
「悪くないな」
「ふふ、ありがとうございます。キリコさんはコーヒーを嗜むので甘さは控えめにしたんですけど……」
「ああ、悪くない」
「嬉しいです♥️」
「……………近づき過ぎだ。離れろ」
「ああん、キリコさんのいけず♥️」
「…………………………」
ミュゼはティータが戻ってくるまでキリコに寄り添っていた。
次回、原作に先駆けて何人か登場します。