英雄伝説 異能の軌跡   作:ボルトメン

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色々考えていく内に多くなったのでまとめたら久々に一万字超えました。


邂逅②

5月 14日

 

キリコは週明けの機甲兵教練に向けて、いつもより念入りに機甲兵のチェックを行っていた。

 

(駆動系は問題なし。エンジン各部問題なし。フレーム及び装甲も異常なし)

 

「キリコさん、そっちはどうですか?」

 

「項目は全てクリアだ」

 

「わかりました!」

 

ティータは早速、端末に数字を打ち込んでいく。

 

「キュービィー、弟子候補ちょっと来い」

 

キリコとティータはシュミット博士に呼ばれ、二階に上がる。

 

「何か?」

 

「お前たちはどう見る?」

 

シュミット博士の前には先月に遭遇した神機アイオーンtype-γⅡの残骸があった。

 

「これをどこで?」

 

「TMPが回収したものをこちらの方にも回させた。アーヴィングあたりが『手を煩わせるわけには』などと抜かしていたが、余計な世話というものだ」

 

「…………」

 

「は、博士~……」

 

ティータは呆れていた。

 

「それで、何かわかったんですか?」

 

「そう急くな弟子候補。この破片だけで正確な解析など出来るものか」

 

(確かにな)

 

「ただ一つ言えるのは……その神機とやらが機動していた事自体、工学的におかしいということだ」

 

「何?」

 

「どういうことですか?」

 

「この機体に使われている合金──クルダレゴンだったか」

 

「クルダレゴン?」

 

「もしかすると結社が開発した素材かもしれません」

 

「機甲兵に使われる特殊鋼よりも優れた素材ではある。だが、報告にあったほどの巨体を支えられるほどの強度では到底ない。仮に貴様やシュバルツァーが手を抜いたとしてもだ」

 

「……………」

 

「まあまあ。でも灰の騎神の武器は確かゼムリアストーン製のはず。でもそれを防いだということはそれ以上の硬度でなければなりませんし……」

 

(そう言えばやつらは実験と言っていたが……こうなると神機そのものではないということになる)

 

「フン、サンプル不足だが調べられるだけ調べておくか。貴様らもとっとと準備を済ませろ」

 

「……了解」

 

「わ、わかりました!」

 

 

 

「あっ、キリコ君、ティータちゃん。ちょっといいかな?」

 

一階に降りると、ミントに呼ばれる。

 

「何かご用ですか?」

 

「キリコ、愛想よくしろとは言わないが一応先輩だぞ?」

 

ミントの隣にいたリィンに窘められる。

 

「いいのいいの♪キリコ君ってかなり優秀だから。それに結構迷惑かけちゃったみたいだし」

 

「そ、そうか……(相変わらず度胸があるというか……)」

 

「それでミントさん、どうしましたか?」

 

「うん、リィン君にさっき話したんだけど」

 

ミントはキリコとティータに球体の物質を見せた。

 

「これは?」

 

「オーブ……ですか?」

 

「ああ……内戦の時に俺の一つ上のクララって人が古代の文献から騎神用のオーブの作り方を習得してな。そのオーブをヴァリマールに組み込むことでパワーアップするんだ」

 

「す、すごいですね……!」

 

「ああ。でもクララ先輩って卒業と同時に彫刻家になって、個人でアトリエを構えたと聞いていたような……」

 

「彫刻家?」

 

「技術者じゃないんですか?」

 

「うん。クララ先輩ってトールズ本校の元美術部長だよ?」

 

「なんでも、内戦時に偶然ノルド高原の石切場で製作風景の壁画を見つけて、そこから見よう見まねで習得したそうだが……」

 

「「………………」」

 

「あはは、すごいよね。クララ先輩」

 

「あ、あはははは…………」

 

ティータは乾いた笑いをあげるしかできなかった。

 

「それで、このオーブがなんだと?」

 

「うん、ここからが本題なんだけど──実はクララ先輩からオーブの作り方を教わったの。それで試しにオーブを作ってヴァリ君に組み込んでみたら、面白いことが起こったんだよねー」

 

「面白いこと?」

 

「フフン、何を隠そう騎神のリンク現象に関することなんだけど──どうやらオーブの効果が準起動者(ライザー)が搭乗する機甲兵にも影響することが分かったんだよね」

 

「準起動者と言うと、旧Ⅶ組のみんな、それにユウナやクルト、それにキリコか……」

 

「それなんだけど……なぜかキリコ君のドッ君にはそれの効果が薄いの」

 

「えっ?」

 

「………」

 

「その様子だと自覚はあるみたいだな?」

 

「はい。周りの考えはわかりますが、そこまで強化されたとは思えません」

 

キリコは先月のハーメルの一件を思い返しながら答える。

 

「それについては後で考えるとして、こうなってくると、彼らにはその力を使いこなせるようになってもらう必要があるな」

 

「そう言うと思ったぞ」

 

振り返るとシュミット博士が立っていた。

 

「これからそのオーブとやらのテストを兼ねて機甲兵の戦闘訓練を行ってもらう」

 

「今からですか?」

 

「今やらんでいつやるのだ。既に分校長から許可は取り付けてある。機甲兵の整備は済んでいる。早く準備をしろ弟子候補」

 

「は、はいっ!」

 

「後キュービィー。貴様は出るな」

 

「出るなとは?」

 

「オーブの効果が薄い貴様に何を期待しろと?それに貴様なら単機で十分食い下がれるだろう」

 

「………わかりました」

 

キリコはそう言ってティータとともに準備を進める。

 

「……………」

 

「シュバルツァーもわかってるはずだ」

 

「ええ……キリコと彼らではレベルが違います。無理に加えればキリコに頼りきりになりかねません。多分彼もわかってますよ」

 

「ならばいい」

 

シュミット博士との会話を終えたリィンはARCUSⅡでユウナとクルトとアルティナを呼び出した。

 

 

 

十分後、グラウンドにはドラッケンⅡ二機とヴァリマールが対峙していた。

 

【二人とも、準備はいいな?】

 

【ええ、問題はありませんけど……キリコ君は?】

 

【今回は君たち二人だけで挑んでもらう。アルティナとキリコはサポートを頼む】

 

「わかりました」

 

「了解」

 

【キリコ君、それでいいの?】

 

【いや、いい機会だ】

 

【クルト君!?】

 

【ユウナ、僕たちはあまりにキリコに頼りすぎてると思わないか?】

 

【そ、それは……】

 

【先月の時だってキリコが来てくれなかったら僕たちは負けていた。でもそれじゃダメなんだ】

 

【……………】

 

【僕たちがこのままならまた同じ事が起きる。そうならないためにも、強くならなければいけない。キリコの隣に立つくらいにね】

 

【……うん!そうだね!】

 

【もう大丈夫だな?】

 

【はいっ!】

 

【いつでもいけます!】

 

【ふふ、それにしてもこんな形でリィン教官に挑めるチャンスをもらえるなんてね!】

 

【それに相手はヴァリマール。挑み甲斐があるしな】

 

「私もサポートさせていただきます」

 

「それじゃ、勝利条件はヴァリマールの小破ってことで──レディー………ゴー♪」

 

ミントの合図で訓練が始まった。

 

 

 

クルトのドラッケンⅡがヴァリマールのアームに斬りかかり、ぐらついたところを追撃。

 

ヴァリマールが構えを変えるとすかさず、ユウナのドラッケンⅡがクラフト技クロスブレイクで駆動解除。

 

その合間にキリコとアルティナが攻撃アーツを発動し援護。

 

その直後にヴァリマールがクラフト技弧月一閃でドラッケンⅡ二機に斬りつける。

 

【どうした?隙だらけだぞ!】

 

【クッ……!】

 

【まだまだ!】

 

ユウナとクルトは一度神気で回復。

 

【いい気迫だ。だが……!】

 

ヴァリマールは攻撃の手を緩めず、斬りかかる。

 

だがそれでもユウナたちはあきらめなかった。

 

【クルト君の言うとおりね。あたしだってもっと強くなってみせる!】

 

ユウナはクラフト技ジェミニブラストでヴァリマールをぐらつかせる。

 

【今よ!】

 

 

 

『エクセルバースト!』

 

 

 

ユウナの銃撃を起点にクルトの双剋刃の追撃。とどめにフルパワーの突進攻撃をかける。

 

真正面から受けたヴァリマールは膝をついた。

 

【フフ、見事だ】

 

ユウナとクルトは勝利をおさめた。

 

【や、やった──!?】

 

【ああ……一応、小破は達成したみたいだな】

 

「お二人とも、本当にお疲れ様でした」

 

「うんうん、カッコよかったよ」

 

【ふむ、これだけやれれば合格だな】

 

ヴァリマールは立ち上がる。

 

【……って、全然効いていなさそうだけど】

 

【……まだまだ精進あるのみだな】

 

 

 

訓練後、ユウナたちは休憩をはさんだ後、小要塞に向かうことになった。

 

「今度はキリコ君も来るのね」

 

「ああ」

 

「キリコもⅦ組の仲間だからな」

 

「そうですね」

 

「だが、いいのか?技術部の買い出しで帝都に行くらしいが」

 

「午後でも構わないらしいので」

 

「はい。これが終わったらランチを食べてから行ってきますね」

 

「いいなぁ。あたしも行きたかった~」

 

「まあ……僕たちは部も違うしね」

 

「とにかく、今は要塞攻略に力を入れよう。気を抜かないようにな」

 

「はい」

 

 

 

一行が小要塞の前に着くと、入り口から意外な人物が現れた。

 

「ラウラ!?」

 

「リィン、それに新Ⅶ組か。先月ぶりだな」

 

「な、なんでここに?」

 

「うむ、修行場所を探していたらシュミット博士から連絡が来てな。先ほどまでここで剣を振っていた」

 

「な………」

 

「博士、いつの間に……」

 

「アルゼイド流の皆伝者のデータは興味深い。副ルートでのデータ収集に協力してもらった」

 

「副ルート、というと……?」

 

「前回のテストのデータを元に、私が独自に実験を行っているルートだ。小規模だが、より手応えのあるものに変わっている。Ⅶ組への依頼とは別にいいデータが取れるだろう」

 

(そんなものまで実験していたとはな)

 

「フフ、私の方は一向に構わぬ。手応えがあるに越したことはないからな」

 

ラウラは鷹楊に答える。

 

「ラウラはこれからどうするんだ?」

 

「うむ、せっかくだからそなたの就職先を見学させてもらうとしよう」

 

「見学、ですか?」

 

「ああ。それに水泳部があると聞いたのでな」

 

「そうか、ラウラは元水泳部だったな」

 

「そうなんですか?」

 

「ただ見るだけというのもなんだな。オーレリア殿に頼んで水泳部の臨時コーチをやらせてはもらえぬだろうか?」

 

「ラウラさんが臨時コーチですか……」

 

「かなりキツそうですね………」

 

「まあ、不可能ではないだろう。分校長はたしか学生食堂の下の修練場にいるはずだから」

 

「わかった。それと、Ⅶ組には水泳部に所属する者はいないのか?」

 

「えっと……アルがそうですけど……」

 

「そうか。午後には行かなくてはならぬのでな。そなたの指導ができぬのは残念だな」

 

「お気になさらず」

 

「またな、ラウラ」

 

「うむ、それではな」

 

ラウラはプールのある修練場に向かった。

 

「ラウラさんって水泳部だったんですね」

 

「ああ、水泳部どころか本校で一番速かったんじゃないかな?ちなみにフィーも速かったぞ?」

 

「そうなんですか!?」

 

「ああ、水泳部にとっては実りの多い部活動になるだろうな」

 

「地獄の間違いでは?」

 

「アルも残念だったね。ラウラさんに見てもらえなくて」

 

「結構です」

 

アルティナはいつにもまして強く言った。

 

「まあ、根性一辺倒にはならないさ。演習で道場に立ち寄った時も見たが、精神論と理論双方に基づいた鍛練だった。ただ闇雲に剣を振るうのではなく、それぞれに合った鍛練法を教えていた。さすが臨時師範代を務めるだけあるな」

 

「仰る通りです。闇雲に振るったところで強くなんてなれませんが、それぞれ個性というものがありますから」

 

「ふーん、そういうものなんだ?」

 

(同じATでも使い手に左右されることはよくあることだからな)

 

「そろそろ準備をしろ。いつまで喋っているつもりだ」

 

シュミット博士の一言に全員が頭を切り替える。

 

「うーん、まさかまたここに入る事になるなんて。でもまあ、やるっきゃないよね!」

 

「ああ、高いハードルはむしろ望むところさ。挑む以上、全力でやるだけだ」

 

「準備はできている」

 

「同じく──いつでも開始できます」

 

「ハハ、その意気だ。それじゃあ始めるとするか」

 

リィンたちは気合いを入れ、小要塞LV2に足を踏み入れた。

 

 

 

[キリコ side]

 

小要塞内部は前回とは完全に別物だった。

 

「みんな、徘徊している気配も前回とは段違いみたいだ。くれぐれも気をつけてくれ」

 

リィン教官の言葉に全員が返すと、天井から声が響く。

 

『準備はいいようだな?アインヘル小要塞LV2の実戦テストを開始する』

 

『皆さん、どうかお気をつけて!』

 

「行くぞ。Ⅶ組総員、攻略を開始する!」

 

『イエス・サー!』

 

 

 

道を進んで行くと、そこは行き止まりだった。いや、通気孔のダクトがあるが、まさか……。

 

『えっと、今回は新しい地形のテストも含まれてまして……』

 

「なるほど、ここを通るわけか。俺に続いてくれ」

 

リィン教官を先頭に俺、クルト、ユウナ、アルティナの順にダクトに入る。

 

「なんでこんな所を通んなきゃいけないのよ~っ!」

 

「いやテストだし──ってああ。……まあ、暗いから大丈夫さ」

 

「さ、察してんじゃないわよっ!」

 

「お二人とも、進んでください」

 

「静かにしろ。本物の潜入任務なら命取りだ」

 

「ううぅ……だって……」

 

「気持ちはわかるが今はテスト中だ。終わったら苦情は聞くから。後は博士にもかけあってみる」

 

あの博士が聞くとは到底思えないが。

 

ダクトを出た後、魔獣と戦闘になった。機動力はこちらより上か。

 

「速攻だ、太刀風の陣!」

 

クルトがブレイブオーダー発動させる。こちらの機動力が相手を上回ったようだ。これなら問題ない。

 

魔獣を片付けた後さらに進むと、道が途中で途切れている。

 

辺りを見回すと、またダクトがある。どうやら入れということらしい。

 

ダクトを進むと装置があり、動かすと、ロックが解除された。これで進めるな。

 

もっともユウナはさらに機嫌が悪くなったが。

 

さらに進むと、人形兵器のようなものが行く手を阻んでいたが、戦術リンクのバーストで一掃する。

 

「……なかなか手強いな」

 

「はぁ、人形兵器みたいなのまで徘徊しているなんて……。魔獣もそうだけど、一体どこから引っ張ってきてるんだか」

 

「今の機械はわからないが……魔獣は軍方面に集めさせているみたいだな。シュミット博士だったらそちらにも顔が利くんだろう」

 

魔獣をコントロールする装置か何かがあるのかもしれないな。考えてみればとんでもない発明だな。

 

「まあ、主力戦車や機甲兵、列車砲の設計者でもありますし」

 

「ちょ、ちょっと待って……列車砲って、あれのこと!?クロスベルとの国境にずっと配備されていた ──」

 

アルティナの一言にユウナは動揺を隠せないようだ。まあ、クロスベル出身者なら当然か。

 

「……そうか、君は"向けられる側"だったな」

 

「たしか80リジュ砲を備える長距離戦略兵器……だったか?」

 

威力も甚大で、たった二機でクロスベル市全域を滅ぼせるらしいが……。

 

「うん、《ガレリア要塞》に配備されてクロスベル市に向けられ続けて………あんなものまであの博士が設計しただなんて……」

 

途端にユウナが黙りこむ。さすがにショックが強すぎたか?

 

「………?」

 

「ユウナ……?」

 

アルティナとクルトが心配そうに見つめる。

 

 

 

「フン、上等じゃない!こうなったら、こんなテスト、グウの音も出ないほど完璧にクリアしてやるんだから!!」

 

 

 

どうやら落ち込んでいるわけではなさそうだな。

 

「……その意気だ。だが、あくまでも冷静にだ。それは分かっているな?」

 

「っ……ええ、もちろんです!」

 

ユウナは俺たちの方を向いた。

 

「クルト君、アルも!力を貸してもらうからね!」

 

「あ、ああ……もちろんだ」

 

「よく分かりませんが……全力でサポートします」

 

「もちろんキリコ君も頼むね!」

 

「わかった」

 

 

 

その後、いくつかの仕掛けを突破し、最奥へと到達した。一応回復装置で回復して最後の扉をあける。

 

「どうやら終点みたいだな」

 

「ふう、どうやら無事に辿り着けたみたいね。ちょっと手こずったけど……フン、大したことなかったわね」

 

「いえ、今までのパターンからすると──」

 

「ああ、来たようだ」

 

目の前の空間が歪むとそこから人形兵器らしきものが顕れる。

 

「結社の人形兵器……!?」

 

いや違う。

 

「徘徊していた攻撃端末と同じ技術の……!?」

 

『《ストラトスダイバー》私が試作した自動戦闘機械だ』

 

博士の声が響く。

 

「なっ……」

 

「まさか博士自らが製作した結社製ではない人形兵器……!?」

 

最近こそこそしているかと思ったら、こんなものを作っていたとはな。

 

『あくまで試作機だから大した性能ではないがな。──だが、先の演習でお前が戦ったガラクタよりは上等だろう』

 

すると、先ほど徘徊していた攻撃端末が合流する。

 

『《ダイバービット》──本体に制御された攻撃端末です!囲まれないように注意してください!』

 

「くっ、上等じゃない──行くわよ、みんな!」

 

気合いは十分か。ならさっさと破壊する。

 

 

 

ストラトスダイバーは全距離に攻撃が可能だが高出力ゆえにショートがあちこちに見られる。

 

そのため、余剰エネルギーを放出するのたが、そのエネルギーの矛先が俺たちに向けられる。

 

「くっ……!」

 

「せめて後ろに放出しなさいよね!」

 

「ですが、演習の時より安定していません。強力な攻撃を当てればぐらつくかもしれません」

 

「機動力ではなくパワーか……」

 

「だったら……」

 

ユウナはARCUSⅡを取り出す。

 

「壊せ、スレッジハンマー!」

 

すると全員の武器に力が宿る。

 

アルティナがクラウ=ソラスで殴り付けると装甲がへこんだ。

 

「これは……」

 

「ブレイクダメージが上がっている!?」

 

「よし、これなら!」

 

ユウナのブレイブオーダーを軸にストラトスダイバーに攻撃を続ける。

 

こちらの猛攻にストラトスダイバーも耐えきれずに崩壊。

 

俺たちは勝利をおさめた。

 

「ふうっ……」

 

「……何とか倒せましたね」

 

「ああ……これでテストも終了だろう」

 

「……………よしっ」

 

ユウナは天井を見上げた。

 

「どうですか、シュミット博士!博士の作ったっていう人形もこの通り、倒しちゃいましたよ!?」

 

すると、天井から声が響く。

 

『フン、当たり前だ。倒す前提でのテストだからな。攻略時間、戦闘効率共に及第点。特に胸を張れるほどではあるまい。──これにてテストを終了するとっとと入り口に戻って来るがいい』

 

『お、お疲れ様でした、皆さん!──で、ですから博士~……!せっかく協力してくれたんですから……!」

 

このやり取りに全員が呆れていた。

 

「──博士はあんなことを言ってたが実際、かなりの強敵だったのは確かだ。日々の訓練や、先日の演習の成果がちゃんと現れている証拠だろう。お疲れ様だったな、みんな」

 

「……はい!」

 

「フ、フン……まあ、教官もお疲れ様でした」

 

「これで全て終了だな」

 

「それでは要塞入り口に戻りましょうか」

 

要塞入り口に戻り言葉を交わした後、教官がティータとラウラ・S・アルゼイドを誘って7人でランチを取った。

 

[キリコ side out]

 

 

 

午後 1:15

 

キリコとティータはリーヴス駅発、帝都行きの列車に乗っていた。

 

「それにしても、フレディ君もサンディちゃんも来られないなんて。ごめんなさい、キリコさん」

 

「別にいい。それより帝都に着いたらどうする?」

 

「えっと……帝都ヘイムダルのヴァンクール大通りにあるオーバルストアと商業施設に行って、そこで買い出しをする予定ですね」

 

「そうか」

 

キリコは列車に揺られながら無糖の缶コーヒーを啜っていた。

 

 

 

数十分後、一行は帝都ヘイムダルに到着した。

 

「やっと着いたか……」

 

「着きましたね。それにしても大きいなぁ」

 

「帝都は初めて来るのか?」

 

「はい。リベールのグランセルから飛行船で来て、列車に乗り換えただけなので。キリコさんは?」

 

「14歳まで住んでいた」

 

「へぇー、そうなんですね」

 

「……………(転生してから17年経ったのか……)」

 

「キリコさん?どうかしましたか?」

 

「なんでもない。それより買い出しとやらを終わらせよう」

 

「そうですね。えーと、まずは…」

 

ティータがメモを取り出す。

 

 

 

キリコとティータが歩いて行く様子を見ている者がいた。

 

(あの制服は確か……)

 

「おーい、マキアスくーん」

 

「はい、先輩」

 

「こっちの監査は終わったよ。マキアス君の方は?」

 

「こちらも滞りなく終わりました」

 

「うん、お疲れ様。この後はケルディックだね」

 

「ええ、貴族が出資する商店に商法違反の疑いがあるとか」

 

「うん。このところ出張が多いけどくじけずに頑張ろうね、マキアス君」

 

「もちろんです」

 

マキアスと呼ばれた青年は先輩とともに駅に向かう。

 

(リィン、そして新Ⅶ組。クロスベルで会おう)

 

 

 

キリコたちはヴァンクール大通りのオーバルストアで工具といくつかのパーツを、商業施設《プラザ・ビフロスト》で食材や調理器具の注文をし、いくつかの書籍を購入した。

 

無論、重い荷物はキリコが担当した。

 

「すみません、キリコさん」

 

「気にしなくていい」

 

(やっぱりキリコさんって優しいよね。タチアナちゃんとかは怖いって思ってるみたいだけど)

 

「行かないのか?」

 

「あっ、もしよければ二階のカフェで休憩しませんか?ちょっと疲れてしまったので」

 

「わかった」

 

キリコたちが二階に上がってコーヒーと生絞りジュースを注文すると──

 

「止めてください!」

 

突然女子の声が響く。見ると、黒髪の女子学生がガラの悪い男3人に絡まれていた。

 

「へぇ、聖アストライア女学院の生徒か。なかなか可愛い顔してるな。どうだい?俺たちと楽しいことしないかい?」

 

「は、離してください!憲兵隊を呼びますよ!」

 

黒髪の女子学生が片耳ピアスの男の手を振り払う。

 

「ハハハ、憲兵隊か。それがなんだ?」

 

「呼んでも無駄だと思うけど?」

 

男たちは下卑た笑みを浮かべながらなおも女子生徒に触れようとする。

 

「わたし、誰か呼んで来ますね」

 

「いい。すぐに終わる」

 

キリコは椅子に荷物を置き、男たちに近づく。

 

「おい」

 

「ああん?なんだぁ、テメー?」

 

「見かけねえ面だなぁ?」

 

「正義の味方気取りか…ぐぁっ!?」

 

キリコはいきなり片耳ピアスの男にボディブローを叩き込む。

 

片耳ピアスの男はそのまま前に倒れる。

 

男たちは顔色を変える。

 

「テ、テメー、何のつもりだぁ!」

 

「黙れ」

 

「何ぃ!?」

 

「コーヒーが不味くなる」

 

キリコは黒髪の女子学生を逃がしながら答える。

 

「ッけんな!ブッ殺してやる!」

 

金髪の男がキリコに殴りかかるも、キリコは悠々とかわす。

 

「クソが、避けてんじゃ……「バキィッ!」」

 

「…………」

 

金髪の男が振り返った瞬間、キリコのアッパーカットが金髪の男の顎に直撃。

 

金髪の男は無様にひっくり返った。

 

「お、お前、俺たちのバックには誰が……」

 

「知るか」

 

「くたばりやがっ!?」

 

黒髪の男が懐からナイフを取り出すがキリコは気にしなかった。

 

キリコはすかさず黒髪の男の顔面に右ストレートをクロスカウンターの要領で当てる。

 

黒髪の男は後ろの壁に激突し、失神した。

 

「はわわっ……」

 

ティータは一瞬の出来事に驚愕した。

 

「お客さん、強いねぇ。どっかの学生さん?」

 

「…………」

 

「まあいいや。後はやっとくから。後お代はいいよ、スカッとしたからさ」

 

「…………」

 

キリコは席に戻り、荷物をまとめる。

 

「キリコさん、大丈夫ですか!?」

 

「所詮、チンピラだ。とっとと帰るぞ」

 

「あの……助けていただいてありがとうございました」

 

黒髪の女子学生がやって来た。

 

「気にしなくていい」

 

「大丈夫ですか?」

 

「はい、何とか。それで……もしよければお礼をさせてもらえませんか?」

 

「必要ない」

 

「門限があるのであまり遅くは……」

 

「でしたら、問題はありません」

 

「えっ……?」

 

振り返ると、そこには金髪の女子学生がいた。

 

「姫様……!」

 

「無事でよかったわ、エリゼ」

 

「姫様?」

 

「おい、あれ、アルフィン殿下じゃないか?」

 

「ホントだ。皇女殿下だ」

 

店にいた何人かが金髪の女子学生に気づいた。

 

「ふふ、バレてしまいましたね♪」

 

「ええっ!?」

 

「何?」

 

「うふふ。ここでは騒ぎになりますから移動しましょう。トールズ第Ⅱの皆さん」

 

 

 

キリコたちは皇女とともにヴァンクール大通りから離れたカフェにいた。

 

「改めまして、アルフィン・ライゼ・アルノールと申します。親友を助けていただいて本当にありがとうございました」

 

アルフィンはキリコたちに頭を下げる。

 

「は、はい!(この人が帝国のお姫様……ということはオリビエさんの……)

 

「………………」

 

ティータはアルフィンを見つめ、キリコはコーヒーを啜る。

 

「私は聖アストライア女学院に籍をおく、エリゼ・シュバルツァーと申します。先ほどは助かりました」

 

黒髪の女子学生──エリゼは立ち上がり、キリコたちにお辞儀した。

 

「シュバルツァー?」

 

「それってリィン教官と……」

 

「はい、リィン・シュバルツァーは私の兄にあたります」

 

「教官の妹さん!?」

 

「ふふっ、私の大好きな、でしょう?」

 

「ひ・め・さ・ま・?」

 

いたずらっぽく片目を瞑るアルフィンにエリゼが目が笑ってない笑みを返す。

 

「んもう、ちょっとからかっただけじゃない」

 

「場所を弁えてくださいと言ってるんです!」

 

「あははは……(やっぱりオリビエさんの妹さんだ)」

 

「……………」

 

「それより、あなたがティータ・ラッセルさん?」

 

「は、はい!知ってるんですか?」

 

「ええ、お兄様から聞いていますわ」

 

「そうですよね。オリビエさんの妹さんですもんね」

 

「はい、オリビエ・レンハイムことオリヴァルト・ライゼ・アルノールはお兄様ですから♪」

 

ティータとアルフィンが盛り上がる中、エリゼはキリコに申し訳なさそうに話しかける。

 

「すみません。ええと……」

 

「キリコ・キュービィー」

 

「あっ、はい。キリコさん、本当にありがとうございました」

 

「気にしなくていい」

 

「それより、兄から聞きました。新しいⅦ組だとか」

 

「そうらしいな」

 

「その…ご不満なんですか?」

 

「いや、そうじゃない。どこに属しようとやることはきっちりやる。それだけのことだ」

 

「な、なるほど……」

 

「ふふふ、誇り高い方なんですね」

 

「そういうわけではないがな。それよりさっき言った大丈夫というのは?」

 

「ああ、ちょっとお待ちください」

 

アルフィンは席を離れ、ARCUSⅡでどこかに通信をする。数分後、席に戻って来る。

 

「アルフィンさん?どこにかけたんですか?」

 

「リィンさんの所にです♪」

 

「ひ、姫様!?」

 

「大丈夫よ。エリゼが絡まれたことは一切伝えなかったから。私のわがままでキリコさんとティータさんをお茶に誘ったから少し遅れますって。リィンさん、びっくりしてたわ」

 

「そんな勝手な……」

 

「あれ?リィン教官に伝えなくてよかったんですか?家族ですから最低限のことは……」

 

「少なくとも告げるべきだろう」

 

すると、二人は神妙な顔になる。

 

「いえ、ご心配をかけるわけには」

 

「もし伝えればリィンさんが灰の騎神で乗り込んでくる事態になりかねないんです」

 

「ええっ!?」

 

(正気か……?)

 

「リィンさん、エリゼのことをと~っても大事になさってるので。本当にうらやましいわ」

 

「そ、それって……」

 

(シスターコンプレックス……だったか)

 

「もう!姫様!」

 

 

 

「それにしても、さっきの方たち、何者なんでしょう?」

 

「バックがどうとか言ってましたが……」

 

「なんだか不気味ですね」

 

「はい。キリコさんがいなければどうなっていたか……」

 

「本当にお強いんですね。さすがⅦ組ですね」

 

「……………」

 

「とにかく、クレア少佐に連絡して、女学院周辺の警備を何とか増やせないかかけあってみるしかないわね」

 

「後、一人での外出も当分控えるように生徒たちに通達しなければ」

 

「厳重なんですね」

 

「ええ、ただでさえ厳しい状況なので……」

 

「女学院はほとんどが貴族の子女だからどうもその……風当たりが強くて」

 

(今の帝国では貴族のほとんどが肩身の狭い思いをしているらしい。もっとも巻き込まれた奴がほとんどで、内戦に加担していた貴族はほぼ罰せられていると聞くが)

 

「いっそのこと、リィンさんに臨時ではなく常勤教師として来てもらおうかしら?」

 

「姫様!?何を!?」

 

「だってリィンさんは帝国の英雄と呼ばれているのよ?そのリィンさんがいる場所にちょっかいを出してくる方なんているのかしら?」

 

「だ、だからといって……!」

 

「でもそうよね。リィンさんを独り占めできなくなっちゃうものね♥️エリゼが♥️」

 

「いい加減にしてください?怒りますよ?」

 

「ゴメンナサイ……」

 

(オリビエさんとミュラーさんみたい……)

 

ティータはアルフィンとエリゼのやり取りを自称演奏家とそのお目付け役に重ね合わせた。

 

 

 

「そろそろ行くとするか」

 

キリコは時計を見ながら告げる。

 

「あら、もうそんな時間ですか……」

 

「大分話し込んでしまいましたね」

 

「お茶、ありがとうございました」

 

会計を支払うと、アルフィンとエリゼは帝都駅まで見送りに来た。

 

「本日はありがとうございました」

 

「ティータさん、またお茶しましょうね」

 

「はい!喜んで!」

 

「キリコさんもありがとうございました。ではいずれ」

 

「ああ」

 

「あの、キリコさん。今日のことは兄には」

 

「わかっている」

 

「すみません。ありがとうございます」

 

キリコとティータは列車に乗り込み、リーヴスへと帰って行った。

 

 

 

午後 8:22

 

夕食後、キリコは部屋でウェインとスタークと雑談をしていた。

 

「皇太子が来ただと?」

 

「ああ、そうらしいな。おかげでリーヴス中がその話題でもちきりだよ」

 

「駅を降りた時、町が妙に騒がしかったのはそのせいか」

 

「まさかセドリック皇太子殿下が直々にいらっしゃるとは。一目お会いしたかった」

 

「はは、ウェインはさっきから同じことしか言ってないな」

 

「皇族にお会いする機会なんて滅多にないんだぞ。そういえばキリコ、お前もアルフィン皇女殿下とお話したそうだな?」

 

「ああ」

 

「ああって、もっと感動はないのか!?エレボニア帝国の至宝とも言われるアルフィン皇女殿下とお話する機会なんて一生に一度かもしれないんだぞ!」

 

(キリコには馬の耳に念仏かもな……)

 

「だがなぜ分校に皇太子が来た?」

 

「なんか、リィン教官をトールズ本校に引き抜きに来たとか。まあ、断ったみたいだけど」

 

「そうか……。仮に本校に移ったら自動的にⅦ組特務科は消滅するわけだからな。それにリィン教官は軍部や本校の勧誘を蹴って第Ⅱ分校に赴任したらしいからな」

 

「クルトも元気がなかったしな。確か政府がヴァンダール家を皇族守護の任から解いたって聞いたが」

 

「皇族の庇護を集中させないことが名目らしいが、実際はわからないな。そうじゃなくてもクルトはセドリック皇太子殿下のお付きで本校に入学するはずだったが、政府の決定で取り消されたから色々と複雑なんだろうな」

 

「政府ってのはいつだって強引だからな。特にあの鉄血宰相になってからは」

 

「………………」

 

キリコは着替えを持って立ち上がる。

 

「ん?、風呂か?」

 

「ああ」

 

 

 

「ふう……」

 

キリコは湯船に浸かり、目を瞑る。

 

「あら、キリコさんですか?」

 

壁の向こうの女湯から聞き慣れた声が聞こえてくる。

 

「……………」

 

「キリコさん、聞きましたよ?姫様とエリゼ先輩にお会いなさったんですね」

 

「…………知り合いか?」

 

「はい。ご存知かと思いますが、私はキリコさんが実家に来る前まで聖アストライア女学院にいましたので」

 

「そうか……」

 

「そういえば姫様や先輩に出すお手紙が遅れていました。後で出さなくてはいけませんね。キリコさんとのことを書いてもいいですか?」

 

「でたらめを書く気か?」

 

「でたらめだなんて。演習で助けていただいたことを書くだけですよ」

 

「……………好きにしろ」

 

「はい。好きにします♪」

 

「……………」

 

「ふふ、それにしてもいいお湯ですね♪」

 

「…………ああ」

 

「ご存知ですか?リィン教官やエリゼ先輩のご実家。ユミルだそうですよ」

 

「ユミル……ノルティア州北方のか?」

 

「ええ、温泉が有名なのでいつか行けるといいですね。そこで二人っきりで♥️」

 

「興味はない」

 

キリコはそう言って出て行った。

 

「……………」

 

ミュゼは一人湯船で考え込んでいた。

 

(やはり相当手強いですね。お風呂ならばキリコさんの本心を見れると思ったんですが。ん?考えてみればキリコさんは……………)

 

「……………………のぼせる前に出ましょうか」

 

ミュゼはうつむき、静かに出て行った。




次回、Ⅶ組が無双します。
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