5月
機甲兵教練の日がやってきた。
ティータとミントが分担して端末を操作している横でキリコは、改修されたフルメタルドッグのチェックをしていた。
(機体は問題なし。それにしてもさらにATに、スコープドッグに似てきたな)
「キリコく~ん、調子はどう?」
「問題ない」
「前より少し丸みをおびましたね。それと脚部についているのはなんですか?」
「ええっと……ターンピック機構だって。図面によると、杭打ち機の要領で地面に杭を刺して急ブレーキや機体を固定したりするんだって。これキリコ君の発案なんでしょ?」
「前回の神機との戦いで既存のブレーキではこらえきれなかったからな。固定される分、標的になりやすいがそこは大きな問題ではない」
「というと?」
「一人で戦っているわけではないからな」
「キリコさん……」
「それより、シュピーゲルSが搬入されたそうだが?」
「あっ、はい。ドラッケンⅡ以外のデータをとるために博士が回させたそうです。もっとも一機だけですが」
「シュピ君はドラ君より操作が難しいからね。さすがに全員が乗れるって考えてないみたい」
(妥当な判断だな)
「お前たち、いつまで油を売っているつもりだ?」
シュミット博士の声が響く。
「あっ、すみません」
「まったく、機甲兵が増えたくらいでチンタラしよって」
「まあまあ」
「いいじゃないっすか。ドラッケンⅡとヘクトル弐型だけじゃ訓練に限界があるんすから」
リィンとランドルフがシュミット博士を諌める。
「あっリィン君にランディさん」
「お、お疲れ様です」
「おお、お疲れ」
「頑張ってるみたいだな。ランディさん、予定通りヘクトル弐型で出るんですね」
「おおよ、リィンは灰の騎神か?」
「あれ?リィン教官にランドルフ教官、なんだか……」
「ああ、この間一緒に飲んでよ。そん時にお互い壁はなしってことでな。ちなみにハーシェル教官はトワちゃんって呼ぶことにしたんだ。俺としてはトワたんでもいいと思うんだけどなぁ」
「あはは、そうだったんですね」
「おう。お前らもランディでいいぜ。壁はなしだ」
「ではランディ教官、ヘクトル弐型をグラウンドにお願いします」
「あいよ」
ランドルフ改めランディはヘクトル弐型に乗り込み、格納庫から出て行った。
「やれやれ、騒がしいことだ。それよりキュービィー。頼まれた武装がきているぞ」
「はい」
キリコがシートに覆われた荷物に近づく。
「武装ですか?」
「なになに?新しい武器があるの?」
「別に新しいわけではない」
キリコがシートを取ると、そこにはハンドガンにも見える武器があった。
「これですか?」
「あれ?これ、ドッ君のヘヴィマシンガンだよね。短くなってるけど」
「バレルとストックを省略することで威力はそのままで取り回しを良くした。精密さと射程は減るがな」
「なるほど……」
「ヘヴィマシンガン改ってところかな?」
「ローラーダッシュで切り込み、敵機を殲滅するキュービィーにはもってこいの武装とも言えるな」
キリコたちが振り返ると、分校長のオーレリアが立っていた。
「ぶ、分校長!?」
「珍しいな。何用だ?」
「いえ、少々厄介なことが起こりそうなので」
「厄介?」
「すまんが、私と博士だけにしてくれ。そなたたちは機甲兵教練の準備を進めておいてくれ」
そう言ってオーレリアとシュミット博士は二階に上がる。
「何かあったんでしょうか?」
「………さあな」
キリコは波乱が起きる予感を抱きながら、作業を進める。
[キリコ side]
「うん、やはり僕はシュピーゲルSが向いてるな」
「うーん、あたしはやっぱりドラッケンⅡでいいかな」
「わたしはどちらも不向きでしたが……」
機甲兵教練では生徒たちが搬入されたシュピーゲルSをかわるがわる乗り換え、それぞれ自身に合った機甲兵を決めることになった。
やはりシュピーゲルSをマシに扱えるのは5人もいないか……。
ウェインはムキになってるようだが、こればかりは仕方ないな。
それにアッシュのようにヘクトル弐型を選ぶ者もいるしな。
「次はキリコさんの番ですよ」
「わかった」
本来ならば乗る必要はないが、カリキュラムである以上、乗らないわけにはいかない。
無法地帯とも言えた前世と違い、今は学生だからな。
シュピーゲルSはドラッケンⅡより難易度は高かったがすぐに慣れた。
高い操縦技術が要求されるがその分、戦場で得られる見返りはドラッケンⅡの比ではないだろう。
「やっぱりスムーズね……」
「無駄な動きもほとんどない。やはりすごいな、キリコは」
「うらやましいです」
「ケッ………」
「ふふふ、さすがキリコさんですね」
周りは称賛しているが、俺は単に人型兵器に乗り慣れているに過ぎない。
それも彼らでは、いや、この世界の人間では想像もできない地獄でだ。
そんなことを考えながら、俺はシュピーゲルSから降りてリィン教官とランディ教官の下へ集まった。
「よし、これで全員が乗り終えたな。ではこれより、模擬戦闘を…」
【少々待って頂けますか?リィンさん】
聞いたことのない声がグラウンドに響いた。
「え?」
「こ、この声は……!」
クルトは知っているようだが、まさか?
すると、格納庫から三機の紅いシュピーゲルSが歩行してきた。
【ごきげんよう、トールズ第Ⅱのみなさん。トールズ本校より参りました、セドリック・ライゼ・アルノールと申します】
「こ、皇太子殿下!?」
「嘘っ……!」
「ええっ!」
「オイオイ、マジかよ」
周囲は騒然としている。
俺にとってはどうでもよかったが、周りはそうもいかないようだ。
「で、殿下……」
クルトにいたっては、何がなんだかわからないようだ。
そうこうするうちに、セドリックとその取り巻きらしき二人が機甲兵から降りてくる。
教官たちも慌てて駆け寄る。
「殿下、これは一体……」
「いえ、単純な模擬戦ではつまらないと思ったので。そこで、我々本校生と分校生での交流戦を申し込みたいのです」
「交流戦?」
「それって……」
「俺たちと皇太子殿下たちと戦うってこと!?」
交流戦か。
だが文字通りの交流ではあるまい。
おそらく連中は自分たちを下して本校の力を見せつけるのが狙いだろう。
そしてあわよくばリィン教官を引き抜く口実を作る、そんなところか。
「それでこちらが勝ったら、リィンさんをトールズ本校に教官として招き入れたいんです。万が一、そちらが勝ったらこの件については手を引きます。まあ、本当に勝てればですが」
「な、な、な……」
安い挑発だが、ユウナはのせられているな。
「ま、待ってください!いきなりそんな事を言われても」
「そ、そうよ!いきなり来て何言ってんの!?」
「フフ、言葉どおりの意味ですよ。先日も言いましたが、政府の決定などどうにでもなりますからね」
一教官の人事すら物の数にも入らないというわけか。
「それにユウナさんとおっしゃいましたか。属州民ごときが殿下に向かってずいぶんと無礼ではありませんか?」
「なっ…!?」
「そう言ってやるな。口の聞き方を知らんのだろう。特にそこの茶金髪の男はな」
「あぁん?」
男子生徒が眼鏡の女子生徒を諌めるが、明らかにこちらを下に見てるな。
「二人とも、それくらいに。第Ⅱ分校は外国人や素性が不明な者だっているんだ。少しくらいの負け惜しみで声を荒げることはないよ」
セドリックにいたっては、余裕すらうかがえる。
「殿下、あまり挑発めいたことは。それに生徒同士での戦闘行為は……」
「認めよう」
『!?』
全員が振り返ると、分校長が腕組みをしており、その隣でミハイル教官とトワ教官が焦っていた。
「ぶ、分校長!?」
「こんなことが……上に知られたら……」
「構わぬ。殿下自らの申し入れだ。これを拒む不敬の者はおるまい」
いっそのこと断ってほしいが、確か分校長は伯爵だったな。断る方が難しいか。
「それに第Ⅱの底力を見せるまたとない好機であろう」
その言葉をきっかけに分校生徒全員の顔つきが変わる。やる気は十分のようだ。
「……分かりました。その申し入れ、受けます。3対3の団体戦、コックピットへの攻撃は禁止ということでよろしいですね?」
「無理を聞き入れてくださり、感謝します。では開始は十分後に」
そう言って、セドリックたちは機甲兵に乗り込んだ。
「さて、どうしましょうか?」
「あたしが出る!あの憎たらしい顔に一発ぶちこんでやるわ!」
「ハッ、気が合うな。オルランド、ヘクトル弐型を借りるぜ」
普段は不仲の二人が意気投合している。余程、腹に据えかねたらしい。
「後、一人ですが……」
「僕が出る」
クルトが手を挙げる。やる気はあるようだが……。
「あん?てめぇはダメだ」
「何っ!?」
「てめぇ、あの皇子とガチでやれんのか?」
「それは……」
「できねぇだろ?今のてめぇは足手まといだ。大人しく見てな」
「……………」
「ちょっと!そんな言い方ないでしょ!」
「いいんだ、ユウナ。アッシュの言うとおりかもしれないからね」
クルトはうつむきながら下がる。
「では他に誰が……」
「ふふ、いるじゃありませんか。これ以上ない、ふさわしい人が」
ミュゼの言葉にその場にいた全員が俺を見る。
「……………」
「確かにキリコ君しかいないわね」
「とりま、決定だな。じゃじゃ馬はメガネ、俺はあのカタブツ、キュービィーは皇子をぶちのめせ」
「あれ?アッシュさんが殿下とでは?」
「ムカつくが、機甲兵戦じゃこいつの方が上だ」
まだ同意すらしてないが、ここまでくれば仕方ない。それにフルメタルドッグのデータ収集にはうってつけの相手か。
それに、あの言い方は俺も思うことがあるしな。
「わかった、やろう」
[キリコ side out]
セドリック皇太子の申し入れから十分が経過した。
ユウナはドラッケンⅡ、アッシュはヘクトル弐型、そしてキリコはフルメタルドッグに搭乗し、セドリックたちと対峙する。
【そちらも揃ったようだね。しかし、ドラッケンⅡやヘクトル弐型は分かるが、君の機甲兵は初めて見るね?】
【実験用機甲兵フルメタルドッグだ】
【なんですって?】
【貴様……!】
【エイダ、フリッツ。そう目くじらをたてるな。大方、シュミット博士の実験に協力してるんだろう】
【………………】
【ずいぶんと余裕じゃない】
【いつまでもつかな?】
「双方、私語は慎むように。ではこれより、本校代表と分校代表との交流戦を開始する。双方、構え……」
リィンの声に合わせ、本校側は剣、メイス、アサルトライフルを、分校側はガンブレイカー、ヴァリアブルアクス、ヘヴィマシンガン改を構える。
「──始め!!」
リィンの「始め!!」の合図と同時に、フルメタルドッグが三機のシュピーゲルSの足元に撃ち込む。
【なっ……!?】
【オラァ!】
その瞬間を狙い、ヘクトル弐型がフリッツ機めがけて切り込む。その一撃を棍棒を交差させ受け止める。
【クッ、貴様……!】
【ハッ、油断してんじゃねぇぞコラァ!】
その隣ではドラッケンⅡがエイダ機と交戦していた。
【このっ!】
【遅い!】
ドラッケンⅡはエイダ機の銃弾をかわし、懐に接近する。
やむを得ずエイダ機は後退してかわす。
【悪いけど、キリコ君の方が速いわよ】
【バカにしてっ!】
両側が別れて戦っている間、フルメタルドッグとセドリック機は得物を構えながら睨み合っていた。
【先ほどの射撃は僕たちの足止めと分断が狙いか。どうやら甘く見すぎていたようだな】
【………………】
【だが、僕は力が必要なんだ。全てをのみ込む焔のような力が。そのために、君には礎になってもらう!】
【………………】
セドリック機が切り込んでくるが、フルメタルドッグはローラーダッシュで真横にかわす。返す刀でセドリック機のアームに撃ち込む。
【グッ……!】
【遅いな】
【何っ!?】
【お前の動作は殺気で溢れている。ゆえに動きが単調で読みやすい】
セドリック機の突きを反らすようにかわし、顔面にアームパンチを打った。
セドリック機はぐらつき、後退する。
【ガッ……!?】
【そこに合わせるのは容易い】
フルメタルドッグは再び得物を構える。
「はは、あいつらなかなかやるな」
分校側が優勢であることから、ランディは笑っていた。
「キリコもキリコで容赦しねぇな」
「え、ええ……」
トワはおどおどしながら答えた。
「くっ……わかってるのか、相手が誰だか」
ミハイルは苦々しげに顔を歪める。
「フン、何を言うか。あれくらいやらなければデータは取れまい」
シュミット博士は切って捨てた。
「しかし……!」
「それに皇太子殿下には良い薬やもしれんぞ?」
「えっ?」
オーレリアはグラウンドは見据える。
「キュービィーという強者の存在が皇太子殿下にとってさらなる成長をもたらすだろう。そなたの上司に心酔するよりもな」
「それは……」
「キュービィーにはせいぜい、皇太子殿下の当て馬となってもらうか」
「はは……。シャーリーといいあの皇子様といい、御愁傷様だな」
ランディは心の中でキリコに合掌した。
【はぁ…はぁ…はぁ…。バカな……】
【………………】
セドリック機はフルメタルドッグの攻撃を受けて、あちこちガタがきていた。
反対にフルメタルドッグはほとんど無傷だった。
【僕は…僕はこんな所で負けるわけにはいかない!これからの帝国を担う者として。あの方に見込まれる者として……!】
【それがどうした】
【なにっ!】
【お前の言いたいことはわからんでもない。だが戦場に私的なものを持ち込むとこうなる】
【黙れっ!君なんかに何が分かる!】
【今のお前では俺たちには勝てない】
【黙れと言っているだろう!二人とも、来い!一気に仕留める!】
【【イエス・ユア・ハイネス!】】
セドリック機の呼び掛けにエイダ機とフリッツ機が反応。ドラッケンⅡとヘクトル弐型を振り切ろうとした。
だが、それは遅すぎた。生まれながらのPSを相手取るには。
【遅い】
フルメタルドッグはまず、エイダ機の脚部に銃撃。
【ユウナ!】
【うん!】
エイダ機がぐらついた瞬間を狙い、ドラッケンⅡがガンブレイカーを相手の側頭部に振り下ろす。
【せいやぁぁぁっ!!】
【ガッ……!?】
まともに受けたエイダ機はつんのめるように倒れ動かなくなった。
【なっ!?】
セドリック機は味方の敗北に一瞬硬直する。
その隙にフルメタルドッグはセドリック機にショルダータックルをぶちかます。
【しまっ……!】
【殿下……!おのれ!】
逆上したフリッツ機がフルメタルドッグに向けてメイスを振り上げる。だがこれこそがキリコの作戦だった。
【よそ見すんなコラァ!】
ヘクトル弐型がフリッツ機の右アームに得物を叩きつける。衝撃でメイスの片方を離してしまった。
【邪魔をするな!】
【今さら何言ってやがる。ケンカふっかけてきやがったのはそっちだろうが?】
【ええい、まずは貴様だ!あの不敬者は……】
【てめぇじゃあいつには勝てねぇ】
【何だと!?】
【俺にも勝てねぇんだからなぁ!】
ヘクトル弐型はヴァリアブルアクスの刃をフリッツ機の頭部に振り下ろす。
振り下ろされた刃は相手の頭部にめり込む。
これが決め手となり、フリッツ機は行動不能になった。
【バカな……分校ごときに……】
【油断すんなっつったろ?エリートさんよ】
【エイダ、フリッツ!?こんなバカな……】
【後はお前だけだ】
【くっ……!】
キリコはホルスターから一枚のミッションディスクを取り出し、コックピット内の機材に挿入する。
【仕留める】
フルメタルドッグはローラーダッシュで突進しつつ、ヘヴィマシンガン改で銃撃。ショルダータックルとアームパンチ二発をたてつづけに叩き込む。最後にセドリック機の背後に回り、両手足と頭部に撃ち込む。
キリコが今月の演習に向けて製作した戦闘パターン──『アサルトコンバット』。
それが日の目を見た瞬間だった。
セドリック機はフルメタルドッグの猛攻になすすべなく行動不能になった。
「そこまで!勝者、分校代表!」
リィンの声により、第Ⅱ分校の勝利が決まった。
【やったぁぁぁっ!】
【へっ……】
「勝った……」
「勝ちましたね」
「キリコさんにユウナさん、アッシュさんもお見事です」
「動きが全然違う。あれがキリコさんの言ってた……」
ティータは以前キリコから聞いていたミッションディスクの効果に驚きを隠せなかった。
「おい」
機体から降りたアッシュはキリコに問いかけた。
「なんだ?」
「さっきのあれはなんだよ」
「う、うん。なんか動きが全然違ったんだけど……」
「確かに別物でした」
「キリコの実力は知っている。だがそれだけじゃなさそうだが……」
「これだ」
キリコは機体からミッションディスクを取り出し、ユウナたちに見せる。
「何、これ?」
「ミッションディスクだ」
「ミッションディスク、ですか?」
「機甲兵の行動パターンをデータ化したものだ」
「理屈は分かるが、なぜそんなものを?」
「どんな機甲兵だろうとマニュアル操作である以上、限界がある。そこでミッションディスクをセットすることで機甲兵をある程度自動化する。生存率と機体の行動時間を延ばすことができる」
「なんだそりゃ……」
「もっとも、現状では2分が限界だがな」
「2分ですか……」
「ここぞという時には便利ね」
「ティータさんはご存知でしたか」
「うん。カウンター業務と機甲兵の整備と博士の課題と授業の予習復習の合間に製作してたみたいだけど……」
「嘘……」
「とんでもないな……」
「本当に人間ですか?」
「ケッ……!」
「もはや超人ですね……」
「…………」
キリコの技能に全員が言葉を継げなかった。
「ちょっといいかな?」
振り返ると、セドリックが話しかけてきた。
「殿下?」
「クルト、君が降りた理由が分かったよ」
「えっ?」
「君の名は?」
「キリコ・キュービィー」
「キリコ、今回は僕の完敗だ。分校最強というのは伊達じゃなかった」
「…………」
「僕は思い違いをしていたようだ。あの方に認められる前に君に勝たなくてはならない」
セドリックはキリコの眼を真っ直ぐ見る。
「キリコ、僕は強くなる。さらに研鑽を積んでから改めて勝負を申し込む。その時また会おう」
「…………」
「フッ……」
セドリックは微笑み、エイダとフリッツに帰るよう命令する。
「殿下……!」
「あのような卑劣な者、見過ごすわけには……!」
「僕たちはどうして負けたんだと思う?」
セドリックは二人に問いかける。
「それは……」
「ゆ、油断していただけです!それにやつは不意討ちを……」
「確かに不意はつかれた。その結果、こちらは分断されて各個撃破を強いられた。多分、キリコの作戦だろうね」
「しかし……!」
「チームワークという点でも向こうが上だった。エイダの機体の脚を撃ったのはあくまで足止めで、ユウナさんとの連携で勝利した」
「………………」
「一方、フリッツの方だけど、多分、フリッツの視線を逸らせるのが目的だったんじゃないかな?事実、君は視線を逸らしたことで敗北した」
「ですが……!」
「僕に対する忠誠心は分かる。だが戦闘において、一瞬の隙が命取りだ。それはよく分かったと思う」
「もちろん、機甲兵戦術の技能も向こうが上ということもあったけどね」
「「……………」」
俯くエイダとフリッツにセドリックは表情を和らげる。
「だからともに強くなろう。いつかリベンジを果たすためにね。ついて来てくれるかい?」
「っ……勿論です!」
「殿下のためならば!」
二人の言葉に満足したセドリックはリィンに礼を言う。
「リィンさん、教官のみなさんも。本日はありがとうございました」
「こちらこそ。殿下にとって実り多きものとなられたならば幸いです」
「ええ、ではまた」
そう言ってセドリックたちは帰って行った。その表情は交流戦前とは比べるまでもなく清々しいものだった。
「フーーーッ」
「あはは、リィン君。お疲れ様」
「大変な教練になっちまったな」
トワとランディがリィンを労う。
「ええ……ですが、こちらにとっても実り多いものがあったようです」
「だな」
「うん、そうだね」
「ならば良い」
オーレリアがリィンたちに話しかける。
「分校長……」
「仮に敗北しようものならば私が演習まで鍛えてやろうと思ったがな」
「……………」
「だが、あやつらは得難きものを得たようだ。これならば、演習地の発表が出来そうだな?」
「それは……」
「まあ……ユウ坊次第ですかね」
[ユウナ side]
機甲兵教練の後、演習地の発表が行われた。
場所はクロスベル州。あたしの故郷だった。
クロスベルの名前を聞いた瞬間、あたしの頭は真っ白になった。
なんでよりによってクロスベルなの?
気づいたらあたしはリィン教官を睨んでいた。
こんなことしたって何にもならない。
だけど、あたしはこうするしかなかった。
[ユウナ side out]
次回、クロスベルに向かいます。
キリコの必殺技はやはりこれしかないと思ったのでス○ロボから採りました。