英雄伝説 異能の軌跡   作:ボルトメン

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調査

[キリコ side]

 

あれから10数年が経った。

 

俺はあの後、帝都近郊のパルミス孤児院に入れられた。

 

後で知ったことだが、俺はどうやら貴族の子として生まれたらしい。

 

もっとも両親は既に死亡しているし、何より俺自身がどうでもいいと思っているので何の問題もない。

 

ある程度読み書きができるようになった頃、俺はこの世界について調べることにした。

 

まず、俺が今いる所はゼムリア大陸西方エレボニア帝国という。

 

西ゼムリアとも呼ばれるこの地域で最大の領土を誇り、北のノーザンブリア、南のリベール、東のカルバードに挟まれており、カルバードとクロスベル自治州の領有権を争っている。

 

エレボニアは帝政・貴族制を敷いており、帝都ヘイムダルはともかく地方に行けば四大名門と呼ばれる大貴族が幅を利かせており、その家の私兵ともいえる領邦軍を所有している。

 

一方の平民はどうかというと、軍部の平民出身の将校の活躍も目覚ましく、また近年では平民出身の宰相であり《鉄血宰相》の異名で知られるギリアス・オズボーンや、初の平民出身の帝都行政長官カール・レーグニッツ帝都知事を旗頭とする新興勢力の《革新派》が旧勢力の《貴族派》を上回りかねないほどとなっている。

 

 

 

次に、軍や兵器についてだが、まずATがないだけ向こうよりはるかにマシだろう。こちらでは戦車や飛行戦艦が主流だという。

 

だが俺が驚いたのは、《導力》と呼ばれる機関だった。

 

なんでも50年ほど前にエプスタイン博士なる人物が発明したもので、今では大陸中に広まっている。

 

戦車や戦艦だけでなく、あらゆる製品が導力仕掛けになっている。

 

逆に火薬式の武器はあることはあるが、時代遅れとなっているらしい。

 

神や宗教というものを信じない俺にとってかなりどうでもいいことだが、ゼムリア大陸では《七耀教会》とやらが崇める空の女神(エイドス)が信仰されている。

 

彼らによると、空の上にはエイドスが住んでいるので人間は近づくことも行くことも許されないらしい。

 

あまりにばかばかしい。

 

空の上は神が住む天国など存在しない。

 

あるのは、暗く冷たい闇が果てしなく広がる、地獄であることは十分に知っているというのに。

 

 

 

最後に俺自身に眠る異能について調べることにした。

 

結論から言ってしまえば、存在した。それどころかアストラギウスの頃よりも強まっている。

 

以前、帝都に買い出しに連れて行ってもらったとき、猛スピードを出していた導力車にはねられたことがある。

 

まともに当たったように見えたが、はねられた際の角度などの様々な条件から俺自身はほとんど無傷で死ななかった。医師によるとこれは、まぎれもなく奇跡だという。

 

周りが喜ぶなか、俺は愕然とした。

 

異能は滅んでなどいない。

 

コイツがある限り、俺はフィアナの元へは行けないことがわかってしまった。

 

更なる調査を進めたいが、シスターから外出禁止を言い渡されてしまった。

 

 

 

孤児院に入れられてから俺は14歳になろうとしていた。

 

ある日、俺を引き取りたいという老夫婦がやって来た。

 

なんでもこの夫婦は長年子どもを望んでいたが、遂に授からなかったそうだ。

 

だが、なぜ俺なのだろう。

 

この孤児院には俺よりも聞き分けのいい子どもがいるというのに。

 

何気なく聞いてみると、「きみが一番さびしい目をしていたから」だそうだ。

 

その後、二人に抱きしめられた俺の胸にはあたたかいもので満たされていた。

 

その後、シスターと話し合って俺は老夫婦の養子になることになった。

 

ちなみに、この老夫婦はキュービィー夫妻というらしい。

 

おかしなことだが、俺はこのとき初めて自身の本名であるキリコ・キュービィーを名乗ることになった。

 

だが、俺はこの時に大事なことを見落としていた。

 

幸福という名の猛毒に酔って、頭の中から忘れていた。

 

俺の中に眠る、忌まわしい力。どんな状況からでも俺を生かそうとする力。

 

 

 

異能生存体を。

 

 

 

この数年後、とある事件が起きた。

 

その事件は俺を再び、地獄の底へと叩き落としたのだ。




前日譚はこれで終わりです。
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