英雄伝説 異能の軌跡   作:ボルトメン

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メガネと主任が登場します。


再会①

「やあ、待っていたよ。リィン君に新たなⅦ組諸君」

 

クロスベル初代総督、ルーファス・アルバレアは柔和な笑みを浮かべ、リィンたちを歓迎した。

 

「お久しぶりです、総督。その節は」

 

「二年ぶりですね」

 

「黒兎……いや、アルティナ君も久しぶりだな。そして──」

 

ルーファスはユウナたちの方を向く。

 

「ユウナ・クロフォードさんにクルト・ヴァンダール君、キリコ・キュービィー君だね。クロスベル総督のルーファス・アルバレアだ」

 

「ど、どうも……」

 

「お初にお目にかかります」

 

「………初めまして」

 

「うむ。こうして新たなⅦ組と会えて光栄だよ。なかなか粒がそろっているようだしね」

 

「い、いえ……」

 

「まだまだ修行中の身です」

 

「大したことでは」

 

「謙遜しなくてもいい。クロスベル軍警察志望者にヴァンダール家の出身者に黒兎、それに内戦で獅子奮迅の活躍をしたというキュービィー君。これからの帝国を担う若者たちに、名高き灰色の騎士。私でなくても注目してしまうというものだよ」

 

「!」

 

「僕たちの素性までご存知でしたか……!」

 

「さすがですね……」

 

(やはりこういう類か)

 

ユウナたちが驚くなか、キリコはルーファスに対して警戒心を強めた。

 

「ゴホン。総督、そろそろお時間です」

 

ルーファスの秘書らしき女性が告げる。

 

「ああ、わかった。……すまない、君たちとはもう少し話をしたいところなのだが、生憎立て込んでいてね」

 

ルーファスは申し訳なさそうに肩を竦める。

 

「いえ、わざわざ時間を取っていただきありがとうございます」

 

「そう言ってもらえるとありがたい。ではこれが演習の内容だ。中身はサザーラントと似たようなものだから説明は省かせてもらうよ。後、これが市内の調査についてだ。詳しいことは記載されているから確認してくれたまえ」

 

「わかりました。では総督、トールズ第Ⅱ分校、これより演習開始を報告します」

 

「了解した。演習の成功を祈らせてもらうよ」

 

そう言ってルーファスとの面会は終了した。

 

 

 

リィンたちはエレベーターに乗り、先ほどのやり取りを思い返していた。

 

「……………」

 

「ユウナさん……」

 

「あれがルーファス卿か。聞いていた以上の人物だな」

 

(気に入らないな。俺たちに向けたあの顔はおそらくフェイク。腹の中では分校をまるごと利用しようとしているんだろう。このクロスベルでろくでもない何かをしでかすために)

 

「全員、切り替えろ」

 

リィンがパンッと全員を振り向かせる。

 

「みんな、色々言いたいことはあるだろうが、演習は始まっているんだ。まずはそちらを優先しよう」

 

「い、言われなくても!」

 

「わかりました……」

 

「はい……」

 

「了解」

 

ユウナたちは頭を切り替えた。

 

 

 

「来たか、リィン」

 

オルキスタワーの一階でリィンは眼鏡をかけた青年に声をかけられた。

 

「ああ、今朝着いたばかりさ」

 

(もしかして……)

 

(ああ、この人も……)

 

(……………)

 

「なるほど、君たちがリィンの教え子か……」

 

眼鏡の青年ユウナたちを見回す。

 

「お久しぶりですね」

 

「ああ、君もな」

 

青年は苦笑いを浮かべた。

 

「アルとも知り合いなの?」

 

「はい。内戦で何度か関わったことがあります」

 

「もう驚かないわよ……」

 

「そういえば情報局員だったな。忘れていたが……」

 

「………………」

 

「はは……おっと、自己紹介がまだだったな」

 

青年は眼鏡のブリッジを上げる。

 

 

 

「帝国司法監察官のマキアス・レーグニッツだ」

 

「そして、旧Ⅶ組に属していた。よろしく頼むよ、新Ⅶ組のみんな」

 

 

 

「は、はじめまして。ユウナ・クロフォードです」

 

「クルト・ヴァンダールと申します」

 

「キリコ・キュービィーです」

 

「ああ、よろしく」

 

アルティナ以外が自己紹介をした。

 

「ところでアル、司法監察官って?」

 

「司法の観点から行政などをチェックする役職のことですね」

 

「弁護士とは違うが法律のスペシャリストと言えるな」

 

「へぇ、そういうのがあるんだ?アルもキリコ君も物知りよねぇ」

 

「そ、それより教官、レーグニッツというのはまさか!?」

 

「ああ、クルトなら知ってて当然か」

 

「はい!もしや、カール・レーグニッツ帝国知事閣下の?」

 

「ああ、僕の父だ」

 

マキアスは肯定する。

 

「帝都知事って……なんかスゴい人みたいだけど……」

 

「帝都ヘイムダルの行政長官に当たる方ですね」

 

「また、初の平民出身による帝都知事だから帝都民には絶大な人気があるんだ」

 

「清廉潔白な人物らしいな(もっとも、鉄血宰相の盟友で革新派の旗頭とされてるが)」

 

「そ、そんな人が私たちの先輩!?」

 

「はは、驚いたようだな。もちろん俺も最初に聞いた時は君たちと同じ反応だったけどな」

 

「初めて会った時から2年だからな。懐かしいものだ。それより、リィンたちはルーファス総督への報告か?」

 

「ああ、そうだが……」

 

「驚かなくてもいい。先月のことはエリオットたちから聞いているんだ。僕も今扱っている案件が終わり次第、リィン、ひいては新Ⅶ組の力になるつもりだ」

 

「マキアス……」

 

「いいんですか!?」

 

「それはありがたいですね」

 

「感謝します」

 

「……………」

 

ユウナたちはマキアスに感謝を述べ、キリコは会釈した。

 

「………で、マキアス以外にも来てるのか?」

 

「ああ、あと二人来ている」

 

「そうか」

 

(Ⅶ組のみなさんってホントに仲がいいのね)

 

(ああ、今の僕では及ばないほどの絆があるんだろう)

 

(絆、ですか……)

 

(………………)

 

「君たちのことは聞いている。リィンのことも頼むぞ」

 

「はい!」

 

「お任せください」

 

「わかりました」

 

「了解」

 

「………………………」

 

リィンはポリポリと頬をかいた。

 

 

 

「お~い、マキアスく~ん!」

 

声がした方を向くと、マキアスと同じ制服を来た男性が駆け寄って来た。

 

「あっ、ライナー先輩お疲れ様です」

 

「うん、やっと総督との面会時間が取れたよ。時間がないから早く……ってマキアス君、こちらは?」

 

「はい、僕の同窓生です」

 

「はじめまして、トールズ第Ⅱ分校教官のリィン・シュバルツァーと申します」

 

リィンはライナーと目が合う前に眼鏡をかけて自己紹介をした。

 

「ええっ!?灰色の騎士!?ど、どうも……」

 

(やっぱり有名なのね……)

 

(眼鏡はいるんだな………)

 

(意味は全くありませんが)

 

(律儀なのか抜けているのかわからん)

 

新Ⅶ組は見慣れた光景に呆れた。

 

「っと、マキアス君、そろそろいかないと」

 

「そうですね。リィン、それに新Ⅶ組もまた会おう」

 

「ああ、またな」

 

「お仕事頑張ってください!」

 

マキアスはライナーとともにエレベーターに乗り込んだ。

 

 

 

リィンたちはオルキスタワーを出た。

 

「それにしてもマキアスさんってスゴい人なんですね。なんか頭良さそうだったし」

 

「実際マキアスは優秀だぞ。トールズ入学時は次席でⅦ組では副委員長を務めたんだ。また、実力考査では本校で1位になってる」

 

「それはスゴいですね」

 

「その後、1年早く卒業した彼は帝国政治学院に最年少で入学して、司法監察官になったんだ」

 

「帝国政治学院?」

 

「財政界や法曹界に何人もの人材を輩出している学院のことだよ。かなりの難関らしくて、あそこに入るなんてなかなかできることじゃない」

 

「ひゃ~!、つくづくスゴい人ねぇ」

 

「でも司法監察官は役職としてはかなり外様と聞きますが?」

 

「そ、そうなの?」

 

(政治のことはわからないが、法を私物化する連中にとっては面白くないだろうな)

 

「教官……」

 

「ああ。実際、司法監察官はその性質上疎んじられてると言ってもいい役職らしい。だが、それがマキアスの選んだ道だ。法を通して帝国をとりまく問題を見極め、立ち向かうというな」

 

「あ…………」

 

「本当にスゴい方ですね」

 

「実現はともかく、かなりの手腕と聞きます」

 

(少なくとも夢想家ではなさそうだな)

 

リィンの言葉にユウナたちはマキアスに好感を持った。

 

「さて、そろそろ依頼を確認しよう」

 

「それがありましたね」

 

リィンは封筒から書類を取り出す。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

市内の店舗調査 [必須]

 

エプスタイン財団からの依頼 [必須]

 

アイデアをちょうだい [任意]

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「今回もバラエティ豊かですね」

 

「必須が二つに任意が一つか」

 

「あれ?ベーカリー《モルジュ》からだ」

 

「ユウナ、知ってるのか?」

 

「うん、このパン屋さんうちの近所よ。すっごく美味しいんだから」

 

「ふむ、興味はあります」

 

「もう一つの方は?」

 

「ああ、見てみよう」

 

リィンはもう一つの封筒を開ける。中には書類と地図が同封されていた。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

クロスベル州各地で巨大な魔獣が確認されている。Ⅶ組特務科は次の場所にて、調査すること。

 

東クロスベル街道ボート小屋の奥

 

南クロスベル街道の海岸

 

ジオフロントF区域

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「巨大な魔獣!?」

 

「もしや、幻獣でしょうか?」

 

「幻獣?」

 

「聞いたことがないな」

 

「クロスベル事変の際、各地で幻獣と呼ばれる大型の魔獣が頻発したそうです。また、幻獣が顕れる場所には決まって蒼い花が見られたそうですが……」

 

「蒼い花?」

 

「情報局のデータベースで閲覧したことがあります。名前はプレロマ草だったかと」

 

「う、うん。先輩たちに聞いたことあるわ」

 

「その幻獣とやらの調査と討伐、ついでにその花の駆除が目的か」

 

「そうだな。ただ、クロスベル市外があるから午前中は市内の依頼を優先して、街道の調査は午後にやる。今日の日程はそんなところか」

 

「わ、わかりました」

 

「ハードですが、望むところです」

 

「仕方ありませんね……」

 

「問題ない」

 

「ユウナ、案内は任せていいか?」

 

「ええ、任せてください!」

 

「決まりだな。Ⅶ組特務科、これより特務活動を開始する」

 

『イエス・サー』

 

 

 

[ユウナ side] [市内の店舗調査]

 

依頼をこなすため、あたしたちは一旦中央広場に戻ってオーバルストア《ゲンテン》で情報収集を開始。

 

そこで顔馴染みのウェンディさんとチャコさんに話を聞きつつ、ARCUSⅡの拡張をした。

 

ウェンディさんによると最近、ロイド先輩の姿を見なくなったとか。どうしちゃったんだろ?

 

後、キリコ君が調整したARCUSⅡを見てウェンディさんが「ぜひウチに就職しない!?」って、カウンターから乗り出して誘ったんだけど、キリコ君にその気はないみたい。

 

続いて、デパートで情報収集。支配人さんは一目で教官を見抜いた。

 

ついでに特務支援課のビルに行ってみたけど、閉まってた。当たり前か………。

 

 

 

次に東通りに行った。

 

東方文化の濃い地区だからみんな驚いてた。

 

《龍老飯店》の看板娘のサンサンさんによると、リーシャさんも行方不明だとか。

 

何か食べてかないかって誘われたけど、教官が断った。まぁ、お腹もすいてないしね。

 

龍老飯店を出た後、あたしたちはリーヴスで見たようなお店──《ナインヴァリ》に入った。

 

店主の女の人はなんとジンゴちゃんのお母さん!

 

教官の推測だといわゆる闇ブローカーだって。

 

ただ、置いてあるものは良いものみたいでキリコ君は興味深そうに見ていた。

 

「アンタ、キリコ・キュービィーだろ?」

 

「なぜ知っている」

 

「裏の渡世じゃ有名人だよ。どうだい?この特殊合金仕様の弾丸に携帯爆薬、今なら対機甲兵用地雷もサービスしとくよ」

 

「もらおう」

 

いやいや!貰っちゃダメでしょ!

 

ナインヴァリを出た後、クロスベル商工会のお店に入った。そこで意外な人に会った。

 

「あれ?アンタ、リィンやないか」

 

「あっ、リィン君!」

 

「ベッキーにリンデじゃないか。久しぶりだな」

 

商工会にいたベッキーさんとリンデさんは教官の同窓の方だそう。

 

パブロ君と同じ訛りのベッキーさんは商人の修行でモルス会長の下で働いてるんだって。

 

リンデさんは聖ウルスラ医科大学で研修医をしてる人で、あのヴィヴィさんの双子のお姉さん。もちろんセシルさんのことも知ってた。

 

返り際にベッキーさんからみっしぃのストラップを買った。もしかすると、ルイゼの探してたものかも。

 

 

 

次に港湾地区に行った。

 

IBCにはラインフォルト社が入っていた。

 

警備員の人によると、元々あったエプスタイン財団と同じかそれ以上に活躍してるとか。

 

なんでも新しい室長って人が引っ張ってるらしいの。

 

また、クロスベルタイムズ本社前の屋台の店主のオーゼルのさんは教官のことも覚えていた。

 

もっともオーゼルさんは政治とかそんなこと関係なしに一杯を作るって。職人さんだなぁ。

 

後、黒月貿易公司は少し離れた場所に移転してた。マフィアなんていなくなればいいのに………。

 

 

 

中央広場に戻って裏通りに来た。

 

いわゆる盛り場ってやつで、アッシュなんかが来そう。

 

「この路地はなんだ?」

 

「ああ、そこはルバーチェ商会があった場所ね」

 

「ルバーチェ商会?」

 

「商会とは名ばかりで実態はマフィアですね」

 

「クロスベルではマフィアが跋扈していてクロスベル全体を食い物にしてたらしいな」

 

「ルバーチェ商会とカルバード共和国東方人街の黒月(ヘイユエ)でしたか」

 

「聞いたことがある。それ故ついた渾名が魔都クロスベル」

 

「うん……その通りよ」

 

「だが、今はないんだろう?」

 

「はい、3年くらい前にD∴G教団ってのが事件を起こして、それに加担したルバーチェは解体されました」

 

「D∴G教団?」

 

「情報局のデータベースで見ました。悪魔を崇拝し、女神の否定を教義とする狂気のカルト集団だとか」

 

「女神の否定!?」

 

「うん。そいつらがルバーチェ商会やクロスベル警備隊を薬で操ってクロスベルで戦いになったの。そして特務支援課と遊撃士協会と共同作戦で事件を終わらせたの」

 

「いわゆる《教団事件》だな」

 

そう。そしてクロスベルは………。

 

「なんだい、騒々しいねぇ」

 

振り返ると、指輪をいくつか着けたおばあさんが立っていた。

 

「あっ、すみません。お騒がせして」

 

「まったく、そのとおりだ………おや~?名高き灰色の騎士様かい?」

 

「え、えっと……」

 

「そっちのお嬢ちゃんも見たことあるねぇ。特務支援課に出入りしてたろ?」

 

そっか、この人が……。

 

「ヒッヒッヒ、久しぶりに面白い子たちが来たね。特にそっちの青髪。なかなか物騒な匂いがするねぇ」

 

「………………」

 

キリコ君が憮然とする。

 

「ただ、悪いんだけどこれから商談でねぇ。あんたたちの演習が終わる三日後まで店は閉めるんだよ」

 

「な!?」

 

「どこでそれを……」

 

「ヒッヒッヒ、さあてねぇ」

 

おばあさんはスーツケースを持って行っちゃった。

 

「ユウナ、あのおばあさんを知ってるのか?」

 

「はい、ここのアンティークショップの店主のイメルダさんです」

 

「アンティークショップ?」

 

「うん。クロスベルで唯一ローゼンベルク人形を扱っているの」

 

「ローゼンベルク人形?」

 

「知らないのか?精巧な人形で一体数万ミラはするらしいな」

 

「人形一つに数万ミラですか……」

 

「……………」

 

アルとキリコ君は理解できないって顔してる。

 

「だが、アンティークショップの店主とは思えないほど情報通だな」

 

「ナインヴァリのアシュリーさんみたいに裏と繋がりがあるとか。それにイメルダさんってクロスベル市内にいくつもの土地を持ってるとかって聞いたことがあります」

 

「土地成金ってことか?」

 

「そんなかんじね。悪い人じゃないらしいけど……」

 

 

 

裏通りを抜けて歓楽街にやって来た。

 

「こちらは華やかですね」

 

「ああ、ホテルにカジノ、ん? もしかしてあれが……」

 

「はい!《アルカンシェル》です!」

 

「帝都のオペラ座と並ぶ劇場か」

 

(どちらにせよ、縁がないな)

 

これでイリアさんやリーシャさんがいればもっと華やかなのになぁ。

 

 

 

最後に住宅街を抜けて西通りに来た。

 

やっぱりここまで来ると、帰って来たなって思う。

 

最後の店舗調査を終えて通りに出ると、リュウとアンリ君とモモちゃんとコリン君の四人組に会ったの。

 

どうやら……ケンとナナはいないみたいね。

 

それにしてもリュウってば男女とは何よ!

 

[市内の店舗調査] 達成

 

[ユウナ side out]

 

 

 

[クルト side] [アイデアをちょうだい]

 

必須の依頼を終えた僕たちは西通りのベーカリー《モルジュ》に入った。

 

依頼人のベネットさんによると、新作のパンを作るのに僕たちの料理ノートが必要だそう。

 

それもありきたりではなく、僕たちが最も得意とする一品だという。

 

幸い、ノートにはいくつか記録してあったので一つ一つを出した。

 

「うん、これよ!」

 

何か閃いたらしい。

 

ベネットさんは奥に引っ込むと、パンを作り始めた。

 

焼き上がったパンはとても美味しそうだ。

 

「食べてみて」

 

言われるがままに一口食べてみる。

 

「こ、これは……!」

 

「美味しい!」

 

「やはり焼きたては美味しいですね」

 

「悪くない」

 

お世辞抜きに美味しかった。

 

店頭には『ベネットスペシャル』として出すそうだ。

 

後、依頼料代わりにオスカーさんからできたての新作パンをいただいた。

 

これで依頼は達成だな。

 

[アイデアをちょうだい] 達成

 

[クルト side out]

 

 

 

「じゃあ、次に行きましょ」

 

「いいのか?実家に挨拶しなくて」

 

「ユウナの実家はこの辺りなのか?」

 

「な、なんでそれを……って!ランディ先輩ですね!?」

 

「ああ。もちろん行くか行かないかはユウナたちが決めることだがな。俺としてはユウナのご両親に挨拶しておきたいところだが」

 

「まあ、顔を見せるくらいはいいんじゃないか?」

 

「ちょっと疲れました」

 

「ううう………そうね。休憩がてら寄りましょ」

 

一行は西通りのアパルトメント《ベルハイム》のユウナの実家へ向かった。

 

「ただいま」

 

「あらあら、おかえりなさ……」

 

奥からユウナと同じ髪色の女性が固まった。

 

「ユ、ユウナ……!?」

 

「お母さん、ただいま……」

 

「ユウナ!」

 

ユウナの母親はユウナを抱きしめた。

 

「お母さん……!」

 

「おかえりなさい。ケン!ナナ!ユウナが帰って来たわ!」

 

すると、奥から男の子と女の子が元気よくやって来た。

 

「姉ちゃん!おかえり!」

 

「お姉ちゃんが帰って来た!」

 

「ケン!ナナ!ただいま!」

 

ユウナはケンとナナを抱きしめる。

 

「これは目の毒だな」

 

「ええ、眩しいくらいですね」

 

(孤児院を思い出すな)

 

「あっ、お姉ちゃんのお友だち?」

 

「キレイなお兄ちゃんとカッコいいお兄ちゃんだ~」

 

「キ、キレイなお兄ちゃん……!?」

 

ナナにコンプレックスを刺激されたクルトは落ち込んだ。

 

「………………」

 

一方のキリコは通常運転だった。

 

「カッコいい……!」

 

どうやらケンにはかっこよく映ったようだ。

 

「こっちのお姉ちゃんもかわいい~!」

 

「はぁ、ありがとうございます」

 

(まだまだ理解できていないようだな)

 

「あっ、ごめんなさい。今お茶を入れますね」

 

ユウナの母親はリィンたちを招き入れた。

 

 

 

「トールズ第Ⅱ分校教官のリィン・シュバルツァーです」

 

「はい、娘がお世話になってます」

 

「はじめまして、クルト・ヴァンダールです」

 

「アルティナ・オライオンと申します」

 

「キリコ・キュービィーです」

 

「はじめまして。クルト君にアルティナちゃんにキリコ君ね。ユウナの母のリナです」

 

「ぼく、ケン!」

 

「あたしはナナ!」

 

「ユウナさん、もしかして……」

 

「うん。ケンとナナは双子なの」

 

「へぇ、どうりで」

 

「ねぇねぇ、どっちがお姉ちゃんのカレシなの?」

 

「キレイなお兄ちゃんとカッコいいお兄ちゃんのどっち?それともこのお兄さん?」

 

「ケン!ナナ!」

 

「姉ちゃんが怒った~♪」

 

「逃げろ~♪」

 

「ああもう、ホンット変わらないんだから……」

 

「ふふ。それでユウナは演習で帰って来たのね」

 

「うん。3日後には帰んなきゃいけないけど」

 

「姉ちゃん帰っちゃうの?」

 

「ナナ、つまんない」

 

「わがまま言っちゃだめよ。それよりユウナ、分校ではちゃんとやれてるの?」

 

「うん。クルト君にアルにキリコ君はもちろんだけど、他のみんなとも仲良くなったわ」

 

「良かったわ。お父さんも心配してたのよ」

 

「そっか、お父さんも」

 

「ユウナのお父さんは何されているんだ?」

 

「お父さんはMWL(ミシュラムワンダーランド)に勤めてるの。リゾートホテルの企画営業部門よ」

 

「あの有名な?」

 

「へぇ、そうだったのか」

 

「スッゴいんだよ~!」

 

「みっしぃに会えるんだよ~!」

 

「そうか」

 

(キリコは動じないな……。でも子ども嫌いというわけでもないか)

 

「ええ。教官さん、ユウナのことをよろしくお願いいたしますね」

 

「ええ、任せてください」

 

「ちょっと、お母さん!?」

 

「心配なのよ。ユウナったらよその男の子とケンカして泣かせてくるし、日曜学校でもシスターに手をかけさせるし、朝は起きられないし、勉強もイマイチだし……」

 

「ちょっ……!」

 

「な、なるほど………」

 

「ユウナさんはユウナさんですね」

 

「ガキ大将というやつですか……」

 

「……………(ズズッ)」

 

「もう~~!」

 

ユウナはテーブルをバンバン叩く。

 

 

 

「みんな、そろそろ行くとしようか」

 

「もうこんな時間か」

 

「お茶、ごちそうさまでした」

 

「お菓子も美味しかったです」

 

「ええ、お粗末様。ケン、ナナ、いいの?」

 

「あっ、そうだ」

 

「お礼言わなくちゃ」

 

「お礼?」

 

「お兄さん、あの時は助けてくれt「ワー!ワー!ワー!」……お姉ちゃん?」

 

「ユウナさん?」

 

「な、なんでもないから!それじゃあね、お母さん。ケンもナナもね!」

 

「?」

 

リィンたちはユウナに急かされるまま、クロフォード家を後にした。

 

「どうしたんだろ?お姉ちゃん」

 

「さぁねぇ。でも……あのリィンさんって……」

 

「うん、あたしとケンとお姉ちゃんを助けてくれたの」

 

「あのおっきいので助けてくれたよ」

 

「そうよね。(近所じゃ敵だ、帝国の狗だなんて言われてるけど、あたしたちにとっては命の恩人だものね。それになんだか元気もなかったし……)」

 

 

 

一方、リィンたちは港湾地区を抜けて、IBCの待合所のソファーに座っていた。

 

「次は必須の依頼ですか」

 

「協力者が来るらしいがな」

 

「ああ、受付の人によると主任らしいけど」

 

「あっ、来たみたい………」

 

「……みなさん、お待たせしました」

 

振り返ると水色の髪をした研究者らしき人物がいた。

 

「ティオ先輩!」

 

「ユウナ、久しぶりですね」

 

ユウナは主任と握手した。

 

「ええっと……」

 

「ユウナの知り合いか?」

 

(ユウナの知り合い……おそらく彼女は………)

 

「ああ、自己紹介をしなくてはなりませんね」

 

主任は白衣を乱れを直した。

 

「はじめまして、ティオ・プラトーと申します」

 

「リィン・シュバルツァーです。今回はよろしくお願いします、プラトー主任」

 

「ティオで結構です。リィンさん」

 

「クルト・ヴァンダールです。見知りおきを」

 

「もしかしてミュラーさんの?」

 

「はい、ミュラーは兄です。ご存知ですか?」

 

「西ゼムリア通商会議の時にお会いしました」

 

「通商会議で?」

 

「プラトーさんは特務支援課の一員でしたね」

 

「ええ、その通りです。アルティナさんもお久しぶりですね」

 

「……………」

 

リィンの表情は少しだけ暗くなった。

 

「それで、あなたは?」

 

「キリコ・キュービィーです」

 

「よろしくお願いします」

 

ティオはキリコに頭を下げる。

 

「では早速ですが、ティオ主任。今回はジオフロントでの調査だとか」

 

「ええ」

 

ティオはリィンたちに調査内容を話し始めた。

 




今回はここまでにします。

次回、お嬢様とメイドが登場します。
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