英雄伝説 異能の軌跡   作:ボルトメン

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序章に入ります。

かなりグロテスクな描写があります。耐性のない方はお気をつけて




序章 内戦篇
パンツァー・ゾルダ


[キリコ side]

 

キュービィー夫妻に引き取られてから2年が過ぎた。

 

二人は俺に惜しみ無い愛情を注いでくれた。

 

日曜学校は勿論だが、17歳になったら帝国有数の名門校であるトールズ士官学院へ行かせてくれることも約束した。

 

この2年間は俺にとって間違いなく幸福だった。体に宿る異能生存体すらも忘れてしまうほどに。

 

だがそれは、俺にとって最大の過ちだった。

 

ソイツは影の如く俺と共にいたのだ。

 

毒蛇が獲物に静かに這いよるように、俺を再び地獄の底へと叩き落とす用意は出来上がっていたのだ。

 

 

 

七耀暦 1204年 10月30日

 

鉄血宰相、ギリアス・オズボーン暗殺のニュースと共に内戦が始まった。

 

帝国正規軍と貴族連合軍との内戦勃発から1週間。

 

キュービィー夫妻と暮らす家とその村は激戦が予想される帝国西部とはいえ戦場からは遠く離れていた。

 

誰もが安心していただろう。自分たちは関わることはないだろうと。

 

だが、それは間違いだった。

 

戦場とは、一分一秒で大きく変わるものだということを。俺はイヤでも思い出させることになった。

 

 

 

1ヶ月後 11月31日

 

日用品を買うため隣の町まで買い出しに行った帰りだった。

 

村の方角から黒い煙がいくつも見えた。俺は我を忘れて村に戻った。

 

村の入り口が着いたとき、村が焼かれていた。

 

そこで初めて巨大なものが見えた。帝国時報で読んだ内容が正しければアレは機甲兵(パンツァー・ゾルダ)と呼ばれるものだった。

 

貴族連合軍が心血を注いで作り上げたという巨大な騎士人形。戦場における成果とインパクトは絶大だという。

 

だが、そんなことはどうだってよかった。

 

三体の内の中で隊長機らしいのがいた。ソイツは村中の人間を倉に押し込め………

 

 

 

巨大なメイスを振り下ろしたのだ。

 

 

 

「待て…やめろぉぉぉ!!」

 

グシャッ…!

 

何かが潰れた音がした。

俺の中で何かが弾けた。

 

俺は怒りのままにソイツに向かって行った。

 

だが、結果は火を見るより明らかだった。

 

ソイツの振り下ろした棍棒の爆風で俺は吹き飛ばされた。

 

薄れ行く意識の中、俺はソイツだけを睨み付けていた。

 

必ず殺してやると。

 

[キリコ side out]

 

 

 

[ヴェイン side]

 

私の名はヴェイン・ジギストムンド。ラマール州領邦軍人にして貴族連合軍機甲兵部隊の統括者である。

 

世間ではルグィン家の小娘が英雄扱いされているが、否! 断じて否!

 

我がジギストムンド伯爵家こそが至高なのである!

 

たかだか剣の腕が少々立つ位で何様のつもりであろうか。

 

カイエン公もカイエン公もだ。

 

私の立てた完璧な作戦をことごとく見送ったばかりか、あの小娘や蛮族の血を引く半端者ばかり重用しおって!!

 

………まぁいい。ならば奴らが及ばぬほどの手柄を立てるだけだ。

 

「我らはこれより、貴族連合軍にたてつくクズどもを徹底的に殲滅する!」ザワザワ…

 

周りがざわつくが私は構わず続ける。

 

「奴らは図々しくも中立などと宣っているが、これは我ら貴族に対する反逆である!なんたる無恥、なんたる欺瞞。平民など我ら貴族が生かしてやっているに過ぎないサルでしかというのにだ!その恩も忘れて何が中立か!そのような恥さらしはこのエレボニア帝国において生きる価値は無い!」

 

「し、しかしそのような命令、オーレリア将軍が知れば…「黙れっ!!」ヒッ!」

 

「この部隊の指揮官は私だ!あの小娘ではない!私の命令は絶対なのだ!」

 

「イ、イエス・サー」

 

本当に頼りにならない部下どもだ。小娘の偶像に踊らされおって。こうなればこの作戦をもって、我が名を知らしめてくれるわ。

 

「これより作戦行動に移る。わずかでも遅れた者は銃殺する。行動開始!」

 

 

 

数時間後、目標の村に到着した。

 

私は早速、村中の平民を広場に集めさせた。

 

うむ、サルどもとはいえこれだけ集まれば壮観だな。

 

どいつもこいつも平伏している。

 

あぁ、なんと醜いことか。やはり、我ら両足で立っている貴族こそエレボニア帝国にふさわしいと言えよう。

 

私はわざわざ機甲兵から降りてやって処刑を宣告した。

 

「貴様らに告げる。貴様らは図々しくも中立などとほざき、我ら貴族に刃向かった!この美しきラマール州に住むことができたのは誰のおかげか。誰のおかげで餌にありつけるのか。それを忘れてのこの振る舞い。もはや、ように「ゴホッ、ゴホッ」……」

 

邪魔が入った。

 

「フフフ、そうか。それほどまでに死にたいか。そこのガキを引っ立てろ!私の話を妨げた報いを与えてやる!」

 

「どうかお許しください!この子は風邪をひいているのです!ひどい熱なんです!どうか…どうか」

 

「黙れ黙れ黙れ!!身分を弁えんばかりかこの私に意見するとは!貴様らの答えはよくわかった!全員、死刑だ!!」

 

私はまず、部下たちに倉を除いた全ての小屋に火を着けさせた。

 

そして村のサルどもを倉に押し込め、部下の機体からメイスを取り上げた。

 

「貴族連合軍人ヴェイン・ジギストムンド伯爵の名において、死刑を執行する。貴様らサルを殺すのに銃は高価過ぎるのでな。それでは───

 

 

 

死ぬがよい」

 

 

 

「待て…やめろぉぉぉ!!」

 

まだ一匹残っていたか。だが遅い。ブォン!

 

グシャッ…!

 

ふぅむ、思ったほど呆気ないものだな。

 

「か、閣下!あのガキが!」

 

「フン、やはり知能もサルか」

 

再びメイスを振り下ろす。爆風で小ザルはきれいに吹き飛んだ。死体は…確認するまでもない。

 

「これにて、作戦は終了する!総員直ちに帰還する!」

 

作戦完了の報告は明日でよかろう。今夜はいい夢が見られそうだ。

 

[ヴェイン side out]

 

 

 

だが、ヴェインもその取り巻きたちも気づいていなかった。今夜彼らが見るのは、悪夢だということを。

 




壮大な死亡フラグ

余談ですが、ヴェインはあくまでこの機甲兵部隊の隊長でしかありません。
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