英雄伝説 異能の軌跡   作:ボルトメン

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ラッセル一家がやって来ました。


ラッセル

6月12日

 

キリコは朝食を取り、学生寮を出た。

 

「そこの君、ちょっといいかの?」

 

振り向くと、白髪の老人がいた。

 

「何か?」

 

「分校の学生寮はここかな?」

 

「ええ」

 

「ティータという娘がおるじゃろ。呼んで来てくれんか?」

 

「彼女なら先に出た。それよりアンタは?」

 

「言葉使いがなっとらんのぉ。まあよいわい。わしはラッセルというもんじゃ」

 

「!? ZCFのラッセル博士か?」

 

「うむ。君がキリコ・キュービィー君じゃな。孫からの手紙にあったぞ。自分以上の技術者だとか」

 

「買い被りです」

 

「ふぉっふぉ、目を見ればわかる。お前さん、相当な腕じゃろ」

 

「……………」

 

「それで、ティータはどこかの?」

 

「……分校の格納庫にいるはずでしょう。入るには一応、許可が必要ですが」

 

「そんなものはシュミットにでも押し付ければよいわい。それじゃ、案内を頼むぞい」

 

 ラッセル博士は有無を言わさずキリコを促す。

 

(……血は争えない、か)

 

キリコはラッセル博士と共に分校の格納庫を目指した。

 

 

 

「ここが格納庫か」

 

「ええ」

 

キリコは格納庫の扉を開けた。

 

「あっ、キリコさん、おはようございます。少し遅かった……です……ね……」

 

ラッセル博士の姿を捉えたティータは唖然とした。

 

「やぁ、ティータ♪」

 

「お、お、お、お爺ちゃん!?な、なんで!?」

 

「孫に会いに来るのに理由がいるのか?」

 

「お、お爺ちゃん……」

 

「久しぶりじゃな」

 

「お爺ちゃん!」

 

ティータはラッセル博士に抱きついた。

 

「ほっほっほ、少し背が伸びたかの?」

 

「えへへ、本当にお爺ちゃんだ」

 

「……………」

 

キリコはティータたちから離れて作業を開始した。

 

 

 

「すみません、キリコさん」

 

我にかえったティータは申し訳なさそうに謝った。

 

「気にするな」

 

「それにしても、どうしてお爺ちゃんがいるの?」

 

「うむ。知り合いから頼まれごとがあっての。エリカとダンとともに帝国入りしたんじゃよ」

 

「お父さんとお母さんも来てるの!?あれ?そういえばお父さんとお母さんは?」

 

(そういえば一人しかいなかったが)

 

キリコは先ほどの記憶を辿る。

 

「あっ、忘れとった」

 

「………………」

 

「お、お爺ちゃん~~」

 

ティータは呆れかえった。すると──

 

「こんのクソジジィ!よくもおいて行ったわね!」

 

「ちっ、追い付かれたか」

 

「お、お母さん……」

 

(あれがティータの母親か……)

 

キリコはその場から離れた。

 

「ああ、ティータ!私のティータ!」

 

ティータの母親はティータをしっかりと抱き締めた。

 

「お、お母さん!?」

 

「大丈夫なの?ちゃんとご飯食べてる?変な男にたぶらかされてない?」

 

「え、えっと……」

 

ティータの母親はティータを抱き締めながらキリコを睨んだ。

 

(あれは……敵意か……?)

 

「そのくらいにしておけ。それよりダンは?」

 

「ここにいますよ」

 

「貴方がラッセル博士ですね」

 

扉からダンと呼ばれた男とリィンとトワが入って来た。

 

 

 

その後、リィンとトワは作業場の隣でラッセル博士たちと話していた。

 

「わしはアルバート・ラッセル。ティータの祖父じゃ」

 

「私はティータの母のエリカです」

 

「僕はエリカの夫でティータの父のダンです。すみません、お騒がせして」

 

「い、いえ。しかし、驚きました。ラッセル博士やエリカ博士がお出でになるとは」

 

「す、すみません。リィン教官、トワ教官」

 

「いいんだよ、ティータちゃん。申し遅れました。Ⅸ組主計科担当のトワ・ハーシェルです」

 

「Ⅶ組特務科担当のリィン・シュバルツァーです」

 

「はじめまして、娘がお世話になってます」

 

「貴方が灰色の騎士ですか。会えて光栄です」

 

「ダンさんでしたか。失礼ですが、何か武術をやっておられましたか?」

 

「ははは、わかりますか。結婚する前は遊撃士だったんですよ。棒術をやってました」

 

「そうだったんですね。それで、本日はティータに会いに?」

 

「ええ。そして、彼がどんな男かを確かめに」

 

 エリカは作業を進めるキリコを見つめる。

 

「え?」

 

「キリコに、ですか?」

 

「娘からの手紙だと、彼は自分より優秀だと書いてありました。手前味噌ですがあの子は私以上のものをもっています。どれほどの実力か見極めるために」

 

「とかなんとか言って、ティータが負けるのが許せないんじゃろ?」

 

「当然じゃない!」

 

「まあまあ……」

 

「エリカ、落ち着いて」

 

リィンとダンがエリカを諌める。

 

(あうう……ごめんなさい)

 

「………………」

 

キリコはティータの謝罪を聞きながら、機甲兵のチェック項目に書き込んでゆく。

 

「……とはいえ、認めるしかないようね。彼、相当なレベルね」

 

「え?」

 

「仕事を見ればわかります。手際がよく、妥協しない。エンジニアとしていい腕だと思います」

 

ダンがエリカの言葉を継ぐ。

 

「うむ。しかし、すごいのぉ。まるであらゆる機械に適応するかのようじゃ」

 

ラッセル博士はキリコの手際の良さに唸る。

 

「確かにキリコは機械の扱いにかけては相当なものですからね」

 

「機甲兵戦術も分校一位ですから」

 

「ううむ、ますます誘いたくなったの」

 

「キリコ君をZCFに?」

 

「うむ。ぜひうちに就職してくれんかのぉ?彼なら新たな導力革命を起こす。そんな気がするんじゃよ」

 

「そこまで……」

 

「トールズは軍人以外の道に進む者が多いと聞く。どうじゃろ?お前さんからも頼んでくれんか?」

 

「うーん、どうでしょう。キリコは以前、ラインフォルトから勧誘を受けましたが、結局断りましたから」

 

「断ったんですか?あのラインフォルトを?」

 

「ええ「興味がない」と」

 

「イリーナ会長から聞いているわ。なかなか偏屈のようね?」

 

エリカは不敵な笑みを浮かべた。

 

(偏屈というより、本当に興味がないみたいなんですが……)

 

(キリコ君ってそこが読めないんだよね……)

 

「やれやれ、騒々しい連中が来よった」

 

振り向くと、シュミット博士が入って来た。

 

「久しぶりじゃのう、シュミット。相変わらず一人で研究三昧か」

 

「貴様の道楽と一緒にするな」

 

「道楽とは何じゃ!」

 

「風の噂で飛行船実験で何十回と墜落させてやっと成功させたそうだが?私なら三回失敗すればそれで見切りをつけるがな」

 

「偏屈ぶりは変わらんの。グエンから聞いたが、ラインフォルト社を引っ掻き回して何度も破産寸前に追い込んだそうじゃが?」

 

「私はわが道を往くだけだ。ついてこれないならそれまでだ」

 

(なんて言い草だ……マカロフ教官やジョルジュ先輩が逃げ出したのも頷けるな)

 

リィンはシュミット博士に呆れると同時に、元弟子の二人に深く同情した。

 

「それより弟子候補。データを寄越せ」

 

「は、はい!」

 

「ちょっと!ティータを何だと思ってるの!」

 

「部外者は引っ込んでいろ。キュービィーはミッションディスクの記録だ。整備が終わり次第、チェックに入れ」

 

「……了解」

 

シュミット博士はそれだけ言って2階へと上がって行った。

 

キリコとティータはそれぞれの作業を始めた。

 

「……………」

 

その間、エリカはシュミット博士を睨み付けていた。

 

 

 

「さて、そろそろお暇しようかの」

 

「もう帰られるんですか?」

 

「先ほども言ったが、知り合いから頼まれごとをもらってな。正午前には帝都に行かなくてはならんのじゃ」

 

「ご多忙なんですね」

 

「もちろんティータの顔を見に来たのも目的の一つじゃがな」

 

(お爺ちゃん……)

 

ティータは遠くから聞いていた。

 

「ティータの様子を見に来たわけじゃが、心配なさそうじゃな。いろいろ反対したが、留学させたのは間違いではなさそうだしの」

 

「そうですね。ここの雰囲気も思っていたより穏やかですし、リベールにはない技術も学べますしね。手紙で知りましたが、友達もできたようですし」

 

「とりあえず、彼は問題なさそうね」

 

「お前はそればっかりじゃの」

 

「当たり前よ。ただでさえ変な虫がついてるってのに」

 

「は、はあ……」

 

(もしかして………)

 

トワの頭に赤毛の遊撃士の姿が浮かんだ。

 

「フン、用が済んだらとっとと行くがいい」

 

「お前に言われんでもそうするわい。それではな。後、キリコ君によろしく伝えてくれい」

 

「トワさん、リィンさん。娘をよろしくお願いします」

 

「はい、お任せください」

 

「ティータ、お手紙ちょうだいね」

 

「うん、またね、お爺ちゃん、お父さん、お母さん」

 

ラッセル一家は格納庫から出ていき、リィンたちは見送りに行った。

 

 

 

「まったく、無駄な時間を食った」

 

「あはは、すみません」

 

(なかなか強烈だったな)

 

「ええっと……キリコさん……。お爺ちゃんの話は……」

 

「悪いが興味はない。ラッセル博士はああ言っていたが、俺はそんな人間ではない」

 

「そうですか……」

 

ティータは残念そうに言った。

 

「あっ、キリコ君、ティータ!」

 

扉からユウナが入って来た。

 

「ユウナ?」

 

「あっ、ユウナさん。武器の調整ですか?」

 

「ううん。それより誰か来てたの?」

 

「あっ、はい。ええと……」

 

ティータは先ほどのことを説明した。

 

「へえー、ティータのお父さんとお母さんとお爺さんが来てたんだ。でもティータのお爺さんって有名なの?」

 

「ZCFのラッセル博士といえば歴史の教科書にも載っている。エプスタイン博士の三弟子の一人にして、リベールの導力革命の父とも呼ばれている」

 

「他にも、導力飛行船を発明したり、世界初の演算システムの基礎を作ったりと本当にすごいんです」

 

「演算システム……カペル、だったか?」

 

「はい。よくご存知ですね。お爺ちゃんが基礎を作って、お母さんが完成させたんです」

 

「そこまでは知らない。確か飛行挺にも搭載されているらしいが?」

 

「はい。王室専用機のアルセイユ号にもあるんですよ」

 

「ゴ、ゴメン。何言ってるかさっぱり……」

 

ユウナはお手上げといった顔をした。

 

「それより、どうした?」

 

「あっ、そうそう。実はね、機甲兵の訓練をお願いしたくて」

 

「訓練、ですか?」

 

「うん。先月みたいに、ヴァリマールの力をもっと扱えるようになりたくて」

 

「わかった。博士、構いませんね?」

 

「ああ、構わん」

 

「機甲兵を出すぞ。データ収集は任せる」

 

「わかりました!」

 

「ありがとう!それじゃ、みんなを呼ぶね」

 

ユウナはARCUSⅡで仲間を呼ぶべく通信を開いた。

 

 

 

【ったく、メンドくせぇな……】

 

【そう言いながら乗り込んでるじゃない】

 

【今回もキリコは出ないんだな】

 

「ああ」

 

「今回も、ですか?」

 

「そう言えばミュゼさんとアッシュさんはご存知ないんですね。キリコさんの乗るフルメタルドッグはヴァリマールの力を受けにくいんです」

 

【どういうこった?】

 

【オーブというものがあって、ヴァリマールが装備すると、性能が上がるんだ。さらに、準起動者に選ばれた者にはオーブの効果を受けられるんだ】

 

「準起動者ですか?」

 

【この間みたいに青い光に包まれたでしょ。それがその証みたい】

 

【キュービィーも光ってたじゃねぇかよ】

 

「不可解なことに、キリコさんの場合、その効果が薄いんです」

 

「なんででしょうね」

 

「さあな。それより、相手が来たぞ」

 

キリコの言う方向にはヴァリマール、ではなくヘクトル弐型がいた。

 

【よう、待たせたな】

 

【ランディ先輩!?】

 

【なんでオルランドがいるんだよ】

 

【アッシュ、口の聞き方がなってないぞ。でもどうしてランディ教官が?】

 

【リィンに無理言って代えてもらった。お前らの実力も知っておきたいしな】

 

ランディはユウナたちの疑問に答えた。

 

【はっ!だったら見せてやるよ】

 

【あたしたちだって修羅場を乗り越えて来たんですから!】

 

【全力でお相手します!】

 

ユウナたちの士気が上がる。

 

「やる気は十分ですね」

 

「私たちも頑張りましょう」

 

「………………」

 

アルティナとミュゼが気合いを入れる中、キリコは不安を覚えていた。

 

(修羅場を乗り越えて自信がついたようだが、それは落とし穴だ。中途半端な自信は脆く崩れやすい。この訓練でどこまでやれるか)

 




次回、機甲兵戦闘になります。
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