英雄伝説 異能の軌跡   作:ボルトメン

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ジュノー海上要塞①

6月19日 早朝

 

キリコたちは鳴り響く砲撃音とともに目覚めた。

 

「!?」

 

「砲撃音!?」

 

(距離は遠いな。それでいてこの音は…………まさか!)

 

 キリコはある答えを導き出した。

 

「キリコ?」

 

「全員、備えろ。おそらく列車砲だ」

 

「「列車砲!?」」

 

キリコの断言にウェインとスタークは仰天した。

 

「し、しかし……いったいどこから……」

 

「そういえば、昨日の実習で小耳に挟んだことなんだが、バラッド侯の配下が大がかりな輸送を行ったらしいんだ」

 

「間違いなく列車砲だな」

 

「だとしても、どうやって運ぶんだ?」

 

「先月、イリーナ・ラインフォルト会長が話していたことだが、ドラグノフ級列車砲というのが開発された。従来機と比べて、機動力が増したそうだ」

 

「機動力があるイコール運搬できるということか!」

 

「どうやらそうみてぇだ」

 

ランディが足早に入って来た。

 

「オルランド教官!」

 

「どうやら北ランドック峡谷に置いといたはずの列車砲が使われているらしい。今オルディスが砲撃にさらされていんだ!」

 

「なんですと!?」

 

「正気か!?」

 

「ウェイン、すぐに集合しろ。スタークは通信班のバックアップに回ってくれ。以上だ」

 

「「イエス・サー!」」

 

「俺は?」

 

「Ⅶ組は待機命令だ。多分、一番ハードだ。少しでも体を休めとけ、わかったな?」

 

「……了解」

 

キリコの返事を聞いて、ランディは出ていった。

 

「それじゃあ、持ち場に付くか」

 

「キリコ、後でな」

 

「ああ」

 

ウェインとスタークもそれぞれの持ち場へと向かった。

 

(準備だけでもしておくか)

 

キリコは六号車へと向かった。

 

 

 

「ああっ、やっぱり!」

 

六号車に来たティータは作業をしているキリコを見て慌てて駆け寄った。

 

「キリコさん、ちゃんと休まないとダメですよ!」

 

「何もせずにいるよりは休める」

 

「完全にワーカホリックじゃないですか!」

 

「自覚している」

 

「ああもう………!」

 

ティータは肩を落とした。

 

「といっても、今回は博士から連絡はない。せいぜい機体チェックだけだ」

 

「そういえばそうなんですよね。そういえばキリコさん、これってなんですか?」

 

「試したい装備品だ。それよりいいのか?」

 

「はい?」

 

「主計科は総出で仕事があるようだが?」

 

「今のところは大丈夫です。そんなことよりキリコさんですよ。後はわたしがやるから休んでいてください。いいですね!」

 

「…………わかった」

 

キリコはティータの凄みに根負けし、渋々といった形で作業を引き継がせる。

 

(それにしても列車砲か。狙いはオルディスだろうが、腑に落ちないな。仮に狙うならあそこの方が重要…………)

 

キリコは思考を一瞬止める。

 

(まさか……!)

 

キリコは列車の外に出た。

 

 

 

「キリコさん?」

 

「どうしたんだ、そんなに慌てて」

 

「お前たちか。Ⅶ組全員を集めろ。ジュノーに向かう」

 

「ジュノー海上要塞にか!?どうして……」

 

「聞け。北ランドック峡谷に列車砲があるというのは聞いているな?」

 

「ああ。今オルディスが狙われていることも知っている」

 

「単純にオルディスを落としてそれで済むと思うか?」

 

「え?」

 

「なるほど。オルディスは攻撃にも防衛にも向いていません。にもかかわらずオルディスに砲撃するということは……」

 

「まさか……囮か!?」

 

「おそらくはな。適当に砲撃してこちらを煽り、誘き出す。その隙にジュノーを落とす。そんなところか」

 

「だが、それだけのことができるのか?」

 

「敵は間違いなく単独ではない。四つの猟兵団に結社が手を貸しているのは十分考えられる」

 

「辻褄は合っていますね」

 

「…………」

 

クルトは目を瞑り、そして決断した。

 

「わかった。今すぐ集める。アルティナは教官に連絡を」

 

「わかりました」

 

クルトは仲間たちを探しに離れた。アルティナはARCUSⅡを取り出し、連絡を行おうとした。

 

「キリコさん」

 

「ああ……」

 

キリコは列車の死角になっている方向を見た。

 

「出てこい」

 

「あはは、バレてた?」

 

シャーリーが現れた。

 

「何しに来た」

 

「ちょっとね。ランディ兄や灰色のお兄さんは?」

 

「今は外している」

 

「ああ、大体の見当はついているよ。それより、なかなか良い読みだね」

 

「あくまで推測に過ぎない」

 

(どうして普通に話せるんでしょう……)

 

キリコとシャーリーのやり取りにアルティナは呆れた。

 

「それでなぜここにいる?」

 

「あたしたちはあくまでサポート役だよ。主役は他にいるよ」

 

「主役?」

 

「北の猟兵って知ってる?」

 

「名前くらいならな」

 

「元ノーザンブリア大公国の正規軍で構成された猟兵団です。錬度は二大猟兵団にも劣らないとか」

 

「キリコたち、一昨日交戦したらしいじゃない」

 

「あの紫の猟兵か?」

 

「そうだよ。なんかさ、正規軍にも領邦軍にも恨みを持っているんだって」

 

「恨み?」

 

「もしかして……北方戦役?」

 

アルティナは聞かされた情報から推測する。

 

「北方戦役は実質、帝国軍と北の猟兵による戦争だったとも言えます。おそらくシャーリーさんの言うとおり、帝国への復讐なのでしょう」

 

「そして領邦軍、いや統合地方軍の本拠地はジュノー海上要塞。あそこを落として衝撃を与えるのが狙いか」

 

「ちなみに今あそこにはバラッド侯が立て籠っているらしいよ」

 

「何?」

 

「なんか黒旋風に北ランドック峡谷を丸投げして、自分の親衛隊だけで守っているんだって。ホントバカだよね~」

 

「考えられる限りの悪手ですね……」

 

「めんどくさくなりそうだな、オイ」

 

振り向くと、ユウナたちが集まっていた。

 

「やあ、来たんだ?」

 

「あなたこそ何をしてらっしゃるんですか?」

 

「いや~、こっちも退屈なんだよね。本当ならそっちに行きたいんだけどさ。向こうも譲れないみたいでさ」

 

「やっぱり、復讐?」

 

「さあね。まあ、いいや。そろそろ行くね」

 

シャーリーはテスタロッサを担いだ。

 

「え……!?」

 

「戦いに来たのではないのか?」

 

「うん。だって……」

 

シャーリーはキリコに駆け寄ってハグをした。

 

「「!?」」

 

「これは……」

 

「ヒュウ♪」

 

(な…な…な……!)

 

「……離せ」

 

キリコは一瞬面食らったが、すぐにシャーリーをひっぺがした。

 

「キリコに会いたかったからね。それじゃ、バイバ~イ!今度パパに紹介するね♪」

 

シャーリーは手を振りながら転移して行った。

 

残されたユウナたちは呆然とした。

 

「パ、パパって……」

 

「彼女の父親は赤い星座の団長だったはずです」

 

「ククク、なかなか面白そうだな♪」

 

「完全に他人事だな……」

 

(私だって……したことないのに……!紅の戦鬼、許すまじ……!)

 

ミュゼはシャーリーの転移したであろう方向に怒りの視線をぶつける。

 

「余計な時間を取られたな」

 

「(動じないわね……)でも今から出発すれば追いつけるかもね」

 

「導力バイクは二台ありますから、問題なさそうです」

 

「いや、導力バイクはお前たちで乗ってくれ。そろそろ動かせるだろうからな」

 

「動かすって……まさか!」

 

「そういや、てめえにはあれがあったな」

 

「ああ」

 

「大丈夫なの?」

 

「この辺の地形は頭に入っている。それに試したい装備もあるしな」

 

キリコはそれだけ言って六号車へと戻った。

 

 

 

「あのさ………」

 

「え?」

 

「ヴァレリーさん?」

 

キリコを待つユウナたちに主計科のヴァレリーが声をかける。

 

「アンタたちに……話しておこうと思ってさ」

 

「なんだよ」

 

「北の猟兵なんでしょ?動いているのって……」

 

「シャーリーさんが言うにはですが」

 

「それがどうかしたのかい?」

 

「………あの人たちがオルディスを襲おうとするのは、わかるような気がするの……」

 

「え……?」

 

「どういうこった」

 

「私が……悪魔の血筋だから………」

 

「悪魔?」

 

「猟兵関係……ではなさそうですが?」

 

「………………」

 

ヴァレリーは一呼吸入れ、口を開いた。

 

「私はね、ノーザンブリア大公家の本家筋に当たる家の生まれなのよ」

 

「えっ!?」

 

「ノーザンブリアの……」

 

「確か、ノーザンブリア大公といえば」

 

「ええ。塩の杭と呼ばれる事件で何の対策も責任も取らず、真っ先に逃げた裏切り者よ」

 

「その後、トンズラした王サマとその家潰してノーザンブリアは自治州になったんだったな」

 

「アッシュ!」

 

クルトはアッシュを咎めた。

 

「いいの。そしてアルティナの言うとおり、ノーザンブリア大公国の元正規軍が集まってできたのが北の猟兵」

 

「そうだったんだ……」

 

「彼らにしてみれば大公も帝国も仇であり屈辱。それを晴らそうということですか……」

 

「多分ね」

 

「もしかしてヴァレリーさんがあまり人ごみに入らないのは……」

 

「元々、人の多い所は好きじゃないから。それに……私みたいなのが……って……」

 

「そんなこと……!」

 

「アホちゃうか、お前」

 

振り向くと、パブロが立っていた。

 

「パブロ……」

 

「お前がどんなモン抱えとるかはようわかった。せやけどな、お前に何の関係があんねん」

 

「は……?」

 

「だいたい塩の杭が落ちてきた頃なんて俺らが産まれるずっと前の話やろ。そんなモンお前、爺さんか婆さんか知らんが俺らの前の人間の問題やろ」

 

「そ、そうよ!ヴァレリーには関係ないじゃない!」

 

「それは違う。クルト君やミュゼならわかるでしょ」

 

「僕もパブロの意見に賛成だな。たとえ先祖に大罪人がいたとしても、今を生きる僕たちに関係ないことだ」

 

「確かに、先人の咎はついて回るものかもしれません。ですが、それはその方の咎であって、ヴァレリーさん自身の咎ではないかと」

 

「二人とも……」

 

「せやろ。お前はお前らしくしとったらええねん。そんなんやったらせっかく軌道に乗った軽音部もだだずべりになんで。お前はうちのボーカルなんやから」

 

「うん!ヴァレリーって歌上手いもんね。分校長にすっごく褒められてたじゃない!」

 

「わたしなんかより見事です」

 

「ヴァレリーさんには素晴らしい才能があるじゃないですか」

 

ユウナたちⅦ組女子はヴァレリーの歌唱力の高さを褒める。

 

「みんな……」

 

「重要なのはお前がどうしてぇかだろ?」

 

「私がどうしたいか……」

 

ヴァレリーは目を瞑り、そしてユウナたちの方を向く。

 

「私が行っても火に油を注ぐことにしかならない。だからお願い、あの人たちを止めて」

 

「まっかせて!」

 

「わかりました」

 

「既に教官も動いておられる頃でしょう」

 

「後はあいつなんだが……」

 

【すまない、待たせた】

 

振り返るとフルメタルドッグが歩行してきた。その脚にはソリのようなものが取り付けられていた。

 

「いや。こちらも準備OKだ」

 

「キリコ君。そのソリみたいなのは?」

 

【試作型のトランプルリガーだ】

 

「トランプルリガー?」

 

【不整地での運用のためのだ。実際に見てもらった方が早いな】

 

「では参りましょうか」

 

「それじゃ、行って来ます!」

 

 

 

キリコたちはジュノー海上要塞を目指していた。

 

「なるほど。そうやって使うのか」

 

「接地面積を増やすことにより、不整地でのローラーダッシュをスムーズにするんですね」

 

【あくまで試作型だ。もう少し軽くする必要がある】

 

「こだわるわねぇ……」

 

「てめえの棺桶くらいこだわりてぇんだろ」

 

「縁起でもないこと言わないでよ!」

 

【……………】

 

「あれは……!」

 

クルトは何かを発見した。

 

「どうしたの?」

 

「教官たちだ」

 

【たちとは?】

 

「どうやら、ユーシスさん、ガイウスさん、ミリアムさん、サラさんの旧Ⅶ組の方々。それにアンゼリカお姉様もご一緒のようです」

 

「へえ……?」

 

「おーい、みんな~!」

 

ミリアムが大きく手を振った。

 

数分後、新旧Ⅶ組が合流した。

 

「君たちも来たのか」

 

「はい!皆さんもジュノーに行くんですよね」

 

「君たちもジュノーに?なんでわかったの?」

 

「それは………」

 

クルトは先ほどのことを話した。

 

「へえ、そんなことが。いやはや、私もかの戦鬼にお目にかかりたかったねぇ♪」

 

「ったく、何のつもりよ」

 

アンゼリカは笑みを浮かべ、サラは警戒心を露にする。

 

「しかし、大した洞察力だな」

 

「うんうん!情報局でもやってけるんじゃない?」

 

「とうとう政府から勧誘が来やがったな」

 

「ちなみにお聞きしますが──」

 

【断るに決まっているだろう】

 

「ですよね♪」

 

ミュゼはそっと胸を撫で下ろす。

 

「それにしても、噂には聞いていたが」

 

「それがアリサ君の言っていたフルメタルドッグかい?」

 

【ああ】

 

「フン。一騎当千という腕前、せいぜい当てにさせてもらおうか」

 

【任せてもらおう】

 

「リィン、そこのカーバイド共々言葉づかいを習わせることを勧める」

 

「はは、やってみるよ」

 

リィンは苦笑いを浮かべた。

 

「さて、そろそろ行くとしましょう。リィン、あたしはアンタの指揮下に入るわね」

 

「サラ教官?」

 

「アンタだけに言えることじゃないけど、どれだけ成長したか見せてもらおうじゃない」

 

「あはは、そう来たか~」

 

「フン、そっちこそ規律から解放されてどれだけ堕落したか見物だな」

 

「しっつれいね~!あたしだってA級遊撃士よ?まだまだアンタたちに遅れは取らないわよ」

 

「フフフ、ではお手並みを拝見させていただこう」

 

(やっぱり、皆さんすごいなぁ)

 

(この人たちに追いつくのは大変だな。でもいつかは……!)

 

(なんでしょう……この居心地の良さは……)

 

(ヘッ……!)

 

(ふふっ、さすがですね)

 

旧Ⅶ組のやり取りを見た新Ⅶ組は高い壁を実感しながらも、必ず乗り越えることを決意した。

 

 

 

「昨日も前を通ったけど………」

 

「やはり大きいですね」

 

「ルグィンの城なんだろ?」

 

「ああ。堅牢にして難攻不落。正面から挑むとなれば十万規模の犠牲が出るという」

 

「じゅ、十万!?」

 

【いや、それでも少なく見積もった方だろう。最悪、その三倍は死ぬだろうな】

 

「……………………」

 

ユウナは言葉を失った。

 

「キリコさんはここに来たことが?」

 

【いや、来るのは初めてだ。当時、第七機甲師団が攻めたが結局落とせなかったそうだ】

 

「兄上も言っていた。あの時早めに撤退を決断したことで生き延びられたと」

 

「そんでルグィンや黒旋風は誰かさんと殺し合ってたわけだ」

 

「やれやれ、すさまじいね」

 

「あり得ん……と言いたいところだが、佇まいを見れば納得かもしれんな」

 

(うーん、なんでオジサンやレクターは全く気にかけないんだろ?)

 

(ふむ……キリコからは不穏な風は感じない。いや、まるで己以外何人たりとも近づけさせないといった感じ方だ)

 

「ミリアム?ガイウス?どうかしたのか?」

 

「ん?なんでもないよ」

 

「ああ、気にしないでくれ。それより、リィン」

 

「ああ」

 

リィンの視線の先には猟兵団が要塞への出入口を固めていた。

 

「あの人……!」

 

「サザーラントで会った猟兵王!」

 

「後ろに罠使いと破壊獣、さらにニーズヘッグを確認」

 

「面倒ね。でも行ってみるしかないか」

 

「ええ。ここにいても埒があきません」

 

リィンたちは猟兵たちに近づいた。

 

「よう、シュバルツァーにバレスタインの嬢ちゃん。新旧Ⅶ組にログナー侯の嬢ちゃん。そしてキュービィー。一応聞くが、何しに来やがった?」

 

猟兵王ルトガーがニヤリと笑みを浮かべつつ聞いた。

 

「当然、ジュノー海上要塞を解放するために来ました」

 

「あいつらが来ているからね」

 

「ククク……そうだよな。たがな、そいつは野暮ってもんじゃねぇか?」

 

「何?」

 

「シュバルツァーには一昨日話したように俺たちとニーズヘッグはあいつらと前から敵対している。少なからず、被害は出ているしな」

 

「一方のボン共はたった一回かち合った程度。お宅らとウチとでどちらが因縁があるかは考えるまでもないやろ?」

 

「お前たちの気持ちはわからなくもない。だが、ここは我らに譲ってもらおうか」

 

ルトガーの言葉に罠使いゼノと破壊獣レオニダスが続く。

 

「お前たち新Ⅶ組にはそれなりに感謝はしている。我らの面目を潰してくれたあの阿呆に地獄を見せたのだからな」

 

「だが、それとこれとでは話は別だ。いくら紫電でもな」

 

「お引き取り願おうか」

 

ニーズヘッグの猟兵たちも毅然とした態度を見せる。

 

「勿論……力ずくで排除してくれても構わねぇぜ?」

 

ルトガーは獰猛な笑みを浮かべ、黒い闘気を放つ。

 

「!?」

 

「黒い……闘気……!?」

 

「確かあれは……」

 

「最強クラスの猟兵が出せるという……」

 

「チッ、相変わらずね……」

 

【…………………】

 

「させんぞ」

 

「対機甲兵用グレネードを持っているさかい」

 

フルメタルドッグに乗るキリコはターゲットをルトガーに絞る。だが、ゼノとレオニダスはそれを押さえていた。

 

「待ってくれ」

 

「教官……」

 

リィンは前に出た。

 

「アンタたちの言いたいことはわかった。思うにアンタたちは結社とは関係はないんだろう。もし関係があるならこうして俺たちと話をすることはないはずだな?猟兵王」

 

「へえ?」

 

リィンの推察にルトガーはニヤリと笑う。

 

「俺たちは因縁じゃなく信念で動いている。このラマール州を守るためにな。そのためにも、ここは押し通らせてもらう!」

 

「あたしたちも同じよ!」

 

「私はⅦ組ではないが、加勢させてもらうよ!」

 

新旧Ⅶ組とアンゼリカはルトガーたちを見据える。

 

「なるほどな。だがな、シュバルツァー」

 

ルトガーから笑みが消える。

 

「てめえらじゃ足りねぇんだよ。俺たちを納得させられる"将"ってもんがな」

 

「将……」

 

「いくら何でもお前さんじゃ無理だ。かといって、サラ嬢ちゃんやログナーの嬢ちゃんでも後一歩足んねぇ」

 

「………!」

 

「やれやれ、耳が痛いね……」

 

「黒旋風は北ランドック峡谷で火焔魔人とやり合ってんだろ?今からじゃ、間に合わねぇよなぁ?」

 

すると──

 

『ならばその将、私が名乗らせてもらおう!』

 

『!?』

 

突然遠くから声が響く。そして飛行挺の風切り音の方向を全員が見た。

 

「あ…………」

 

「あれって……!」

 

「まさか……!」

 

「無茶苦茶です……」

 

「クク……なるほどな」

 

「確かに将ならいましたね」

 

【大方、ミュゼかウォレスのどちらかが連絡を入れていたのだろう】

 

リィンたちの近くに着陸した飛行挺からオーレリアとシュミット博士が歩いて来た。

 

「分校長……」

 

「博士もご一緒とは」

 

「まずは……」

 

オーレリアはユーシスとアンゼリカにお辞儀をした。

 

「ユーシス殿、アンゼリカ殿。お久しゅうございます」

 

「こちらこそ」

 

「オーレリア殿とは内戦以来ですね」

 

「ええ」

 

次にミリアムとガイウスの方を向いた。

 

「旧Ⅶ組の二人も久しいな。白兎にウォーゼルだったか」

 

「あはは、久しぶりだね」

 

「こうしてお会いするのも内戦時以来ですか」

 

最後にルトガーたちの方を見据えた。

 

「お初にお目にかかる。オーレリア・ルグィンである。西風の猟兵王と見受ける」

 

「ククク。アンタが出張ってくるたあな。確かに将としちゃ十分だろう。だが俺らを退かす理由があんのかい?」

 

ルトガーの問いにオーレリアは笑みを浮かべる。

 

「退いたとはいえ、ここは我が城。無頼の輩が入り込んでいるとあらば、片付けるのも我が役目」

 

「ククク………」

 

突然ルトガーが笑う。

 

「はっきり言っちまえよ。あの聖女サマと闘いたいってよ」

 

「フフ、否定はせぬな。それで──」

 

オーレリアは大剣を抜いた。

 

「そこを退くか否か。何なら、ここで撃ち合っても構わんぞ?」

 

「っ!」

 

「これが黄金の羅刹……!」

 

「なんという気迫……!」

 

「ホント、戦わなくてよかったね……」

 

「あたしたち……あんなのと戦ってたの……?」

 

【相変わらずだな】

 

オーレリアから放たれる気迫にリィンたちのみならず、ルトガーたちもたじろいだ。もっとも、交戦経験のあるキリコは平静を保っていた。

 

「やれやれ……わかった。今回はアンタらに譲ってやるよ」

 

「!?」

 

ルトガーの発言に一部を除いて驚愕した。

 

「この数でやり合っても敗けるのは目に見えてるからな。俺ァ、敗ける戦はしねぇ主義なんでな」

 

「ほう?」

 

「確かに、前科があるからな」

 

「下調べはもちろんだが、大抵は勘で断ることも多かった。結果的に雇い主の目論見を崩したことも多々あったな」

 

「そういうことには異常に鋭いのよね、このオジサン」

 

「なるほど、フィーの冷静さはここからきているのか」

 

「大胆さの間違いじゃない?ほら、クロイツェン領邦軍の……」

 

「ああ……バリアハートの地下道から領邦軍詰所に潜入して、あまつさえ牢屋の扉を携帯爆薬で破壊した時か……」

 

『は……?』

 

ユウナたちは開いた口がふさがらなかった。

 

「ハッハッハ!なかなかスリリングな学生生活を送ってたみてぇだな!」

 

「おかげで始末書書かされたわよ………アンタたちが騒ぎばっかり起こすから」

 

「「「「アンタに言われたくない」」」」

 

ルトガーの言葉でサラは教官時代の出来事を思い出しぼやくが、すかさず旧Ⅶ組がつっこむ。

 

「わーった。フィーやサラ嬢ちゃんにも免じてここは通してやるよ。おい、ニーズヘッグの。ここに来ている全員集めろ。今日はとことん飲むぞ、奢りだ」

 

「猟兵王から誘われれば断る道理はない。だが、今回我らが被った損害分はちゃんと立て替えてくれるのだろうな?」

 

「おおともよ。大船に乗ったつもりでいろや」

 

「ハァ………ホンマ、相変わらずやな」

 

「金庫番だったあいつが聞いたら血涙を流すな……」

 

ゼノとレオニダスはルトガーの提案に肩を落とした。

 

そこからは早かった。ニーズヘッグは散っている分隊に連絡を取り、ルトガーたちについていった。

 

ルトガーはリィンたちに「またいずれな」と言って去って行った。

 

リィンはルトガーの言葉を聞き、疼きだす胸を押さえた。

 

 

 

「さて、乗り込むとするか」

 

オーレリアは改めて号令を出した。

 

「待ってください。どうしてこちらに?」

 

「とある筋からの連絡でな。我が城が猟兵どもに乗っ取られることを読んでいたようなのだ」

 

「そ、そうなんですか?」

 

(ふふっ)

 

【…………………】

 

「まあ、それについてはいい。それよりキュービィー。今すぐ機甲兵から降りよ」

 

【降りろとは?】

 

「さすがに城内での運用はキツかろう。乗ってきた飛行挺で最上階に運んでやる。どうやら大物が待っているようだ」

 

「そのトランプルリガーとやらは興味深い。あの神機の戦闘データ共々、後でレポートを提出しろ」

 

【了解】

 

キリコはフルメタルドッグから降りた。

 

「大物……」

 

「神機アイオーンtype-αⅡ。空間を操り、ガレリア要塞を消滅させた機体の後継機らしい」

 

「クロスベル事変の引き金となった存在か……」

 

(おそらく、列車砲の奪取にも関わっているだろう)

 

「……………」

 

「ユウナさん……」

 

「……大丈夫。それより止めなきゃ!」

 

「そうね。それに、あのバカたちにわからせなくちゃ……!」

 

サラは要塞を睨んだ。

 

「話はまとまったな。ではシュバルツァー、号令を出すがいい」

 

「俺がですか?」

 

「先ほど将と言ったが、この戦いはそなたらが主だ。私は認印に過ぎん」

 

「………わかりました」

 

リィンは咳払いをし、振り向いた。

 

 

 

「トールズ第Ⅱ分校Ⅶ組特務科、ならびに旧Ⅶ組。これよりジュノー海上要塞の攻略を開始する!相手は百戦錬磨の猟兵、くれぐれも油断するな!」

 

『おおっ!』

 

『イエス・サー!』

 

「分校長にアンゼリカ先輩。この不毛な戦い、なんとしても終わらせましょう!」

 

「「承知!」」

 

 

 

リィンの号令と共に、ジュノー海上要塞の攻略が始まった。

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