「まさかこのような形で帰還することになろうとはな」
要塞内に入ったオーレリアは感慨に浸る。
「確か、北方戦役の少し前に政府に接収されたんですよね」
「うむ。その後、北方戦役での功績が認められ、地方軍の拠点として管理されることとなった」
「その方が面倒ないからみたいだけどね」
「合理的だよな」
「ちょっとアッシュ!」
「構わん」
「まあ、政府や正規軍が何か言ってくるわけではないでしょうしね」
「だが、この騒動を終わらせない限り口出ししてくるのは明白だろう」
「やはりそうなんですね」
「昨日も話しただろうが、領邦会議が潰れるとなったら貴族勢力は完全に息の根を止められるだろうな」
「それは阻止しないといけませんね!」
「ユウナ君……」
「すまん、本来なら俺たちのやるべきことなのだがな」
「フフ、なかなか見所があるじゃない?」
「毎日大変ですけどね」
「そこまでだ、来るぞ」
オーレリアは何かの気配を察知した。すると、空間が歪み、幻獣が顕れた。
「なっ!?」
「幻獣だと!」
「プレロマ草は探知できません……!」
(面倒だな……)
リィンたちは得物を抜き、戦闘体勢に入る。
「待て」
オーレリアが待ったをかけた。
「時間が惜しい。私がやろう」
「分校長が!?」
「しかも一人で!?」
「無茶です!」
「まあ見ておれ………ハアアアアッ!」
オーレリアは大剣を幻獣に斬りつける。
その斬撃は確実に幻獣の命を削っていく。
何度か斬りつけられたことで、幻獣に畏れのような感情が満ちる。
それを逃すオーレリアではなかった。
「くらうがよい───奥義・剣乱舞踏!」
オーレリアの奥義を受けた幻獣は跡形もなく消滅した。
『………………………』
リィンたちはただ呆然とするしかなかった。
「シュバルツァー、呆けている場合ではないぞ」
「そ、そうですね……。時間もなさそうですし……」
「そこでだが、二組に分ける必要がある」
「二組?」
「この城は万一攻め込まれたとしても、内部を進むには仕掛けを解除しなければならん。しかも、主ルートと副ルートの二つが存在する故、二組に分けなければならん」
「なるほど」
(外の守りを突破しても、内部で戦力を分散させる。そして分散された敵を叩くというわけか)
「良くできてんな」
「難攻不落は伊達ではありませんね」
「さて、時間も惜しい。どのように分けるつもりだ?」
「そうですね。では──」
「待ってください」
ユウナが待ったをかける。
「副ルートはあたしたちに行かせてください」
「君たちが?」
「はい、みんなで決めたことです」
ユウナの言葉に新Ⅶ組全員が頷く。
「なるほど。確かに副ルートならそれほど複雑ではない。今のそなたらなら突破することも可能やもしれぬ」
「しかしだな……」
「リィン、心配なのはわかるが」
「少しは信用したらどうだ?」
「アーちゃんやみんななら大丈夫だって!」
「フフ、全面的に任せるのも必要なことよ」
「う………」
旧Ⅶ組の言葉にリィンは詰まる。
「なら、新Ⅶ組の方には私が行こう」
「アンゼリカ先輩が?」
「そちらにはオーレリア殿がいるからね。バランスを取るなら私が移るのがちょうど良いだろう」
「アンゼリカさん……!」
「ありがとうございます」
「礼には及ばないよ。それに……フフフフ♥️」
(君たち、危険を感じたら遠慮なく取り押さえてかまわないからね)
(りょ、了解しました……)
(お、おう……)
「………………」
恍惚に浸るアンゼリカを見たサラはクルトたちにそっと忠告した。
「(やれやれ)わかった。副ルートは君たちに任せる。何かあったら必ず連絡してくれ)
「わかりました!」
「決まったな。では、Ⅶ組特務科は左手から向かうが良い。最終目標は天守。そなたらの武運を祈る」
『イエス・マム!』
新Ⅶ組は出発した。
「……………」
「心配そうに見るんじゃないの」
「自分の言葉には責任を持つべきだろう」
「彼らなら成し遂げてくれるだろう」
「そうそう♪」
「ああ、そうだな」
「では我らも向かおう。先ほども言ったが、主ルートは複雑な造りになっている。そなたの力量が試されるだろう」
「大丈夫です。俺には頼もしい教え子や仲間がいますから」
「ならば良い。それにしても紫電殿。そなたの薫陶の賜物だな」
「い、いや~~、それほどのことでも……」
(どの口が言う……)
(ほとんどほったらかしだったよね)
(まあいいだろう)
「とにかく向かいましょう。猟兵だけでなく、人形兵器も入り込んでいるようです」
「……そうね。では参りましょう」
「うむ」
リィンたちも出発した。
[副ルート side]
「この仕掛けですね。解除しました」
『こっちも確認した。そのまま進んでくれ』
「了解しました」
オーレリアの言うとおり、副ルートはそれほど複雑ではなかった。
ユウナたちは人形兵器を蹴散らしながら一部屋一部屋を確認していった。
途中、リィンからドアロックの解除装置を探してほしいという通信が入り、装置を探し出した。
ユウナが解除装置のレバーを下ろしたことでリィンたちは進むことができたことを伝えた。
「こうやって進むのね」
「仕掛けに手間取る間に戦力を立て直し、後ろから叩く。よく考えられていますね」
「第七でさえ撤退を余儀なくされたほどだからな」
「おっと、トークはそれまでだ。また来るよ」
廊下の曲がり角から4体の人形兵器が駆動音と共に襲ってきた。
「千客万来ですね」
「チッ!しつけぇな」
「時間が惜しい。俺がやる」
キリコはフレイムグレネードを使い、一気に人形兵器を破壊した。
「ほう?なかなかやるじゃないか」
「や、やりすぎじゃないの……?」
「ハッ、派手で良いじゃねぇか」
「では急ぎましょう。相手は人形兵器だけではありませんから」
「そっか、北の猟兵もいるんだよね」
「そうだな。早いとこ移動しよう」
新Ⅶ組は探索を再開した。
[副ルートside out]
[主ルート side]
「なんか大きい音聞こえたね」
「爆発音のようだが……」
「フッ、大方キュービィーだろう」
「………本当にすみません」
「気にしなくていい。いっそのこと、邪魔な壁を取っ払ってもらうか」
「いやいやいや……」
「豪快な方だな」
「ラウラもこうなるのかな~?」
「あり得ん話ではないが……」
「あの子の場合はね……」
「フフ、アルゼイド流の免許皆伝となった腕前、試してみたいものだな」
オーレリアは腕を組み、微笑む。
「それにしても、猟兵どもの姿が見えんな」
「もしかすると、さらに奥にいるのかもな」
「アーちゃんたち、大丈夫かな」
「大丈夫よ。でしょ?リィン」
「ええ。彼らならきっと……」
「では参るとしよう。しかし……」
オーレリアは目を瞑った。
「オーレリアさん?」
「如何された?」
「攻め込んでみて思ったが、面倒だな。やはりキュービィーに機甲兵で突撃させるべきであったな」
「分校長……」
リィンたちは何度目かのため息をついた。
[主ルート side out]
[副ルート side]
「ねぇ……ホントに行かなきゃダメ?」
一方、新Ⅶ組はダクトの前で立ち往生していた。
「ユウナさん、他に道はありませんので」
「乙女の覚悟を決める時が来たんですよ♪」
「なんで楽しそうなのよ!」
「ほらほら、男子たちは行った行った。ここからは禁断の聖域だからねぇ♥️」
「何の話をしてるんですかっ!」
「………じゃあ、僕たちは先に行っていますよ」
「とっとと来いよ」
「……………」
アンゼリカに促され、Ⅶ組男子はダクトの中へと入って行った。
「さて、次は……♥️」
「あたしが行きます!」
何かを感じたユウナは一目散にダクトに入った。
「ではわたしもお先に」
アルティナもそれに続いた。
「それでは私も……」
「その前に」
アンゼリカがミュゼを引き止める。
「まだ彼らには伝えてないのですね?」
「ええ。今はまだその時ではないので」
「なるほど。差し出がましいことを申しました」
「お止めください。まだ決まったわけではありませんから」
「そうでしたね。では参りましょうか」
「ええ」
ミュゼとアンゼリカもダクトに入った。
[副ルート side out]
リィンたちは中枢へと続く回廊に到着した。
「このロックを解除すれば良いんですね?」
「うむ。だが、雛鳥たちが来てからだ」
「ユウナさんたちが?」
「なるほどな。向こうにも同じような装置がある。同時にやらねば開かない仕組みか」
「そのとおりです」
仕掛けに気づいたユーシスにオーレリアが答える。
「ちょうど来たようだな」
ガイウスの言う方向から新Ⅶ組がやって来た。
「教官!皆さん!」
「無事だったみたいね」
「アーちゃん、ケガとかしてない?」
「大丈夫です」
「ユウナ、アンゼリカ先輩のことだが……」
「聞かないでください」
ユウナはピシャリと言った。
「……とにかく、そっちの装置のレバーを下ろしてくれ。どうやら同時にしなければならないらしい」
「りょ、了解!」
ユウナは言われたとおりの操作を行い、前方の扉のロックを解除した。
「これで進めるわね」
「ご苦労だったな」
「いえ、皆さんもお気をつけて」
「そちらも、無理はなさらないように」
「こっちは任せな」
新旧Ⅶ組は互いを労う。
「アーちゃん、頑張ってね!」
「貴女に言われるまでもありません」
アルティナはそっけなく返す。
「キュービィー、なかなかの暴れぶりだな」
「時間が惜しいので」
「フッ、別に咎めてはおらん。それより……」
オーレリアは声を落とした。
(ミルディーヌ公女のことだが)
(ミュゼの?)
(そなたはあの方をどう思っておるのだ?)
(仲間の一人であると思っていますが?)
(……そうか)
オーレリアは何かを考えこんだ。
(ふむ。やはりそれでいこう)
(分校長?)
(なんでもない。キュービィー、後で話がある。今日の夕方、そなたはオルディスに留まるようにな)
オーレリアはそれだけ言って、先に進んだ。
(話だと?まあいい。今は天守閣とやらを目指すだけだ)
キリコはオーレリアの言葉を頭の隅に追いやり、ユウナたちの所に戻った。
[副ルート side]
「やっと外に出たわね」
ユウナたちは回廊でリィンたちと別れた後、階段を上り、ジャンクションに出た。
「久しぶりに海を見たわね」
「気を抜くな。あれを見ろ」
キリコの指指す方向には戦車のような機動兵器が鎮座していた。
「なんだあれは……」
「検索結果、ゲシュパードガロード。人形兵器とは違いますが、厄介な代物です」
「なんでそんなモンがこんなとこにあんだよ?」
「闇のマーケットに流れていた物かもしれません」
「その線が濃厚だね。それで、どうする?」
(放っておいてもいいが……)
「さすがに見過ごせないけど、みんなはどうする?」
「二次被害が出るかもしれないな。時間は食うが、破壊しておいた方が良いのかもしれないな」
「機動は確認されています。まだこちらに狙いは定めていないようですね」
「面倒くせぇが、ブッ壊すしかねぇな」
「では、少し戻りましょう」
「よし、では行こう!」
(やはりこうなったな)
キリコたちはゲシュパードガロードを破壊すべく向かった。
[副ルート side out]
[主ルート side]
「ぬん!」
同時刻、リィンたちもゲシュパードガロードを破壊しようと戦っていた。
「くらえ、エクスクルセイド!」
「いっけぇぇぇっ!ヴァリアントビーム!」
「ゲイルストーム!」
「紫電一閃!」
「螺旋撃!」
「四耀剣!」
リィンたちの猛攻を受けたゲシュパードガロードは爆発し、動かなくなった。
「やれやれ、手間取らせてくれる」
「ラインフォルトの工場で見たことがある。おそらく後継機だろうな」
「前に言ってたやつだよね。ボクたちがオルディスに行ってた時に」
「そういえば聞いたことがあるな。その頃には着々と準備を進めていたが」
「……クロウとも?」
「ああ、本当に惜しい若者を亡くした。だからこそ、やつらしき男が目の前に現れたと報告を受けた時は驚いたが」
「本当にあの男だったのか?」
「背格好は似ていた。それに声も……」
「別人という可能性もあるわね」
「別人ですよ。あいつの葬式はトワ先輩たちとみんなでやったじゃないですか」
「そうだな……」
「小説じゃあるまいしな」
「あの日のことは、忘れられないよ……」
リィンたちは無理矢理結論付けた。
「それより問題はこれが向こうにも配置されているかどうかだが」
「十中八九、あるでしょうね」
「ボクがガーちゃんで飛んで見てこようか?」
「阿呆が。わざわざ撃ち落とされに行くつもりか?」
「とにかく、今は戻れない。先に進むとしよう」
「リィン……」
「少しはあたしの気持ちはわかったかしら?」
「ええ、率いるのがこんなに気を遣うとは思いませんでした」
「そうだ。他人を率いるにはそれなりの力量が必要だ。将となればなおさらだろう」
「でも、アンタたちはまだ若いんだから、いくらでも学べるチャンスはあるわ。もっと自信を持ちなさい」
「……そうですね。では行きましょう」
リィンたちは天守を目指して歩き出した。
[主ルート side out]
[副ルート side]
「はぁ…はぁ…はぁ……や、やっと倒した……」
「さすがにキツいな……」
「少し休憩を取りませんか?」
「そうだね。少し休もう」
高火力を誇るゲシュパードガロードを辛くも退けた新Ⅶ組はアルティナの提案で休息を取った。
数分後、新Ⅶ組は出発した。
「ようやく半分ぐらいまでは来たのかしら?」
「おそらくはな」
「そろそろ猟兵どもが出てきてもよさそうだよな」
「猟兵ではないが、魔獣はいるな」
「あっ、ホントですね」
ユウナたちの前方には、人形兵器に混じって北の猟兵が使役していた猫型魔獣が徘徊していた。
「出ましたね」
「フッ、腕が鳴るね」
アンゼリカは胸の前で指を鳴らす。
「先ほどから拝見させていただきましたが、お見事です」
「泰斗流、でしたか」
「いや、君のヴァンダール流ほどでもないさ」
「なんで大貴族のお嬢様が徒手空拳なんかやってんだよ?」
「以前、共和国の人に出会ってね。その人に弟子入りしたのさ。ちなみにその人はその道では有名だったりするよ」
「へえ、そうなんですか」
「そういえば、兄上が言ってたような……」
(確か……共和国の大統領府のエージェントだとか)
「まあ、今はいい。そろそろ猟兵が出てくるはずだ。彼ら一人一人が戦闘のプロだ。心して行くよ!」
「了解です!」
ユウナたちは得物を抜き、目標へと走った。
[副ルート side out]
[主ルート side]
「このっ!」
「グッ……!」
「つ、強い……」
リィンたちは北の猟兵たちと戦闘に入っていた。サラは確実に一人二人と戦闘不能にしていった。
「はぁ…はぁ…はぁ……」
「教官……」
「……大丈夫よ。それに本隊はまだ奥にいるはずよ」
「……やはり気になるのか?」
「……そうね。かつては一緒に戦っていたから」
「そなたはもしや……」
オーレリアはサラに問いかけた。
「ええ。私は遊撃士になる前は北の猟兵に所属してました」
「そうであったか……」
「俺たちは内戦で知りました。無論、それ以上は知りませんが」
「オーロックス要塞にアルバレア公を逮捕しに行った時ね」
「………………」
「ユーシス……」
「……大丈夫だ」
ユーシスは顔を上げた。
「そういえば、ユーシス殿は先代アルバレア公の政策を全て打ち切り、領民寄りの政策を打ち出しているとか」
「……なかなか上手くはいかないがな」
(一部の心無い貴族が公然と批判しているらしいが)
「いえ、詮なきことを言いました」
オーレリアはユーシスに詫びた。
「それより、紫電殿。そなたは私や政府を恨んではおらんのか?」
「さすがに北方戦役については。そもそも、私も似たようなことをしたこともありますので」
「サラ教官……」
「フフ……」
サラは座り込んだ。
「英雄に憧れ、故郷を助けるために何度もこの手を血で染めたわ」
「英雄?」
「そもそも、北の猟兵はノーザンブリア大公国の正規軍なの。だけど、異変で大公国が潰れて、元々貧しかった土地がさらにやせた。食べる物も少なく、多くの孤児ができた。そんな故郷を救おうと結成されたのが北の猟兵ってわけ」
「ノーザンブリアの異変……」
「塩の杭とかいうのが落ちてきて、国土の三割を塩にしたんだよね」
「その後、塩の杭は取り除かれたが、塩になった部分は残っているというが」
「ええ、そうよ。そしてあたしたちにとっては故郷のために命を張る姿はとてもキラキラと映った。そしてあたしや他の孤児たちが寄り添って少年猟兵団を作り、北の猟兵の手伝いをしていたの」
「そんなことが……」
「最初は相手にもしてくれなかった。でも、幾度か作戦を成功に導いたのが実って、あたしを含めた何人かが正メンバーに選ばれたわ。あの時ほど誇らしかったことはないわ」
「……………」
「でもね……」
サラの声が落ちた。
「当時のあたしは何も分かってなかった。あの人が、大佐がどうして反対していたのか」
「大佐?」
「バレスタイン大佐。北の猟兵を設立した将校の一人で、あたしの育ての親」
「えっ……」
「じゃあ、サラ教官も……」
「………………」
サラはフッと微笑む。
「……ある時にね、大きな作戦があったの。もし成功すれば、故郷のみんなが半年は食べていけるくらいの報酬が手に入る。みんな目の色を変えていた」
「勿論あたしも同じだった。周りも省みず、一人で戦場を駆け回った。その時よ」
サラは肩をギュッと掴んだ。
「敵の攻撃が激化して、たくさんの砲弾が降り注いだ。逃げ切れなくて、あたしはケガと恐怖で動けなくなった。そしたらね……」
「大佐があたしの盾になっていたの………」
『!?』
リィンたちは愕然とした。
「大佐はね、あたしを猟兵になんてするつもりはなかった、女として幸せになってほしかったって。そう言った直後に大佐は死んだ」
『……………』
「結局、あたしはあの人の思いなんて分かってなかった。そのせいで死んでしまった。そのことに気づいたあたしは狂ったように泣き叫んで気を失ったわ」
「……ぁ………」
「……その後、通りがかった帝国の視察団に保護されて、手当てしてくれた軍医の勧めもあって、あたしは遊撃士目指すようになったの」
「その軍医とはもしや……」
「ええ、ベアトリクス先生よ」
「確か、今はトールズ本校の学院長になったんだよね」
「なるほど。そういう繋がりが……」
「だから止めなきゃいけないのよ。大佐たちがどんな思いだったか。あたしたちが何のために戦っているのかもう一度問い質さなきゃ」
「……わかりました。ありがとうございます、話していただいて」
「いつかは話さなきゃと思っていたから気にしなくて良いわよ」
「では、参ろう」
オーレリアの言葉で、リィンたちは出発した。
(きっとあいつらは自分を見失っているだけ。そうでしょ、パパ)
[主ルート side out]
一方、ユウナたちは魔獣や人形兵器と戦いながら、確実に歩を進めていた。
「チッ!こいつら……」
「ガードが堅くなってますね」
「だが突破できなくはない」
「急ぎましょう」
ユウナたちは駆け足で先を急いだ。
天守に通じる回廊に到着した時、前方の空間が歪み、五体の人形兵器が顕れた。
「これって……!」
「検索結果、スレイプニルF1。結社の特務機です!」
「あの神速が用いていた機体か」
「近くにはいないようだが……」
「気を抜かない!来るよ!」
唐突に戦闘が始まった。
ユウナたちは後手に回ったが、アルティナとクルトのアーツでスレイプニルF1の機動を削ぐ。そこを見計らったキリコとアッシュとアンゼリカがクラフト技の応酬で戦況を五分に戻す。
「もう少し!」
「ではトリは私が!」
ミュゼは意識を集中させる。
「今から魔法をかけて差し上げます。ふふっ、お綺麗ですよ。ブリリアントショット!ちょっぴりやり過ぎてしまいました♥️」
ミュゼのSクラフトを受けたスレイプニルF1は動かなくなる。
「やるじゃねぇか」
「なかなか華麗なものだね」
「お粗末様です、ですが!」
突如、スレイプニルの機体にエネルギーが一点に集まる。
「自爆する気か!」
「アル!」
「はい!クラウ=ソラス!」
アルティナはクラウ=ソラスを顕現させ、防御壁を発動。スレイプニルの自爆を完全に防いだ。
「自爆までしやがるとはな」
「危なかったですね」
「さすがにあの五体だけみたいだけどね。では急ごうか」
「そうですね」
「多分、シュバルツァーも……おっ、来やがったな」
アッシュの視線の先からリィンたちが走って来た。
「みんな無事か!」
「はいっ、人形兵器と戦いましたがなんとか切り抜けました」
「よろしい。では、そなたたちに命令を伝える」
『!』
オーレリアの命令という言葉に新Ⅶ組全員が反応した。
「よいか、そなたたちはこのまま進み、天守閣屋上へと続く跳ね橋の鍵を解除せよ!これは絶対である」
『イエス・マム!』
命令を受けた新Ⅶ組は跳ね橋の開閉装置のある塔へと向かった。
「副ルートに開閉装置があるんですね?」
「そうだ。とはいえ、こちらも天守閣に至るまでに複雑な仕掛けを施してある。正念場はまだ先とはいえ、油断はするなよ」
「無論です」
「では、行こう」
リィンたちも出発した。
「マスター」
「わかっています」
天守閣屋上では、アリアンロードと剛毅のアイネスと魔弓のエンネアがいた。
「彼らはおよそ三分の二に到達しているはず。ここにたどり着くのも時間の問題でしょう」
「あの黄金の羅刹が加わるのは想定外でしたが」
「それは楽しみですね。かつての私に比肩するかどうかはさておき」
「ここにデュバリィがいれば即座に否定したでしょうな」
「彼女はやはり……」
「はい、心身……特に心に大きな傷を負いました。道化師殿の力を借り、ようやく落ち着きました」
「おそらく、前線復帰は難しいでしょう」
「そうですか。何はともあれ、無事だっただけでも喜ばしい限りです」
アリアンロードは胸を撫で下ろす。
「マスターはキュービィーをどうお思いですか?」
アイネスはキリコについて問いかけた。
「そうですね………。まずあれほどの力量を持つ者は久しく見ておりません。武術とは無縁でしょうが、もし武を扱えば、一廉の者になることも夢ではないでしょう」
「確かに、あの動きは純粋な身体能力からくるものでしょう」
「ただし、かなり質が高いと」
アリアンロードの言葉に二人は同調した。
「ですが、不可解なのは彼の眼です。年の頃17~8辺りでしょうが、あれは歴戦の勇士の眼です。とても年齢が釣り合いません」
「……………」
アリアンロードの言葉にエンネアは思案した。
「マスター……もしや、彼も?」
「っ!? あの"教団"の生き残りだと?」
「……わかりません」
アリアンロードは下の階を見た。
(いずれはっきりとさせなくてはなりませんね。そのためにも、たどり着きなさい。ドライケルスの子らよ。そして、キリコ・キュービィー)