英雄伝説 異能の軌跡   作:ボルトメン

56 / 77
今年最後の投稿です。


ジュノー海上要塞③

[副ルート side]

 

ユウナたちは天守閣屋上へと続く跳ね橋の鍵を解除すべく、塔の中を進んでいた。

 

「はぁ……はぁ……。何回登り降りさせんのよ……」

 

「階段以外にも梯子がありましたね」

 

「さすがにしんどいです……」

 

「後一息ってところか?」

 

「ふむ………」

 

「お姉様?如何なされました?」

 

「……時に、ユウナ君」

 

「はい?」

 

アンゼリカは真面目くさった顔で問いかけた。

 

「君はピンク派ということで問題ないのかな?」

 

「だから何の話をしてるんですかっ!?」

 

「それに君のその息づかい……フフフフ♥️」

 

「ヒッ……!!」

 

頬を赤らめるアンゼリカに恐怖を覚えたユウナはクルトの陰に隠れた。

 

「ふふっ、さすがはアンゼリカお姉様♥️」

 

「マジで何なんだ、このパイセン………」

 

「理解が全く追い付きません………」

 

「本当にセクハラで訴えられますよ………」

 

アッシュたちはアンゼリカは振る舞いに呆れ果てた。

 

「……………」

 

そんな中、キリコはユウナたちの後ろの扉を探っていた。

 

「あら?キリコさん?」

 

「どうかしたのかよ?」

 

「この部屋に誰かいるようだ」

 

「ホントに!?」

 

(こんな所にいたんですね)

 

「なんとなく予想はつくが、入ってみよう」

 

キリコたちは扉を開けた。

 

「おお!やっと助けが来たか!」

 

そこには蔦のような結界で拘束させたバラッド侯がいた。

 

「やはりバラッド侯か……」

 

「こんな所にいやがったとはな」

 

「貴様ら、何をしておる!このわけのわからんものを外さぬかっ!そして儂をここから安全な場所へ連れ出せ!」

 

「……そう言われましても」

 

「我々はこの手のことには専門外です。屋上にいる元凶をどうにかすればこの結界も解けるかもしれません」

 

「後少しすればウォレス少将や第Ⅱ分校が駆けつけるでしょう。それまでここに留まっていて……」

 

「ふざけるなっ!」

 

バラッド侯は激昂した。

 

「貴様らはこの儂を助けぬというのかっ!次期カイエン公爵たる儂の命令に逆らうか!やはり分校など寄せ集めの屑どもに過ぎんというのか!貴様ら、この一件が終われば覚悟しておけ!貴様らなど潰すことなぞ造作もないのだからな!」

 

「なっ……!」

 

「最低です」

 

「い、いい加減に……!」

 

(スッ)

 

キリコは爆発寸前のユウナを制した。

 

「オイ……!」

 

「キリコさん……!」

 

「…………………」

 

キリコは無表情でバラッド侯に近づく。

 

「フン!今さら詫びのつもりか?言っておくが儂は先ほどの……」

 

「少し黙れ」

 

キリコはバラッド侯の足元に弾丸を撃ち込む。

 

『!?』

 

「なあぁぁぁっ!?」

 

バラッド侯は突然のことに混乱するが、すぐにまた激昂した。

 

「き、き、貴様ぁぁぁっ!自分が今何をしておるかわかっておるのかぁぁぁっ!」

 

「黙れと言ったはずだ」

 

「ヒィッ!」

 

殺気を孕んだキリコの視線にバラッド侯の怒りは沈静し、情けない声をあげた。

 

「この戦いに至るまで多くが犠牲になった。今さらお前一人が死んだところで物の数ではない」

 

バラッド侯の眉間に銃口を突きつけ、キリコは淡々と語りかける。ユウナたちも立ちすくみ、止めに入れなかった。

 

「や……止めろ!止めてくれぇ!」

 

バラッド侯は必死に命乞いをした。だがキリコの視線は変わらなかった。

 

「上にはここに来た時点で既に死んでいたと報告しておく」

 

「た、助け………」

 

キリコはゆっくりと引き金を引いた。

 

 

 

ガキィィィィィン…………!

 

 

 

「……え………」

 

「………空………音…………?」

 

アーマーマグナムからは空の薬室を撃ち抜いた音が響いた。

 

「………………………………」

 

バラッド侯は泡を吹き、気絶した。微かにアンモニアのような臭いが漂う。

 

「………………」

 

キリコは銃をしまい、唖然とするユウナたちの方を向く。

 

「すまなかった。こいつを黙らせるためにああするしかなかった」

 

キリコは謝罪した。

 

「はぁぁぁぁ…………」

 

ユウナはへなへなと崩れ落ちた。

 

「い……今のは演技だったのか………!?」

 

「心臓に悪影響です………」

 

「てめえ、いつかブッ殺してやるからな……!」

 

(ううう………キリコさんのバカ………!)

 

それぞれが心情を口にする中、ミュゼはまんまと騙され、キリコを睨む。

 

「うーん、見事だねぇ。君、良い役者になれるよ」

 

「………………」

 

「とりあえず助かったよ」

 

「え?」

 

「助かった、とは?」

 

「これ以上バラッド侯がレディたちに暴言を吐くならブチのめしてやろうと思ったのさ」

 

アンゼリカは指をペキポキ鳴らしながら言った。

 

「そ、そんなことして大丈夫なんですか!?」

 

「元々私は実家でも鼻つまみ者でね。たとえ勘当されても大したことじゃないのさ」

 

「そういえば、お姉様は身分をお隠しになって鉄鉱山でアルバイトをなさっていたとか?」

 

「は?」

 

「ロ、ログナー侯爵家のご息女ですよね!?」

 

「そうだよ?」

 

アンゼリカはあっけらかんと言った。

 

「アグレッシブ過ぎんだろ……」

 

「やだなぁ、照れるじゃないか♪」

 

「「「褒めてません」」」

 

ユウナ、クルト、アルティナがつっこんだ。

 

「こいつは放っておいて良いな?」

 

「そうですね。まあ、連れても行けませんし(まあ、サプライズはこの後ですが)」

 

キリコとミュゼはバラッド侯をおいて行くことで合致した。

 

「さっきクルト君が言ったように分校や少将が来てくれるだろう。保護は彼らに任せて、私たちは進むとしよう」

 

「はいっ、後少しですもんね!」

 

ユウナたちは再び走り出した。

 

[副ルート side out]

 

 

 

[主ルート side]

 

「まさかここまで来るとはな」

 

「灰色の騎士に旧Ⅶ組。そしてバレスタインか。さすがと言っておこう」

 

一方、リィンたちは北の猟兵たちと対峙していた。

 

「アンタたちが最後か」

 

「向こうも含め、既に大部分は無力化している。大人しく投降しろ」

 

「フッ、できぬ相談だな」

 

北の猟兵の部隊長はライフルを構える。

 

「我らが故郷を滅ぼした黄金の羅刹が目の前にいるのだ。貴様ら諸ともここで散ってもらう!」

 

「っ!」

 

「完全にやる気みたいだね」

 

「アンタたち……!止めなさい!こんなことしたって何も……」

 

サラは怒りに震える。

 

「待たれよ」

 

オーレリアはサラを制し、前に出る。

 

「そなたらの言うとおり、ノーザンブリアを滅ぼしたのはこの私である。恨むなら私を恨めばよかろう」

 

「分校長……」

 

「にもかかわらず、幼子の八つ当たりの如き所業、呆れてものが言えぬわ」

 

「貴様っ!」

 

「我らの思いを愚弄するかっ!」

 

北の猟兵士たちも怒りを露にし、軍用魔獣も殺気立つ。

 

「一丁前に悔しがる気概があるなら、かかって来るが良い。元ラマール州領邦軍総指令オーレリア・ルグィンの名において、引導を渡してくれよう」

 

オーレリアは猟兵たちに大剣を向ける。

 

「良いだろう」

 

「たとえこの身が果てようとも、ノーザンブリアの誇りを思い知らせてやる!」

 

北の猟兵たちの闘志が燃え上がる。

 

「来るぞ!」

 

「押し通らせてもらう!」

 

「…………………」

 

 

 

北の猟兵たちは数では劣るが、その覚悟と気迫はリィンたちを上回らんとしていた。

 

「くらえっ!」

 

「思い知れっ!我らの怒りをっ!」

 

「ぐっ……!」

 

「何て気迫だ!」

 

「お前たちにはわかるまい!我らの憎しみが!」

 

「故郷を奪われ、誇りを汚され、全てを失った痛みを!」

 

「貴様らを憎み、葬らねば我らの誇りは戻ってこないのだ!」

 

だがリィンたちは一歩も引かなかった。

 

「お前たちの悲しみは分からなくもない。俺も同じ立場ならそうしたかもしれん」

 

「だがそれでは何もならない。互いが憎しみ合うだけでは何も解決しない!」

 

「アンタたちはそんなものを次の世代にまで遺すつもりなのか!」

 

ガイウス、ユーシス、リィンはそれぞれのクラフト技を叩き込む。

 

「みんな……!」

 

(アンタたち……)

 

「それでも……我らは……!」

 

「……良かろう。そなたらの悔恨と慚愧、そして憎悪に報いて、我が奥義で………」

 

「オーレリアさん。ここはあたしが!」

 

「紫電殿……よかろう」

 

オーレリアは下がる。

 

(そんなんじゃないでしょう。あたしたちが戦ってきた理由は……!)

 

サラは剣と銃を構えた。

 

 

 

「あたしの本気、見せてあげる!ヤァァッ!セイッ!ノーザンライトニング!フフ、痺れたかしら?」

 

 

 

サラの渾身のSクラフトにより、北の猟兵たちは膝をつき、軍用魔獣は消し飛んだ。

 

「ぐふっ……」

 

「さすがは……大佐の……!」

 

「よし……!」

 

「フン、なんとか制圧したか」

 

「これまでか…………殺せ!!」

 

「へっ……!?」

 

「……何を………」

 

思いもよらない言葉にリィンたちは動揺する。

 

「ここは戦場!お前たちは勝ったのだ!ここまでした我らに情けなど要るまい……!」

 

「履き違えるな」

 

オーレリアは猟兵たちに言い放つ。

 

「私はそなたらの思いに報いるつもりで仇としての義理を果たしたまで」

 

「これ以上無為の血を流す趣味はない」

 

「分校長……」

 

「これ以上、生き恥を晒せと言うのか……!?」

 

「我らとて、もはや引き返せんのだ……!」

 

部隊長の男が拳銃を自らの頭部に向ける。他の猟兵もナイフの刃を喉元に当てる。

 

「なっ!?」

 

「よせっ!」

 

リィンは神気合一を使い猟兵たちのナイフを叩き落とす。だが、無情にも銃声は鳴り響いた。

 

「お……お前………」

 

「ハアッ……ハアッ……ハアッ……!」

 

サラは間一髪、拳銃を弾き飛ばした。

 

「まだわからないの!」

 

サラは部隊長の男の胸ぐらを掴んだ。

 

「あたしたちは誇りなんかのために命を賭けていたんじゃないでしょう!?」

 

「故郷の貧しさを、誰かの空腹を、少しでも紛らわせるために……!子供たちを少しでも笑顔にできるそんななけなしのミラのために……!」

 

「血と硝煙に塗れたとしてもその生き方を選んだんでしょうが!?」

 

「っ……!」

 

部隊長の男は頭を垂れる。

 

「……だったら………最後までその欺瞞を貫いてみなさいよ………そうじゃなかったら……」

 

「大佐が………パパがあまりにも……浮かばれないじゃない………」

 

サラの両目から涙が溢れる。

 

「サラ教官………」

 

リィンはどう声をかけていいか迷う。

 

「……これも……巡り合わせ、か………」

 

「感謝するぞ……サラ、大佐の娘よ………」

 

「お前に止められるなら……それもいい………」

 

北の猟兵たちは気絶した。

 

「……グス………フフ、君たちにはみっともない姿ばかり見せるわね………」

 

「………………」

 

「……心中、お察しする」

 

「サラ………」

 

すると、ゴゴゴという音が響いた。

 

「どうやら道が開けたようだ」

 

「……サラ教官………」

 

「……大丈夫。行きましょう!」

 

リィンたちは駆け足でその場を後にした。

 

[主ルート side out]

 

 

 

「来ましたね」

 

副ルートを通って来た新Ⅶ組と合流し、屋上にたどり着くとアリアンロードがランスを携え、待っていた。

 

「リィン・シュバルツァーと新旧Ⅶ組。そして、オーレリア・ルグィン」

 

「かの鋼の聖女殿に名を知られているとは光栄の至り」

 

オーレリアは大剣を抜いた。

 

「しかし、確かめたいことがあります。貴女は真に槍の聖女なのでありましょうか?」

 

「………………」

 

「それは……」

 

「で、でも槍の聖女ってとっくに死んでるんじゃないの!?」

 

「およそ、250年前の獅子戦役で後の獅子心皇帝ドライケルス大帝と偽帝オルトロスとの戦いで討ち死にされたと歴史は伝えています」

 

(そう。そして、我がカイエン公爵家は偽帝オルトロスの末裔……)

 

「………………」

 

アリアンロードは兜を脱いだ。

 

「あっ………」

 

「マスター………」

 

「あの髪の色………」

 

「レグラムのローエングリン城で微かに見た……」

 

「そういえばそんなこともありましたね」

 

アリアンロードは微笑んだ。

 

「では、貴女は」

 

「ええ……」

 

アリアンロードはオーレリアたちをまっすぐ見つめる。

 

「我が真の名はリアンヌ・サンドロット。かつてドライケルスらと共に戦場を駆けし者。巷では槍の聖女などと呼ばれているようですが」

 

『!?』

 

リィンたちはリアンヌの告白に衝撃を受ける。

 

「バカな……!」

 

「嘘を言っているようには思えないが……」

 

「亡霊……な訳ないわよね……」

 

「オカルトにも程があんだろ……」

 

(クローンかホムンクルス………というわけでもないようだが)

 

「落ち着くがよい」

 

オーレリアは平静を保っていた。

 

「あの蒼の騎士同様、貴女も甦っていたということでしょうか?」

 

(クロウ……!)

 

「……それ以上は答えられません。知りたくば……!」

 

リアンヌもランスを構え、闘気を滾らせる。

 

「っ!」

 

「来るわよ!」

 

「相手は伝説の騎士………不足はない!」

 

「1年半前の借り、返させてもらう!」

 

「行くよ!ガーちゃん!」

 

リィンたちは戦闘体勢に入る。

 

「あたしたちも……」

 

「そなたらは引っ込んでいよ」

 

オーレリアがリィンたちに待ったをかける。

 

「し、しかし……!」

 

「シュバルツァー、そして旧Ⅶ組よ。勝手ではあるがこの勝負、手出しは無用に頼む」

 

「それって……」

 

「一騎討ち、ですか……」

 

「新Ⅶ組、そなたらはしかと見ておけ。そなたらが越えるべき壁というものを」

 

「壁……」

 

「了解」

 

「……イエス・マム」

 

ユウナたちは引き下がる。

 

「お待たせした。オーレリア・ルグィン、参る!」

 

「意気や良し。来なさい……!」

 

 

 

「ウオォォォォッ!!」

 

「ハアァァァァッ!!」

 

大剣とランスがぶつかり、火花をあげる。

 

大剣の斬撃をランスで防ぎ、ランスの一撃を大剣で弾く。それは達人同士だからこそできる芸当である。

 

「すごい……!」

 

「分校長の技の冴えは言わずもがな。そして、槍の聖女は……」

 

「足運び、槍捌き、気迫、どれを取っても非の打ち所のない。正に達人……!」

 

「本当に……本物のリアンヌ・サンドロットだというのか……」

 

「少なくとも、我らにはそう教えてくれた」

 

「私たちはそう信じているわ」

 

剛毅のアイネスと魔弓のエンネアがリィンたちに近づく。

 

「アンタたち……」

 

「やる気か?」

 

キリコは得物を取り出そうとするが、アイネスは首を横に振る。

 

「スレイプニルも使い切り、デュバリィも不在。この数ではさすがに分が悪すぎるのでな」

 

「ここは一時休戦といかないかしら?」

 

「な、何を……!」

 

「……良いでしょう」

 

リィンは答えた。

 

「教官!?」

 

「リィン君、良いのかい?」

 

「今は見届けるのが優先です。ただし、そちらから手を出すならこちらも容赦はしない」

 

「心得た」

 

「ありがとう」

 

アイネスとエンネアは礼を言った。

 

「礼は要りません。それより、先ほどのことですが……」

 

「本当に槍の聖女だと言ったんですか?」

 

「ええ。私たち全員にね」

 

「我らはそれぞれ他者には言えぬ過去を持つ。そんな我らを救ってくれたのがあのお方なのだ」

 

「過去……」

 

「ええ、そうよ。それと、キリコ君?」

 

エンネアはキリコを見る。

 

「?」

 

「あなた、グノーシスって言葉を知っているかしら?」

 

「いや、初めて聞くが」

 

「そう………」

 

「……行くぞ」

 

エンネアはアイネスと共に離れて行く。

 

「なんだ?」

 

「グノーシス………どこかで聞いたような……」

 

(確かそれは………)

 

ミュゼは不安を滲ませる。

 

「……そろそろ決着のようだ」

 

リィンの言葉で、新Ⅶ組はオーレリアたちの方を見る。

 

 

 

オーレリアとリアンヌの一騎討ちは決着を迎えようとしていた。

 

「これで……!」

 

 

 

「フフ、耐えて見せるがよい。せいっ!オオオオッ!ハッ!止めだ!ハアァァッ!奥義・剣乱舞踏!」

 

 

 

オーレリアは歯を食いしばり、奥義を放つ。

 

「クッ!?」

 

オーレリアの渾身の一撃を受けたリアンヌは膝をついた。

 

「ハア……ハア……ハア……!さすがは槍の聖女……!これほど血を流すとは………」

 

「見事です……。もはや、かつての私をも超えているでしょう」

 

「かつて、ということはやはり……」

 

「そう。そして私は禁呪により、この世に甦った不死者です」

 

「ふ、不死者……!?」

 

「死んだ人間が甦るだと!?」

 

「女神の教えに背く外法……!」

 

「もしかして、クロチルダさんの侵した禁忌とは……」

 

「いいえ、魔女殿ではありません」

 

リアンヌはリィンの言葉を否定した。

 

「では貴女を甦らせたのはいったい?」

 

「これ以上は答えられません。それにどうやら時間のようです」

 

リアンヌが言い終わるやいなや、神機が動きだそうとしていた。

 

「神機が!」

 

「チッ、こいつがいやがったな!」

 

「無粋だというのは承知の上です。ですが、これも我らが盟主からの命によるもの。抗ってみなさい」

 

リアンヌはアイネス、エンネアと共に下がる。

 

「上等!」

 

「教官」

 

「ああ!」

 

キリコに促され、リィンは拳を突き上げる。

 

 

 

「来い、灰の騎神、ヴァリマール!」

 

「応!」

 

 

 

数分後、ヴァリマールが飛翔して来た。

 

「ティータさん!お願いします!」

 

『うん!今送るね!』

 

演習地からヘクトル弐型とケストレルβが発射される。

 

「分校長」

 

「よかろう。出せ」

 

オーレリアが合図を出し、飛行挺からフルメタルドッグを降ろす。

 

天守閣屋上に4機が揃った。

 

【アッシュは俺と共に前衛。ミュゼは後方から援護を。キリコは撹乱役を頼む!】

 

【任せな!】

 

【了解しました!】

 

【了解】

 

ヘクトル弐型はヴァリマールの隣につき、ケストレルβは後ろに下がる。

 

「みんな、気をつけて!」

 

「その神機は空間を自在に操ります。巻き込まれれば致命傷では済まないかもしれません!」

 

【わかった!みんな、行くぞ!】

 

『おおっ!』

 

神機アイオーンtype-αⅡとの死闘が始まった。

 

 

 

【……………】

 

フルメタルドッグが旋回しながら銃弾を撃ち込む。

 

【くらえや!】

 

【ハアッ!】

 

ヘクトル弐型はヴァリアブルアクスを頭上に叩き込み、ヴァリマールは一太刀を浴びせる。

 

【そこっ!】

 

二機の合間を縫い、ケストレルβの狙撃がアイオーンtype-αⅡのボディに着弾する。

 

だが、アイオーンtype-αⅡは全身に障壁のようなものを張り、リィンたちの攻撃を受け流していた。

 

【チッ、どうなってやがる!?】

 

【まさか、空間を操って……?】

 

【っ!来るぞ!】

 

アイオーンtype-αⅡは白い球体を発動させる。

 

白い球体はヘクトル弐型目掛けて発射される。

 

【させるか……!?】

 

ヴァリマールは太刀で球体に斬り込むも、球体に触れた刀身は跡形もなく消失した。

 

【なっ!?】

 

「ゼムリアストーン製の太刀が!」

 

動揺した隙を狙い、アイオーンtype-αⅡはヴァリマールを集中的に攻撃する。

 

【グッ!】

 

「教官……!」

 

「リィン!」

 

さらにアイオーンtype-αⅡはフルメタルドッグを殴りつける。フルメタルドッグはターンピックを射出し、欄干に激突寸前で止まるが、決して軽くないダメージを受ける。

 

【キリコさん!!】

 

「損傷率……50%と想定!後一撃でも当たれば……」

 

「それってヤバいよ!」

 

新旧Ⅶ組の頭に最悪の情景が浮かぶ。

 

【こんな……所で……!】

 

「リィン……!」

 

だが、リィンの心は折れなかった。

 

【諦めて……たまるか!】

 

すると、全員のARCUSⅡが淡く輝きだす。

 

「これって……」

 

「戦術リンク……?」

 

「リィン……!」

 

ARCUSⅡの輝きに反応するように、折れた太刀も輝く。

 

【これは……】

 

【ゼムリアストーンに意志が集まる……】

 

青い光は太刀に集中し、消失した刀身を象る。

 

「太刀になった!?」

 

「ここにいる全員の意志がゼムリアストーンの太刀に集中したことでこのような結果を生んだのだろう」

 

【なんだそりゃ!?】

 

【なんでもいい。それより教官】

 

キリコは機体コントロールの配線を書き換えながらリィンに反撃を促す。

 

【ああ!】

 

ヴァリマールはアイオーンtype-αⅡに斬りつける。すると、アイオーンtype-αⅡを覆う障壁にひびが入る。

 

【あそこか】

 

フルメタルドッグが障壁のひび目掛けてガトリング砲と二連装対戦車ミサイルを一斉掃射。

 

【続きます!】

 

ケストレルβのクラフト技が決め手となり、障壁は完全に崩れた。

 

「やったぁぁっ!」

 

「さすがはリィンと教え子たちだ……!」

 

【後は徹底的にボコるだけだな!】

 

【新旧Ⅶ組!死力を尽くせ!これが最後の戦いだ!】

 

『おおっ!』

 

リィンたちは再び神機に挑む。

 

 

 

【ショックブレイカー!】

 

ヘクトル弐型のヴァリアブルアクスが装甲に無数の傷をつける。

 

【ストームルージュ!】

 

ケストレルβの弾丸が右アームを撃ち抜く。

 

【破壊する】

 

フルメタルドッグのへヴィマシンガンの集中砲火が左アームを損傷させる。

 

さらに仲間たちのEXアーツが機甲兵をサポートしつつ、神機にダメージを与える。

 

神機のダメージは蓄積され、機体から火花が散る。

 

【後少しか】

 

【とはいえ、こちらも限界が近いですね】

 

【しょうがねぇ、決めろや!シュバルツァー!】

 

【わかった!閃光斬!】

 

ヴァリマールの剣技が神機をぐらつかせる。

 

【決めるぞ、みんな!】

 

【了解!】

 

 

 

【連ノ太刀・箒星!】

 

 

 

ヴァリマールの斬撃を切欠に、フルメタルドッグの集中砲火、ケストレルβの狙撃、ヘクトル弐型の剛撃が神機に致命傷を与える。

 

最後に仲間たちの思いをのせたヴァリマールの太刀の連撃が止めを刺す。

 

かつてガレリア要塞を壊滅させた神機の後継機はラマール州を守ろうとする者たちの意志の力に敗れた。




次回、ラマール州篇最終話です。

皆様、良いお年を。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。