英雄伝説 異能の軌跡   作:ボルトメン

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いよいよ、ヒロイン決定。

アイデアが浮かんだので加筆しました。


転機

[キリコ side]

 

あの内戦が終結し、三ヶ月経った。

 

首謀者のクロワール・ド・カイエン公爵が大逆の罪で逮捕され、後に《十月戦役》と呼ばれる内戦が終わりを告げた。

 

しかも終戦の発表をしたのは、死んだ筈の宰相ギリアス・オズボーンだった。

 

終戦の発表のすぐに貴族への大幅な締め付けが始まった。

 

戦時中、犯罪行為を犯した貴族は家柄に関係なく容赦なく処罰された。

 

俺の住んでいた村を焼き払い、村人を虐殺したジギストムンド伯爵家は爵位剥奪、村の唯一の生き残りである俺への多額の賠償金の支払い、とどめにオルディスから永久追放という厳しいものだった。

 

自業自得とはいえ、哀れなものだ。

 

また、帝国政府や皇室アルノール家への賠償金が支払えず、路頭に迷う者もいるらしいが真相は定かではない。

 

内戦が終わり、第九機甲師団を去った俺は帝都近郊の仮設住宅に身を寄せていた。

 

ここには俺のように家や故郷を焼かれた人びとが集まっていた。

 

俺は帝国時報に目を通していると見開きで記事が載っていた。

 

《灰色の騎士 リィン・シュバルツァー》についてだった。

 

年齢は俺の二つ上の18歳。

 

トールズ士官学院の現役学生でありながら、灰色の騎士と呼ばれ、帝国政府の武官として活躍している。

 

名前の由来は、灰の騎神と呼ばれる機甲兵とは違う機動兵器から来ているという。

 

どうやらリィン・シュバルツァーは帝国政府からの命令で帝国各地の厄介事を解決したらしい。

 

その割りには、ずいぶんと暗い顔をしているが。

 

帝国時報を閉じ、冷めてしまったコーヒーを飲んでいると、なにやら表が騒がしい。

 

頻繁に起こる隣人同士の揉め事かと思ったが違うようだ。

 

それにこの気配には覚えがあった。

 

俺は銃を手にドアへと近づいた。

 

「あぁ、此方に戦闘の意思はない。すまないが開けてくれ」

 

俺はいぶかしみながらもドアを開けた。

 

「フフフ。内戦以来だな。キリコ・キュービィー。改めて、私はオーレリア・ルグィン、こっちはウォレス・バルディアスだ」

 

 

 

俺を訪ねてきたのは、《黄金の羅刹》オーレリア・ルグィン将軍と《黒旋風》ウォレス・バルディアス准将だった。

 

内戦中俺は、第九機甲師団のメカニック兼テストパイロットとして働いていた。

 

だが、東部に比べ、激戦地だった西部はあっという間に人手不足になり、俺も機甲兵で出撃せざるを得なかった。

 

この二人とはそのときから何かと因縁がある。

 

12月30日、第九機甲師団は貴族連合軍による帝都侵攻作戦を食い止めるべく総力戦を展開したが、大敗。

 

司令官のゲルマック少将をはじめ数人の将校が戦死した。

 

生き残ったのは俺やライル中尉を含め、20人に満たなかった。

 

中尉たちとは終戦宣言以来会っていない。

 

内戦後、この二人は政府のやり方に反発してジュノー海上要塞に籠城していたが、数日前に降伏したらしい。

 

「それにしても、私のシュピーゲルと渡り合った相手が子どもだったとは思わなんだ」

 

「ええ、俺の駆るヘクトルがボロボロにされた時は何が起きているのかがまったくわからなかった」

 

「…………」

 

確かに戦闘の意思はなさそうだが、ただの世間話のためにこんな所にノコノコ来る筈がない。

 

俺が警戒心を強めていると、オーレリアはコホン、と一息入れ、俺の目を見つめながら本題に入った。

 

「単刀直入に言おう。《トールズ士官学院第Ⅱ分校》に入学してもらいたい」

 

「トールズ…第Ⅱ分校だと?」

 

トールズに分校があるなど聞いたことがない。

 

トールズ士官学院は帝都ヘイムダル近郊の都市トリスタにしかないはずだ。

 

俺がいぶかしんでるとオーレリアが説明を始めた。

 

「内戦以降、帝国の在り方は大きく変わりつつある。政治、経済、文化など様々だ。トールズも例外ではなく、これまでの高等学校から軍学校としての色を強めることが政府の方針だ。それだけならまだしも、立場の難しい貴族の子女や外国人、そなたのような素性が不明な者は皆、トールズ本校には入学できんのというのだ。純粋な帝国人でなければならんとな。愚かだと思わんか?帝国の気概に貴賤など関係ないというのに」

 

「このままではトールズの精神が失われると考えたオリヴァルト殿下は近郊の都市リーヴスに第二のトールズを設立しようと考えた。だが、そこに政府の横槍が入ってな、本校に入れなかった者たちをひとつにしてしまおうということになったらしい。また、政府主導も譲れない条件として提示された」

 

ここまでの説明を聞いて俺は顔をしかめずにはいられなかった。

 

要は体のいい厄介払いだ。

 

しかも政府主導というのがキナ臭い。

 

ここで俺はある疑問が浮かんだ。

 

「なぜあんたが分校のことを俺に伝えた?」

 

「あぁ、いい忘れていたが、私は第Ⅱ分校の分校長に就任することが決定していてな。その際に、誰か推薦できる者はいないかと聞かれてな。真っ先にそなたが浮かんだのだ」

 

「なぜ俺に?」

 

「決まってるだろう。機甲兵戦とはいえ私やウォレスと互角に渡り合える猛者など数少ないが、そのなかで成人していない者はそなた一人だ。私はある意味、灰色の騎士より評価しているのだぞ」

 

「今は知られていないがそんな男が野放しになってると政府が知ったらどう出てくるかわからん。だが、一学生としてなら政府も手出しは出来ん。お前にとっても都合がいいはずだ」

 

「…………」

 

確かに、二人の言うことは理に叶っている。

 

だが俺は戦いばかりでろくに勉強などしていない。

 

「裏口入学も出来ないこともないが、それはそなたの望むことではあるまい?実はオルディスに知り合いがいてな。そこの孫娘が第Ⅱ分校を受験するのだが、そなたも一緒に励むといい。無論そなたのことは伝えてあるし、向こうも下宿として使ってくれてかまわないそうだ。後はそなたの返事を聞くだけだが。後、私はそなたの上官のようなものになる。敬語を使うようにな」

 

「…………」

 

こう言われれば納得せざるを得ない。

 

俺は悩むことなく二人の目を見据えて、

 

「入学…させてください。第Ⅱ分校に入ります」と答えた。

 

二人は満足そうにうなずいた。

 

「わかった、向こうには伝えておこう。三日後迎えに行くから荷物をまとめておけ。それとキュービィー…」

 

そう言ってオーレリアは俺に頭を下げた。

 

「ジギストムンドの一件は聞いた。謝っても許されることではないが、本当にすまなかった」

 

「もう過ぎたことだ。それにあんたが殺した訳じゃない」

 

「すまん」

 

そう言って二人は俺に謝罪して帰って行った。

 

無為に生きていた俺の心にある目的がうまれた。

 

この体に宿る異能を消すことができるだろうか?そのためのヒントが曰く付きの分校にあるかも知れない。

 

そんな蜘蛛の糸にもすがるような気持ちで俺は荷物をまとめ始めた。

 

 

 

三日後、導力リムジンでオーレリアが迎えにきた。

 

予想よりも少ない荷物に意外そうな顔をしていたが、時間が押していることもあり、乗るよう指示した。

 

「それで、俺はなんという家に行くんですか?」

 

「うむ、かつてカイエン公爵家の相談役であるイーグレット伯爵家だ。そなたのことは伝えてあるがくれぐれも粗相のないようにな」

 

「わかりました。それで、俺と一緒に受験するのは…」

 

「セオドア・イーグレット伯爵の孫娘、ミュゼ・イーグレットだ」

 

ミュゼ・イーグレット。

 

とある特別な家柄の生まれで、後に帝国の動乱で挙兵し、俺と仲間たちと共に最後まで戦い続けることになるとはこの時点では思いもしなかった。

 

[キリコ side out]

 

 

 

導力リムジンに揺られて数時間後、キリコはオルディスに到着した。

 

《紺碧の海都オルディス》

 

バリアハート、ルーレ、セントアークに並ぶ地方都市で、かつてはカイエン公爵家が統治していたが、内戦で現カイエン公が逮捕され、現在は帝国政府の預りとなっている。

 

そのせいか、あちこちで貴族と平民の間で揉め事が起きている。

 

キリコたちはその光景を尻目に、イーグレット伯爵が住むオルディス北区へと向かった。

 

北区の奥まった所に比較的大きい屋敷が見えた。

 

門の前にはメイドの女性が箒で掃き掃除をしていた。

 

「ここが…」

 

「そうだ、イーグレット伯のお屋敷だ。何度も言うが粗相のないようにな」

 

オーレリアたちの会話に気づいたのか、メイドの女性が近づいてくる。

 

「ようこそ、オーレリア様。旦那様がお待ちです。して、そちらの方が…」

 

「あぁ、キリコ・キュービィーだ。これから一年世話になる。そなたも挨拶くらいしたらどうだ?」

 

「はじめまして、世話になります」

 

「こちらこそよろしくお願いいたします。私は当家のメイドをしております、セツナと申します。ではどうぞ、こちらです」

 

キリコはセツナと共に屋敷へ入ってゆく。だがオーレリアはここまでのようだ。

 

「オーレリア様?」

 

「来ないんですか?」

 

「あぁ、生憎、立て込んでいてな。イーグレット伯によろしくお伝え願いたい」

 

「かしこまりました。ではキリコ様、改めまして、ようこそおいでくださりました」

 

 

 

「ようやく、終わりましたか」

 

「あぁ」

 

「それにしても、策士ですな」

 

「何がだ?」

 

「学生と分校長の関係になれば、訓練の名目でキュービィーとの決着をつけられるわけですからな」

 

「合格すればの話だ。それに公私の区別くらいつけられる」

 

「なるほど、上手い言い訳だ。そういえば、閣下はキュービィーをご自分のむ……」

 

「ウォレス、街道に出るぞ。今、無性に剣が振りたくなったのでな」

 

ウォレスは地雷を踏んだかな、と頭を掻きながら、オーレリアについて行った。この直後、街道の地形の一部が変わったのはまた別の話。

 

 

 

[キリコ side]

 

セツナに導かれて俺は屋敷に入った。そこには老夫婦と緑色の髪の女子がいた。

 

「おぉ、君がキリコ・キュービィー君じゃな。わしがセオドアじゃよ」

 

「はじめまして。妻のシュザンヌです。よくきてくれたわ」

 

「はい、お世話になります」

 

俺が二人に挨拶すると、緑色の髪の女子がドレスの裾を軽く持ち上げ、

 

「はじめまして。ミュゼ・イーグレットと申します。キリコさんのことはオーレリアさんから聞いております。どうぞ、よろしくお願いいたします」と挨拶をした。

 

「あぁ、よろしく」

 

すると、なぜかミュゼは俺のすぐ近くまで寄って来た。いかにも何か企んでいるような微笑みを浮かべながら。

 

「フフフ、やはり素敵なお顔ですね。今にも好きになってしまいそう♥️」

 

「ほっほっほ、キリコ君。顔に似合わず色男だのう」

 

「ウフフ。(半分は本気ですけど。)」

 

「…………」

 

「あなた、キリコさんが困ってらっしゃいますよ。ごめんなさいね」

 

「お嬢様もその辺りで」

 

そこには俺の想像とはかけ離れていた暖かさがあった。俺は久しぶりに養父母と暮らしていた頃の温もりを感じていた。

 

「ではミュゼ、キリコさん、お勉強を始めましょう」

 

「今日は帝国史と導力学です。特にキリコ様は基礎からしっかりと学んでいただきます」

 

かくして、イーグレット伯爵家での生活が始まった。

 

[キリコ side out]

 

 

 

[ミュゼ side]

 

キリコさんが我が家へ来てから一月が経ちました。

 

最初こそ簡単な問題にも戸惑っているようでしたが、わずか二日でスラスラ解けるようになったそうです。

 

何気なく本人に聞いてみると、自分は糞真面目だからだそうです。

 

確かに徹夜なさってるようですが、限度があるかと。

 

一緒に暮らしてみて私はキリコさんの人物像がわかってきました。

 

まず、キリコさんはコーヒー、それもかなり苦いブラックを好み、紅茶にはあまり見向きもしません。

 

以前、からかうつもりでキリコさんのコーヒーを口にしたら即刻後悔しました。

 

よくアレを真顔で飲めますね………。

 

性格は寡黙でとっても無口です。

 

キリコさんの本心を引き出そうとしてあの手この手を駆使しましたが全て無視されました。

 

挙げ句、「俺に構ってる暇があるのか?」と窘められる始末です。

 

でも、全くの無関心という訳でもありません。

 

アウロス海岸に出て、武器の練習を行ったときです。

 

第二分校と言えども、トールズ士官学院。

 

自らの武器が使えなければお話になりません。

 

ちなみに、私は魔導騎銃、キリコさんは導力式のアーマーマグナムを使います。

 

キリコさんは自分が前衛、私が後衛と決めました。

 

理由を聞くと、それぞれの武器の特性、自分と私のスタイルの違いだそうです。

 

一人よがりかと思いきや、きちんと周りを見ている人でした。

 

オーレリアさんもとい分校長が推薦するだけはあります。

 

ただ、どうしてもわからないことがあります。

 

それは時々浮かべる寂しそうな眼です。

 

キリコさんの事情は大体は把握していますが、それとはまた違う気がします。

 

後にその理由を知りますがそれは知らなければよかったと後悔を生むものでした。

 

[ミュゼ side out]

 

 

キリコがイーグレット伯爵家に来てからまもなく一年になろうとしていた。

 

試験を受けたキリコとミュゼは結果を待ちながら、今日も武器の修練に勤しんでいた。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…ちょ、ちょっと休憩しませんか?」

 

「そうだな。」

 

「フウゥー。もう、どうしてそんなに平気なんですか。」

 

「さあな。」

 

「んもう(いつか絶対に暴いてみせますわ)」

 

「後、魔獣を三体ほど倒したら終わりにしよう。後二時間くらいで夕方になる。」

 

「了解しました。」

 

休憩を終えたキリコとミュゼは近くを飛んでいた飛び猫に狙いを定めて戦闘を開始した。

 

キリコのアーマーマグナムから放たれた弾丸が飛び猫の胴体を貫く。

 

続けてミュゼのクラフトが残りの飛び猫を攻撃し、とどめにキリコのシルバーソーンが一掃する。

 

結果、無傷の勝利だった。

 

「次に向かうぞ。」

 

 

 

キリコがセピスを拾い集めていると、ミュゼが「お話しませんか?」と聞いてきた。

 

魔獣がいなくなったのを確認してキリコは黙って聞くことにした。

 

「キリコさんは本当は気づいているんじゃないですか?私のイーグレットの姓が偽りだと。」

 

「………」

 

「私の本当の名前はミルディーヌ・ユーゼリス・ド・カイエン。ミュゼは愛称から、イーグレットは母の実家から取りました。」

 

「………」

 

「父は現カイエン公の兄に当たる人で、母はイーグレット伯爵家の一人娘だったそうです。でも、二人とも海難事故で亡くなりました。そして私は帝都の女学院に入れられました。」

 

「………」

 

「………」

 

「………………それで?」

 

「はい、ここからが本題なのですが、キリコさんは異能というものを信じますか?」

 

「ッ!?」

 

キリコは思わず冷や汗を流した。自身の秘密を暴かれたと思った。だがそれは杞憂に終わった。

 

「信じてもらえないかもしれませんが、私には先の内戦で叔父が破滅する事がわかっていました。」

 

「何?」

 

「私は物事の現在の局面、そこに至る過去と無数の未来の局面。そしてその背後にいる何者かの狙いがわかる、そういう異能を持っています。」

 

「どこでそれを知った?」

 

「知り合いにその手のことに詳しい方がいます。その方に教えてもらいました。

 

「それでその異能は何を見せるんだ?」

 

「はい。帝国はかつてないほどの危機を迎えます。帝国全土がナニかに侵食され、共和国との全面戦争が始まります。このままではいずれ、全世界で戦争になります。次期カイエン公として見過ごす訳には参りません。お願いです。どうか私に、私たちに協力してください。」

 

「私たち?」

 

「今は詳しくは言えません。どうかその点はご容赦ください。」

 

「断る。」

 

「どうして…」

 

「わけのわからないものに関わる気はない。」

 

「ッ!……わかりました。この話は忘れてください。」

 

「……行くぞ。」

 

「………はい。」

 

「…………」

 

「…………」

 

夕陽が沈みつつある中、二人は一言も発することなく家路に着いた。

 

(ごめんなさいキリコさん。でももう時間がないんです。私は進み続けます。たとえあなたに恨まれようとも。)

 

ミュゼは、ミルディーヌは心の中でキリコに詫びた。

 

 

 

(それにしても、どうしてキリコさんの過去や未来が見えないんでしょう?クロチルダさんは私の異能はあらゆるものの過去と現在と未来を見通すと言っていました。でも、キリコさんはまるで……)

 

 

 

数日後、キリコ、ミュゼの元にトールズ第Ⅱ分校合格通知が届いた。

 




この作品のメインヒロインはミュゼです。原作でも彼女の力は異能だとはっきりでているのでキリコの異能と絡ませていきます。
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