英雄伝説 異能の軌跡   作:ボルトメン

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UA10万突破しました。本当にありがとうございます。

後半、オリジナルエピソードを入れています。


祈り

「やっぱりすごい人ねえ……!」

 

ユウナは人通りの多さに感嘆した。

 

「ここはヴァンクール大通り。帝都で最大の通りだよ」

 

「導力車に帝都内を循環する導力トラムもヘイムダルならではですよね」

 

「そんで、あそこにあんのが……」

 

アッシュはヴァンクール大通りの先にある紅い建物を指さす。

 

「ああ。皇室アルノール家が住まうバルフレイム宮だ」

 

「すっごいな~~!」

 

「ユウナさん、はしゃぎ過ぎです」

 

おのぼりさんといったユウナをアルティナが諌める。

 

「教官、そろそろ依頼を見せてください」

 

「ああ、そうだな。では確認するぞ」

 

リィンは封筒を開く。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

大切な家族の捜索 [任意]

 

出土品の危険性調査 [任意]

 

西オスティア街道の手配魔獣 [必須]

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「任意が二つに必須が一つか」

 

「全部帝都の西側ですね」

 

「つーか、こんだけか?」

 

「いや、これは午前の分だ。こっちが午後の分だ」

 

リィンはもうひとつの封筒を見せる。

 

「ほんとね。もしかして本校にだけ偏ってるんじゃ……」

 

「いや、レーグニッツ知事に限ってそれはない」

 

リィンは首を横に振る。

 

「確かに、清廉潔白を地でいく方が贔屓することは考えにくいかもしれません」

 

「なるほどな」

 

「さて、そろそろ出発しよう。クルト、君に案内を頼みたいんだが」

 

「わかりました。まずは情報収集。依頼はその後ということでよろしいでしょうか?」

 

「うん、いいんじゃない?」

 

「わかりました」

 

「まっ、頼むわ」

 

「よろしくお願いいたします」

 

「任せる」

 

「それじゃ、まずは──」

 

 

 

[クルト side]

 

まずはヴァンクール大通りからだな。

 

僕たちは情報収集の一環として、各店舗に入ってみることにした。

 

最初に入ったのはブティック《ルサージュ》だ。

 

ここはトリスタにも支店を持っていて、教官や旧Ⅶ組の先輩方もお世話になっていたらしい。

 

またここの店主の方と教官は顔なじみのようだった。

 

なんでも、旧Ⅶ組の先輩方が学院祭で行ったステージ衣装を手掛けたらしい。

 

また、内戦で亡くなられたというクロウという人のこともご存知のようだ。

 

次に《リュミエール工房》だ。

 

ここはキリコやティータがよく顔を出すらしい。しかし、細かいパーツくらい融通が効かないのだろうか?

 

武装は揃っているので僕たちは百貨店に入った。

 

色々なお店を覗いて見るが、ほとんどの店員さんが一発で教官を見抜いた。眼鏡はもういらないんじゃ……

 

また、百貨店の店員さんは僕たちを見て何やらヒソヒソしていた。

 

なんでも2ヶ月ほど前に、聖アストライア女学院の生徒がチンピラに絡まれていたところをどこかの学生がそれを助けてそのチンピラと大立ち回りを演じたらしい。まさかとは思うんだが……。

 

最後に帝国時報社にやって来た。中に入ると、ヴィヴィさんを見つけた。

 

さっそく話を聞くと、某国の特殊工作員を追う特捜班を追いかけて取材したということを教えてくれた。

 

だけどヴィヴィさんはどうやら上の人に無断で取材を強行したらしく話が終わると奥に連れていかれた。

 

教官によると、「あれくらいでへこたれるヴィヴィじゃない」だそう。

 

 

 

次にヴェスタ通りだ。

 

ここは下町といった感じだな。またこの区画にはアルト通りと同様、遊撃士協会の帝都支部があったらしい。

 

ベーカリーに入ると、そこにはクロスベルで出会ったオスカーさんが働いていた。

 

なんでも修行に出されたらしい。ここでも試作品にパンを頂いた。

 

向かいの宿酒場の店主のアーレントさんから情報を仕入れた。なんでもこのところ奇妙な客が来るという。

 

宿酒場の隣の雑貨屋を見てみると、看板にハーシェル雑貨店と銘打ってあった。

 

おそらくここはトワ教官のご実家なのだろう。まだ開いてなかったので後で来てみることに。

 

 

 

次にライカ地区に来た。ここは僕の実家がある。

 

ユウナたちに急かされ実家の前まで来てみたが、稽古の真っ最中のようだ。奥から聞こえる声は母上だな。

 

稽古が終わるまで帝国博物館で時間をつぶすことにした。受付の方にいくと、受付の人は何かを読んでいた。

 

僕が声をかけると、僕とアッシュとキリコを見て鼻血を出して興奮しだした。

 

戸惑っていると、教官が「もしかしてドロテ先輩ですか!?」と声をあげる。知り合いのようだ。

 

教官によると、この人はドロテさんと言ってかつてトールズ本校にいた方で新進気鋭の作家らしい。

 

また春色の恋唄なる小説はその筋では有名らしく、ミュゼとドロテさんは僕たちを置き去りにして盛り上がっていた。

 

その後落ち着いたドロテさんの案内で中を少しだけ見せてくれた。

 

まあ帝国博物館は全部見ようと思ったらそれこそ一日かかるからな。

 

博物館を出た僕たちは実家の方に行く。門をくぐると母上が立っていた。

 

「良く戻りましたね、クルト。3ヶ月ぶりになりますか」

 

「ただいま帰りました──母上」

 

そう言った瞬間、みんなに驚かれた。そんなに驚くことだろうか?

 

お茶を飲みながら母上と言葉を交わした。

 

たとえ役目を失ったとしても今は成すべき事を成すのみ。

 

結局、足踏みしていたのは僕だけだったみたいだな。

 

本当に母上には頭が上がらない。

 

 

 

最後にサンクト地区に来た。

 

ここはヘイムダル大聖堂や皇女殿下やエリゼさんが通う聖アストライア女学院がある。

 

またカルバード共和国大使館も置かれているんだが、静かすぎるな。

 

とりあえず、まずは聖アストライア女学院に行ってみた。

 

おかしなことに、校門の警備員の数が少なかった。ここは貴族や資産家の子女が通うから警備は厳重のはずだが。

 

「ククク……世間知らずが多そうだよな。一人くれぇはコマしても……」

 

「ほーーう、誰をどうするんだ?アッシュ君?」

 

「グッ……!?」

 

教官が笑顔でアッシュの肩を掴む。

 

相当の力らしくアッシュの動きが止まる。教官、エリゼさんとは一言も言ってませんが。

 

まあ自業自得なので助ける気はないが。

 

「あら?兄様、それに皆さまも」

 

すると本当にエリゼさんが出てきた。教官はやはり笑顔で応じるが、アッシュは肩を押さえながら話を聞く。

 

エリゼさんによると、このところ帝都内の動きが慌ただしく、女学院の警備も手が届かないらしい。

 

「──見て見て!」

 

すると校舎から大勢の女学院生が出てきた。

 

「もしかして……!」

 

「間違いないわ……!エリゼ会長が話している方は……!」

 

『きゃあああっ、灰色の騎士様よ!!』

 

女学院生たちがキャーキャーと騒ぎだした。

 

「そういえばトールズの新設校の教官になられたって……!」

 

「あちらは教え子さんなのかしら!?」

 

「男子もいらっしゃるわ!」

 

「青灰色の髪のハンサムな方は……!」

 

「あの金茶髪の方はアブない魅力ですわねぇ……!」

 

「ブルーの髪の方は物静かでクールな雰囲気が堪りません……!」

 

「ピンクの髪のお姉さまもグラマーでカッコイイというか!」

 

「あの銀髪の子、お人形みたい……!」

 

「あら、あちらの方は……?」

 

「あ、あなたたち!休憩時間も終わりですよ!?」

 

『え~~~っ!!?、エリゼ会長だけズル~~~イ!!!』

 

……女学院生は品行方正で慎ましいという話は嘘だったのか。

 

エリゼさんが抑えているうちに慌ててその場を離れる。

 

ミュゼ曰く「今頃、耽美な妄想で持ちきり」とのこと。よくわからないが、良い予感はしないな。

 

最後にヘイムダル大聖堂に行った。

 

ちょうどミサを執り行っていたので祈りを捧げることにしたが、キリコは気が進まないと噴水で待つことに。

 

教官は「過酷な体験をしてきたからこそ、神というものを信じなくなったのではないか」と言った。

 

僕は何も言えなくなった。

 

僕たちの生活において女神や教会の教えは欠かせない。

 

だけど、キリコのような体験をすれば誰だって女神の存在を疑うだろう。そんなことさえも分からなかったのだから。

 

お祈りを済ませ、噴水に行くとキリコは鐘楼の方角を見つめていた。僕たちは敢えて触れなかった。

 

「さて、そろそろ依頼に取りかかろうか」

 

「そうですね」

 

「まずはどこだ?」

 

「ヴェスタ通りの依頼から始めよう」

 

僕たちはヴェスタ通りへ向かった。

 

[クルト side out]

 

 

 

[ユウナ side] [大切な家族の捜索]

 

ヴェスタ通りのアパルトメントに住むバーナードさんに話を聞きに行った。

 

バーナードさんによると、ペットのインコもとい家族のチャッキーちゃんが逃げ出してしまい、その捜索をしてもらいたいとのこと。

 

みんなのやる気は無いに等しいけど、あまりに懇願するもんだから引き受けることに。

 

バーナードさんによるとチャッキーはサンクト地区の方角に飛んで行ったらしいの。

 

サンクト地区に来てみると、一際派手な小鳥がいたの。さっそく捕まえようとしたら逃げちゃった。次は慎重にやんないと。

 

近づいては逃げられを何度か繰り返し、近くのホテルの二階の部屋に逃げ込んだところを捕獲。

 

その後バーナードさんの所に連れ戻した。バーナードさんも構い過ぎていたことを反省したみたい。

 

これで依頼達成ね。

 

[大切な家族の捜索] 達成

 

[ユウナ side out]

 

 

 

[ミュゼ side] [出土品の危険性調査]

 

私たちは依頼を伺うべく、帝国博物館にやって来ました。

 

ドロテ先生から依頼人のリルケさんを紹介していただきました。

 

リルケさんからの依頼は最近出土された古代遺物《アーティファクト》の調査でした。

 

古代遺物は"早すぎた女神の贈り物"と定義され、ほぼ例外なく教会によって回収・管理されます。

 

ですが、稀に遺跡調査などで発掘されるケースもあり、その場合は危険性がないか調査してから教会に引き渡す決まりになっています。

 

今回私たちが調査するのは見た目は古いカンテラのような古代遺物です。

 

リルケさんはこれを便宜上、常魔のカンテラと名付けたそうです。

 

リルケさんは調査結果次第では展示も考えていますが、危険な物ならば教会に引き渡すそうです。

 

私たちは常魔のカンテラを受け取り、南オスティア街道で戦闘を行うことに。

 

常魔のカンテラはリィン教官が装備しました。

 

さっそく目に付いた魔獣に戦闘を仕掛けますがその瞬間、常魔のカンテラから強い光が放たれ、周りが闇夜のように暗くなりました。

 

また、上位属性も効くようになっています。

 

「止まるな!」

 

「今は戦闘を終わらせることに集中してくれ!」

 

キリコさんとリィン教官の激でなんとか切り替えた私たちは戦闘を終わらせました。

 

「な……なんだったのよ………!」

 

「空間ごと変わった……!?」

 

「これが常闇のカンテラの力なのでしょう」

 

「ったく、聞いてた以上に薄気味悪い代物だったみてぇだな」

 

「危険性で言えば危険なのかもしれないな」

 

「とにかく、後2回ほど戦闘をしてみよう。その上でリルケさんに教会へ引き渡すよう申し上げてみよう」

 

その後、私たちは2回ほど戦闘を行い、展示するには手に余りあると判断しました。

 

その結果をリルケさんに報告すると、とても残念がっていました。

 

こういった古代遺物が教会に回収されて展示が中止になったことは一度や二度ではないそうです。

 

とはいえ、今後の研究に役立つと言ってくださったのでホッとしました。

 

これで依頼達成、ですね♪

 

[出土品の危険性調査] 達成

 

[ミュゼ side out]

 

 

 

[アルティナ side] [西オスティア街道の手配魔獣]

 

任意の依頼を終えたわたしたちは必須の依頼である手配魔獣の討伐に着手することに。

 

西オスティア街道を移動するその途中でキリコさんが丘の上を見つめています。

 

「キリコさん?」

 

「どうかしたの?」

 

「…………ちょうどあの辺りに俺が育ったパルミス孤児院があった」

 

「え?」

 

「あった、とは?」

 

「…………火事で焼け落ちたそうだ」

 

『!?』

 

わたしを含めて、全員が言葉を失いました。

 

「や、焼け落ちたって……」

 

「4年ほど前に大きな火事が遭ったそうだ。火の不始末か火付けかは分からないが、真夜中ということもあってか、消火するにも時間がかかったらしい」

 

そういえば前に聞いたことがあるような気がします。

 

「そんなことがあったのか……」

 

「……孤児院ということは他の方もいたはずです。その人たちは……」

 

「避難が遅れて、院長やシスターも含めて全員死んだそうだ」

 

「ッ!」

 

キリコさんの一言に顔を上げられませんでした。

 

「キリコさん………」

 

わたしは自分の胸を押さえました。これが、痛いということでしょうか。

 

「教官」

 

ユウナさんが顔を上げました。

 

「行ってみませんか?」

 

「……そうだな。お祈りくらいはしてもいいだろう。キリコ、案内してくれ」

 

「了解です」

 

ユウナさんの提案で鎮魂の祈りを捧げることにしました。

 

近くに咲いていた花を摘んで、キリコさんの案内で孤児院跡へ向かいました。

 

焼け跡から察するにそれなりに大きな孤児院だったようです。

 

わたしたちは建てられたお墓に花を添え、祈りました。

 

「少しはやすらかに眠れるのかな……?」

 

「ああ、きっとね」

 

「そうですよ」

 

「……じゃあ、行こうぜ」

 

「ああ。キリコ、君は……」

 

「大丈夫です」

 

キリコさんはいつもどおりでした。

 

 

 

お祈りを済ませたわたしたちは手配魔獣を探すことに。

 

すると、頭部が二つついた魔獣の姿を捉えました。

 

「あいつか?」

 

「検索結果、デュアルヘッドダイノ。手配魔獣と一致しました」

 

「あの手の魔獣は水属性が有効だ。特にミュゼやキリコは凍結の刃をセットしておいた方がいいな」

 

「了解しました」

 

「了解」

 

キリコさんがセットし直し、いよいよ討伐開始です。

 

 

 

「アーマーブレイク」

 

「メルティバレット!」

 

キリコさんとミュゼさんのクラフト技がヒットし、デュアルヘッドダイノが凍りつきました。

 

「ダイヤモンド・ノヴァ」

 

その隙を突いて水属性最上級アーツを放ちます。

 

「ヴォイドブレイカー!」

 

「弧月一閃!」

 

「テンペストエッジ!」

 

「ブレイブスマッシュ!」

 

続けて残りのメンバーが各々のクラフト技を仕掛けます。

 

凍結状態が解けたデュアルヘッドダイノは牙を剥き出しにして襲いかかってきました。

 

ですが、こういう時こそチャンスです。

 

「起動、フラガ・ラッハ」

 

クラウ=ソラスの斬撃で足止めします。

 

「アーマーブレイク」

 

崩れたところをキリコさんが追撃し、再び凍結しました。

 

「総員、畳み掛けるぞ!」

 

『イエス・サー!』

 

教官たちのリンクバーストが止めとなり、デュアルヘッドダイノは消滅しました。

 

依頼達成です。

 

[西オスティア街道の手配魔獣] 達成

 

[アルティナ side out]

 

 

 

リィンたちⅦ組特務科は互いを労いながら帝都へと戻って来た。

 

「これで全部終わりましたね」

 

「ああ、お疲れ。頑張ったな」

 

「とりあえずお腹減ったね」

 

「食ってばっかか」

 

「うるさいわね~~!」

 

「とはいえ、そろそろお昼か」

 

「どこかで何か食べましょうか」

 

「それなら、百貨店二階に……」

 

「あれ?リィン君たち?」

 

リィンたちの前からトワが歩いて来た。

 

「あっ、トワ教官!」

 

「お疲れ様です」

 

「うん、お疲れ様。もしかして依頼が終わったの?」

 

「ええ。依頼も一段落したので、どこかでお昼でも食べようかと」

 

「うーん、そっかぁ……」

 

トワは腕組みをする。

 

「トワ教官?」

 

「ねぇ、みんな。私の実家に来ない?」

 

「トワ教官の?」

 

「もしかして、ヴェスタ通りの?」

 

「うん、フレッド叔父さんとマーサ叔母さんのお店だよ。お昼まだならうちで食べない?」

 

「いいんですか?大勢で押し掛けて……」

 

「うん、ちょっとだけ待ってて」

 

トワはARCUSⅡで通信をした。数分後、リィンたちの前に戻って来た。

 

「大丈夫だって」

 

「そうですか。みんな、ここはお言葉に甘えるとしようか」

 

「そうですね」

 

「では、ヴェスタ通りに」

 

「それじゃ、行こうか」

 

トワの先導でリィンたちはヴェスタ通りに向かった。

 

 

 

「やあ、皆さん。よく来てくれましたね。はじめまして、トワの叔父のフレッドです」

 

「あたしはトワの叔母のマーサさ。そんでこっちが息子のカイだよ」

 

「……………」

 

フレッドとマーサがリィンたちを歓迎する中、カイはリィンを睨んでいた。

 

「すみません、大勢で押し掛けてしまって」

 

「いいんだよ。大勢で食べるご飯は美味しいからね。あんたたちもたくさん食べてね」

 

『いただきます!』

 

運ばれてきた料理に手を伸ばしながら、リィンたちはフレッドマーサとの話に花を咲かせた。

 

「それにしても、リィンさんは立派な人だね」

 

「はぁ、ありがとうございます」

 

「これならトワもお嫁に行けるわね。職場も同じなんだし、早い所決めて寿退職させておやりよ」

 

「んぐっ!?」

 

マーサの発言にトワは思い切りむせる。

 

「心配なんだよ。トワったら、何時だって遠慮するんだから。こんな優良物件そうそう見つからないんだよ」

 

「リィンさん、トワのことをお願いします」

 

「は、はぁ……」

 

リィンは苦笑いを浮かべる。

 

「マーサ叔母さん!?叔父さんもなに言ってるの~っ!?……ご、ごめんねリィン君」

 

トワは顔を赤くしながらりに謝る。

 

「お、俺は認めないからな!英雄だか何だか知らないけどさ!」

 

カイは腕を組み、顔をそむける。

 

「も、もう……カイ君……」

 

(優良物件…………って、違う違う!!そんなんじゃないから!!)

 

(物件?リィン教官は人間ですが……)

 

(たとえ優良でなくとも………私は………)

 

Ⅶ組女子はそれぞれの思いを浮かべる。

 

 

 

「それにしても………」

 

不意にフレッドはキリコの方を向く。

 

「何か?」

 

「いや……なんでもない」

 

「?」

 

「叔父さん?」

 

トワも不思議そうに見る。

 

「おっと、そろそろ店頭に出なきゃな。すまないけど、失礼するよ」

 

「いえ、お仕事頑張ってください」

 

「みんなはゆっくりしてってね」

 

「いえ、お構い無く。我々もそろそろ失礼します」

 

「あらそう?それよりリィンさん、さっきの返事、楽しみにしてるからね」

 

「マーサ叔母さん!!」

 

トワは真っ赤になって声を上げる。

 

 

 

リィンたちが出て行った後、マーサはフレッドに話しかける。

 

「どうしたの?あの男の子が気になるの?」

 

「マーサ、彼はミリシャ院長の孤児院に居た子じゃないか?」

 

「え…………ああ!言われてみれば!」

 

マーサは昔の記憶を掘り起こす。

 

「そうそう!物静かでちょっと大人びてて、他の子どもたちといつも離れてたわね。そっかぁ、あんなに大きくなったのね」

 

「うん、すっかり見違えたよ。最初は誰だか分からなかった。だが……」

 

フレッドは表情を暗くする。

 

「……ミリシャ院長が亡くなってからもう4年くらい経つのか………」

 

「ッ! そうだね……」

 

フレッドとマーサは店内の椅子に座る。

 

「元々ミリシャ院長と私たちは古い付き合いということもあって、彼女の経営する孤児院に支援していたんだったな」

 

「よくミリシャ院長かシスターと子どもたちが買い物に来てくれてね。あの子も来てくれたわね」

 

「うん。古い本なんかを買ってくれたような覚えがあるよ」

 

「だけど、突然来なくなってね」

 

「確か、ラマール州にある村に住む老夫婦の養子として引き取られたと院長は言ってたな」

 

「でもね……まさかあんなことが起こるなんてね」

 

「ああ………」

 

フレッドは古い帝国時報を引き出しから取り出した。

 

そこには当時の火事のニュースが載っていた。

 

「結局事故なのかどうかも分からないまま捜査は打ち切りになって、時間だけが過ぎ去っていったね」

 

フレッドは立ち上がり、手を胸におく。

 

「彼がまたウチに来てくれたのも何かの縁だろう。ミリシャ院長とシスターと子どもたちに……」

 

「そうね。ミリシャ院長とシスターと子どもたちに……」

 

フレッドとマーサは静かに祈りを捧げた。

 




次回、特殊部隊と戦います。
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