英雄伝説 異能の軌跡   作:ボルトメン

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色々見直したりしていたら結構長くなりました。


ハーキュリーズ

トワと別れたリィンたちⅦ組はリィンの提案でドライケルス広場へと足を運んだ。

 

「ここが……」

 

「そう。ドライケルス広場だ」

 

「そしてあちらに立つ銅像の人物こそが」

 

「──ドライケルス・ライゼ・アルノール。獅子戦役を終結させ、エレボニア帝国中興の祖と謳われる人物です。ご逝去後、帝都を見守ってもらうために建立されたそうです」

 

振り返ると本校生徒数人が歩いて来た。

 

「君たちは……」

 

「お疲れ様です、第Ⅱ分校の皆さん」

 

先頭に立っていたエイダが前に出た。

 

「ずいぶんとのんびりなさっておられるのですね。まあ、あなた方と私どもとでは違っていて当然でしょうが」

 

(ム……)

 

ユウナは顔をしかめるが、エイダは意にも介さなかった。

 

「それで、皆さんの成果はどうだったんですか?」

 

「成果?」

 

「ええ。まさか遊んでいたとでも?」

 

「そんな訳ないでしょ!よく聞きなさいよ」

 

ユウナは午前の成果を本校生徒たちに話した。

 

「フッ」

 

「クスクス……」

 

返ってきたのは冷笑だった。

 

「何が可笑しいのよ!」

 

「ごめんなさい。まさかその程度だとは思わなくて」

 

「その程度?」

 

「所詮は遊撃士の猿真似だ」

 

「お前たちの演習と我々の公安活動。どちらが有益なのか、比べるまでもないだろう?」

 

「…………………」

 

「文句があるなら実力で示しても構わないが?」

 

「へえ?」

 

「ふふ、お望みとあらば♪」

 

ドライケルス広場に一触即発の空気が流れる。

 

「待たせたね。おや、リィンさんにⅦ組のみんなじゃないか」

 

「シュバルツァーたちか」

 

バルフレイム宮からセドリックとナイトハルト中佐が歩いて来た。本校生徒たちは一斉に姿勢を正した。

 

「お疲れ様です、リィンさん」

 

「殿下こそお疲れ様です。そちらも休息でしょうか?」

 

「ええ。一段落したので。リィンさんたちも?」

 

「我々は午後の活動に入ります。その前にドライケルス大帝を拝んでおこうと思いまして」

 

「そうでしたか。僕たちはこれから例の集団の足跡を追います。その時はぜひご協力ください」

 

「わかりました。これは自分のARCUSの番号です」

 

リィンはメモをセドリックに渡す。

 

「ありがとうございます。ではまた」

 

セドリックは本校生徒たちと共に去って行った。

 

「何があったかは察しがつく。すまんな、シュバルツァー、新Ⅶ組」

 

「いえ、ナイトハルト中佐もお疲れ様です」

 

ナイトハルト中佐はもう一度「すまん」と言って去って行った。

 

「殿下………」

 

「ホントに………なんなのよ、あいつら~~!」

 

「わざわざ来たのでしょうか?」

 

「俺らを見に来たんだろ?どんだけ頑張ってるか」

 

「皮肉の意味で、ですね」

 

(連中の目を見る限りあながち間違ってはなさそうだな)

 

「とにかく」

 

リィンはアッシュたちの言葉を切る。

 

「俺たちは俺たちのできることをやろう。殿下や本校の目を気にしても仕方ない。そろそろ依頼を確認しよう」

 

「それがありましたね」

 

リィンは封筒から依頼の書類を取り出す。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

[導力波ノイズの調査] 任意

 

[帝都競馬場からの依頼] 必須

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「なかなか歯ごたえありそうだな」

 

「帝都競馬場とオーバルストアからの依頼か」

 

(競馬場はともかく、オーバルストアからの依頼は気になるな)

 

「では参りましょうか」

 

「よーし、午後も頑張るわよー!」

 

「ハハ、その意気だ」

 

リィンたちはドライケルス広場を後にした。

 

 

 

[キリコ side] [導力波ノイズの調査]

 

俺たちはオーバルストア・リュミエール工房にやって来た。

 

技術部という関係上、俺やティータもここに顔を出すことも多い。

 

シュミット博士が放任主義ということもあって、細かいパーツなどは自分たちで仕入れるようにしている。

 

特に武装チェックの際には必要不可欠だからな。

 

店主のジョアンによると、周辺の店舗の通信機器の調子が悪く、故障でもないのにノイズが混じっているらしい。

 

そこで俺たちの使うARCUSⅡの高性能検知機能を用いて通信波の測定をしてもらいたいそうだ。

 

クルトたちはこの機能については知らないようだが、これはエンジニア向けの特殊機能なので無理もない。

 

俺のARCUSⅡのモードを切り替え、ヴァンクール大通りを調べることにした。

 

まず大通りで調べると測定値は正常。まあ、道のど真ん中なら問題はないだろう。

 

次に武器商会の前は正常ながら少し高い。何らかの機器が影響しているのだろう。

 

次に百貨店だ。

 

出入口が3箇所あるので調べると北に行くにつれ、高くなり北側の出入口辺りでやや異常の結果が出た。慎重に調べることにする。

 

帝国時報の前で測ると、警告レベルの数値が出た。

 

どうやら帝国時報内部に原因があるようだ。

 

入ってみるとさらに大きくなった。受付に事情を話してオフィス内を調べさせてもらうことになった。

 

数分後、テーブルの下の部分から黒い箱のような物が発見された。

 

工房に持ち込み、分解して中を調べた結果、小型の高性能の盗聴器のようだ。これがノイズを発生させていたのだろう。

 

ジョアンによると、こういった盗聴器は一般には出回らず、アングラなルートか軍からの横流しで手に入るらしい。

 

おそらく共和国のスパイの仕業だろう。無論、他の可能性もあり得るが。

 

予定は大分狂ったが、依頼は達成だな。

 

[導力波ノイズの調査] 達成

 

[キリコ side out]

 

 

 

任意の依頼を終えたⅦ組は帝国競馬場を訪れた。

 

「へぇ、賑わってるわね」

 

「ここは帝都で歴史ある場所の一つなんだ」

 

「帝国貴族にとって競馬場は一種の社交場ですから」

 

「観客はレースに夢中だから悪巧みしていても気づかないって寸法だ」

 

「それは………。まあ、とりあえず入ってみよう。言っておくが馬券の購入は禁止だからな?」

 

「はあああっ!?」

 

「いや、当たり前だろう。僕たちは未成年なんだから」

 

「チッ!」

 

「キリコさんは競馬に興味は……」

 

「ない」

 

「……即答ですね」

 

「キリコ君ってストイックだよね。そこがキリコ君の良いところなんだけど」

 

「ホント、ヴァンダールより面白くねぇな」

 

「……悪かったな」

 

引き合いに出されたクルトがアッシュを睨む。

 

「それよりキリコさん、演習が終わったらあちらにあるサロン《ヴィラ=ソレイユ》に……♥️」

 

ミュゼがキリコの左腕に寄りかかる。

 

「はいそこはなれるー」

 

「ミュゼさんは外しませんね」

 

ユウナとアルティナは呆れ返る。

 

「はぁ……」

 

どこでもペースを乱さない新Ⅶ組にリィンは大きくため息をついた。

 

 

 

リィンたちは帝都競馬場内の受付に説明し、係員と共に入った。

 

「うーん、盛り上がっているわね。賭け事なのに割りと雰囲気が健全っていうか」

 

「まあ、競馬は皇族も観戦する紳士淑女の嗜みでもあるからね」

 

(どうでもいいな)

 

ギャンブルに全く興味のないキリコはつまらなそうに話を聞く。

 

「しかし、この盛り上がりでは支配人の方もお忙しそうですね?」

 

「ええ、申し訳ありません。ただいまチャールトン支配人は貴賓席の対応にあたっている所でして、次のメインレースが終わるまで出来ればお待ちいただけないかと」

 

「そうでしたか。ならこのあたりで待たせてもらいます」

 

「本当に申し訳ありません」

 

係員はそう言って戻って行った。

 

「とりあえずここで観戦していようか」

 

「おいおい、シュバルツァー。ここまで来て何言ってんだ。馬券買わなきゃ意味ねぇだろ」

 

「あのな、未成年の馬券の購入が認められるわけないだろう」

 

「俺らが買わなきゃ良いんだろ?」

 

「教官ならば大丈夫ですよね?」

 

「お、俺が馬券を買うのか!?」

 

リィンは驚きを隠さなかった。

 

「そもそも特務活動中に賭け事はどうなんだ?」

 

「えー、でもクルト君だってちょっと興味あるでしょ?」

 

「これもある意味社会勉強の一環ではないかと。それに教官の馬を見る眼は定評があるとか」

 

「事前情報と不確定条件を勘案した高度な予測を必要とする公営賭博……興味深いです」

 

「…………………」

 

「とりま、買って来いよ。買い方は任せるからよ」

 

「はぁ……仕方ない。わかったよ。メインレースの一枚だけ買って来るよ」

 

リィンは売り場へと向かう。

 

「……トイレに行って来る」

 

キリコは立ち上がり、建物へと向かおうとした。

 

「待てよ。お前はどこ狙うんだ?」

 

「知らん」

 

「そう言うなよ。せっかくだし番号三つ言ってみろよ」

 

「………5、1、2。これでいいか?」

 

キリコはそれだけ言って建物の中へ行った。

 

「行っちゃった……」

 

「完全になげやりですね」

 

「もし当たれば相当な額だろうけど」

 

「奇跡でも起こらない限り不可能かと」

 

「まあ、手堅く1番か2番だろ」

 

「すまない、待たせた」

 

リィンが戻って来た。

 

「あっ、おかえりなさい」

 

「買えましたか?」

 

「ああ、5番のライノブルームに100ミラの単勝だ」

 

「おいおい、大穴じゃねぇか。あんたも好きだねぇ」

 

「まあ、いいじゃないか。そろそろ始まるぞ」

 

リィンたちはメインレースの様子を見守った。

 

 

 

キリコが戻って来たのはメインレースが終わってからだった。

 

「すまない、待たせた」

 

『…………………』

 

ユウナたちはキリコを見つめる。

 

「どうかしたのか?」

 

「てめぇ……マジでなんなんだよ………」

 

「?」

 

「先ほどキリコさんが仰った予想なんですが……」

 

「それが?」

 

「全部……当たりました……」

 

「いわゆる、三連単というものですね……」

 

「そうか」

 

アルティナとミュゼの言葉にもキリコは顔色も変えずに言った。

 

「一応、教官が100ミラ単勝で予想した馬が当たったからおよそ1000ミラの配当金なんだが……」

 

「キリコさんの場合だと100ミラが210000ミラということになるんです」

 

「なるほどな」

 

「なんで落ち着いていられるんですか……」

 

「別に嬉しくもない。そもそもギャンブルは興味がない」

 

(クロスベルで問題視されているギャンブル依存症にはなりそうもないわね)

 

(このストイックさこそがキリコさんがキリコさんたる由縁ですね)

 

「おいキュービィー!てめぇもっかい予想しやがれ!シュバルツァー、次は……」

 

「──おいおい。気持ちは分かるがそんなに荒れんなよ」

 

奥の席からレクター・アランドール少佐が歩いて来た。

 

「レクターさん」

 

「オメデトさん。いやぁ~、まさか5―1―2とはな。お前さんなかなかやるじゃねぇか」

 

「…………………」

 

「それにしても、いかんぞ~。真っ昼間っからギャンブルなんざ。まったく、親の顔が見てぇもんだ」

 

『…………………』

 

レクター少佐の仰々しい態度にリィンたちは白い眼を向ける。

 

「ったく、あんたはわざとらしいんだよ」

 

「そう言うなよ。情報を持って来たんだからよ」

 

「例の集団のことですか?」

 

「ああ。俺らも追っているんだが、なかなか捕まえられなくてな。捕捉したと思ったら文字通り消えちまってな」

 

「消えた?」

 

(人間が突然消える訳がない。おそらく──)

 

キリコは消えるという言葉からとある可能性を思い浮かべる。

 

「名前などはわかりますか?」

 

「ああ」

 

レクター少佐は声を落とした。

 

(カルバード共和国軍特殊部隊《ハーキュリーズ》って言うらしい)

 

(ハーキュリーズ……)

 

(気をつけな。どうやら俺らの知らない奥の手があるみてぇだ)

 

「………わかりました。わざわざありがとうございます」

 

「良いってことよ。お前さんに伝言があったからな」

 

「伝言?」

 

「ああ、ウチのチビッ子からな。『今夜19:00にヴェスタ通りの遊撃士協会西支部に集合~!』だそうだ」

 

「あ………」

 

「教官……」

 

「ならば、早めに終わらせなければなりませんね♪」

 

「だな。遅刻はシャレになんねぇからな♪」

 

「……二人とも、完全に楽しんでるな」

 

「確かに伝えたぜ。それじゃあな」

 

「レクター・アランドール少佐」

 

立ち去ろうとしたレクター少佐をミュゼが引き留める。

 

「なんだい?」

 

「その工作員の名前はわかりましたが、目的はなんなのでしょう?破壊工作、それとも情報収集?」

 

「……!」

 

「クク……そうだな、当初は半々だったが今じゃ3:7くらいってとこか」

 

「え、それってどっちがどっちで……」

 

「確かミュゼさんの言った順番は……」

 

「悪いねぇ、一応機密事項なんでこのくらいでカンベンしてくれ。詳しいことがわかったら演習地に報告する手筈になっているからよ」

 

(手筈、か)

 

「そんじゃーな。せいぜい頑張ってくれよー」

 

レクター少佐は今度こそ立ち去った。

 

「チッ、忌々しい野郎だぜ」

 

アッシュは舌打ちした。

 

「本気で楽しんでそうなあたりが逆に底知れないっていうか……」

 

「それにしてもミュゼ、君は君で何か掴んでいそうな口ぶりだな?」

 

「ふふ、いえいえ。何となく疑問に思っただけで」

 

クルトの疑問にミュゼは笑顔で返す。

 

「ですが、破壊工作と情報収集……どちらが主目的かどうかで対応の仕方も変わってきますね」

 

「おそらくは後者だろう」

 

「後者……情報収集ですか?」

 

「実際に調べなければわからないが、今まで爆発物などの話は出てこなかった。それにさっきの件もある」

 

「なるほど。仮に爆発物といった話があるならいくら情報局でもひた隠しにはしないはず」

 

「辻褄は合うわね」

 

キリコの推測に全員が腑に落ちた。そんな中でリィンは疑問を覚えていた。

 

(……どういうつもりだ?まるでこちらがそうたどり着くのを仕向けているようだ。レクター少佐……分かっていたとはいえ、底が知れないな)

 

「教官?」

 

「いや、なんでもない。そろそろ行くぞ。チャールトン支配人にお会いする。粗相のないようにな」

 

リィンたちは貴賓席へと向かった。

 

 

 

「ではよろしくお願いいたします」

 

「はい。お任せください」

 

競馬場支配人のチャールトンから鍵を預り、リィンたちは競馬場から帝都地下道に降りる。

 

「暗くてジメジメしてるわね。こんな場所があるなんて」

 

「クロスベルのジオフロントのような近代的な施設じゃなく、暗黒時代の遺構だな」

 

「魔獣の気配もするな」

 

「支配人の話では不気味な咆哮が聞こえるという報告が多数寄せられているそうですが」

 

「なんだろうとブッ潰すまでだ。行こうや」

 

「アッシュさん、燃えてますね」

 

「あれは腹いせの間違いね」

 

「とにかく、慎重に進むぞ。これより探索を開始する」

 

『イエス・サー』

 

 

 

「待ってくれ」

 

探索の途中、リィンはユウナたちを止める。

 

「教官?」

 

「まだ先だと思いますが?」

 

「見てみろ」

 

リィンは光る何かを指さす。

 

「これは、ムーントリュフ?」

 

「こんな場所に生えてるなんてね。とにかく、採取しちゃうね」

 

ユウナはムーントリュフを採取した。

 

「これで数は揃ったかしら?」

 

「サンディさんの故郷のお料理、どんなものなんでしょう?」

 

「多分、演習地に帰還する頃には夕方になってるだろうからサンディに渡すのは明日だな」

 

「何だか楽しみね」

 

「ああ。そろそろ探索を再開する。後少しで遭遇するはずだ。油断するなよ」

 

「ええ」

 

「待った、なんだあれは?」

 

クルトが指さす方向には魔獣とは異なるモノが待ち構えていた。

 

「あ、あれって……!?」

 

「おいおい、カンベンしろよ」

 

「おそらく敵性霊体──魔物とでも言うべき相手かと」

 

「いつの間にか上位三属性も働いていますね」

 

「なんでもいい」

 

戸惑うユウナたちを尻目にキリコが得物を構える。

 

「相手がなんだろうと俺たちが退く理由にはならない」

 

「……そうね!」

 

「確かに退く理由はないな」

 

「結局いつも通りってことだ」

 

「油断しなければ押し通ることも可能ですね」

 

「では始めましょう」

 

「ああ、Ⅶ組特務科、戦闘準備!」

 

『イエス・サー!』

 

リィンたちは魔物との戦闘に入った。

 

 

 

同時刻

 

「この地下道に潜伏しているのは間違いないですわね」

 

「ああ。オスト地区やヘイムダル港で不審な輩の目撃情報もあるしな」

 

エイダとフリッツは数人の本校生徒と地下道を探索していた。

 

「分校の連中が市民サービスなんぞに明け暮れている間に共和国のスパイを捕縛するぞ」

 

「そのとおりです。この帝都において、私たちの活動の方が有益なのは明白」

 

「全ては殿下のために」

 

「そろそろ時間です。気を引き締めなさい」

 

エイダは場を引き締める。

 

「これより作戦を開始します」

 

「この先は各方面に繋がる合流地点になっている。そこを我らが追いたて、最終的に殿下が待たれているヒンメル霊園にて捕縛する。ここで手柄を挙げ、トールズの勲を示す!」

 

『おおっ!』

 

本校生徒たちは気合いを入れる。

 

だが彼らは気づけなかった。生半可な戦意がもたらすのは成功でも勝利でもないことを。

 

 

 

一方Ⅶ組は、魔獣や魔物を蹴散らし、仕掛けを攻略しながら遂に最奥へと到達した。

 

「あれは……!?」

 

最奥には紅いプレロマ草が咲き誇っていた。

 

「紅いプレロマ草か……!」

 

「ラマール州に続いて……」

 

「ど、どうなってるワケ!?」

 

「話は後にしろ」

 

「──来ます!」

 

目の前の空間が歪み、重装備の魔煌兵が顕れた。

 

「魔煌兵!」

 

「ハッ、相手にとって不足はねぇ!」

 

「Ⅶ組、戦闘準備!総力を持って撃破するぞ!」

 

『おおっ!』

 

リィンたちは手配魔獣へと向かう。

 

 

 

「ブレイブスマッシュ!」

 

「テンペストエッジ!」

 

「デッドリーサイズ!」

 

手配魔獣──ヘヴィゴラムにユウナ、クルト、アッシュがクラフト技で体勢を崩す。

 

「エリアルダスト!」

 

「ガリオンフォート!」

 

ミュゼとアルティナが隙をついて、風と幻属性のアーツを叩き込む。

 

「合わせろ、キリコ!」

 

「了解」

 

リィンとキリコのリンクアタックにより、ヘヴィゴラムは大きなダメージを負う。

 

「グオオオオッ!!」

 

ヘヴィゴラムから黄金の闘気が吹き出る。

 

「高揚か!」

 

「関係ねぇ!ブチのめすぞ!」

 

「初弾は俺がやる。一気に攻めろ」

 

キリコはアーマーマグナムを構える。

 

「!」

 

ヘヴィゴラムはキリコに狙いを定め、鉄球を振り下ろす。

 

「遅い。アーマーブレイク」

 

キリコは鉄球を掻い潜り、ヘヴィゴラムの背中を射つ。

 

「今だ!全員で仕留める!」

 

ぐらついた隙をつき、リィンたちがバーストで一斉に攻撃する。ヘヴィゴラムはが膝をつく。

 

「とどめは俺がやる。フレア・デスペラード」

 

だめ押しにキリコのSクラフトをくらったヘヴィゴラムは断末魔の咆哮をあげ、消滅した。

 

「やったわねっ!」

 

「あの草も残らず消えたな」

 

「やはり魔煌兵の出現に関係がありましたね」

 

「とにかく、これで今日の依頼は全て終わったのか」

 

「皆さん、お疲れ様です」

 

「とっとと戻ろうや。なんか薄気味悪りぃ」

 

「そうだな。では戻るとしようか」

 

リィンたちは息を整え、来た道を戻る。

 

 

 

「待て」

 

キリコがユウナたちを止める。

 

(こ、これって……)

 

(……2、3名の移動音)

 

(ああ、よく気づいたな)

 

(反響しそうな地下にあってこの迷いのなさ……)

 

(先月の猟兵どもより練度は上かもな)

 

(捕捉するなら絶好の場所だな)

 

(ああ。アルティナ背後に回り込んでくれ)

 

(了解しました。隠密態勢に入ります)

 

アルティナが透明になるや否や、オレンジ色の防具を纏った一団が現れた。

 

「──止まってもらおう」

 

「こいつらは……」

 

「……報告にあった軍学校の者たちか」

 

「黒い傀儡使いが見えないが、後ろにでも回り込んでいるのだろう」

 

「あ、あたしたちのことまで!?」

 

「クラウ=ソラスについても把握済みですか」

 

アルティナとクラウ=ソラスが姿を現す。

 

「ハハ、運が良いというか悪いというべきか……」

 

「名高き灰色の騎士にもお目にかかれるとはな」

 

「腹の探り合いは結構。ハーキュリーズとお見受けする。無駄かもしれないが、武装解除してもらえないか?」

 

「ふむ、確かに分が悪いな」

 

「6対3……どうやって切り抜けるか……」

 

「灰色の騎士に傀儡使い、それに士官候補生か。侮るのは愚策だな」

 

ハーキュリーズ隊員たちは淡々とした口調で話す。

 

(……なに?妙に余裕そうだけど……)

 

(実際相当な手練れだろう。猟兵よりも上と見るべきか……)

 

(いかにも……奥の手がありそうですね)

 

「……交渉決裂か。悪く思わないでもらおう」

 

リィンは腰の太刀を抜いた。

 

「戦闘準備──先ほどの魔煌兵以上と思え!」

 

『イエス・サー!』

 

ユウナたちも得物を構える。

 

「なるほど、練度も高そうだ。上に進言する必要があるな」

 

「てめぇら、余裕かまし過ぎだろ!」

 

「それならもっと早くにお帰りになれば良かったでしょうに」

 

「フッ、目的を達成すれば出て行くさ」

 

「それまでは断固として居座らせてもらおうか!」

 

ハーキュリーズ隊員たちはそれぞれ大剣とアサルトライフルを構える。

 

 

 

ハーキュリーズは特殊部隊と呼ばれるだけあり、練度は高かった。また、ARCUSⅡとは異なる戦術器の存在にリィンたちは苦戦を強いられた。

 

「強い……!」

 

「さすがですね……」

 

だがリィンたちとて、やられっぱなしというわけではなかった。

 

「アーマーブレイク」

 

「ランブルスマッシュ!」

 

キリコとアッシュのクラフト技を起点に反撃に出る。

 

続けざまにリィンの一太刀が大剣を弾き、その隙をついてユウナのガンブレイカーの銃撃が襲う。

 

「くっ……!」

 

「やるな、だが……!」

 

「遅い」

 

キリコのハンタースローがハーキュリーズ隊員の肩の隙間に命中する。

 

「うぐっ……!」

 

「今だ」

 

「レインスラッシュ!」

 

「カルバリーエッジ!」

 

クルトのクラフト技とアルティナの時属性アーツが叩き込まれる。

 

「ラストォォォッ!」

 

ユウナがガンブレイカーを構える。

 

「エクセルブレイカー!!」

 

ユウナのSクラフトが勝負を決める。ハーキュリーズ隊員たちは膝をついた。

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ……」

 

「手こずらせやがって……」

 

「なんとか無力化できたようですね」

 

「くっ……」

 

「灰色の騎士や傀儡使いはともかく、学生がここまでやるとはな……」

 

「特にそちらの青髪はなかなか別格だ。警戒レベルを上げなくてはな」

 

ハーキュリーズ隊員たちは負傷しながらも余裕の表情を崩さなかった。

 

「何かお隠しになっているようですね」

 

「スパイなら遠慮はいらなさそうだな」

 

キリコはアーマーマグナムを隊員の頭部に狙いを定める。

 

「キリコさん……」

 

「あんたらに言っとくが、こいつはやるとなったらマジだぜ?」

 

心配するアルティナを他所にアッシュが煽る。

 

「……悪いがまだ捕まるわけにはいかん」

 

「是が非でも"Xデイ"を突き止めるまではな!」

 

ハーキュリーズ隊員の一人がフラッシュグレネードを起動させる。

 

「くっ!」

 

キリコは発砲するが、悲鳴が聞こえなかったため、外れたと判断した。

 

「しまった!」

 

「逃がすか!」

 

アッシュはヴァリアブルアクスで追撃する。だがハーキュリーズ隊員たちの姿が消えたことで空を切る。

 

「な……」

 

「空蝉……いや、空間投影か!!」

 

「ク、クソが……!」

 

「あ、あんなのアリ!?」

 

「落ち着け。光学迷彩か何かでそう見せかけているだけだ」

 

戸惑うユウナたちをキリコが落ち着かせる。

 

「話は後だ──追跡する!」

 

リィンたちは走り出した。

 

 

 

「彼らが使っていた戦術器──ラムダ……でしたか。おそらく先ほどのが奥の手なんでしょう」

 

「チッ、厄介なモン持ってやがる」

 

「だが向こうも焦っているようだな」

 

キリコは一度止まり、地面を探る。

 

「見ろ」

 

「血の跡が点々としている……!」

 

「ある程度は追い込めそうですね」

 

リィンたちは血の跡をたどり、広い場所に来た。

 

「ここは……」

 

「広い場所に出ましたが」

 

「血の跡はあそこで跡絶えてますね」

 

「壁でもすり抜けたってのか?」

 

「いや、こういうのは」

 

リィンが壁を調べると一つだけ僅かに出っ張ったブロックがあり、それを押し込むと壁だった所が開き、道ができた。

 

「こんな仕掛けが……!」

 

「噂くらいにしか思ってなかったが、本当に存在したとは……」

 

「よく気づきましたね」

 

「2年前の特別実習で経験済みさ。それより、向こうも安心しているはずだ。こちらから奇襲をかける。気を引き締めてくれ」

 

「了解!」

 

「今度は逃がさねぇ」

 

ユウナたちは気合いを入れ、走り出す。

 

 

 

「追いついたぞ」

 

「チッ!」

 

「しつこい学生どもが!」

 

「逃がすわけないだろう」

 

「言っておくが先ほどのは通用しない」

 

 「何!?」

 

 「おそらくその戦術器の特殊機能なのだろう。光学迷彩により一時的に透過することでこちらの追跡を逃れる。加えて空間投影によりターゲットを撹乱、そう推測したが?」

 

「グッ!」

 

ハーキュリーズ隊員たちはキリコの指摘に歯軋りをする。

 

「ふふ、ビンゴ、ですね」

 

「やっぱり頼りになるわね、キリコ君は」

 

「正直半信半疑だったがな」

 

「まさか初見で見抜くとはな」

 

「……認めざるを得ないか」

 

「だが!」

 

ハーキュリーズ隊員たちは再び逃走を始めた。

 

「逃がすかっ!」

 

「全員、走るぞ!」

 

『おおっ!』

 

リィンたちも追跡を再開した。

 

魔獣の気配はなかったが、瓦礫などに塞がれている箇所があり、地下道は複雑になっていた。

 

早くから潜伏していたこともあり、ハーキュリーズ隊員たちの方に分があった。

 

だがそれでもリィンたちは懸命に食らいついて行った。

 

分かれ道に到達した所で隊員たちは二手に別れた。

 

「二手に!」

 

「右は俺が行きます」

 

キリコは右手に進路を変更した。

 

「キリコさん!私もお供いたします!」

 

ミュゼがそれに続く。

 

「わかった!気をつけろよ!」

 

リィンたちはそのまま隊員二人を追う。

 

「急ぐぞ」

 

「はいっ!」

 

キリコとミュゼは逃げた隊員を追う。

 

付かず離れずで追跡すると、キリコたちは急に立ち止まった。

 

「う、うぐぐ……」

 

「そんな……」

 

そこにはエイダとフリッツを含めた本校生徒数人が別のハーキュリーズ隊員の前で膝をついていた。

 

「フッ、トールズの士官候補生と聞いていたが、この程度とはな」

 

「所詮は学生レベルということだ。む?どうした?何かあったのか?」

 

(時間が惜しい。仕掛けるぞ)

 

(了解です)

 

「面目ない。先ほど灰色の騎士と……ぐわっ!?」

 

キリコの飛び蹴りを食らい、逃げていた隊員は地面に倒れる。

 

「なっ!?」

 

「隙ありです!」

 

戸惑う隊員たちの足元をミュゼの狙撃が放たれる。完全に不意を打たれた隊員たちは2、3歩退く。

 

「お、お前たちは……!」

 

「トールズ第Ⅱの……!」

 

「お取り込みの最中だったようですね」

 

「さっさと片付ける」

 

「学生ごときがなめるなっ!」

 

「お前たちもこいつら共々死んでもらう!」

 

隊員たちも得物を手にキリコに襲いかかる。

 

 

 

『……………』

 

本校生徒たちは目の前の光景が信じられなかった。

 

自分たちが落ちこぼれの半端者と見下していた分校生徒が、自分たちでさえ敵わなかった共和国軍特殊部隊と互角どころか上回っていることに。

 

大剣を持ったハーキュリーズ隊員がキリコに斬りかかるが、キリコはしゃがむようにかわし、サバイバルナイフで右腕の手首を斬りつける。

 

アサルトライフルを持ったハーキュリーズ隊員がその隙を縫って引き金に指をかけるが、先読みしていたミュゼに魔導騎銃の狙撃で狙いを狂わされ、それに合わせるように放ったアーマーマグナムの弾丸が肩を貫く。

 

結果、数分で二人のハーキュリーズ隊員の無力化に成功した。

 

「後は拘束するだけか」

 

「そうですね。私は本校の皆さんの手当てをいたします」

 

ミュゼはホーリーブレスを本校生徒たちにかける。

 

「くっ……余計な真似を……」

 

「あなた方の手を借りずとも……!?」

 

エイダは顔の真横にナイフが通過し、硬直した。

 

それと同時に背後からくぐもった声が響く。

 

エイダの後ろにはキリコが最初に蹴飛ばしたハーキュリーズ隊員が拳銃を持って立っていた。

 

すかさずキリコがエイダの背後のハーキュリーズ隊員の腹部に蹴りを入れる。

 

吹っ飛ばされたハーキュリーズ隊員は後ろの壁に激突し、今度こそ気絶した。

 

「………………」

 

エイダはへたりこんだ。

 

「咄嗟の事とはいえ、すまなかった」

 

キリコは右手を差し出した。

 

「………どうしてです…………」

 

「?」

 

「どうして助けたんですか。あれだけ暴言を吐いた私たちをどうして……」

 

「憎くはないのか?なぜ何も言わない?」

 

エイダとフリッツはキリコとミュゼに問いかける。

 

「見捨てるのも寝覚めが悪い。それに気にしてもいないし、憎んでいるわけでもない」

 

「少なくとも敵ではありません。同じトールズの同志ですから」

 

「「……………」」

 

「お前たちの言いたいこともわからなくもない」

 

「え?」

 

「俺は身元不明の孤児だ。半端者というのもあながち間違ってない」

 

「あ………」

 

「ッ!すまない……」

 

キリコは近くの箱からワイヤーを取り出す。

 

「こいつらを縛る。手伝ってくれ」

 

「あ、ああ!」

 

フリッツはキリコと共にハーキュリーズ隊員たちを拘束した。また、猿轡も忘れなかった。

 

「後はこのまま連れて行くだけか」

 

「そういえば、皆さんはどちらから来たんですか?」

 

「この先のヒンメル霊園だ。入り口には殿下やナイトハルト教官がおられるはずだ」

 

「ならさっさと向かう」

 

「そうですね。参りましょう」

 

「は、はい!」

 

エイダたちはキリコたちと共に地下道入り口へと向かった。

 

 

 

「エイダ!フリッツ!それにみんなも無事か!」

 

入り口でセドリックが心配そうに迎えた。

 

「殿下……」

 

「申し訳ありませんでした」

 

「いや、君たちが無事で何よりだ。それと──」

 

セドリックはキリコとミュゼの方を向く。

 

「キリコにミュゼさんもありがとう。詳細はリィンさんから聞いたよ。君たちのおかげだ」

 

「大したことはしていない」

 

「ごく一部とはいえ、工作員を拘束できただけでも良かったです」

 

「すまない。そう言ってもらえるとありがたい」

 

そしてリィンの方を向く。

 

「リィンさん。本当にありがとうございました」

 

「いえ。お役に立てたようで何よりです」

 

「クルトたちもありがとう。本当に助かったよ」

 

「あ……」

 

「殿下……」

 

「勿体ないお言葉……」

 

「へっ!」

 

セドリックはハーキュリーズ隊員の方に近づく。

 

「君たちには聞きたいことがある。もうじきTMPが到着するだろうから詰所でじっくり聞かせてもらうよ」

 

『…………………』

 

ハーキュリーズ隊員たちは一斉に顔を伏せる。

 

「二人とも、ご苦労だったな。それにしても本校生徒たちと一緒とはな」

 

「本校の皆さんが居なければ取り逃がしてしまったかもしれませんでしたね」

 

「ああ」

 

「二人とも、お疲れ様」

 

「そちらはどうでしたか?」

 

「ああ、入り口付近でなんとか押さえてね。彼らの身柄は本校に引き渡すことになったが、それはいいんだ。工作員拘束に貢献できたってことにね」

 

「ちょっと悔しいけどね」

 

「まあ、それはそれですね」

 

「んじゃ、とっとと帰ろうぜ」

 

「その前に良いか?」

 

「キリコ?」

 

キリコは懐から戦術器を取り出し、セドリックに見せる。蓋の所にはRAMDAと銘打ってあった。

 

「キリコ、それは……」

 

「連中が持っていた。そして情報局が捉えられなかった仕掛けはこれだろう」

 

キリコはRAMDAを起動させる。

 

 するとキリコの体が透明化し、さらに半透明なキリコが顕れた。

 

「な!?」

 

「これは……!?」

 

「なるほど。光学迷彩と空間投影を利用してそういう風に見せかけるのか」

 

エイダとフリッツが驚く横で、セドリックはRAMDAの機能を推測した。

 

「おそらくまだ連続使用は出来ないようだがな」

 

「ふむ……わかったよキリコ。それの解析をさせてほしいんだろう?」

 

「俺ではなく、シュミット博士にな」

 

「わかった。そっちの手続きは任せておいてくれ。それじゃ」

 

セドリックはそう告げて本校生徒たちと共に去って行った。

 

「待たせた」

 

「ホントにあのジジイに解析させんのか?」

 

「あれこれ口出しされるのは避けたいんでな」

 

「まあね……」

 

「容易に想像できますね」

 

(多分、無理を言って取り寄せるんだろうな)

 

「それと、教官は今夜帝都に行かれるんですね」

 

ミュゼが話題を変える。

 

「ああ。わかっていると思うが……」

 

「そんな野暮なことはしませんよ」

 

「楽しんで来てください」

 

「まあ、情報交換も兼ねているからそんなに遅くはならないさ」

 

「なんだよ、どなたかと朝帰りしてきてもいいんだぜ?」

 

「教官!不潔ですよ!」

 

「しません」

 

リィンは肩を竦めた。

 

 

 

「ああ、そうだ。少し寄って行きたい所がある」

 

「? どこですか?」

 

「すぐ近くだ」

 

「もしかして……ここに……?」

 

「ああ」

 

リィンたちは霊園の北東の墓の前にやって来た。墓にはクロウ・アームブラストと刻まれていた。

 

「…………………」

 

「……内戦の年の……」

 

「旧Ⅶ組の……教官の仲間の方なんですね?」

 

「ああ……」

 

リィンは片膝をついた。

 

「元々俺たち旧Ⅶ組の先輩であり、いい加減でお調子者で、それでいて面倒見がよくて頼りになる、そんな最高の仲間だった。内戦では敵同士だったが」

 

「え?」

 

「貴族連合軍陣営に属していたのである程度面識はありました。帝国解放戦線という組織のリーダーで《蒼の騎士》と呼ばれていた方でした」

 

「内戦中、聞いたことがあるぜ。蒼い騎士人形に乗って各地の機甲兵を圧倒したとかな。キュービィーはやり合ったことはあんのか?」

 

「いや、噂には聞いてたが実際に戦ったことは一度もない。……その代わり分校長やウォレス少将となら飽きるほど殺り合ったが」

 

「何度聞いてもすごいわね……」

 

ユウナは呆れるしかなかった。

 

「それでも最後にはⅦ組に戻ってくれた」

 

「……皇太子殿下を取り込む形で現れた250年前からの災厄。その災厄を倒すため、あいつは道を切り拓くために全てを賭けた。だが、全てが終わった時、あいつは致命傷を負ってしまっていた」

 

「…………」

 

「……その時の出来事が俺やⅦ組の背中を押した。俺がヴァリマールとトールズに残って政府からの要請に対応することにして、他のみんなは1年で卒業して『今の自分にしか出来ないことを見極める』ことを選んだ」

 

リィンは墓を見つめる。

 

「この激動の時代においてもう一度Ⅶ組として集まり、全員で答えを見出だすために」

 

「……………」

 

「答え、ですか……」

 

「……初めてちゃんと聞かせてもらった気がします。教官たちが何をしようとしていたかを」

 

「……そんな覚悟で頑張っているのは特務支援課だけだと思ってました………」

 

「ハッ……不器用すぎだろ、アンタら」

 

「ふふっ……眩しいくらいに、ですね」

 

「はは……」

 

リィンは立ち上がる。

 

「まあ、これはあくまで俺たち旧Ⅶ組が決めたことだ。君たちもいつか、自分たちならではのⅦ組の在り方を見出だす時が来ると思う。だから、それまで全力で支えるさ。旧Ⅶ組を、教官や先輩たちが根気よく導いてくれたようにね」

 

「あ………」

 

ユウナは一瞬顔を伏せるが、すぐに顔を上げた。

 

「はい!これからもよろしくお願いします!」

 

「……心強いです。宜しくご指導、ご鞭撻ください」

 

「まだ自分自身のこともよくわかってませんが、それでもこの3ヶ月で得られた実感と手応えがあります」

 

「こうして新Ⅶ組に編入したのは何かの導きのように思えます」

 

「今のところはせいぜい付き合わせてもらうぜ。アンタっていう壁をいずれブチ抜くためにもな」

 

「よろしくお願いします、教官」

 

新Ⅶ組はそれぞれの心情を口にした。

 

 

 

リィンたちが言葉を交わしている様子を見続けている者がいた。

 

「灰の起動者リィン・シュバルツァー、とうとう帝都へと至ったか。しかもこのような状況で……つくづく悪運に見込まれておるの」

 

金髪の少女は身の丈以上の杖を手に持ち、帝都を睨み付ける。

 

「まもなく800年前の災厄が目覚める。機を見計らい、手助けくらいしてはやるかの」

 

金髪の少女の最後にもう一度リィンたちの方向を見る。

 

「それにしてもあの青髪の小童、何者なのじゃ……?」

 

「……まさか、な………」




次回、遂にあの二人が顔を合わせます。
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