英雄伝説 異能の軌跡   作:ボルトメン

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暗黒竜①

新旧Ⅶ組はエマの祖母を名乗るローゼリアに唖然としていたが、少しずつ落ち着きを取り戻す。

 

「この人がエマのおばあさん……」

 

「はい。血のつながりはありませんが、私を育ててくれた家族です」

 

「ふむ、確かに大いなる力のようなものを感じる」

 

「ほう、そなたはなかなか面白いものを持っとるな。それにその顔立ち、かつてのノルドの戦士たちを思い出す」

 

「ノルドの戦士?」

 

「そ、そういえばさっき、ドライケルス大帝を朋友って……」

 

「おいおい、ドライケルスが生きてたのは250年前だろうが」

 

「…………………」

 

リィンは黙考し、ある結論を導きだす。

 

「そういうことでしたか」

 

「?」

 

「教官?」

 

「ローゼリアさん。あなたが導き手なんですね?ヴァリマールの先代の起動者、ドライケルス大帝の」

 

「正解じゃ。褒美にセリーヌをたっぷり撫で撫でしても良いぞ」

 

「何バカなこと言ってんの」

 

「もう……」

 

「おい、ちょっと待てや。灰の騎神と何の関係があんだよ」

 

「導き手、と仰いましたか?」

 

「そういえば、アッシュさんとミュゼさんは聞いてませんでしたね」

 

「それもそうだったな。あのな──」

 

リィンはヴァリマールとドライケルスの関係をアッシュとミュゼに話した。

 

アッシュは唖然とした表情を浮かべ、ミュゼは腑に落ちたように見せた。

 

「まあ、僕たちも内戦の末期にヴァリマールから聞いた時は驚いたんだけどね」

 

「エマがリィンを導いたように、ローゼリア殿はドライケルス大帝を導いたのだな」

 

「その二人は特科クラスⅦ組に属することになった」

 

「すごい偶然だね~」

 

「まるで狙ったかのようにな」

 

「あ、あははは…………」

 

エマは苦笑いを浮かべた。

 

 

 

「ドライケルス大帝の陣営には善き魔女がいたと伝わっていますが、それがローゼリアさんなんですか……」

 

「ちょ、ちょっと理解が追い付かないけど……」

 

「まあ、妾たち魔女は本来裏の存在。表との関わり合いは小さい方が良い。そう思ってドライケルスに妾については完全に消し去るように伝えたがあやつめ、歴史の書などに残しおった」

 

「待てよ。そういや、アンタはいくつなんだよ」

 

「ア、アッシュ……!」

 

「さすがに失礼では……」

 

「構わぬ。だいたい800年は生きておる」

 

『は?』

 

ユウナたちは呆気にとられる。

 

「ええっと、本当なんです……」

 

「だから言ったでしょ、ロリババァだって」

 

「限度というものがあるかと」

 

「それはそうと──」

 

セリーヌがローゼリアを睨む。

 

「アンタ、こんな所にノコノコと何しに来たわけ?」

 

「………………」

 

ローゼリアは真顔に戻り、奥の通路を見据える。

 

「おばあちゃん?」

 

「……800年前の災厄が目覚めようとしておる」

 

「災厄?」

 

「リィン、お主は2年前に竜の骸と刃を交えておるな?」

 

「!」

 

「そ、それって……」

 

「帝国解放戦線幹部Gが帝都地下墓所で操っていた……」

 

「し、知ってるんですか?」

 

「2年前の夏至祭で帝国解放戦線によるテロが行われてね。マーテル公園での式典で組織の幹部があろうことかアルフィン殿下とエリゼ君を人質に取ったんだ」

 

「……………」

 

ミュゼは顔を伏せる。

 

「何とか地下墓所に追い込んだは良いんだが、その時に幹部が笛を吹いたんだ」

 

「笛?」

 

「確か《降魔の笛》、だったね」

 

「古代遺物か」

 

「ああ、あらゆる魔獣や魔物を操るという代物さ。その幹部はとんでもないものを動かしたんだ」

 

「とんでもないもの?」

 

「ゾロ=アルクーガ。かつて帝都を蹂躙した暗黒竜。その骸さ」

 

「な……!?」

 

「クルト君?」

 

「ユウナさんはご存知ありませんでしたか」

 

「およそ900年前に突如として現れ、帝都を瘴気で覆い、破壊の限りを尽くした暗黒竜のことです」

 

「その暴威の前に人間が立ち向かえるはずもなく、時の皇帝は帝都民を引き連れ、セントアークに避難・遷都したんだ」

 

「セントアークが旧都と呼ばれるのもそこからきているんですよね」

 

「その暗黒竜の死体ってのと戦ったってか?」

 

「その笛とやらでか」

 

「それを俺とエリオットとラウラとマキアスとフィーのA班で戦って倒したんだ。でもその骸は跡形もなく消滅したはずですが」

 

「その次代の暗黒竜が目覚める、と言ったらどうする?」

 

『!?』

 

新旧Ⅶ組は驚愕した。

 

「お主らが倒した暗黒竜の骸は800年前の皇帝ヘクトルⅠ世が緋の騎神を用いて討伐したもの。じゃが先の内戦で煌魔城が顕れ、この地に力が充ちた。その結果、暗黒竜が新たに受肉しようとしているじゃ」

 

「受肉……肉体を得て実体化するということですか」

 

「その通り。そしてこの異変は暗黒竜の受肉の前触れ。ノスフェラトゥが顕れたのも余波に過ぎん」

 

「あれが余波だと!?」

 

「本物の暗黒竜ってどれほどのものなのよ……」

 

「かの暗黒竜は人の魂を縛り、自らの卷族とし増やして行ける。かつて帝都を呑み込まんとした際、その力を疫病の如く広めたのじゃ」

 

「な……!?」

 

「霊的な感染爆発、ということですか……」

 

「じょ、冗談じゃないわよ!」

 

ユウナたちは戦慄した。

 

「……暗黒竜が目覚めようとしているのはわかりました。ですが、ローゼリアさん」

 

リィンはローゼリアに問いかける。

 

「それだけではありませんね。あなたが出てきた理由は」

 

「………………」

 

「リィンさん……」

 

「フフフ。鋭いのかニブイのかわからん、セリーヌから聞いていた通りの男よの(……こんな所まで似るとはの)」

 

ローゼリアは微笑んだ。

 

「先ほど言った通り、暗黒竜は緋の騎神によって討伐された。じゃが、暗黒竜の返り血を浴びた緋の騎神は呪いを受け、千の武器を持つ魔神と化した。その際、ヘクトルⅠ世と導き手の魔女も命を落とした」

 

「また魔女かよ」

 

「おばあちゃん、まさかその魔女って……」

 

「……先代の里長じゃった」

 

「あ……」

 

「そう繋がるか」

 

「仇討ちか」

 

「そこまでとは言わん。それに、妾はそなたらのサポートで来たのじゃ」

 

「サポート?」

 

「先代がヘクトルⅠ世に緋の騎神を託したのも、この地に生きる人の子の可能性に賭けたからこそ。妾も賭けてみようと思う、人の子の可能性をな」

 

「ローゼリアさん……」

 

「おばあちゃん……」

 

「可能性、か」

 

「ならば、我らに出来ぬことはあるまい」

 

「うん。どんな難題も私たち全員で越えてきた」

 

「暗黒竜ごとき、物の数ではない」

 

「今さら驚くことでもなさそうだな」

 

「今までの経験から言ってね」

 

「皆さん……」

 

「もちろん、アーちゃんたちも来てくれるよね!」

 

「もちろんです」

 

「微力ながら、お手伝いいたします」

 

「異存はない」

 

「同じく」

 

「決まりだな」

 

新旧Ⅶ組は頷き合い、結論に達した。

 

「良き縁に巡り会えたの、エマ」

 

「うん」

 

「ローゼリアさん、では」

 

「うむ。時間もないようじゃしの。では参ろうぞ」

 

ローゼリアを先頭に、新旧Ⅶ組はさらに奥へと進んで行った。

 

 

 

「なんだ、あれは……」

 

「巨大な門……!?」

 

新旧Ⅶ組の眼前には巨大な門があり、禍々しい光を放っていた。

 

「それだけじゃない」

 

「プレロマ草が咲き乱れていますね」

 

「歩きづれーな、オラァ!」

 

アッシュは大鎌でプレロマ草を薙いだ。

 

だが薙いだそばからプレロマ草が生えてきた。

 

「無駄じゃ。ここら一帯は既に侵食されておる。いくら薙ごうと燃やそうと咲き続ける。いずれは地下道はおろか、地上をも飲み込むであろう」

 

「何だって!?」

 

「ふざけた植物だ」

 

「じゃあ、完全に取り除くには……」

 

「あの門の先は暗黒竜の寝所となっておる。その奥にいる暗黒竜を倒すしか方法はない」

 

「生身でそいつに勝てるのか?」

 

「無理じゃ」

 

キリコの疑問にローゼリアは即答した。

 

「はっきり言うな~」

 

「弱らせても止めは刺せんじゃろう。リィン、ヴァリマールを呼び出せ」

 

「は、はい!来い、ヴァリマール!」

 

リィンの呼びかけにヴァリマールが空間転移してきた。

 

「ほう。懐かしい顔がいるな」

 

「久しぶりじゃのう。最後に会ったのはお主を封印してからか」

 

「そうだな」

 

「ローゼリアさんがヴァリマールを封印したんですか?」

 

「うむ。ドライケルスの立ち会いの元にな」

 

「それで、ヴァリマール一機で立ち向かうと?」

 

「逸るな。ヴァリマール、この子たちの機体と繋げられるか?」

 

「やってみよう」

 

ヴァリマールは青い輝きを放つ。

 

「これは……」

 

「おばあちゃん、もしかして……」

 

「離れておれ」

 

ローゼリアは身の丈以上の杖を取り出し、魔法陣を四つ出した。

 

魔法陣からドラッケンⅡ、シュピーゲルS、ヘクトル弐型、ケストレルβが顕れた。

 

「なあああっ!?」

 

「機甲兵を……!」

 

「これなら立ち向かえそうですね」

 

「あん?なんか足りねぇな」

 

「そういえばフルメタルドッグがありませんね?」

 

「むう?おかしいのう。以前様子を見に行った時には確かに五つあったはずじゃが」

 

「アンタ、第Ⅱ分校まで行ったの?」

 

「全然気づきませんでした」

 

「仕方ない。直接持ってくるか」

 

ローゼリアは先ほどと紋様が異なる魔法陣を描き、フルメタルドッグを転移させる。

 

「フルメタルドッグも来ましたね」

 

「な、なんか前より武装が増えてないか?」

 

「追加されたのは七連装ミサイルポッドだったな」

 

「うわ~~、凶悪だね~~」

 

「他の機甲兵と違って継戦とかは考えてないよね?」

 

「そうだな」

 

「重火力による超短期決戦仕様。褒められた構造じゃないわね」

 

アリサは顔をしかめる。

 

「え?それって……」

 

「こういう機体は普通なら残弾を気にして戦うのがセオリー。でもキリコは高い火力をたてに短時間で一気に殲滅するスタイル。極端に言えば、一回の戦闘で全弾使いきるのが前提」

 

フィーはアリサの話と外見から推測した。

 

「バクチにもほどがあるな」

 

「バクチだろうがこれが一番性に合う。それに相手が一体ならこちらの方が噛み合うだろう」

 

「む……」

 

「確かに一気に殲滅する方が合理的ではありますが」

 

「調整はできてるの?」

 

「いや、ぶっつけ本番だ」

 

「大丈夫なのか?」

 

「ミッションディスクと腕でカバーする」

 

「……そなたの腕前はリィンから聞いている。だが少々自信過剰ではないか?」

 

「俺にできるのはこれくらいしかないし、死ぬつもりもない」

 

「キリコさん……」

 

「……そうか。ならば何も言わぬ」

 

「ラウラ?」

 

「フフ、あのように覚悟をとっくに決めた眼を見せられては言うこともない。リィン、良き教え子を持ったな」

 

「毎日が大変だけどな」

 

「フフ……む?やれやれ、せっかちな」

 

「おばあちゃん?」

 

「侵食が進んだようじゃ」

 

「プレロマ草も伸びています」

 

「時間がないな。ではローゼリアさん」

 

「うむ。お主の呼びかけに応じて機甲兵はこちらから送る。それまではここで侵食を食い止めておく」

 

「わかりました。みんな、行こう!」

 

リィンたち新旧Ⅶ組は門の中に入って行った。

 

 

 

「………………」

 

ローゼリアは新旧Ⅶ組全員が門の中に入って行ったのを確認し、後ろの通路方を見る。

 

「そこの。出てくるがよい」

 

ローゼリアの呼びかけに物陰から金髪の男が歩いて来た。

 

「気づいていましたか。緋の魔女殿」

 

「まあの。それでそなたは?」

 

「ルスケとでもお呼びください」

 

「ルスケ?……まあよい。こんな場所に何の用じゃ?」

 

「あの青い髪の少年を見ましたね?」

 

「うむ。あやつは何者なのじゃ。背格好は少年のそれじゃが、纏う気は違う。炎と硝煙、血と死臭。まるでそれらが染み受け付いておるかのようじゃ」

 

「……この世では到底あり得ぬ、そう仰りたいのですね」

 

「ああ」

 

「………………」

 

「………………」

 

互いに黙り込むが、しびれを切らしたのはローゼリアだった。

 

「何が望みじゃ?」

 

「見て見たくはありませんか?」

 

「?」

 

「この帝国を覆う災いがたった一人の男に崩される瞬間を」

 

「ふざけた話に用はない。とっとと去れ」

 

「ではまた」

 

ルスケは去って行った。

 

「………………」

 

ローゼリアは目を瞑る。

 

(なんじゃ、あやつは。じゃが……少なくとも本気の目じゃった。それにこの世という言葉。あのキリコという小童には何があるというのじゃ)

 

 

 

一方、門を越えたリィンたちは眼前に広がる景色に言葉を失っていた。

 

「ここが……」

 

「暗黒竜の寝所……」

 

「なんて広さだ……」

 

「入り口が三つあるわね。リィン」

 

「ええ。チームを三つに分けようと思います」

 

リィンの提案に全員が肯定する。

 

「そうだな。新Ⅶ組のみんなは二人ずつ入ってくれ」

 

「わかりました!」

 

ユウナたちは二人一組になった。

 

「よし、これで準備は整った」

 

「じゃあ、リィン。いつものをお願い」

 

「え……?」

 

リィンは戸惑った。

 

「うんうん。やっぱりこれがなくっちゃね」

 

「我らⅦ組はそなたの言葉があってこそだ」

 

「いつも、私たちを引っ張ってきたんですから」

 

「今回の異変とて、乗り越えられよう」

 

「途中で噛むんじゃないぞ」

 

「さっさと述べるが良い」

 

「ん」

 

「リィン、ファイト!」

 

「シャキッとなさい。アンタはクラスの、Ⅶ組の"重心"なんだから」

 

「教官!」

 

「お願いします」

 

「最初が肝心です」

 

「てめえがⅦ組のアタマだろうがよ」

 

「ほらほら、時間がありませんよ?」

 

「………………」

 

新旧Ⅶ組全員がリィンを見る。

 

「……ああ。わかった!」

 

 

 

「──状況を開始する。これより新旧Ⅶ組総員、暗黒竜の寝所の攻略を始める。表と裏の連動を何とか回避するためにも……これまで共に培ってきた全てを合わせて挑むとしよう」

 

「──女神の加護を!総員、全力を尽くしてくれ!!」

 

 

 

『おおっ!!』

 

新旧Ⅶ組は三つのチームに別れ、探索を開始した。

 

 

 

[Aチーム]

 

リィン、キリコ、ミュゼ、アリサ、エマ、セリーヌは寝所内に蠢く魔物を殲滅しながら進んでいた。

 

「あの鏡のような魔物は厄介ですね」

 

「片や物理反射、片やアーツ反射か」

 

「群れているから範囲攻撃は出来ないわね」

 

「面倒だが、一体ずつ仕留める」

 

キリコは近くの魔物に向かって引き金を引く。アーマーマグナムの威力に魔物は砕け散った。

 

「よし、ここだ!」

 

リィンはアーツ反射の魔物に疾風で斬り込む。アーツ反射の魔物は一体残らず消滅した。

 

「アリサ!ミュゼ!」

 

「「了解(しました)!」」

 

残った物理反射の魔物めがけてアリサとミュゼが高位アーツを放つ。

 

高位アーツを受けた物理反射の魔物は全滅した。

 

「皆さん、回復します」

 

エマはリィンたちに回復アーツ、ブレスを使う。

 

「ありがとうございます」

 

「それにしても、魔物だらけだな」

 

「他のチームも相対しているはずです」

 

「早いとこ行きましょう」

 

「そうもいかないようだ」

 

キリコの目の前には結界が張ってあった。

 

「これは解除できるのか?」

 

「いえ。どうやら他の場所から解除する仕組みになっているようです。他の皆さんに連絡を取ってみましょう」

 

「そうだな」

 

「それにしても冷静よね。戦闘レベルも相当なものだし」

 

「これくらいしか芸がない」

 

「キリコさん……」

 

「ぶっちゃけアンタより威厳ない?」

 

「……自分でもそうなんじゃないかと思い始めた所だよ……」

 

リィンは苦笑いを浮かべ、他のチームに連絡を取った。

 

 

 

[Bチーム]

 

ユウナ、クルト、エリオット、ラウラ、フィー、ガイウスはリィンから連絡を受け、解除する装置を探していた。

 

そして現在、蜘蛛型の魔物と戦っていた。

 

「ブレイブスマッシュ!」

 

「合わせるが良い!」

 

「了解しました!」

 

ラウラとクルトのリンクアタックを受けた蜘蛛型の魔物は悲鳴をあげる。

 

「止めは私が」

 

フィーが構えた。

 

 

 

「さてと、始めよっか。それっ!キャッチ。バシッと。ダメ押し!リーサルクルセイド!!」

 

 

 

フィーのSクラフトを受けた蜘蛛型の魔物は消滅した。

 

「先ほどの魔物、ノルドに伝わる悪しき精霊(ジン)に似ている」

 

ガイウスは消滅した蜘蛛型の魔物が気になった。

 

「悪しき精霊?」

 

「ノルドの伝承ですね。叔父上から聞きました」

 

「内戦でも戦ったよね。あのでっかい蜘蛛」

 

「何か関係があるのかな?」

 

「わからぬ。むっ、ガイウス」

 

「ああ。おそらくは──」

 

ガイウスは床のせりあがった部分を踏む。その直後、リィンから連絡が届いた。

 

「向こうも開いたようだな」

 

「あっ、見てください。あっちの扉も」

 

ユウナの指さす方の扉を覆う結界が消えた。

 

「多分、Cチームだろうね」

 

「それはそうとガイウス。そなた、どこでそれほどの強さを得たのだ?」

 

「うん。ガイウスの実力は知ってるけど、私が知ってる以上」

 

「やっぱり半年間で何かあったの?」

 

「それについてはいつか全員の前で話す。それまでは待ってもらえるか?」

 

「わかった。Ⅶ組全員でな」

 

「ラウラさん……」

 

「そうだね」

 

「では、参りましょう」

 

Bチームも出発した。

 

 

 

[Cチーム]

 

アルティナ、アッシュ、マキアス、ユーシス、ミリアム、サラはさらに奥へと進んでいた。

 

そこで巨人型の魔物と戦っていた。

 

「それじゃ!アーミークーガーカルテットといっちゃおう!」

 

「お断りです」

 

「そんじゃ合わせて!ライアットビーム!」

 

「だから人の話を……ああもう、ブリューナク照射」

 

アガートラムとクラウ=ソラスから光線が発射される。

 

「合わせろや!」

 

「良いとも!」

 

アッシュの剛撃とマキアスの散弾が巨人型の魔物の体勢を大きく崩す。

 

「ユーシス!任せたわよ!」

 

「良いだろう!」

 

サラからの補助アーツを受けたユーシスが前に出る。

 

 

 

「覚悟を決めるが良い!セイヤァ!ハァァッ!眩く光よ、我が剣に力を!アイオロスセイバー!!」

 

 

 

ユーシスのSクラフトに巨人型の魔物は断末魔の叫びを上げ、消滅した。

 

「やったね!」

 

「何とか倒せましたね」

 

「つーか、あんなのが普通に居んのかよ」

 

「煌魔城の戦いを思い出すな」

 

「今さら怖じ気づいたのか?」

 

「馬鹿を言え。学生だったあの頃とは違うんだ。君こそどうした?スピードが落ちているんじゃないか?」

 

「お前こそデスクワークでブランクが見えるぞ?」

 

「良く言うぜ……」

 

「うーん、わりと息ピッタシだけどなぁ」

 

「むしろ1年半前のデータを大幅に更新しています」

 

「ハイハイ。そろそろ行くわよ。他のチームもだけど、成長したって所見せてもらうわよ?」

 

「うん!」

 

「もちろんです」

 

「言われるまでもない」

 

「アンタたち二人も、なかなか良い線いってるわ。この際、レベルアップしちゃいなさい」

 

「ハッ、上等だ」

 

「遅れは取りません」

 

Cチームは奥へと向かった。

 

 

 

[Aチーム]

 

中間を越えたAチームは卷属化したハーキュリーズ隊員たちの襲撃を受けるも、これを撃退した。

 

だがハーキュリーズ隊員は虚ろな眼を向け、四肢を痙攣させながら立ち上がる。

 

「まだ立ち上がって来るなんて……」

 

「完全にのまれていますね」

 

「………………」

 

キリコはアーマーマグナムを相手の眉間に狙いを定める。

 

「それには及ばないわ。エマ」

 

「この札で抑え込みます。効果は絶大だと思います」

 

エマは懐から札を取り出した。

 

「……………」

 

キリコは銃口を下げたが、臨戦体勢を崩さなかった。

 

その間にエマはハーキュリーズ隊員たちの背中に札を貼った。その直後に黒いオーラが晴れた。

 

「やはり人の限界を超えていたわね」

 

「おそらく、この方はもう……」

 

「……せめて、無傷で共和国に帰してあげたかったな」

 

「教官……」

 

「自分が甘いことを言っているのは承知している。だが彼らだってこんな目に遭いたくて来たわけじゃないはずだ」

 

「……………」

 

「リィン……」

 

「迷ってるなら後ろにいてください」

 

「え………」

 

キリコの言葉にリィンは顔を上げる。

 

「迷ってるなら後ろにいてください。前衛は俺が務めるので」

 

「いや、迷ってはいないんだが………」

 

「ふふ、一つ教えてあげるわ。後ろにいてって言っても前に出てくるのがリィン・シュバルツァーなのよ」

 

「指揮官としては悪手ですね」

 

「でもそれがリィンさんですから」

 

「……誉められている気が全くしないんだが………」

 

「とにかく、元凶まで後少しよ」

 

「元凶、か」

 

「なあに?怖じ気づいた?」

 

「そんな暇はない。とっとと終わらせたいんでな」

 

「ったく、少しは怖じ気づきなさいよ」

 

「ふふ、キリコさんの仰る通り、そんな暇はないようですよ?」

 

「ああ。みんな、向こうから敵が来る。蹴散らしながら進むぞ!」

 

「わかったわ!」

 

「はい!」

 

「了解しました!」

 

リィンたちは宣言通り、魔物を蹴散らしながら進んだ。

 

 

 

[Bチーム]

 

Bチームもまた、魔物やハーキュリーズ隊員たちとの戦闘で消耗していた。

 

だが、ユウナやラウラの鼓舞にエリオット、フィー、ガイウス、クルトがそれに応える形で何とか乗り越えた。

 

「な、何とか倒せましたね……」

 

「うむ。さすがに手こずらされた」

 

「後はこれを貼るだけだね」

 

エリオットは倒れたハーキュリーズ隊員たちの背中に札を貼った。

 

「それにしても、思った通りだね」

 

「ああ、そうだな」

 

「フィーさん?ガイウスさん?」

 

「やっぱり新Ⅶ組のリーダーはユウナだねってことだよ」

 

「ええええっ!?いや、そんな……リーダーなんて……。ていうかあたしたちのリーダーはキリコ君ですよ!?」

 

「リィンから聞いたがユウナ、サザーラント以降も何かと命令違反をしているとか?」

 

「大抵はユウナが発端って言ってた」

 

「そ、それはその……。ていうか、教官も何話してるのよ~!」

 

「でもそれだけみんなを引っ張っているってことだよね」

 

「それは……」

 

「ユウナ。リィンとていつも一人で我らを引っ張ってきたわけではない」

 

「時にはぶつかったり励まし合いながら信頼をかち取り、旧Ⅶ組のリーダーとして引っ張っていったのだ」

 

「クルトや他のメンバー、もちろんキリコもユウナを信頼しているんでしょ?」

 

「もちろんです」

 

「クルト君……」

 

「それにね、以前キリコが言っていたんだ。サザーラントの演習の後、僕はキリコにⅦ組のリーダーシップを取ってくれないかと打診したんだ。でもキリコは断ったんだ。リーダーシップはユウナが取るべきだって。ブレるようならいくらでもフォローしてやれば良いって言っていたよ」

 

「キリコ君が……」

 

「今思うと、ユウナの行動力とキリコたちのフォローがあったからここまで来れたと思うよ」

 

「フフ……」

 

「ガイウス?」

 

「俺たちもそうだったな……」

 

「そうだね」

 

「うむ」

 

キシャァァァッ!!

 

突如、魔獣の叫びが響く。

 

「そろそろ行こっか」

 

「そうですね!行きましょう、皆さん!」

 

『おおっ!』

 

ユウナの号令の元、Bチームは先を急いだ。

 

 

 

[Cチーム]

 

Cチームもまた、ハーキュリーズ隊員たちとの戦闘に手こずっていた。

 

「チッ!」

 

「キリがありません」

 

「面倒だね。ここはボクが……!」

 

しびれを切らしたミリアムが前に出る。

 

 

 

「ガーちゃん、分身!チェ~ンジ!ト~ス!テラ・ブレイカー!!」

 

 

 

ミリアムのSクラフトにより、ハーキュリーズ隊員たちは吹き飛ばされる。

 

「どんなもんだいっ!」

 

「まったく……」

 

「もう少し大人しくしておけ」

 

「とりあえず、貼っておくわね」

 

マキアスたちは見慣れた光景ゆえに取り乱すことはなかった。

 

「マジかよ……」

 

「もはや当たり前のようになってますね」

 

アッシュとアルティナは呆れるしかできなかった。

 

「言いたいことはわからなくもない。僕たちも今の君たちと同じ心情だったからな」

 

「まあ、このチビウサもたまに似たようなことすっからよ。やっぱ似たモン同士なんだろうな」

 

「そりゃあ、姉妹だからね」

 

「極めて心外です」

 

「ははは……」

 

「まあ、いいや。にしてもよ、アンタは良くまとめられたよな」

 

「まとめられたっていうか、まとまっていったのよ。リィンを中心としてね」

 

「そうだったな」

 

「ボクは途中からだけどね。オジサンの指示で」

 

「オジサンって鉄血のオッサンか?」

 

「そうだよー」

 

「もう少し口を慎め」

 

ユーシスはミリアムを咎める。

 

「いさかいなどもありましたか?」

 

「そりゃあったわ。ユーシスとマキアス、フィーとラウラ。手に負えなかったわ~」

 

「アンタらがねぇ……」

 

「はは、かつての僕はアンチ貴族だったからね」

 

「前に遠くから見たことあるよ。確かオーロックス峡谷道からそれたとこでケンカしてたよね」

 

「そういえば当時、お前はオーロックス砦に不法侵入していたのだったな」

 

「そのおかげで僕はスパイ容疑でクロイツェン領邦軍詰所の牢屋に入れられたわけか……」

 

「どんだけ波乱万丈な生活送ってんだよ……」

 

「先月、教官が仰っていたのはそれでしたか」

 

「まあ、その話は後でしてあげるわ。そろそろ行くわよ」

 

「あいよ」

 

Cチームは最後の扉を潜り抜けた。

 

 

 

暗黒竜の寝所最奥。

 

それぞれのルートから各チームが合流した。

 

「みんな!無事か!」

 

「教官!」

 

「こっちも無事だぜ」

 

「一人も欠けずに合流できましたね」

 

「後は……」

 

キリコの言葉に、全員が目の前の巨大な門を見つめる。

 

「いよいよね。1年半前の煌魔城の時から私たちも成長してきたわ」

 

「心も身体も……何より僕自身の音楽も」

 

「ああ、一歩も引くつもりはない」

 

「因果な街だが、このヘイムダルは僕の生まれ育った故郷だ」

 

「Ⅶ組として、焔の護り手として、気まぐれな祖母を手伝うためにも」

 

「崩れつつあるノブレス=オブリージュ、今こそ果たさせてもらおう」

 

「民間人の安全優先は遊撃士の基本中の基本」

 

「帝国の隣人として、その他の全てを込めて戦おう」

 

「ボクも戦うよ!情報局じゃなく、Ⅶ組の一員として!」

 

旧Ⅶ組メンバーはそれぞれの思いを口にした。

 

「あたしたちも見過ごせません!Ⅶ組で得た物と特務支援課の魂、合わせて証明するためにも!」

 

「僕にとっても故郷の一つ。ヴァンダールの、僕自身の剣に賭けても!」

 

「わたしもⅦ組としての意義。今こそ見出だせそうな気がします」

 

「姫様や先輩のためにも……私自身の道を占うためにも(キリコさん、勇気をください……!)」

 

「そろそろアンタらとの差、埋めさせてもらおうじゃねぇか」

 

「……必ず倒す」

 

新Ⅶ組もまた、決意を露にした。

 

「君たち………」

 

「本当に成長したな」

 

リィンとサラは感慨深く、見つめる。

 

その直後、門の奥から地響きのような音が響いた。

 

「急いだ方が良さそうね」

 

「ええ。みんな、行こう!」

 

『おおっ!!』

 

新旧Ⅶ組は最後の門を越えた。

 




次回、ゾロ=アルクーガ戦です。
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