英雄伝説 異能の軌跡   作:ボルトメン

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暗黒竜②

門を越えた先に待っていた巨大な竜。

 

その存在にリィンたちの顔が強ばる。

 

「こ、これが……!」

 

「暗黒竜……ゾロ=アルクーガ!!」

 

「な、なんて大きさ……」

 

「大きいだけなら良いがな」

 

「みんな、集中なさい。目覚めるわよ!」

 

セリーヌの言葉に全員が覚悟を決める。

 

それと同時に暗黒竜──ゾロ=アルクーガが目を覚ました。

 

グオオオオオッ!!

 

ゾロ=アルクーガは咆哮と共に瘴気を撒き散らすが、さまざまな想いを背負うリィンたちは屈しなかった。

 

帝都の未来を賭けて、新旧Ⅶ組と暗黒竜との死闘が始まった。

 

 

 

「それで脅かしたつもりか?」

 

「お前とは背負っている重さが違うのだ」

 

「ガーちゃん、行くよ!」

 

「我らの剣、とくと知るがよい」

 

「アンタたち!行くわよ!」

 

マキアス、ユーシス、ミリアム、ラウラ、サラが第一陣に躍り出た。

 

「メイルブレイカー!」

 

「獅子連爪!」

 

「スレッジインパクト!」

 

マキアスとラウラとミリアムがそれぞれのクラフト技を放つ。

 

「グオオオオオッ!!」

 

ゾロ=アルクーガは尾を振り、反撃する。直撃は免れたが、爆風によりマキアスたちはダメージを受ける。

 

「待ってなさい!ホーリーブレス!」

 

サラ回復アーツを使った。

 

「くらえ、!セヴンス・キャリバー!」

 

ユーシスが空属性最上位アーツを放つ。弱点だったのか、ゾロ=アルクーガは大きなダメージを受けた。

 

「ソリッドカート!」

 

「ヴァリアントビーム!」

 

「イクシオン・ヴォルト!」

 

再び、マキアスとミリアムがクラフト技を叩き込み、サラが風属性の最上位アーツを放つ。

 

「詰めは私が!」

 

ラウラが大剣を握りしめ、前に出る。

 

 

 

「アルゼイドの真髄、その身に刻むが良い。ハアアアッ!奥義・洸凰剣!!」

 

 

 

ラウラの渾身のSクラフトを受けたゾロ=アルクーガは大きくのけぞる。

 

その直後、ゾロ=アルクーガは怒りと共に瘴気を吐き出す。サラたちは高濃度の瘴気に膝をつく。

 

「グッ……!」

 

「なんだ、これは……」

 

「気持ち悪い……」

 

「やむを得ないわ、さがるわよ!」

 

「任せる……!」

 

サラたちは第二陣と交代した。

 

 

 

「絶対に負けられない!」

 

「ここは僕の故郷だから……守ってみせる」

 

「魔導の技を持って、倒させていただきます!」

 

「ここで止める!」

 

「800年前の再現などさせるものか!」

 

アリサ、エリオット、エマ、フィー、ガイウスが第二陣に躍り出る。

 

「サイファーエッジ!」

 

「タービュランス!」

 

「ヴォーパルフレア!」

 

フィーとガイウスとエマはクラフト技を叩き込んだ。

 

「ゼルエル・カノン!」

 

「ダイヤモンド・ノヴァ!」

 

それに合わせてアリサとエリオットが火と水の最上位アーツを放つ。

 

「グルアァァァッ!!」

 

ゾロ=アルクーガ体勢を変え、力を溜め始めた。

 

「何か来るよ!」

 

「先手を打たせてもらいます!」

 

エマは魔導杖を掲げた。

 

 

 

「我が求める星、今こそ顕現せよ。且は堅牢、我らを護る唯一の盾。且は流麗、混沌を照らす無二の鏡!照らせ、パレス・オブ・エレギオン!!」

 

 

 

エマのSクラフトにより、アリサたちの身体は護りの光に包まれる。

 

その瞬間、ゾロ=アルクーガの口から闇の焔が吐き出された。だが闇の焔は護りの光に阻まれる。

 

「さすがはエマだ」

 

「向こうは隙だらけね!メルトストーム!」

 

「ノクターンベル!」

 

隙ができたゾロ=アルクーガにアリサとエリオットがクラフト技をくり出す。

 

「フォローするね。クロノブレイク」

 

フィーはガイウスたちに補助アーツをかける。

 

「すまん。雷咬牙!」

 

支援を受けたガイウスがクラフト技をくり出した。

 

「締めるわ!ジブリール・アロー!!」

 

アリサのSクラフトにより、ゾロ=アルクーガはまたもやのけぞる。

 

怒り狂ったゾロ=アルクーガは所構わず暴れ狂い、その余波がガイウスたちを襲う。

 

「キャアッ!」

 

「思い通りに行かないからって……!」

 

「癇癪を爆発させたか……」

 

「後はリィンたちに任せよう……」

 

「頼んだよ、みんな!」

 

ガイウスたちは第三陣と交代した。

 

 

 

「後は俺らだけか」

 

「皆さんの想い、無駄にはできませんね」

 

「帝都を、この国を呑み込ませてたまるものか!」

 

「あたしたちの想い、分からせてやるんだから!」

 

「ここで終わらせる」

 

「わたしたちならば、乗り越えられます」

 

「行くぞ、みんな!!」

 

第一陣と第二陣の想いを受け取った第三陣のⅦ組特務科が躍り出た。

 

「ヴォイドブレイカー!」

 

「ブレイブスマッシュ!」

 

「緋空斬!」

 

アッシュ、ユウナ、リィンはクラフト技をくり出した。

 

「ロスト・ジェネシス!」

 

「ダイヤモンド・ノヴァ!」

 

続けざまにアルティナ、ミュゼが時属性と水属性の最上位アーツを放つ。

 

「グオオオオッ!!」

 

ゾロ=アルクーガは腕を振り下ろし、仕留めようとするが、キリコたちは何とかかわした。

 

「ソードダンス!レインスラッシュ!」

 

その隙を縫って、クルトは強化したクラフト技で斬りつける。

 

「クリアブラスト」

 

さらにキリコが新たに会得したクラフト技を叩き込む。

 

「アッシュ、続いて!」

 

「応よ!」

 

ダメ押しにユウナとアッシュのリンクアタックにより、ゾロ=アルクーガの体勢が崩れた。

 

「総員、攻撃開始!」

 

『おおっ!』

 

崩れたところにⅦ組特務科のバースト攻撃をくり出す。ゾロ=アルクーガは一斉攻撃に悲鳴をあげる。

 

だがその直後、ゾロ=アルクーガの体が光り出した。

 

「高揚か!」

 

「向こうも本気というわけですか……!」

 

「逆に言えば後がないということだろう」

 

「総員、死力を尽くせ!ここからが正念場だ!」

 

『イエス・サー!!』

 

Ⅶ組特務科もまた、気合いを入れた。

 

 

 

「ムーランルージュ!」

 

「起動、フラガ=ラッハ」

 

「ジェミニブラスト!」

 

「双剋刃!」

 

「螺旋撃!」

 

「デッドリーサイズ!」

 

高揚状態となったゾロ=アルクーガの猛攻を受けながらも、Ⅶ組特務科は諦めることなく、抵抗を続ける。

 

「アーマーブレイク」

 

キリコもまた、迷うことなく引き金を引く。

 

 この死地を乗り越え、平穏を手にするために。

 

 望みを叶えるために。

 

 

 

暗黒竜ゾロ=アルクーガには理解できなかった。

 

取るに足らないはずの人間が自身を追い込んでいるこの状況が。

 

自らの糧か玩具でしかない下等生物が放つ感情が。

 

そして一際異彩を放ち、自らを討ち滅ぼそうとする異能者の存在を。

 

生まれながらの捕食者にならんとした暗黒竜最大の過ち。

 

それは明日を掴もうと懸命に抗うⅦ組を、そして異能生存体を敵に回したことなのかもしれない。

 

 

 

「後……少し……!」

 

「決めるぞ!」

 

Ⅶ組特務科は最後の力を振り絞り、得物を構える。

 

「エクセルブレイカー!!」

 

「ラグナストライク!!」

 

「アルカディス・ギア!!」

 

「ベリアルレイド!!」

 

「ブリリアントショット!!」

 

「フレア・デスペラード」

 

「七ノ太刀・刻葉!!」

 

Ⅶ組特務科、それぞれの想いを乗せたSクラフトの連続攻撃がゾロ=アルクーガに炸裂した。

 

ゾロ=アルクーガは断末魔の咆哮と共に調伏した。

 

 

 

「………あ…………」

 

「や……やった………」

 

「倒せました……!」

 

「おっしゃぁぁぁっ!」

 

Ⅶ組特務科は歓声を上げる。

 

「やったね!」

 

「これで帝都の危機は乗り越え……」

 

「……まだですっ!」

 

「教官!」

 

「ッ!みんな下がれ!」

 

エマとキリコとリィンの声に反応し、Ⅶ組特務科は急いで下がる。

 

 

 

「グオオオオオオォォォォン!!!」

 

 

 

ゾロ=アルクーガは咆哮を上げる。

 

すると、ゾロ=アルクーガを中心に瘴気が集まり始めた。

 

そして瘴気は渦となり、ゾロ=アルクーガを覆った。

 

「な……!?」

 

「まさか、撒き散らした全ての瘴気を集めて……!」

 

「生まれ変わるとでも!?」

 

「見て!」

 

「瘴気が晴れる……」

 

瘴気の渦が霧散し、その中心には先ほどよりも禍々しくなったゾロ=アルクーガが鎮座していた。

 

「なんだあれは……」

 

「怒り……いや、憎悪か……」

 

「なんて禍々しいの……」

 

「真なる……暗黒竜……?」

 

エマは魔導杖を握りしめながら、口を開いた。

 

「………いや」

 

リィンは冷静に真ゾロ=アルクーガを見つめた。

 

「勝機はまだある」

 

キリコもまた、冷静さを失わなかった。

 

「教官!?キリコ君!?」

 

「一体何を……!?」

 

「良く見ろ。体のあちこちを」

 

「あれは……」

 

キリコの指摘通り、Ⅶ組全員が真ゾロ=アルクーガを見た。

 

 その体は少しずつであるが熔けており、崩壊しつつあった。

 

「熔けている……?」

 

「おそらく、無理に真化しようとして、体がついて行かないのでしょう」

 

「あの様子だと、それほどかからずに崩壊するだろう」

 

「それでも私たちを滅ぼそうと、憎しみの一念だけで動いているのかと」

 

「あんな姿になってまで、僕たちが憎いのか……」

 

「往生際が悪いったらありゃしねぇな!」

 

「こうなったら第二ラウンドだね!」

 

「だが、どうする?あの体液に触れれば命の保証は効かないだろう」

 

「リィン!話している時間はないぞ!」

 

ユーシスの声に全員が得物を構える。すると──

 

ガギギギギギィン!!

 

突如、上から巨大な五つの剣が降ってきた。

 

五つの剣は真ゾロ=アルクーガの周りに突き刺さり魔法陣を形成、描かれた魔法陣は真ゾロ=アルクーガを拘束した。

 

「これは……」

 

「リィン・シュバルツァー!」

 

「!」

 

リィンが上を向くと、ローゼリアが浮かんでいた。

 

「ローゼリアさん!」

 

「おばあちゃん!」

 

「この結界はそう長くは持たん。リィンよ、ヴァリマールを呼ぶんじゃ!」

 

「わかりました!」

 

リィンは拳を突き上げた。

 

 

 

「来い!灰の騎神、ヴァリマール!」

 

「応!」

 

 

 

リィンの呼びかけに応じたヴァリマールは転移してきた。

 

さらにローゼリアはドラッケンⅡ、シュピーゲルS、ヘクトル弐型、ケストレルβ、フルメタルドッグを転移させる。

 

【みんな、乗ってくれ!】

 

『はい!』

 

キリコたちはそれぞれの機甲兵に乗り込んだ。

 

すると、新旧Ⅶ組のARCUSⅡが輝き出す。

 

【ARCUSⅡが……】

 

【皆さんの想いが伝わってくる……】

 

「そうだよ!」

 

「我らは同じⅦ組なのだ!」

 

「みんな、受け取って!」

 

Ⅶ組全員の輝きは増した。

 

【こうなりゃ、ブチかますだけだな!】

 

【これで最後だ】

 

【みんな、行くぞ!!】

 

『おおっ!!』

 

 

 

結界から解き放たれた真ゾロ=アルクーガは機甲兵たちに襲いかかる。

 

シュピーゲルSは攻撃をかわすが、飛び散った体液を浴びた部分は腐食した。

 

【まともに食らえば命はないな】

 

【800年前にヘクトル帝が命を落としたのもおそらくはこれだろうな】

 

【問題ない】

 

【キリコ……】

 

【スピードは完全に落ちている。周囲を旋回してヒットアンドアウェイで削る。ミュゼは後ろから援護を頼む】

 

【わ、わかりました!】

 

【教官、ユウナ、クルト、アッシュはその隙を突いて攻撃を頼む】

 

【大丈夫なの?】

 

【ああ。さっさとあのトカゲを倒す】

 

【ハッ!言うじゃねぇか!】

 

【わかった。だがキリコ、君一人では手に余るだろう。俺も加わろう。いいな?】

 

【はい】

 

【決まりましたね】

 

【ああ。だが一つ全員に言っておく。絶対に死ぬなよ!】

 

『了解!』

 

作戦を決めたリィンたちは真ゾロ=アルクーガに挑んだ。

 

 

 

【……………】

 

【閃光斬!】

 

フルメタルドッグの銃撃とヴァリマールの斬撃により、真ゾロ=アルクーガの溶解が進む。

 

【オワゾーブルー!】

 

その間を縫って、ケストレルβの狙撃が真ゾロ=アルクーガの頭部に命中した。

 

【クロスブレイク!】

 

【レインスラッシュ!】

 

【ランブルスマッシュ!】

 

その直後にドラッケンⅡ、シュピーゲルS、ヘクトル弐型のクラフト技が叩き込まれる。

 

「ロードフレア!」

 

「アクアマター!」

 

「ゴルトアロー!」

 

「ジオクエイク!」

 

「ゲイルレイド!」

 

「シャドウライズ!」

 

さらにアルティナや旧Ⅶ組による、EXアーツの援護が入り、真ゾロ=アルクーガの生命力は確実に削られていった。

 

だが、瀕死の魔獣は時に予測もつかない行動を行う。

 

真ゾロ=アルクーガは体を激しく振り、四方八方に体液を飛ばす。

 

その内の一塊がケストレルβの脚にかかる。脚が腐食したケストレルβは行動不能になり、転倒した。

 

【し、しまっ!?】

 

【ミュゼ!】

 

【くっ!】

 

【……アサルトコンバット、起動】

 

キリコはミッションディスクをセットした。

 

フルメタルドッグはケストレルβに狙いを定めた真ゾロ=アルクーガの頭部めがけて全武装による集中砲火を浴びせる。

 

横からの攻撃をまともに食らった真ゾロ=アルクーガは大きくのけぞった。

 

【……………】

 

フルメタルドッグはターンピックを床に射し込み、拳闘のように構える。

 

その瞬間、怒りを滾らせた真ゾロ=アルクーガが襲いかかり、フルメタルドッグのコックピットを噛み砕いた。

 

その直後、フルメタルドッグは両腕で真ゾロ=アルクーガの首を掴む。

 

【なっ!?】

 

【まさか……】

 

「……やはりそう来たか」

 

フルメタルドッグの背後には、寸前で脱出したキリコがアーマーマグナムを両手で構えていた。

 

キリコは右肩のミサイルポッドに狙いを定め、引き金を引いた。

 

放たれた弾丸は正確にミサイルポッドに命中し、誘爆を引き起こした。

 

予期せぬ攻撃に真ゾロ=アルクーガは悲鳴を上げる。

 

「なっ!?」

 

「自らを囮に、勝機を作り出した……!」

 

「教官!」

 

【ああ!】

 

ヴァリマールは太刀を構える。

 

【無想覇斬!!】

 

ヴァリマールの必殺の一太刀が真ゾロ=アルクーガに致命傷を与えた。

 

【チャンスだ!ここで終わらせるぞ!】

 

『おおっ!!』

 

 

 

【連ノ太刀・箒星!!】

 

 

 

帝都の未来を救わんという想いを乗せ、ドラッケンⅡ、シュピーゲルS、ヘクトル弐型。そしてヴァリマールの放った連携技は、真ゾロ=アルクーガの生命を断ち切った。

 

消滅する寸前、真ゾロ=アルクーガは地獄への道連れとばかりに、キリコめがけて自らの血を撒き散らした。

 

【マズイ!】

 

「キリコさん!」

 

ケストレルβを降りていたミュゼが真っ先にキリコに駆け寄った。

 

「……大丈夫だ………」

 

「こ、これは……」

 

真ゾロ=アルクーガの血はキリコには一滴も当たらず、周りだけを腐食していた。

 

【キリコ君……当たってないよ!】

 

【なんて偶然だ……】

 

【ヘッ、あいつが簡単にくたばるタマかよ!】

 

「だとしても、だとしても……。ああもう!心配をかけないでくださいって言ったじゃないですか!」

 

ミュゼはキリコに掴みかかる。

 

「……キリコさんに……もしものことがあったら……うぅ……」

 

「……すまない」

 

キリコは涙目のミュゼに詫びた。

 

【ミュゼ……】

 

「えへへ…… 」

 

「とにかく、無事で良かったわ……」

 

「ええ。それに──」

 

エマが言い終わるや否や、リィンたちの周りの空間が歪んでいく。

 

【なんだ!?】

 

「心配するでない。幽世が収束しているだけじゃ」

 

その直後、目の前の景色は完全に元に戻った。

 

 

 

気がついたリィンたちは元に戻った地下道に立っていた。

 

「完全に元通りだな」

 

「プレロマ草も全て無くなっていますね」

 

「きょ、教官!」

 

ユウナの声にリィンが振り向く。

 

「どうした?」

 

「ヴァ、ヴァリマールが動かないんですけど……!」

 

「何?………そうか、久しぶりに霊力(マナ)を使い過ぎたんだな」

 

「へ?」

 

「騎神の動力源みたいなものですね」

 

「やれやれ、どれ、妾が」

 

ローゼリアは杖を取り出し、動かないヴァリマールに触れる。その瞬間、ヴァリマールは消えた。

 

「おばあちゃん!?」

 

「心配するな。元の場所へ送っただけじゃ。一日もすれば回復するじゃろう。さて、こっちは」

 

ローゼリアはキリコに近づく。

 

「………………」

 

「ふむ。外傷は無し。お主、よほど悪運に恵まれておるの」

 

「じゃあ、キリコさんは……」

 

「問題無しじゃ」

 

ローゼリアはキリコに背を向けた。

 

(……偶然……かの……?)

 

 

 

「フッ、暗黒竜を滅したか」

 

 

 

『!?』

 

聞き覚えのある声に、新旧Ⅶ組は驚愕した。

 

「こ、この声は……」

 

「まさか……」

 

「……っ!あそこだ!」

 

ガイウスは上段の階段を指差した。

 

そこには、仮面を被り青黒いコートを羽織った男が立っていた。

 

「あ、あいつは!」

 

「クロスベルの星見の塔にいた……」

 

「地精の代理人……」

 

「蒼のジークフリード!」

 

リィンは蒼のジークフリードを睨み付ける。

 

「久しぶりだな、トールズⅦ組。初対面の者もいるようだが」

 

「こ、この声……」

 

「それにあの髪の色と形……」

 

「やっぱり、クロウなのか……」

 

旧Ⅶ組は蒼のジークフリードの背格好に戸惑いを覚える。

 

「ほう?そなたが地精の……」

 

「お初にお目にかかる、緋の魔女殿。私は地精の代理人、蒼のジークフリード」

 

「いかにも、ローゼリア・ミルスティンじゃ。しかし、"蒼"とはのう」

 

「フフ、それ以上は勘弁願いたい」

 

「まあ良い。それにお主が用があるのは向こうであろう?」

 

「フッ」

 

蒼のジークフリードは上段から飛び降り、リィンたちの目の前に着地した。

 

「……………」

 

「まずはおめでとうと言っておこう。まさかあの暗黒竜を滅するとはな」

 

「地精にとっても都合の悪い存在だったみたいだな」

 

「ああ。正直手をこまねいていたが、手間が省けた」

 

「そんで?てめえは漁夫の利を狙ってたってか?」

 

アッシュはヴァリアブルアクスを向ける。

 

「そのつもりではあったが……今回は退いてやろう」

 

「何?」

 

リィンは蒼のジークフリードの言葉に戸惑う。

 

「あの暗黒竜がいなくなったおかげで我々としても動きやすくなったからな。君たちには感謝している」

 

「ふざ……けんなっ!」

 

激昂したアッシュはヴァリアブルアクスの刃を蒼のジークフリードめがけて飛ばした。

 

「フッ……!」

 

蒼のジークフリードは取り出した二丁拳銃で刃を撃ち落とした。

 

「なっ!?」

 

「あの武装は!」

 

「クロウが使っていた……!」

 

リィンを含めた旧Ⅶ組は驚愕した。

 

「悪くはないが、もう少し精進することだな。ん?」

 

「リィン!」

 

「リィン君!」

 

「リィンさん!」

 

後ろの通路からランディ、トワ、セドリックが駆けつけて来た。

 

「ランディさん、トワ先輩!」

 

「セドリック殿下!?」

 

「ほう?皇太子も来たとはな」

 

「あ、あいつは!」

 

「ク、クロウ君!?」

 

「そ、そんな……貴方は……!」

 

トワとセドリックは蒼のジークフリードを見て、動揺した。

 

「そろそろお暇させてもらう。だが覚悟しておくといい」

 

「覚悟?」

 

「今回の一件は真の絶望に非ず。終末のお伽噺はこれからだ」

 

「何だと!?」

 

「何を言っている?」

 

「いずれ解る。その時にまた会おう」

 

蒼のジークフリードの足元に転移の魔法陣が顕れる。

 

「ま、待てっ!」

 

「さらばだ」

 

蒼のジークフリードは姿を消した。

 

「……………………」

 

「リィン……」

 

「教官……」

 

「………大丈夫だ。それより、ランディさんにトワ先輩はともかく、セドリック殿下も来られるとは」

 

「う、うん……」

 

「……………」

 

「殿下……」

 

「……ランディさん、そちらは終わりましたか?」

 

「あ、ああ。共和国の工作員は全員拘束したぜ。後はそっちで寝転がってるので最後だな」

 

「そうでしたか」

 

「その……リィン……」

 

「大丈夫ですよ。とにかく、今はここを出ましょう。それに、暗黒竜についても報告があるので」

 

「暗黒竜……!?」

 

「900年前に帝都を蹂躙したというあの暗黒竜ですか!?」

 

「はい。それについても報告がありますので、まずは地上に戻りましょう」

 

 

 

その後、リィンたち新旧Ⅶ組は地上に戻り、レーグニッツ帝都知事、レクター少佐とクレア少佐、さらに待機していた第四機甲師団長のクレイグ将軍を交えて報告した。

 

レーグニッツ帝都知事たちはリィンたちからの報告に驚いたが、1年半前の功績などからリィンたちを労い、褒め称えた。

 

また、クレイグ将軍も第四機甲師団の出動を未然に防いでくれたことでリィンたちの働きに感謝すると共に、愛息エリオットの活躍にむせび泣いた。

 

セドリックはキリコたちを労い、Ⅶ組特務科全員と固い握手を交わした。

 

またキリコはフルメタルドッグが使い物にならなくなり、約束は果たせそうにないことを告げたが、セドリックは「そんなことはいい」と笑い、いつの日か再戦することを約束した。

 

全ての報告を終え、旧Ⅶ組はホテルや遊撃士支部へと向かい、新Ⅶ組はレーグニッツ帝都知事の計らいで帝都駅に迎えに来たデアフリンガー号に乗り込み、そのまま気絶するように眠りについた。




クリアブラスト

CP90

範囲攻撃

服に仕込んでいるサブマシンガンによる銃撃。



次回、夏至祭を描きます。
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