英雄伝説 異能の軌跡   作:ボルトメン

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今回は長めです。


トールズ第Ⅱ分校②

[キリコ side]

 

傾いた床を滑り降りると、そこにはユウナとクルトがいた。

 

ユウナがクルトに覆い被さるようにして。

 

シュバルツァー教官を見ると頬を掻いている。

 

まるで見に覚えがあるかのようだ。

 

(こいつ、まさか……)

 

「弾力性のある床……打撲の心配はなさそうです」

 

「ですが、教官のような不埒な状況になってます」

 

……………今からでも変えられないだろうか。

 

その直後、顔を真っ赤にし怒りに震えるユウナにクルトは申し訳なさそうになりながら……

 

「……事故というのはこの際、関係なさそうだ。弁解はしない。一発、張り飛ばしてくれ。」

 

「ふ、ふふ……殊勝な心がけじゃない…… そんな風に言われるのもそれはそれで腹が立つけど……

 

遠慮なく行かせてもらうわっ!」

 

敢えて平手打ちをくらった。

 

一悶着あった後、シュバルツァー教官は小要塞の攻略の開始を宣言した。

 

そしてそれぞれの武装のチェックを指示した。

 

「って、こんな茶番に本気で付き合うんですか!?」

 

「博士のことは知ってるが茶番を仕掛ける性格じゃない。本気で俺たちを試してるんだろう。無事にここを突破するためにも全員のスタイルを知っておきたい」

 

確かに先ほどのやり取りから茶番とは思えない。

 

やり方はともかく、あくまでも俺たちの実力を測りたいのだろう。

 

「分かりました。 自分はこれです。」

 

クルトが取り出したのは一対の双剣だった。それを軽く振り回して構える。

 

シュバルツァー教官曰く、これはヴァンダール流の双剣術だという。

 

その直後、クルトは剛剣術の方が有名だと言うが俺には分からない。

 

次にユウナが武装を取り出した。

 

一見トンファーのようだが、ユウナによるとこれはガンブレイカーという銃機構の付いた特殊警棒だという。

 

近距離の打撃と中距離の射撃を使い分けられる新武装らしく、アルティナも知らないらしい。

 

後、なぜかクルトの双剣を古いものと決めつけ張り合っていた。

 

次にアルティナが先ほどの人形を顕現させた。

 

彼女によると、この人形はクラウ=ソラスという名で《戦術殻》という兵装だという。

 

初見の二人は唖然としていたが、俺も何度見ても慣れない。

 

アストラギウスでさえ、完全自律型兵器などなかったからな。

 

「最後はキリコ、君だな。」

 

俺は黙って左脇のホルスターから得物を出した。

 

その瞬間、ユウナとクルトがぎょっとした表情になり、アルティナとシュバルツァー教官が驚きの声を上げた。

 

「な、何よこれ……!?」

 

「導力仕掛けの銃…?それにしては大きすぎるような……」

 

「これは確か……アーマーマグナムだったか?」

 

「はい、情報局のデータベースにありました。装甲車両にすら穴をあけるほどの高威力ですが、重く扱いづらいため使う人はほとんどいません。武装選択ミスかと」

 

「いや、これが一番しっくりくる。後このナイフもだ」

 

そう言って俺は腰の護身用のナイフを抜く。

 

「わかった。頼りにさせてもらう。 ああ、ちなみに俺の武装はこれだ」

 

シュバルツァー教官は片刃の剣を抜いた。

 

「《八葉一刀流》の太刀……」

 

「アリオスさんが使っていたのと同じ武器ね」

 

「ああ、帝国風の剣じゃなく、東方風の刀になる」

 

なるほど、あれが所謂刀というやつか……

 

それぞれの武装を確認して攻略が始まった。

 

[キリコ side out]

 

 

 

LV0の扉を開けると早速、ネズミとうさぎを混ぜたような魔獣が三体いた。

 

全員に止まるよう指示したリィンは現時点での戦力は見るべく、攻撃を仕掛ける。

 

まずクルトが双剣で斬りかかり、アルティナがクラウ=ソラスで殴り付けて撃破。

 

その後ユウナの打撃とリィンの斬擊が二体目を倒す。

 

そしてキリコのアーマーマグナムの一撃が最後の一体を壁際まで吹き飛ばした。

 

「敵性魔獣、撃破しました」

 

「ふう、初戦としてはまずまずだな。みんな、怪我はないな?」

 

「……ええ、問題ありません」

 

「って、あたしたちはともかく……」

 

「えっと……アルティナにキリコ、だったわね。その、大丈夫……みたいね?」

 

「? 何がでしょうか?」

 

「……………」

 

「っと、ほんとに滅茶苦茶ね」

 

「キリコはともかく、彼女自身かなりの場数を踏んでいるみたいですね?」

 

「ああ、否定しない。だがまあ、それでも君たちより年下の女の子なのは確かだ。三人とも実戦は問題なさそうだし、上手くフォローしてやってくれ。ただ、キリコ。君は少々独断が目立つ。もう少し周りを見るようにな?」

 

「善処します」

 

(本当に分かってるのかな……)

 

リィンは一抹の不安を覚えながらも、小要塞の攻略を再開した。

 

その後、一行はさまざまなタイプの魔獣とエンカウントした。

 

物理攻撃が通りにくいタイプにはアーツ、集団にはユウナのガンナーモードを軸にクラフトの範囲攻撃、大きい敵にはARCUSⅡの機能《戦術リンク》で協力しながら制圧していった。

 

ちなみに、戦術リンクはリィンとキリコ、クルトとアルティナが組んだ。その間ユウナは援護射撃に徹した。

 

初めは全員が繋がったような感覚に戸惑ったが、何回か戦闘を重ねるうちにすぐに慣れた。

 

だが、キリコはクルトの態度が気になっていた。まるで失望しているかの態度にキリコは思わず聞いてみた。

 

「失望してるのか?」

 

「え……!?……ああ、そうかもしれない。これがあの灰色の騎士かとね」

 

「今は態度に出すな。ここを突破するまではな」

 

「キリコ……ああ、そうだな」

 

「お二人とも、何してるんですか?」

 

「男子二人でこそこそと……ホント帝国人っていかがわしいわね」

 

「……………」

 

「いや……なんでもないから…」

 

「ハハハ……さあ、残り半分だ。行くぞ」

 

「探索を続行します」

 

(それにしても改めて思う。サラ教官って凄かったんだな。)

 

リィンは率いる難しさを肌で実感した。

 

 

 

探索を進めていると、一行の前にこれまでで一番大きく、毒々しい体表の魔獣と遭遇した。

 

体力の高さに手こずったものの、アーツと戦術リンクを組み合わせて倒した……かに見えた。

 

「下がれ!」

 

「「!?」」

 

二人はキリコの声に反応した。

 

大型魔獣はまだ生きていた。

 

キリコが銃で牽制し、アルティナがクラウ=ソラスのバリアを展開し二人をガードする。

 

そしてリィンが、構えた。

 

 

 

「明鏡止水、我が太刀は静。見えた!うおぉぉっ!斬!七の太刀 落葉!」

 

 

 

リィンのSクラフトにより大型魔獣は無数に切り刻まれ、消滅した。

 

「全員無事か?キリコ、アルティナ、よく咄嗟に動いてくれたな。ユウナとクルトは敵の目の前で武装を解いたのはまずかったな?敵の沈黙が完全に確認できるまで気を抜かない 実戦における基本中の基本だ。」

 

「っ………はい」

 

「……すみません。完全に油断していました」

 

「いや……偉そうには言ったが今のはどちらかといえば指導者である俺のミスだな。やっぱりまだまだ未熟ということだな」

 

リィンはさらに続ける。

 

「だが、それでも今は"俺"が君たちの教官だ。この実戦テストで、君たちと同じく試される立場にある、な」

 

「だから君たちにも見てもらう、君たち自身の目で、俺を見極めてくれ。本当に俺が《Ⅶ組》の教官にふさわしいのかどうかを」

 

リィンの言葉にユウナとクルトとアルティナは答えに詰まった。一方キリコは、答えを出しつつあった。

 

(人間的には些か不安だが先ほどの戦闘力は本物だった。こいつらとともにⅦ組に残るか、それとも……)

 

『何を立ち止まっている。時間を無駄にするんじゃない。とっととテストを再開するがいい』

 

シュミット博士に水を差され、一行は攻略を再開し最奥に向かった。

 

この時、リィンとアルティナとキリコは気づいていなかったが、ユウナとクルトは和解しつつあった。

 

 

 

残りの魔獣を殲滅し、宝箱を回収しつつ、一行は遂にクリア地点にたどり着いた。

 

指定の場所は今までで一番広い造りになっていた。

 

ユウナはやっと外へ出られることに安堵しつつ、帝国批判をし、クルトはあれが本当に有名なシュミット博士なのかリィンに聞いていた。

 

その一方でキリコは何かの気配を感じ、アーマーマグナムの弾を装填した。

 

「これは……」

 

「センサーに警告。霊子反応を検出しました」

 

「へ……」

 

「霊子反応……?」

 

(何かくる……!)

 

一行がいぶかしんでいると、ティータからその場から逃げるよう指示がとんだ。

 

その直後、目の前の空間が歪み、巨人のようなものが顕れた。

 

「ッ!?」

 

「これって……帝国軍の機甲兵!?」

 

「違う」

 

「《魔煌兵》 暗黒時代の魔導ゴーレムだ!」

 

「シュミット博士!まさか、これも貴方が!?」

 

『あぁ、内戦時に出現していた旧時代マシナリィを捕獲しておいた。機甲兵よりも出力は劣るが自律行動できるのは悪くない。それの撃破をもって今回のテストは終了とする』

 

「くっ、本気か……!?」

 

「ちょっとマッド博士!いい加減にしなさいよね!?」

 

(このメンバーじゃ分が悪いな。こうなったら──)

 

「来い、《灰の騎神》────」

 

『騎神の使用は厳禁とする』

 

リィンが相棒を呼ぼうとすると、すかさずシュミット博士が止める。

 

『LV0の難易度は騎神の介入を想定していない。その程度の相手に使っては正確なテストにならぬだろう』

 

『シュバルツァー、せいぜいお前が"奥の手"を使うか──』

 

(奥の手……?)

 

(こいつ、何を隠している?)

 

『──まだ使っていないARCUSⅡの新機能を引き出して見せるがいい』

 

『《ブレイブオーダー》モードを起動してください!リィン教官ならきっと使いこなせるってオリビエさん──オリヴァルト殿下が言っていました!』

 

「そうか──了解だ!」

 

リィンは先日、恩人の言葉を思いだし、ARCUSⅡを取り出した。すると、キリコたちは蒼い光に包まれた。

 

「これは……」

 

「何かがあの人から伝わってくる……!?」

 

「戦術リンク──いえ、それとは別の……」

 

「これが新機能とやらか……」

 

「Ⅶ組 特務科総員、戦闘準備!!」

 

リィンの号令に戸惑いを捨て、キリコたちは目の前の敵を見据える。

 

「ブレイブオーダー起動──トールズ第二分校、特務科Ⅶ組、全力で目標を撃破する!」

 

「「「おおっ!!」」」

 

「了解……!」

 

 

 

[キリコ side]

 

「構えろ!防御陣 《鉄心》」

 

シュバルツァー教官の号令と共に体が硬くなったようだ。

 

これがブレイブオーダーとやらなのだろう。

 

最適なタイミングで最適な効果をもたらす、まさに戦場の革命といえるだろう。

 

なら後は、同じだ。目の前の敵を倒す。

 

「レインスラッシュ!」

 

「クロスブレイク!」

 

「ブリューナク起動──照射」

 

シュバルツァー教官のオーダーにユウナたちがそれぞれのクラフト技を叩き込む。

 

俺もそれに続けてクラフト技《アーマーブレイク》を放つ。

 

相手の防御を崩すまでには至らなかったが教官の斬擊が魔煌兵をぐらつかせる。

 

「グオオオォ………!」

 

すると奴から金色のオーラが噴出し、先ほどとは桁違いに性能が上がった。

 

「パ、パワーアップした!?」

 

「クッ……!?」

 

「なるほど、いわゆる《高揚》ですか……」

 

「って、知ってるの!?」

 

「こういった魔導ゴーレムは追いつめると全性能を解放する。最後まで油断するな!」

 

「ああもう!帝国人の考えることがわかんない!」

 

「だから一括りにしないでくれ!」

 

「問題ない……」

 

「え?」

 

「キリコ君!?」

 

「戦い方は人間相手と変わらない。それに、こいつは先ほどよりもふらついている。後少しで撃破できるはずだ」

 

「キリコ……」

 

「そうだな──ブレイブオーダー起動。行くぞ!突撃陣 《烈火》」

 

先ほどの鉄心と違い、今度は体が軽くなった。こちらはアタッカー仕様なのだろう。

 

試しに撃ってみると、ダメージが上がっている。これなら……。

 

[キリコ side out]

 

 

 

リィンのオーダーで士気を上げたⅦ組は魔煌兵に立ち向かった。

 

強力な攻撃に膝をつきそうになるが、キリコの言葉に動かされ、誰一人諦めることなく、遂に魔煌兵を撃破した。

 

「はあはあ………た、倒せた……」

 

「…………っ………はあはあ………」

 

「………体力低下。小休止します」

 

「……………」

 

「みんなお疲れ。もっとも、キリコは平気そうだな。」

 

「ど、どうなってんのよ……」

 

「………化け物か……」

 

「本当に人間ですか?」

 

(アルティナが言っていいんだろうか……)

 

リィンがそう考えていると、天井からティータとシュミット博士の声が響いてきた。

 

『お、お疲れ様でした!これでテストは全て終了です!──博士、いくらなんでも無茶苦茶ですよ~!』

 

『フン、想定よりも早いか。次は難易度を上げるとして……』

 

『博士、今私の話聞いてました!?』

 

『だが、キュービィーがいるとなると……』

 

『あううっ…。聞いてくださいよ~っ!?』

 

聞こえてくる内容に全員が閉口する。

 

「……無茶苦茶すぎだろう」

 

「次って、また同じことをやらせようってわけ…?」

 

「可能性は高そうですね」

 

(いや、確定だろう)

 

「──いずれにせよ、"実力テスト"は終了だ。四人とも、よく頑張った」

 

リィンはそう言ってキリコ以外に手をさしのべた。

 

「ARCUSⅡの新モード、ブレイブオーダーも成功──上出来といっていいだろう」

 

「それぞれ課題はあるだろうが一つ一つクリアしていけばいい。」

 

「Ⅶ組 特務科───人数の少なさといい、今回のテストといい、不審に思うのも当然かもしれない。」

 

「士官学院を卒業したばかりでロクに概要を知らない俺が教官を務めるのも不安だろう」

 

リィンは今はそれぞれの道を歩んでいる仲間たちを思い浮かべながら続ける、

 

「先ほど言ったように、希望があれば他のクラスへの転科を掛け合うことも約束する。だから──最後は君たち自身に決めて欲しい」

 

「自分の考え、やりたい事、なりたい将来、今考えられる限りの"自分自身"の全てと向き合った上で──

 

 

今回のテストという手応えを通じてⅦ組に所属するかどうかを」

 

「多分それが、Ⅶ組に所属する最大の決め手となるだろうから」

 

かつての自身と重ね合わせるように。

 

 

 

「──ユウナ・クロフォード。Ⅶ組 特務科に参加します」

 

一番初めにユウナが参加を表明した。

 

「勘違いしないでください。入りたいからじゃありません。あたしはクロスベルから不本意な経緯でこの学校に来ました。帝国のことは、あまり好きじゃないし、貴方のことも良く思っていません」

 

「みたいだな」

 

「……だけど、今回のテストで貴方の指示やアドバイスは適切でした。さっきの化け物だって、貴方がいなければ撃破できなかったでしょう。はっきり言って悔しいですし、警察学校で学んだことを活かせなかったのも事実です」

 

「──だから結果を出すまでは、実力を示せるまではⅦ組にいます。《灰色の騎士》──いけすかない英雄である貴方を見返せるくらいになるまでは」

 

(……滅茶苦茶だろう……)

 

(……倫理的整合性はありそうですが。)

 

(……やはり怨んでいる訳ではなさそうだな)

 

「ふう……その英雄というのは正直やめて貰いたいんだが。わかった、君の意思を尊重する。Ⅶ組へようこそ──ユウナ」

 

「クルト・ヴァンダール。自分も参加します。ただし──積極的な理由はありません。この第Ⅱ分校が、自分のクラスをここに定めたのなら異存はありません。強いて言うなら、今回のように実戦の機会が多いのは助かります。受け継いだ剣を錆び付かせてしまったら家族への面目も立ちませんから」

 

「受け継いだ剣……」

 

「ヴァンダール流ですか」

 

「それと、折角なので《八葉》の一端には触れさせてもらおうかと。───正直、聞いていたほどではなかったというのが本音ですが」

 

(って、生意気すぎでしょ……!?)

 

(人のことは全く言えないと思いますが)

 

(……………)

 

「はは……君たちと同じくいまだ修行中の身というだけさ。───了解した、クルト。Ⅶ組への参加を歓迎する」

 

クルトが参加表明を終えた後、キリコが一歩踏み出した。

 

「キリコ・キュービィー。Ⅶ組への参加を希望します」

 

「ええっ!?」

 

「っ、意外だな。てっきり不参加だと思ったが」

 

「俺にはやりたい事がある。それを達成するためにはここが最短だと判断した。それだけだ」

 

(え、偉そうに………!)

 

(だから人のことは全く言えないと)

 

(フウ……)

 

「わかった。キリコ、Ⅶ組への参加を歓迎する。よろしく頼む」

 

「はい」

 

キリコが参加を表明すると全員、アルティナに目を向ける。

 

「………?」

 

「───最後は君だ。アルティナ」

 

「確認の必要はありません。秘匿事項ではありますが、任務内容には準じて──」

 

「そうじゃない、アルティナ」

 

あくまで任務だと言うアルティナの言葉をリィンは切って捨てた。

 

「君自身の意志でどうしたいか決めるんだ」

 

「???」

 

「……………………」

 

(……意味が分からないのか?)

 

(自分ではなく任務の為………。いや、あり得ないな)

 

ユウナとクルトが戸惑いの表情を浮かべる横で、キリコは一瞬あるものを思い浮かべるがすぐにあり得ないと結論付ける。

 

リィンはさらに続ける。

 

「さっきも言った通り、自分自身の意志を示さない限り参加を認めるつもりはない。決めたのが分校長だろうと、たとえ情報局や帝国政府だろうとその一線は譲らないつもりだ。……何でもいい。君自身の"根拠"を示してくれ」

 

「私自身の"根拠"……」

 

「ちょ、ちょっと……!何を意地悪してるんですか!?事情は知らないけどよく分かってない子に──」

 

「……"根拠"は思いつきません」

 

ユウナがリィンの態度に反論しようとすると、アルティナが口を開く。

 

「ですが──この一年、"要請"の度に貴方のことをサポートさせてもらいました。この分校で所属するなら『リィン教官のクラス』であるのが"適切"であると考えます。それと─一年半前、私の任務に立ち塞がったトールズ士官学院《特科クラス Ⅶ組》──その名前の響きに少しばかり興味もあります。……それでは不十分でしょうか?」

 

「あ……」

 

「………」

 

(その名は確か──)

 

「今はそれで十分だ。よろしく頼む、アルティナ」

 

これでユウナ、クルト、アルティナ、キリコの全員がⅦ組参加を表明した。

 

リィンは拳を握り、

 

「──それでは、この場をもって《Ⅶ組 特務科》の発足を宣言する。お互い"新米"同士、教官と生徒というだけでなく──"仲間"として共に汗をかき、切磋琢磨していこう!」と締めくくった。

 

 

 

「リィン君……」

 

「へえ……どうなってるか気になって来てみりゃあ」

 

「……勝手なことを。一教官に生徒の所属を決定できる権限などないというのに」

 

「フフ、転科の願いがあれば私は認めるつもりであったが」

 

「分校長、お言葉ですが……」

 

「帳尻が合えばよかろう。彼らは己で"決めた"のだ」

 

「Ⅷ組、Ⅸ組共に出だしは順調、"捨て石"にしては上出来の船出だ」

 

リィンたちがさっきまで戦っていた場所の上ではオーレリア、ミハイル、ランドルフ、トワの四名がいた。彼女らはⅦ組の発足に満足のようだった。

 

「──近日中に動きがある。せいぜい雛鳥たちを鍛えることだ。激動の時代に翻弄され、儚く散らせたくなければな」

 

「も、勿論です……!」

 

「……イエス、マム」

 

「やれやれ、大変な所に来ちまったなぁ」

 

「ああ、一羽だけ大鷲が混じっているようだがな」

 

「お、大鷲って……」

 

「あのキリコっての、マジであんたが推薦したんすね」

 

「ああ、生身の戦闘はともかく、機甲兵戦術においては私と同等かもしれん」

 

「分校長……」

 

(上とは言わねぇんだな……)

 

(きっとプライドがあるんでしょう……)

 

この時、ランドルフたちは気づいていなかった。

 

(フフフ、キリコ・キュービィー。やっとあの時の借りが返せるな)

 

オーレリアが獰猛な笑みを浮かべていたことに。

 

 

 

小要塞の外ではティータと赤毛の男が話していた。

 

「ったく、ラッセルの爺さん以上にマッドすぎるだろうが……。リベールから留学の件もそうだが、あんな人を人とも思わないジジイに弟子入りしちまって本当に良かったのか?」

 

「あはは……でもでも、やっぱりすごいヒトです。同じ新入生の子たちとも仲良くやっていけそうですし……。──それに、帝国に入れないお姉ちゃんたちの"代理"もちゃんと務めたいですから……」

 

「やれやれ、いつの間にかデカクなったっつーか……。もう"チビスケ"なんて呼べねぇな」

 

そう言って赤毛の男はティータの頭を撫でる。

 

「あ…………えへへ……」

 

「"連中"は確実に動き始めてる。帝国政府も、それ以外の勢力もな。あのスチャラカ皇子のツテで遠距離の導力通信のラインは確保できた。何かあったら駆けつける。遠慮なく連絡しろ──ティータ」

 

「はいっ………!アガットさんも気をつけて」

 

アガットと呼ばれた男は帰ろうとしたが、不意にティータにあることを聞いた。

 

「そういや、気になるヤツがいるって言ったな。どんなヤツだ?」

 

「あ、はい。キリコ・キュービーさんと言って、Ⅶ組 特務科に所属することになった人なんですけど、分校長の推薦だそうです」

 

「あの《黄金の羅刹》の……?ふむ、一応調べとくか……」

 

「アガットさん……?」

 

「心配すんな。何かしようってわけじゃねぇ。あくまで念のためだ」

 

 

 

「───なるほど。本校に続いて第Ⅱもか」

 

ところ変わってここは帝都ヘイムダル。

 

鉄血宰相の異名を持つギリアス・オズボーンは鉄血の子供達《アイアンブリード》のルーファス・アルバレア、レクター・アランドール、クレア・リーベルトと通信で彼らの報告を聞いていた。

 

『はい、初日は滞りなく終了したそうです。《Ⅷ組 戦術科》、《Ⅸ組 主計科》に加え、《Ⅶ組 特務科》も無事発足しました』

 

『やれやれ、なんとか虎を檻に繋げたと思ったんだが。まさか"奴さん"まで教官に加わっちまうなんてなぁ』

 

『名高き才女も入るし、捨て石とは思えぬ充実ぶりだ。クロスベルから"彼"まで送ったのは些か早計だったかな?』

 

『ハッ、よく言うぜ。完全に狙っていたくせによ。ま、戦力が充実するんならそれはそれで使いようがあるけどな』

 

『レクターさん、総督閣下も……』

 

「──いずれにせよ、この春をもって全てが動き始めることとなる」

 

「北のノーザンブリアを陥としたことで蛇どもの潜む茂みは全て焼き払った。主の"計画"を奪い返すためそろそろ巣穴から飛び出してくるはずだ」

 

「ならば、翼と剣をもがれた皇子の最後の悪あがきたる"第Ⅱ分校"──我が不肖の息子共々、せいぜい踊ってもらうとしよう」

 

『閣下………』

 

『ったく……ホントいい性格してるぜ』

 

『我ら《鉄血の子供達》──閣下の大望のために働くのみです』

 

通信を終えたオズボーン宰相は一人、先ほどとはうって変わって後悔の念を抱いていた。

 

「これで良かったのか。願わくば女神よ。リィンの、息子の行く末に光を……」

 

オズボーン宰相は祈った。

 

「それにしても"あやつ"の言っていた"生まれながらのPS"とはいったい……?」

 

オズボーン宰相は疑念を覚えた。

 




アーマーブレイク

CP30

リミッターを解除し、威力を上げた弾丸を放つクラフト技
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