彼女が欲しい!   作:タイトルが作者の本音である可能性について

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なんとなく続いた


魔法が欲しい!

「で。『今夜』ってどういう意味よ」

 

 放課後、家路の途上だった。

 小学生風高校生男子とロリコン女子は、互いの認識の齟齬をすり合わせにかかる。

 

「あれ? 今日僕ん()来るって話じゃなかった?」

「……そんな話あったっけ?」

「少なくとも、僕は姉さんからそう聞いてるけど……」

「……へ? お姉ちゃんから? ってことは家族ぐるみ案件? 何それ、知らされてないんだけど……」

「ほら、今日って例の■■■■■■■の――「ッ!?」」

 

 ハッ、と二人は気づく。

 言葉に混じった不自然なノイズ。『聞こえている筈なのに理解できない』異常。

 これは、『何らかの魔術による攻撃』を受けている感覚……!

 

「……また姉さんかな?」

「……多分? ねえ、お仕置きがてら押し倒してもいいかな?」

「またその話かよ僕的にすごい複雑な気分になるからやめてっていっつも言ってるでしょーがばか」

 

 ……どうやら少女は少年の姉にも執心のようだ。しかしながら、何故即「押し倒す」という発想が出て来るのか。同性愛者とかそういうの以前に、ちょっと思考回路が色々とアウトなのではなかろうか。

 まあともかく、少年少女は神槍を問いただすべく姉の下へと走る。

 

「先っちょだけ! 先っちょだけでいいから!」

「なんの先っちょ!? まさかそういう『道具』をいつも持ち歩いてる訳じゃないよね!?」

「流石にないよ、指だよ指! ――よっしゃ押し倒すぞー!」

「ちょ、なんで!? 許可してないよ僕!? せめて3Pにして!?」

 

 近親でその、あれはまずいのでは……? というかここ、往来なんですけど……。

 

 

 ◇

 

 

「――もちろんボクがやった。後悔はしているが、反省はしていない」

 

 ここにもバカがいた。

 

「ハァ、ハァ……押し倒すよお姉ちゃん?」

 

 こっちには変態がいた。……息が切れているのは全力で走ってきたから、の筈だ。

 

止まれ(ステイ)、姉さん」

「……それを言うなら逆じゃない? 彼女、すごい表情になってるけど」

「ハァ、ハァ……ねえいま彼女って言った? 言ったよね? つまり実質据え膳だよねいただきまーす!」

「――ううん、姉さんの方で合ってるよ。大人しく襲われてろ」

「やだよボクにはそっちの趣味ないよストッププリーぃズ!?」

 

 制止の言葉は虚しく、猛獣が弾丸のように大地を蹴った。

 少年の姉はひっ、と身体を竦ませながら――

 

「――《防御結界・擬星の風(ナハトワインド・フィールド)》!」

 

 ――『魔術』を唱える。

 少女が姉とヤるのを嫌がっていた少年が、にも関わらず矛盾したゴーサインを出した所以。弟に似て小さく、体格で少女に敵わない姉が持つ、ここら辺一帯で最強の自衛手段にして、最悪のイタズラ手段。

 展開されるのは、濃密な風の防壁。

 ゴンッと、鈍い音がした。

 

「ひでぶっ!?」

 

 敢えなく吹っ飛ばされて、少女が地面に転がる。ちゃっかりスカートの中身を少年の姉の方へ向けている辺りに執念が垣間見えた。

 少年はスカートの中身を覗き込んだ。白。振動するモノがあったり肌色だったりは流石にしなかったようだ。一安心である。

 

「……はぁ。で、とっとと解いてよ姉さん。何だっけ、《心異(ヴァリアブル)》とかいうやつだっけ?」

「ちーがーう! そもそも闇属性はボクには使えないって言ってるでしょ!」

「へぇ、《心異(ヴァリアブル)》って闇属性だったんだ」

「まずそこから!? この間、ちゃんと教本渡したよね!?」

「……あれ、タイトル見たらよくある感じのラノベっぽかったんだけど。渡すやつ間違えたんじゃない?」

「違うの! それが教本なの!」

 

 少年の姉は立ち上がり、大仰な身振りをする。演説か何かのつもりらしいが、あまり似合ってはいない。転がっている少女は視界に入っていないようだ。

 

「――いい? 現代汎用魔術の基本は、この『異世界迷宮の最深部を目指そう』っていう一本の物語なの。この物語に描かれている術式で、大体の基礎は網羅できる。あとは足したり掛けたり、幾つかある『接点(ドア)』を通して他神話系の特性を引っ張ってきたりして膨らませていくの!」

「へぇ」

 

 少年は聞き流す。だってこれもう何度も聞いたもん。でも覚えてはいないし知識にもなってない。その辺がバカである。

 

「聖書系への『接点(ドア)』はたくさんあって、あとは多神教から貶された悪魔に『反転』なり『過去視』なり掛ければフェニックスとかクロノスとか色んな神話が使えるし、他にも北欧系と繋げたければ《重崩色の非風剣(ナハトカルト・グラム)》、ケルト系と繋げたければ《ライトアロー・ブリューナク》を使うのが一般的だけど、《ライトアロー・ブリューナク》はその性質から日本のサブカルチャー全般、さらには世界中に散在する『後付けの風評』にまで繋げ得る優秀な交差点でもあって、そうするとやっぱり『不死』と『代わり』の特性を持つノスフィー・フーズヤーズと直結してるのはかなり大き――って、ちょっとちゃんと聞いてる!?」

 

 オタクのうんちくは無駄に長い。さらに言うなら、特に今回は全然要約されていない。

 ついに聞き逃すのも面倒くさくなった少年は、倒れた少女の髪の毛で遊んでいた。子供か。

 自らの手の中で形を変える髪の毛に夢中になっていた故に、少年は答えない。答える筈もない。だから叫んだ少年の姉に答えたのは、倒れていた少女だった。

 少女はゆっくりと立ち上がりながら、普通のテンションに戻って言った。

 

「……はぁ。もう何でもいいからさっさと解いtのわぁっ!?」

「ふぎゅっ!?」

 

 そして途中で盛大にこけた。

 そもそも、少女の髪の毛は少年の手によって掴まれていたのだ。そのまま立ち上がろうとすれば当然こうなる。

 

「……何やってるのさ」

「「あんたには言われたくない」」

 

 少年の姉、現在二十五歳。無職である。




物語は終わらない
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