馬Pとアイドル部とVTuber   作:咲魔

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とある日の夜のばあちゃる邸
その日は仕事が重なってしまい、同棲人のシロとロッシーは出かけていた。
そんな日に、偶然にも家族旅行から帰ってきた少女がいるようで…?


(番外編)


彼に刻まれた独占欲の証(ヤマトイオリ)

 

「うまぴー!イオリがおかわり入れますよ?」

 

「お、本当っすか?じゃあお願いするっすよ」

 

なんてことの無い平日のとある日。既に日は落ちて、早い人であれば就寝しているであろう時間に、『ばあちゃる』は自宅にて、担当アイドルの一人『ヤマトイオリ』にお酌をされていた。既に大分飲んだのであろう。テーブルの上には空になったビール瓶が数本転がっている。ばあちゃるもまた普段見せないくらいに酔っていた。

 

「いやー、イオリンはホントいい子っすね!ばあちゃる君にお酌してくれるし、気も利く。何より可愛い!」

 

「ホント!ねぇねぇうまぴー。イオリはうまぴーにとって可愛いですか?」

 

「もう可愛くて仕方ないっすよ!そりゃあもう目に入れても痛くないくらいに!」

 

「えぇ!?流石にそれはダメですよ?けど…えへへ。イオリはうまぴーに可愛いって言われて、すっごく幸せです!」

 

酔っぱらった大人は嫌いだ。家で父親が酔った姿は母に迷惑かけているし、輪に掛けて話を聞かない。元よりイオリの話はみんな聞き半分なのに、酔った相手では全く聞いてくれないといつもイオリはふくれっ面で文句を垂れていた。

しかし、目の前で酔っぱらうばあちゃるにはむしろ逆の感情が抱いている。普段はしてこないボディタッチ。イオリの言葉一つ一つに表情をころころ変えて反応してくれる様は、イオリにとってまさに求めていたモノだった。そのおかげか、今のイオリは当社比で1.5倍のいい笑顔だ。

 

「にしても…」

 

「どうしたの?」

 

「いやー…本当にばあちゃる君のパジャマで良かったっすか?」

 

「勿論だよ!この前お泊りした時、すーちゃんが着ててイオリも着たいと思ったの!」

 

「そうだったっすね。けど、ぶかぶかで着心地が悪いんじゃないっすか?」

 

「そんなことないですよ?むしろうまぴーの匂いがして…ふふ。イオリは幸せでいっぱいだったりします」

 

「そ、そっすか…そう真っ直ぐ言われると、ちょっと恥ずかしいっすね」

 

イオリの真っ直ぐな言葉に、既に真っ赤になっている頬を羞恥を誤魔化す様に掻いた。

夏休みに入り、イオリは毎年恒例となっている家族旅行へと出かけた。アイドル部に所属してから二回目の家族旅行だが、その感想はどうにも物足りないとイオリは感じていた。確かに、家族との旅行は楽しいもので、心躍るものだ。しかし、その場にシロもアイドル部のみんなも、そしてばあちゃるの姿はいない。それが少し寂しくて、楽しいのにちょっと物足りないと思っていしまう要因でもあった。

なので帰ってきたイオリは、真っ先にばあちゃるの元に訪れることにした。その日は偶然にも、シロとロッシーが遠出の仕事で、居ないと分かるとお泊りまで決行。行き当たりばったりであったが、その際のイオリの姿に何か思ったのか、ばあちゃるはそれを許諾する。そして今まで甘えれなかった分を埋めるように、イオリはあれこれとばあちゃるに構った。今やっているお酌だってその一つ。前にちえりから聞いていたイオリは、せっかくだからやってみたいと実行に移して今の状況が出来上がった。

また、ばあちゃるのパジャマに着替えるのだってそうだ。イオリの言う通り、以前お泊りした際にすずが着ていたのを羨ましく思っていたため、同じように実行した。なお下もすずと同じように、なにも着ていない。自分の衣類がその豊満な体で浮かび上がる様に、ばあちゃるは直視できずにいた。それを誤魔化すために、どうにも酒が進んでしまい、今の状況へとなってしまったのだ。

 

「うまぴーうまぴー!」

 

「はいはいはい。どうしたっすかイオリン?」

 

「はい!ぎゅー!」

 

「ちょぉ!?イオリン!?」

 

イオリに視線を向けてしまうと、自然と胸に視線が向かってしまう。それを誤魔化すために、酒を飲み進めるが、それはイオリのよって阻止された。

イオリの呼びかけに振り向くと、懐に飛び込み、腕を背に回して身体も密着させるように抱きしめられる。その際、下着をつけていない胸は、ばあちゃるとイオリの二枚という薄いシャツなどないもののように、ばあちゃるの身体に押しつぶされた。その感触をほぼ直に感じたばあちゃるは、腹の下に熱が集まるのを感じ、歯を食いしばって何とか耐える。

 

「うまぴー。ちょこちょこイオリの胸を見てるから、こうしたらうれしいかなーって」

 

「…ちなみに、入れ知恵したのは?」

 

「え?エイレーン先生だよ?」

 

「憶えて…いや、むしろ役得だからグッジョブ?…いやいやいや!?」

 

酒が回った頭は思いのほか、欲望に忠実だ。しかし、その考えは間違えだと振り払う様に頭を振る。そんなばあちゃるの姿に首を傾げるイオリだが、その口端が嬉しそうに上がっているのを見ると、幸せそうに微笑んだ。その微笑みがどうにも恥ずかしくて、ばあちゃるの酒の進み具合は加速した。

今までは身体に残っていた疲労が酒の力で浮かび上がり、すぐに寝込んでしまうばあちゃるであったが、それも他人を頼ることを覚えたことにより解消した。今ではシロやアイドル部の前で飲んでも、飲み潰れることはほぼないと言ってもいい。しかし、それは逆に言えば泥酔したことがないことを示す。普段より早いそのペースは、すでにばあちゃるの許容範囲を優に超える。となれば…悪酔いしてしまうのも仕方がないことだ。

 

「えっと、うまぴー?本当に大丈夫?」

 

「ヒック…んー?…大丈夫大丈夫!俺は酔ってないっすよ!」

 

「さすがにそれは無理があるかなってイオリは思うな」

 

先程以上に顔を真っ赤にし、おぼつかない様子で頭をゆらゆらさせて、見たことも無い子供の表情でばあちゃるはにこやかに答えた。さすがの酔い様に、イオリも少し引き気味だ。普段見せない表情も、見せたくないであろう姿も見れることは幸せだが、この変わりようは流石にマズい。幸い、胃の方は頑丈なためか、食べた夕食を戻す様な素振りはない。ならばここは、早めに寝かせるのが得策と睨んだイオリは、ばあちゃるの背に手を回し、寝室へ促す。

 

「うまぴーうまぴー。夜も遅いからもう寝ましょう?」

 

「そうっすか?…イオリンがそういうなら…ん?これ、イオリンのっすよね?」

 

「なになに?あ、そうですよ。それはイオリがお家から持ってきたものだよ!」

 

ばあちゃるの視線の先にあるのは、肌触りがよさそうな小さなハンカチ。それなりにいいものなのだろう。そういった商品の価値はよく分からないばあちゃるだが、少なくとも百均などで買った安物ではないことは見て取れた。

ばあちゃるが気になったのはそのハンカチに刺繍された『イオリ』という文字だ。イオリの母親が縫ったであろうそれは、綺麗の一言しか浮かばない。

 

「…」

 

「うまぴー?」

 

その刺繍をじっと見つめたまま、ばあちゃるは酔った状態で思考の海に落ちる。自分のモノに名前を書くのは当然の事。だからイオリのハンカチには名が刻まれている。

酔っている時の思考なんて、まともなわけがない。それはばあちゃるにも当て嵌まることで、何を思ったのかばあちゃるは更に笑みを浮かべた。

 

「そうっすよね!自分のモノには名前を書く。それは当然の事。ね!イオリン!」

 

「え、う、うん。大事な事ですよ?」

 

「はいはいはい。いやー、ばあちゃる君とイオリンは以心伝心っすね」

 

そして、酔っている状態にもかかわらず、ばあちゃるはテーブルの端に置かれた黒のマジックを取り出した。そして、困惑するイオリのパジャマを捲り上げた。

 

「う、うまぴー!?」

 

「ん?」

 

あまりの突拍子のないその行動に、さすがのイオリも面を食らう。酔っているためか、加減なく捲られたパジャマは胸元まで上がっており、俗にいう『下乳』が見える状態だ。その様に羞恥を覚えたのか、イオリの頬は一気に朱に染まった。

そんなイオリの様子など露知らず、ばあちゃるはイオリの腹に顔を近づける。少し視線を上にあげればたわわに実った大きなお胸があるのに、そこには一切気にせず腹へ視線を集中させていた。酔った時は一つのことしか考えることが出来ない。よくあること。

 

「自分のモノには名を書かないとっすね」

 

「ひゃんっ!」

 

困惑するイオリなど気に止めず、ばあちゃるはもっとその黒ペンでイオリの腹に文字を書き込む。擽られるような、そんな刺激にイオリはつい悲鳴を零した。酔ってはいるが、仕事柄なのか、綺麗な字でイオリの腹に文字は書かれていく。そして書き終わったのか、どこか満足そうな表情を浮かべながらばあちゃるは顔を上げた。

 

「できた!」

 

「え…っと…?」

 

困惑しながらテーブルに置かれたイオリの手鏡を使って腹を確認する。『ばあちゃるのイオリン』。そこに書かれた…いや、刻まれた文字に、イオリは言葉を失。

 

「ほら、イオリンはばあちゃる君のモノっすよね?なら名前を書かなきゃ!」

 

「…」

 

まともな思考が出来ていないばあちゃるの言葉は、イオリには届かない。

酔っているからこそ、胸の奥に隠れていたばあちゃるの本心の一つ。独占欲が今、イオリの腹に刻まれた。その事実に、イオリの胸は歓喜に震えるしかない。

 

「イオリンだけじゃなくて、みんなにも書いてあげなきゃいけないっすね!それじゃあ…あした…かかな…きゃ…」

 

「わ、うまぴー?」

 

稼働限界が来たかのように、ばあちゃるはイオリの横に倒れ込む。慌ててばあちゃるの様子を見て見ると、微かに寝息が確認できる。単純に寝てしまった事実に、イオリは安堵の息を吐いた。

元々限界以上の飲酒を行っていたのだ。いつ倒れてもおかしくない状況でもあったのは確かである。ただ、その限界が来ただけのことだ。

 

「…ふふ」

 

眠ったばあちゃるの横で、ばあちゃるが刻んだ証を撫でながらイオリは微笑む。酔った状態とはいえ、刻まれた証はばあちゃるの本心だ。それが分かるからこそ、イオリは幸せを感じずにはいられなかった。

 

「イオリは、うまぴーのものですよー」

 

そう言って、イオリは眠るばあちゃるの頬に唇を落とす。そういえば初めてだ、と思い出して少し恥ずかしそうにまた笑った。

ベッドで眠るのもいいが、ここは彼の隣で眠るほうが幸せに決まっている。それを分かっていたイオリは、ばあちゃるの寝室にある大きめのタオルケット取りに、席を立った。

 

翌日。帰ってきたシロとロッシー。そして通い妻化しているめめめに自慢したところ、当然のように修羅場と化した。その修羅場がいつもと違うところがあり、それは三人とも何故か黒のマジックを片手に持っていたところくらい。

そのマジックがどのように使われたのか、それは当人たちにしか分からないことだ。

一つ言えるとすれば、それは修羅場後の女性陣が顔を真っ赤にしながらも幸せそうにしていたことくらいか。

 

 

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