その日の放課後はアイドル部が一堂揃ってミーティングを行う日
しかし、途中で話は逸れていくようで…
「それでは週初め恒例のアイドル部の定例会を始めます」
やいやいと小さめの歓声とパチパチパチと控えめの拍手と共に私立ばあちゃる学園生徒会会長、夜桜たまは小さくお辞儀する。後ろにあるホワイトボードの前に控えているのは会計の北上双葉と、たまの横にノートを広げている書記の木曽あずきと合わせてアイドル部にも所属する生徒会組であり、たまの宣言通りに行われる定例会の進行役だ。
「とりあえず集まったけど大きなイベントとかはないから特に話し合うこともなくない?」
「そんな始まって開幕に言うことないじゃないですか」
身も蓋もないことを言ういろはになとりは小さく窘める。しかし、そんないろはに同意したは他でもない会長だった。
「まあごんごんの言う通り特に伝達事項もないだけどね」
「かいちょう!?」
「ほらー、いろはの言う通りじゃん!」
「一応、重要ではないのですが伝達事項は、あります」
「ほら、ごんざぶろう。おすわり」
「ワン!」
双葉に窘められ、元気よくいろはは返事を着席する。その様子に風紀委員長であるなとりは頭を抱えながら小さくため息を吐いた。
「それでそれで?たまちゃんお知らせってなーに?」
「えっとね。まずはいつも通り配信のスケジュールは馬Pからきてると思うから特にトラブルとかなければその予定通りお願いね。もし機材トラブルや体調不良などで配信ができないとかなら馬Pか会社の方に連絡するように」
「会社ならメンテちゃんに伝えればいい感じかな?」
「りこちゃんの言う通りメンテちゃんがいればメンテちゃんに伝えるのが一番ベストだね。けどやっぱそこらへんの段取りは馬Pが一番わかってるから馬Pに伝えるのが安パイかな」
「馬Pも配信の時間なら基本的に電話には出れるようにするって言っていたしね」と付け加えると理解したように部員は頷く。その時、たまの横にいるあずきが小さく手を上げる。
「ん?どうしたのあずきちゃん」
「昨日諸事情で会社に赴いたのですが、その時にメンテさんに追加の伝達を聞きました」
「あ、そうなんだ。内容は?」
たまの問いにあずきは小さく頷き、開いていたノートをパラパラパラとページを捲る。そしてお目当てのページに開き、内容を確認して発言した。
「『最近、機材トラブルが続いていたます。故障で有れば仕方がないのですが設定ミスなど原因が配信者にある場合もあります』」
その内容に部内の数人は動きを止める。心当たりがあるのかその額には少し汗がにじんでいた。
「『知識不足が原因であると思いますのでトラブル削減の為にいい案がないか、ばあちゃるさんと話し合いを実施しますね』、です」
「つまり、どういうことですの?」
「多少の機材トラブルは自身で何とかしてもらうってことだから、その機材の知識を付けるために勉強会か何かするって感じかなー?」
「プロデューサーちゃんと話し合うって言ってるし、ちぇりたんの予想通りじゃない?メンテちゃんも忙しそうだったからもしかしたら外部の講師とかでも呼ぶのかも?」
「うー、勉強は苦手ですわ」
予想される勉強会に最年少であるピノは苦い顔を浮かべる。そんなピノを微笑ましいそうにちえりは頭を撫でた。
「あと最近行方不明者が出たという情報があります」
「行方不明者!?」
あずきの口から放たれた物騒なワードに全員の表所が強張る。話を聞き流す様に聞いていたりこは驚愕により聞き返す。
「はい。別の学園ではありますが下校中に行方不明になり、未だに見つかってないそうです」
「えー、こわいよー!」
「みりあちゃんたちの学校でもなんか物騒なことが起きたって聞いたし、なんか嫌な感じがするよ」
席が隣であるイオリとめめめは恐怖から慰めあうように抱きしめあう。他校であるが同じVTuberであるゲーム部と交流もあるめめめはそちらのほうで起きた事件についても聞いていたため不穏な空気に恐怖を感じた。
「話はばあちゃるさんの方にも通っているので近いうちに対策がされる、と思います」
「え、この件も馬Pが引き受けるの?仕事のしすぎじゃない?」
「確かにここ最近は休日も学校に来てますし、ちょっと心配です」
休日に部活で登校する際、監督役としていつもいるばあちゃるの姿を思い出し、すずはたまに同調する。
「昼休憩の時に仮眠するように言われてるし、さすがのうまぴーも休憩取れてるんじゃない?」
「けど、プロデューサーちゃんだよ?寝ずに仕事を続けちゃいそうだよ」
「プロデューサーならありえる」
各々はばあちゃるの仕事人間ぶりを知っているためか逆の方向に信頼され心配されてしまう。しかし、それは一人の発言により打開される。
「ばあちゃるさんなら昼休憩中にしっかり睡眠取ってますよ。近くに寄っても気付かないくらいにぐっすり寝てましたし大丈夫だと思います」
その瞬間、喧騒としていた部室は一瞬にして静かになった。そして11人の視線はなとりに注がれる。
「え、あの。皆さん?急に黙るのは怖い、ですよ?」
「ねぇ、なとちゃん。なんで馬Pが昼休憩の時はぐっすり寝てるって知ってるの?」
「え、あ!」
自身の失言に気付くがすでに遅い。なとりを囲う様に正面にはたま。横にはいろはとめめめ。そして後方には先程までホワイトボードの前にいたはずの双葉が控えていた。特にばあちゃるに対して親愛以上の感情あると思われる正面のたまと後方の双葉からの圧がひどく、なとりは冷や汗を掻く。
「えと、しょの、せ、先週に昼休憩中に顔出すことがありましてね!」
「へぇ」
「うっかり。そう!うっかりばあちゃるさんが昼休憩中は仮眠取ることを忘れてしまいまして!そのまま居るか確認の為に仮眠室まで見たんですよ!」
「近くまで寄ったもんね」
「はいぃ。近くまで寄って寝顔も見ちゃいましたぁ!」
「寝顔はどうだった?」
「しゅなおに綺麗だと思いました!起こすのも忍びなかったのでそなまま教室に戻りましゅた!」
下手な嘘をついたらやられる、と本能で理解したなとりは聞かれたことに包み隠さずに報告する。しかし、全部を伝えるとさらに危険な状況になることも悟っていたなとりは、ばあちゃるの腕の中で共に眠りに落ちたことは確実に秘密にするべきだと理解していた。なので真実の中に一つ、嘘を混ぜる。ネットの海かなのかどこで仕入れた情報かは覚えてはいないがこうすれば嘘もバレにくいとなとりは知っていた。しかしそれも思わぬ伏兵により看破される。
「あれ?うまぴーに用事で行った日ってなとちゃんって授業も大遅刻した日じゃなかったけ?」
「…そーなの、なとちゃん?」
「もしかして、嘘ついた?」
(イ、イオリさぁぁぁぁぁぁん!!!???)
前後からの視線が強くなるととともに冷や汗が噴出し謎の寒さからか体も震えだす。結果的には絶体絶命なとこまでなとりは追い詰めれてしまった。
「しょの、えとあの、う、うしょをついたのではなくてですね!」
「なとちゃん。もう正直に話そ?」
「ゲロって楽になる方がいいぞー?」
「は、はいぃぃ」
両隣からの優し気な言葉になとりはついに陥落する。八重沢なとりはまた勝てなかった。
「つまり、馬Pの様子を見に行ったら仮眠室はいい感じの日差しで気持ち良くて」
「さらにアロマと思われるいい匂いに抗えず、疲れからか寝落ちしてしまった、と?」
「そうなんですよ!」
嘘である。
しかしすべて嘘というわけではない。当日の仮眠室はたまの言う様に日差しがよく眠気を誘う気温にはなっていた。さらに言うのであればいい匂いの正体はアロマなどではなくばあちゃる本人の体臭であるため、この話は事実を多少塗り替えた作り話としたのだ。まさか、ばあちゃるの腕の中で彼の体温と体臭が気持ちよくて寝落ちしたのどと正直に伝えるものならば目の前のばあちゃるガチ勢(本人否定)を中心に総スカンを食らうことは目に見えている。なによりも羞恥により話せない。
「うーん。どこか嘘っぽいなぁ?」
「そもそもうまぴーがアロマなんておしゃれなもの使う?」
「シロぴーが持ってきたものかもよ?シロぴーも学園来たタイミングが授業中とかならあの仮眠室で時間つぶしてるって聞いたし」
(り、りこさん!)
小さくアイコンタクトを送るりこになとりは気づき、感激する。秘密事を共有するばあちゃる一派の光るアシストであった。
「なとちゃん。本当に嘘ついてない?」
「ホントにホントですよ!信じてください!」
「もし嘘だったら私と麻雀しながらPUBGやってくれる?」
「はい!ってなんですかそれ!?」
「え?コラボの提案だけど?」
「どっちかにしましょうよ!?私は会長みたいに同時に色んな事は出来ないですよぉ!」
「大丈夫大丈夫。何回かやればなんとかなるよ。なとちゃん、物覚えがいいし」
「しかも1時間枠で終わらせないやつだこれー!?」
そんな二人のコントに部員たちは微笑ましい目線を送る。先程まで空気が嘘のように部室内は穏やかになった。そこに『コホン』と一つの咳払いが響く。
「まだあと一つ。連絡事項がありますけど、いいですか?」
「あ、ごめんねあずきちゃん」
「ああ、ごめんなさい。お待たせしました」
姿勢を整えあずきに視線を送る。全員の視線が自身に集中したの確認した後、あずきは『では』と区切りをいれ喋りだした。
「最近、昼休憩中に屋上で不純異性交遊が行われていると報告がありました」
「米っち!?」
「あ、ダメですりこさん!?」
あずきの報告に部員の視線は一気にりこへと向けられた。屋上の密会について知っているのは、当事者であるりことばあちゃる、そしてなとりだけだ。ならば疑惑の人物はなとりであるため、りこは反射的になとりの名を呼ぶ。呼んでしまったのだ。それが釣りだと気づいたなとりは窘めたが時すでに遅し。全員の視線は二人に集中した。
「…女子高であるこのばあちゃる学園で異性交遊、ですか?嘘ですよねあずきさん?」
「はい嘘です。ですが…マヌケが見つかったようです」
「あ、あずきちィィィィィ!!」
「え、かぐらんあの一瞬であずきちのネタに気付いてノったの?すごない?」
「ちえりお姉ちゃんが乗るのが一番良かったのではないのでしょうか?」
「そうはいっても、ちえりはジョジョネタからっきしなんだよなー」
そんな他人事のように眺める部員たちの中、我らの生徒会長は再び立ち上がった。
「りこちゃん、なとちゃん。ちょっとお話ししようか」
「有無を聞いてないじゃないですかぁ!」
「さ、さくたまちゃん落ち着いて!事情はこの牛巻がきっちりしっかりいうから、ね?そんな怖い顔、さくたまちゃんには似合わないよ!」
「なぁーに息を吐くように口説いてるんですかぁ!」
「りこちゃんの浮気性は生粋だからね」
やれやれと首を振りながら再びなとりの後ろに佇む。気配を察し、先程の圧を思い出したのかなとりは再び震え始めた。
「今回は私は無関係ですぅ!信じてください!」
「関係者はみんなそう言う。キリキリ吐いていこうか―」
「りこさぁん!!??」
「さ、さすがに米っちがかわいそうだ。よーし、この牛巻が正直に喋っちゃうぞー!…恥ずかしいけど」
半泣きで助けを乞うなとりを不憫に思ったのかりこは特に躊躇わず、屋上の一件について語った。さすがに羞恥があったのか、その頬は少し赤みがかかる。
「なんだなんだ、りこちゃんは鬱憤も貯めこんじゃうのか?愚痴ならめめめがいくらでも付き合うぞ!」
「いやー。牛巻はさ、みんなの前くらいはかっこよくいたいと思うわけじゃん?だからそう簡単には言えないかな」
「おお!りこちゃんかっこいい!」
「たまちゃん彼女面で草」
「お?ごんごん校舎裏行くか?」
「沸点低すぎでは―?」
「りこさんは愚痴を吐き出すとそのまま寝落ちしてしまうそうなんですよ。それで私は寝落ちしたりこさんの回収に行く都合で理由を知ったんですよ」
「ばあちゃる号はあれじゃん?ボディタッチとか積極的にしないじゃん。だから米っちを呼んでくれてこのことは私の名誉の為に三人の秘密というわけ」
『先週末がその日でしたね』と事の端末を伝え締めくくる。もちろんなとりにも伝えていないばあちゃるお手製のお弁当と腰に抱き着きながら膝枕で眠るということは伝えていない。りこの女の子としての幸せの時は誰にも晒す気はないようだ。
「あー!先週末の日だ!りこちゃんが昼休みに気付いたらいなくなった日!」
「そうそう!あの日は丁度修羅場明けだったから、もうがっつり吐き出せたよ」
「あれ?あの日って確かりこちゃんもなとちゃんも授業遅刻したよね?」
(為爆弾、二発目!?)
(い、イオリさぁぁぁぁぁん!!??)
再び鋭くなるたまの視線になとりは腕をブンブン動かし、焦りながら答える。
「あ、あの日はあれですよ!りこさんの眠りが深くてなかなか起きなくて!そうですよね、りこさん!!??」
「うぇ!?そ、そうなんだよね!疲れが溜まってたのかなぁ!はは、はははは!」
「そうですか。あ、話変わりますけどりこさん。この背広なんですか?」
「」
「」
懸命に誤魔化そうとする二人にあずきは部室内にあるりこのロッカーを開き、中にあるものへ指をさしながら有無を言わせずにトドメを指す。
「それってプロデューサーのじゃない?」
「ここにある男性の衣類なんてうまぴーのしかないもんね」
「え、なんでそのものがりこちゃんのロッカーの中にあるの?」
「これは予想ですが、先週末は日差しは暖かかったですが風が少し冷たかったですし、寝てしまったりこさんの毛布代わりに置いていったものだと、思います」
「そういやその日、学校から出ていくプロデューサーちゃん見たけど、上着きてなかったかな?」
あまりにもど真ん中の推理に二人は頭を抱えた。そんな二人に弄る気満々のいろははいい笑顔でりことなとりの肩に手を置いた。
「それでそれで、お二人はその背広で何をしてたかなー?」
「金剛いろはー!」
「反応したら負けですよりこさん!」
「アッアッアッwww」
「いろはさん絶好調ですね」
「ごんごんお姉ちゃん、こういう時はすっごい輝いてますね」
飛びかかろうとするりこをなとりは抑える。その場面を各々は遠巻きに眺めていた。
「あずきちの言う通り背広は毛布代わりに掛けられて」
「そして起こしに来たなとちゃんと一緒に彼シャツよろしくで羽織って情に浸っていたら遅れた、と?」
「うぅその通りですぅ」
「もう牛巻はお嫁にいけないよぉ」
大嘘である。
実際には行っていた背広から香るばあちゃるの匂いを堪能していたなど正直に言えば白い目を向けれるのは明白だ。さすがにそんな大恥を受けるくらいなら語ったように羽織って情に浸っていたと答えたほうがマシと赤面しながらなとりはとりこは答えた。だが、五十歩百歩な気がする。
「うまぴーのお洋服おっきいねー」
「大きい大きいと思っていましたけどまさかめめめおねえちゃんが着てもこんなにぶかぶかになるとは思いもしませんでしたわ」
「こ、これはなんかプロデューサーに包まれてるみたいな感じでちょっと恥ずかしいぞ」
「あ、それは気になるなー。めめめちゃん次貸して―」
ちなみにばあちゃるの背広はすっかり部内のメンバーによって回し着をされていた。異性の、しかも親愛あるプロデューサーの衣類であるためか全員が感想を語りながらその背広に腕を通す。後日、りこの手によりばあちゃるの下に返した際、くたびれた背広にばあちゃるは首を傾げた。
「りこちゃんは今度なとちゃんとコラボするときに後ろでずっと鈴虫の真似してね」
「まって。さくたまちゃんそれはちょっとまって。さすがにそれは牛巻が寂しいよ!?」
「というかそのコラボの話は冗談じゃなかったんですかぁ!?」
「あ、コメントの読み上げとかはなとちゃんがやってね」
「それこそりこさんにお願いしましょうよぉ!」
次々と決まる企画になとりは涙目で叫ぶ。断れない立場上、せめて負担を減らそうと必死な感じがひしひしと感じられた。そんな三人を見ていたちえりはふと時計を確認する。時刻は5時を回ろうとしていた。
「さすがにもう帰らない?いい時間だし、配信がある人は準備もあるし」
「え?ああ、もうそんな時間なんだ。じゃあなとちゃんりこちゃんの罰ゲームは今度考えるとして今日はもう帰ろっか」
「その、なんども申し訳ないのですがあと一件、伝えたいことが」
下校の準備をするメンバーにあずきは小さく手を上げる。
「まだ伝達事項があるの?」
「いえ、今度は連絡ではなく皆さんに見せたいものがありまして」
口と同時にPCを動かす。するとカーテンが閉まり、日の光を遮り、部室内が暗くなる。そして空中にモニターが投影された。
「メンテさんに会った際に見せてもらったものなのですが、これは皆さんにも視聴してもらいたい、と思いました」
「お、あずきち照れてるな」
「ホントはもっと早く見せたかったのですがどこかの誰かさんが脱線させるので遅くなりました」
「「うぐぅ!?」」
頬を赤くするあずきに気付いたりこはちょっかいを掛けるがものの見事に返り討ちに合う。なとりはとばっちりである。
「それで、あずきちゃんは何を見せたかったの?」
「シロさんの踊ってみたの動画です」
「ただし」と続けると同時に動画が再生させる。そしてそこに移っていたのはアイドル部の先輩であるシロとばあちゃるの姿であった。
「ばあちゃるさんも一緒に踊った動画です」
「馬ぴーも!?」
「えー!?うまぴーダンス踊れるの!?」
「見ればわかります」
ガヤガヤとどんなダンスを披露するかと全員がモニターに目線を向ける。動画が再生されていく最初の方はばあちゃるの踊りのその時々に声を出していたが動画が続いていくとともに言葉数は減っていき、最後には動画から流れる音声のみのまま動画は終了した。常時の設定を常にそうしているのか動画はそのままリピートされる。
「プロデューサちゃんダンスうっま!?」
「シロさんもとってもかわいいですね!」
「正直予想と違っていましたけど、おうまさんとってもかっこよかったです!」
「よくよく考えれば馬Pってガタイがいいし、高身長で手足も長いからあんなにキレのある踊りすれば見栄えがいいに決まってるもんね」
「あの馬で忘れがちだけど、背格好は本当に理想の男性だよ」
「あと、シロちゃんとの身長差がいい感じに違いますからより見栄えがいいですね。並んでる両方に見惚れます」
予想とは違うばあちゃるの踊りに感嘆の声を上げる。シロの踊りも可愛くすずの言う様に高身長のばあちゃるが横にいるのでよりよく可愛さが引き立つのであった。しかしそれ以上にばあちゃるの姿がいつものギャップも含めて違いすぎたためかそちらのほうに目線が言ってしまう。
「ちなみにこれ、一般公開の予定はないそうです」
「えー!?可愛さもかっこよさもドバドバなのになんで!?」
「皆さんがばあちゃるさんの話を中心にしているのを考えればわかるはずです」
「あぁ、そういうことですか」
「?…!わかっちゃったぁ!」
「あ、これはわかっちゃったぁ!(わかったない)だわ」
「つまり普段のギャップ含めてばあちゃる号ばっか盛り上がっちゃうからってこと?」
「そうです。私たちがデビューする前に撮った動画みたいですがりこさんが言う様にばシロさんよりばあちゃるさんの方が話題になるためです」
「シロさんを推していきたい会社の方針により公開は断念したようです」と告げるあずき。それに部員はどこか納得がいかないと表情に出した。
「言いたいことがわかりますが、なによりばあちゃるさんがそのように決めたことなので…」
「あー。うまぴーなら絶対にそうする」
「『はいはいはい、ばあちゃる君が有名になるのは嬉しいっすけどね、シロちゃんより有名になっちゃうのはね、違うっすよね、完全に』…とか言いそうですもんね」
「なとちゃんのうまぴーの物マネ、ホントそっくりでイオリは好きです!」
唐突に物まねをしたのはいいが羞恥が出てきたのか徐々に頬を赤くするなとりにイオリはフォローを入れるが、逆効果だったかより赤面をして顔を伏せた。それにイオリは首を傾げる。そんな二人を確認しながらあずきは鞄に入れていた人数分のUSBメモリを取り出す。
「念のため人数分用意しといて正解でした」
「さすがあずきちゃん、準備がいい」
USBメモリは全員の手に渡り、改めて下校の支度をしようとしたその時にあずきのPCにメールが届く。
「誰から?」
「メンテさんからのようです。件名は『確認お願いします』?」
「動画ファイル、みたいだけど?」
内容には『後日で構わないのでアイドル部全員で視聴してください』と簡潔に書かれており、添付されているのは動画ファイルが一つ。幸い、誰も下校していなかったためあずきはそのまま動画を再生させた。そこに映し出されたのは話題の中心であったばあちゃると神楽すずの姿だ。そしてそのまま音楽と共に二人は踊りだす。その内容は先日撮影したばあちゃるとすずのダンス動画だった。
「…すずちゃん、これは、どういうことかな?」
「た、たまさん落ち着いて!これには事情が!」
「これ踊ってるのウチの図書室じゃん!?いつ撮影したの!?」
「もちさんも落ち着いて!?」
全員の視線がすずに集中する。たまともちを先人に徐々に詰め寄ってくるためすずは少しずつ後ずさりをした。
「『笑えないわ 不幸になったってどの口で言うのだろう』」
「あずきさん!?そこでその歌詞を歌うのはひどくないですか!?」
「さぁ、知りません」
リピートされた曲の歌いだしをあずきは口ずさむ。その歌詞があまりにも自分にマッチしてしまっていたすずは声を荒げたがそれすらもあずきは涼しく受け流す。しかし、微かでしか読み取れないがその表情から嫉妬が向けられていることに気付いたすずはいよいよ味方がいない状況に焦り始める。
「え、えーと。あのその」
「どうしたのすずちゃん?怒ってないから理由を話して?ん?」
「たまたまブチキレで草」
「ごんごんもあとで裏に集合ね」
そんなコントの中、すずは可能な限り頭を使い行動に出る。
「わ、私!配信の準備があるのでお先に失礼しますね!」
「あー!かぐらん逃げた!」
「逃がさないよすずちゃん。ほら、なとちゃんもいくよ!」
「ちょ、待ってください双葉さん!?」
「すずちゃん今日配信ないでしょー!逃げるなー!!」
支度していた鞄を持ち、そのまま部室を飛び出したすずをそれぞれが追いかける。この後、アイドル部員による学校鬼ごっこが開幕。大して運動が得意ではないすずは無事に確保されなとり、りこと共に部員全員にクレープを奢ることとなった。奇しくもそれはとある楽屋にてばあちゃるがシロにぱいーんされている時刻と同時の出来事だ。
今日も、ばあちゃる学園は平和である。
今回題材にしている『踊ってみた』は総じてMMDのことを指します
作中に上映された動画の元ネタ
【MMD】シロとばあちゃるでエンゼルフィッシュ
URL→https://www.nicovideo.jp/watch/sm32825673
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