いや、導師ちゃん書いてたらつい
ティーチはヤミヤミの実を手に入れた!
と、ゲームみたいに少し考え、はぁぁ……とため息を吐く。
俺の名はマーシャル・D・ティーチ。ONE PIECEに登場する敵キャラであり、憑依系転生者だ。困ったことに、ヤミヤミの実を奪ってから憑依した。
つまり白髭に殺される。ふざけんな死ね。いや死ぬ。エースに燃やされるか白髭に吹っ飛ばされるか海軍に殺されるか………てか記憶を覗く限り黒ひげ海賊団もう集まってんのか。後は合流するだけ。
黒ひげは極悪人だから体奪っても罪悪感とか無いからまあ良いけど、彼奴等が納得するかどうか………。うん、逃げよう。
取り敢えず実は食った方がいいよな。この世界、能力者にでもならなきゃやってけねぇ。実際名の知れた実力者は基本的に能力者だし。
というわけで、いただきます。
「う、まっず!ゲロマズ!」
笑えるほど不味いな。くそ不味い。だが何とか飲み込む。
「ふぅ、これで俺にも闇の力が……なんか中二くさ────っ!?」
突如全身を激しい熱が襲う。熱い、苦しい!
体が溶けるような激痛が走り、胸を押さえる。その手も何かに押し出され始める。
数分続いた熱は少しずつ収まっていく。ふぅ、とため息を吐く。何だったんだ、まさか悪魔の実って悪魔の力を体内に入れる時あんなことが起きるのか?いや、原作だと皆普通に喰ってたが……。
「………ん?」
何か、服がでかくなった?うん、明らかにデカい。というか俺が小さくなってねぇか?
毛むくじゃらで日に当たり浅黒くなっていた肌は産毛が僅かに生える程度で、白い。といっても白人よりはやや濃いアジア圏内の黄色人の肌。そこに赤黒い血管のような模様が走っている────ん?
何かこの腕、やけに丸みを帯びてるな。まるで女性の腕……と、先ほど胸を押さえていた手を押した何かがあったことを思い出し胸に触る。
ふに
「……っあ!?」
なんだこの感覚。すっげぇ敏感……。
というか、あるよな?うん、間違いなくある。胸が…………恐る恐るまたの方に手を伸ばす。サイズ違いのズボンはとっくに落ちていたので脱ぐ必要はない。
「………ない」
男の象徴が、無い。間違いなく。え、何で女になってんの?まさかヒトヒトの実モデル女、とかそういうのを間違って喰った?いやいやそんな馬鹿な!
「……………」
もう少し、胸を触ってみる。おお、やあらけぇ……しかし、肌が男のより薄いからか?かなり敏感なんだが………。
取り敢えず鏡鏡………お、ちょうど良いところに川が。
覗き込む。白髪赤目の美少女と目があった。首を傾げる。向こうも首を傾げる。
「─────ふぁ!?」
桜じゃん!完全に黒桜じゃんこの容姿!え、え?どゆこと、何でヤミヤミの実食って桜になっとるんだ俺!?思い出せ、転生する前の事を!
──転生特典は世界を選べるだけ?その世界のどれになるかは運?ええっと、じゃあfateで
「………えっと、まさか………えぇ」
まさか、それで桜になって、この世界で違和感ないようにヤミヤミの実を喰うって形を取ったのか?いや、だからって女にする理由よ……くそぅ、まだ彼女も居なかったのに!
「ま、いっか!」
これで少なくとも白ひげ海賊団に命が狙われることはない。ヤミヤミの実を持ってるから黒ひげ海賊団が少し不安だが、たぶん大丈夫だろう。こんな見目麗しい薄幸美少女(自画自賛)にやられる大男にそこまで愛着が沸くとも思えない。
取り敢えず服だな。さすがに黒ひげのは大きすぎる。上着だけ借りて腕に通す。下は、黒ひげの服を千切って結んでおく。
「………何かこの格好、メルトリリスに近い気がしてきた。ま、俺は胸あるけどな!」
コートがデカすぎて腕がでてないし、前を閉じると歩きにくくなるから解放してる。どう見ても痴女だな。
まあワンピースにゃ上は水着で、なんてキャラもいるしどうでも良いか。元男だし上半身見られても恥ずかしいとは思わないし………。
黒ひげの記憶もあるからかこのコート意外と気に入った。ところでここはどこだろう?
少し考え、力んでみる。闇があふれ出した。それをこう───ぎゅっとするイメージで押し固めると帯のような形になる。触る。うん、触れる。それを数本作り蛸のように纏めその上に乗り、上に持ち上げる。
こりゃ良いや。てか、闇を頭上に出現させて自分を引っ張らせると出来ねぇかな?
「────出来た」
けど何か味気ないな──そうだ、どうせ黒桜なんだからカーマが出してた天輪型にしよう。うまく出来た。白じゃなくて黒だけど。
街に奇妙な女が現れた。白い髪に赤い目。ここまでなら珍しいで済むのだが入れ墨なのか頬に赤黒い血管のような模様が走っている。おまけにその格好は、腰に布を巻き後はサイズが明らかにあっていないコートを羽織っているだけ。全開のコートから豊満な胸の谷間がよく見える。
そんな女に男が近づく。馴れ馴れしく肩を組み、殴り飛ばされた。
「………おー」
結構飛んだな。確かに全力で殴ったが、飛びすぎじゃあないだろうか?女の細腕で?いや、たぶん俺身体能力は黒ひげのままなんだろう。仮にも白ひげ海賊団の隊長の一人を殺せるほどの力だ。ここはたぶんジャヤなんだろうな。そんな初番の登場キャラが将来四皇になる黒ひげスペックの俺に勝てるわけがない。
「あ、あの女!処刑人ロシオの一味に手ぇ出しやがった!」
ん?何?ロデオ?
「よお、俺の部下をかわいがってくれたみてえだな…………許してほしけりゃ一晩付き合ってもらおうか?」
左半身全体に入れ墨を施している、バンダナ巻いたロン毛が現れた。バンダナに描かれてるのは首を吊られた人間のシルエット。
「はぁ……あなたがロデオさん、ですか?」
「ロシオだ!」
「それはそれは失礼しました………それでロシオさんは、私に愛されたいのですか?この体を一晩抱きしめ、快楽を味わいたい、と?」
右手を胸の中央に置き左手で臍辺りを撫でる。ロシオとかいう男はゴクリと唾を飲む。周りの男達も似たような顔をして、中にはロシオを羨ましそうに見ているのもいる。
「へ、へへ……何だよ物わかりが良いじゃねぇか………あんたもそのつも──」
「お断りします」
「………あ?」
「私は誰も彼も愛したいわけではないので………強いて言うなら、可愛い女の子を愛したいので」
中身は男だしな。まあでも脳みそは女だろうから男に惚れるのかもしれんが、少なくともこいつに惚れるなんてことは無さそうだ。
「て、てめぇ!俺は懸賞金4200万ベリーだぞ!」
「え、小物じゃないですか!そんな賞金でよく強気になれますねぇ?せめて一億いったらどうなんですかぁ?」
クスクス嘲ると顔を真っ赤にしてキレるロシオ。切りかかってきたので、かわす。
「黒渦」
「うお!?」
攻撃をかわして、闇を渦のように動かし引き寄せる。身長差があるから首をつかんで持ち上げるとかはできねぇが、掴むことなら出来る。
「──!?な、なんだ、能力者か………!?」
「あは……」
地面を踏み込み、投げる。木製の道がバゴン!と砕け陥没するほどの踏み込みは、ロシオを砲弾に変えるレベルの力を腕に伝える。
「………う、嘘だろ?彼奴、4000万越えの海賊だぞ………」
おおそうだった。4000万4000万。海軍に届けて懸賞金もらおっと。と、吹っ飛んだロシオの下に向かおうとすると崩れた建物が吹っ飛んだ。
「くそが!誰の仕業だ!」
金髪を短く切りそろえたこのマッチョマン……何か見覚えがあるな。誰だっけ?ま、良いか。無視してロシオの下に行く。取り敢えず手足をへし折り首根っこを抱える。黒ひげの記憶があるからかその辺は不快感を感じないな。しかし、黒ひげの記憶………サッチとは本当に友達だったんだな。俺が黒ひげになって桜になってと何か変な感じになってるし、ひょっとしたら生きてるかも?生きてたら謝ろう。黒ひげの記憶もそう言ってる。
『悪かったなサッチ。どうしても欲しかったんだよ、許してくれよぉ。友達だろ?ゼハハハ!』って……。
「おいてめぇ!今のはてめぇの仕業だってなぁ!」
「さて、行くか」
「おいまちやが───と、飛んだ!?」
ん?何か下が騒がしい………さっきのマッチョマンだ。あ、思い出した彼奴ベラミーじゃん。この後ルフィにやられるカマセだけど後々かっこよくなる奴だ。見逃してやろう。お前はルフィの相手してな。と、なんか跳んできた。
「───全く困ったちゃんですね」
はぁ、とため息一つ。そういや口調が何か変わってる………大した問題じゃないな。取り敢えず攻撃をかわす。ベラミーの強みはバネを活かした高速移動。建物より高く飛んだ俺相手にはいちいち速度がなくなり、また速度を上げている間にさっさと離脱する。
「さてと、4200万ベリーで何が買えるかな、と………」
海軍基地がある島に移動して金の入った財布を片手でお手玉する。どうせなら船を買いたい。普段は闇に沈めて空を移動して、寝る時とかに出すタイプ……。あ、ログポースも買っとかないと………ん?
誰かつけてきてるな。俺は路地裏に向かう。
「す、すいませんでしたぁ!」
土下座するボコボコの男達。海賊だ。俺を襲おうとしたらしい。二重の意味でな。
海軍基地に届けてログポースと船だけは俺がいただく。船で留守番してた奴等は闇に飲み込み潰して海に捨てた。
どうせなら色んな島を見てみたいな。この世界は島によっちゃ恐竜がいたり観光名所があったりと様々だからな。ああ、楽しみだな。
さて、海賊団はどんな風にしようかな