ヤミヤミの桜   作:超高校級の切望

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合流

 シャンディア達の里、雲隠れの村で大戦士カルガラの血を引く戦士ワイパーはガン・フォールがアッパーヤードに入ったという報告を聞き、今こそ攻め込むべきだと主張した。

 ガン・フォール。それは先代の神。エネルに神の座と部下の神隊を奪われ国を追われた男だ。

 シャンディアと空の民の戦争を終わらせたいなどと()()()()()()老人。

 ワイパーは共存など認めはしなかった。アッパーヤード……あそこは本来シャンディアの民が暮らしていた場所。不幸な事故で空まで飛ばされ、その上不当に奪われた。

 共存などは出来るはずもない。死にたくないと願う空の民100の首と、アッパーヤード全ての返上を以てして漸く休戦できる、というのがワイパーの考えだ。

 逆にラキなどはそう思っていない。ガン・フォールはエネルの下から逃げ出した神隊やそれに間違えられた青海人をシャンディアが襲う時に邪魔をするが傷つけたことはない。

 ワイパーは知ったことかと切り捨てる。敵の敵は味方ではない。神として空島に君臨する以上等しく敵だと。

 

「んー……お姉さんとしてはガン・フォールさんとも仲良くしたいけどねー」

「……………」

 

 ワイパーの言葉に堂々と反論する一人の女。ワイパーがギロリと睨み付けるもその殺気に小揺るぎもしない。

 

「ふざけるのは見た目だけにしろ」

「なにぉう!?アタシの何処がふざけてるって言うのさ!?」

「どっからどう見てもだ!何だその虎は!?」

「タイガーっていうな!ジャガーはどっからどーみてもジャガーでしよぉ?」

「いえ、どっからどう見ても虎よ姉さん」

「…………?」

 

 その言葉に()()()()()()を被り着た女性が首を傾げる。その顔は何言ってんのこの人と雄弁に語っているが、誰もがおまえこそ何してんだと言いたい。

 

「つーか仮にもジャガーの着ぐるみだったとして、何でジャガー……動物の格好するんだよ」

「え?そりゃアタシ、ジャガーの戦士だし」

「シャンディアの戦士だろうが………」

 

 その後、アイサという生まれながら心網(マントラ)が使えるシャンディアの少女が聞いた声によると、アッパーヤードで神官と思われる声()()とガン・フォールと思わしき声の計4つが消えた。

 好機と見たシャンディアは、アッパーヤードに攻め入った。

 

 

 

 

「………ふむ」

 

 ケイローン達は木の幹にめり込んで気絶している男を見つける。特徴的なひげを持ったゴーグルをつけた男。その隣には巨大な鳥。どちらも拳の跡を残している。

 そして、その近くの木の根。かなり大きな木で、根も太い。その根が焼け焦げており、その上に寝っ転がった男。ここだけ雷が落ちたような、そんな跡の上に寝っ転がっているのだから雷にでも撃たれたのだろうか?いびきかいて寝てるけど……。

 

「………んごご………ん、ふぁ………あん?誰だお前ら」

「カルデア海賊団戦闘顧問ケイローンと申します。貴方は?」

「俺はベオウルフってもんだ。ハイウエストを通って来たんだが、全滅してな。金もなかったから入国料払わなかったらここに送られてよ」

 

 はっはっはっ!参った参ったと豪快に笑うベオウルフ。アンはチラリと木にめり込んだ人と鳥を指す。

 

「あれは貴方が?」

「ん?ああ、何か摩訶不思議な試練だとか言いながら人巻き付けてきてよ………取り敢えず殴った。んで、昼寝してたら何か変な音して………まあ眠かったら眠ったが」

「その音って、木の根っこがこうなった原因だよね絶対……寝てたの?」

「ん?おう……」

 

 メアリーはもう一度焼け焦げた根を見る。この人、本当に人間だろうか?

 

「で、お前等は何でこんな所に?」

「我が船の船長がこの島にある黄金を手に入れようとしてましてね。敢えて神の裁きとやらを受けに」

「ほお、黄金ね。ま、頑張れよ」

「………興味なさそうですね」

「ん?ああ、まあ……基本的にゃ強い奴と殴り合い出来りゃ良いしな……ああ、でも船は欲しいな。俺の船ぶっ壊れちまって」

「なら、私達に協力してくれません?そうすれば、船に乗せるぐらいはしますが」

 

 と、アンが提案する。少なくともこの男はかなりの実力者だろう。人を拳一つで木にめり込ませるのだから間違いない。

 

「あん?そりゃ助かるが、協力ってのは何すりゃ良いんだ?」

「そうですわね。私やメアリーは、そこまで強いわけではないんですよね。カルナさんやケイローン先生に比べたら……というわけで、強い敵が出た時に代わりに戦ってもらいたいのです」

「おお、良くわからねぇが強ぇ奴と殴り合えばいいのか?任せろ!」

 

 

 

 ベオウルフを連れ一同は生け贄の祭壇に戻る。と、シトナイが見覚えのない老人を治療していた。近くには氷の枷をはめられた蜘蛛みたいな頭の男。何があったのだろうか?

 

「あ、皆お帰りなさい」

「シトナイ、彼は?」

「空の騎士さん。オルトリンデさんの上司だって……」

「彼が、それでは此方は?」

 

 老人はどうやらオルトリンデの言っていた空の騎士らしい。つまり、シトナイが笛を吹いたという事。笛を吹くような事態に陥ったという事。

 

「申し訳ありません、気づかずに………ではその方は相打ちに?」

「ううん。隙が出来たから私が止め刺した」

「ほう、それは……良くできましたね。これなら修行をもう少し厳しくしても良さそうです」

「…………え」

 

 ふっふーん、と胸を張っていたシトナイはケイローンの言葉にピシリと固まりアンとメアリーがぷっ、と笑う。

 

「お二人もシトナイには負けれませんね。少し厳しくしますよ」

「「………え」」

「お?何だ、修行か?良いじゃねえか、今より強くなれんだろ?」

「それは、そうなんだけど………ねぇ?」

「ええ……強くなれは、するんですが」

「…………?」

 

 遠い目をする二人に首を傾げるベオウルフ。と、不意にケイローンが池につながるミルキーロードに向かって振り向く。船が見えた。乗っているのはサクラ、カルナ、ダ・ヴィンチだ。

 

 

 

 

「おお!これが絶滅種噴風貝(ジエットダイヤル)!早速レアモノにお目にかかれるとはね………」

 

 ダ・ヴィンチちゃんはゲダツの肘から引っ剥がした噴風貝(ジエットダイヤル)を見て目をキラキラ輝かせている。

 

「シトナイ、やりましたね。流石です……」

「ま、まあね……でも修行が厳しくなって………」

「……え、今まで以上?」

 

 シトナイがコクリと頷く。ケイローンを見ると微笑まれた。マジのようだ。畜生。と、落ち込む俺に話しかける影があった。

 

「よお、お前が船長か?強いのか?よし、殴り合おう」

「ベオウルフ……?」

「お?俺のこと知ってんのか?あ、そういや俺賞金首だったな」

 

 ベオウルフ。懸賞金9800万8000B(ベリー)……らしい。海軍の鼠みたいな奴を殴り飛ばして部下達も全員ぶっ飛ばして指名手配されたそうだ。

 

「取り敢えずあれだ。協力するから船に乗せてくれよ。島から出れなくてな」

「……いっそ私達と冒険しませんか?」

「ん?冒険、強い奴らはいんのか?」

偉大なる航路(グランドライン)は進めば進むほど実力者が揃ってますよ……運だけで越えられる海でもありませんし」

「おう、解った。よろしくな船長」

「軽い!!」

 

 ベオウルフのあっさりした返答にシトナイが叫ぶ。まあ此奴強敵と戦うのが目的らしいからな。ベオウルフはカルナを見る。

 

「お前強そうだな。よし、殴り合おうぜ」

「………オレとお前は既に仲間………とはいえ、強さを競いたいと言う者の言葉も無為にはしたくない………だが、この槍はサクラの命令で振るう相手を決める。サクラ、許可をくれないか?」

「やめてください、死んでしまいます」

 

 余波だけで死人が出るわ。ベオウルフがまあ船長命令ならしゃーねぇかと諦めてくれた。と、不意に気配を上から感じる。

 

「ガン・フォール様!」

「ご無事ですか!?」

「あ、貴方達は……」

 

 空から美少女が三人降ってきた。

 金髪の美少女は俺達を見て一瞬だけ警戒するも治療されたガン・フォールを見て霧散させる。

 

「お騒がせして申し訳ありません。この方の治療は、貴方達が?」

「ええ、シトナイが」

「そうですか……ありがとうごさいます」

「助かったよー」

「ありがとうごさいます」

 

 金髪、ピンク、黒髪の順に礼を言う。

 

「申し遅れてしまいましたね。私はスルーズ、ワルキューレの1人です」

「ヒルドだよ、よろしくね」

「改めまして、オルトリンデです」

 

 ワルキューレ達に自己紹介されたので改めて俺達も名乗る。

 

 

「さて、それでは今後の作戦について話し合いましょう」

 

 と、俺は地図を広げながら話を始める。原作知識を頼りに描いた地図だ。

 

「この中心にある大きな蔓、この頂点の近くに黄金の鐘があります」

「黄金の鐘?」

「これを鳴らせばシャンディアと天の戦争も終わらせられるでしょうね。エネル達は別ですが………そう言うわけでエネルの相手を、カルナにお願いしたいのですが」

「了解した」

「月までふっ飛ばしちゃってください」

「相手の実力も知らぬ内から可能だ、などとは言わないが、善処しよう」

 

 勝ったな。風呂入ってこよう……。

 

 

 

「はっはっはっ!なかなかいける口だなお前等!」

「ウオウオ~~!!」

 

 ベオウルフが豪快に笑い、雲ウルフが吼える。

 キャンプファイヤーしてたら、何か、集まってきた。今はキャンプファイヤーを囲みながらシロウやヒルドと一緒に踊っている。

 

「そうか……やはり、無理か?」

「はい、私達の役目は貴方の身を守る事です」

 

 俺達の手伝いをしろというガン・フォールの命令に対してそれでは傷ついた貴方を守れないとスルーズが拒否する。ヒルドやオルトリンデも同様の答えのようだ。

 何故か個性が分かれても、本質は変わらないという事か。というか何で増える実の能力で個性が分かれた個体になるのだろうか?

 

「お前達の姉のように、自由に生きてよいのだぞ」

「………しかし」

「エネルさえ倒せば我輩は役目を終える。姉を追い、青海に降りるのもお主等の自由だ」

「え、3人とも青海に来るんですか?だったら、是非とも私の海賊団に」

 

 楽しいですよ~、と誘う。迷っているみたいだな。姉とやらに会いたいのだろう。姉って、やっぱりあの人だよね?

 ま、まあ絆レベル上げなければ安全な人だしな…………カルナの身が危険かも。いや、カルナなら大丈夫か。

 

 

 

 

 

「サバイバル、ですか?」

 

 尼のような格好をした女は長い耳朶を持った坊主のような男の言葉に首を傾げる。その隣ではサングラスを付けたスキンヘッドの男が涙を流していた。

 

「ヤハハハ、その通り。青海人どもの狙いは黄金。明日動くだろうしシャンディアも攻めてくるだろう。神官もお前を除きやられているし、アッパーヤード全域を開放する。お前も、好きにするが良い」

 

 スキンヘッドの男と女に好きに動けと命じる坊主。

 

「あっさりやれるとは、神に仕えるものでありながら何と力の足らぬ連中よ………悲しい事だ」

「ええ、特にサトリ様は……一度反応が消えたと思ったら、途轍もない恐怖を覚えていたようですね。ゲダツ様は、寒そうでしたね。ガン・フォール様もゲダツ様の一撃で、死にはしなくても肋に罅が入り、内臓も圧迫され今も苦しそう。シュラ様は………一撃でしたから良く」

「ヤハハハ。お前の心網(マントラ)か……痛みまで関知するとは難儀なものだ。サバイバルは辛いモノになるだろう。だからといって止める気はないがな」

「辛い?いいえ、そんなことはありません。だって、50人の神兵と神兵長様にオーム様、21人のシャンディア……それに青海人8名。ガン・フォール様は戦えないとしてもその部下ワルキューレ達3名総勢85………その痛み、全てがわたくしの元に流れてくるのだなんて………こんなに()()()()()()()などそうはありましょうか」

「不気味な女め」

「ふむ、計算を間違えているぞ。お前を含めぬのだからな………それとも、ヤハハ。私を含めているのではあるまいな」

「うふふ……」




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