ヤミヤミの桜   作:超高校級の切望

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船医入団

「先生~、戻りました~!」

 

 シトナイの案内の下、木で出来た家にたどり着く。シトナイが扉を開けると顔はシワシワ体はピチピチの老婆が出迎える。

 

「戻ったかいシトナイ。で、金蔓は居たかい?」

 

 金蔓って、いや確かにこの人めっちゃ貰う人だけど。と、俺が呆れていると老婆……おそらくDr.くれはが俺に気づく。

 

「ん?なんだい、客かい?」

「こんにちはDr.くれは。私はクロ・D・サクラです」

「サクラ………サクラ、ねぇ」

「………サクラ?」

 

 チラリ、と机の影から狸っぽい角が生えた青鼻の珍獣がのぞき込んでくる。あれがチョッパーか。生で見ると可愛いな。撫で回したい。

 

「えっと、このお姉さんはワポルに襲われたところを助けて」

「ワポルに!?だ、大丈夫なのか姉ちゃん!」

「う、うん……私は大丈夫だよ、チョッパー……」

 

 と、チョッパーが飛び出してきた。何処かに怪我がないか周りをぐるぐる回って探す。

 

「グルア」

「えぇ!?シ、シロウ……それ本当なのか!」

「シロウは何て言ってんだい?」

「この姉ちゃんがワポルをパンチで森ごと吹き飛ばしたって」

 

 へぇ、と俺を見てくるDr.くれは。いや、あれは正確にはただのパンチじゃないんだが……実際は圧縮した空気を放ってるだけで、俺のパンチ力だと……どうなんだろ?どれぐらいの威力が出るのかわかんねぇや。

 

「まさかあのバカをぶん殴るとはねぇ。あれでもこの国の王だ。お前は犯罪者になっちまった訳だよヒーヒッヒッヒッ」

 

 そう楽しそうに言うDr.くれは。ワポルが殴り飛ばされたと聞いて良い気味だ、とでも思っているのだろう。

 

「ふふ。私は海賊ですよ?気にしません。それにしても、あのワポルという人、きっと愛されていたんでしょうね」

「?」

「父親に愛されて甘やかされて、心も脳もとろけてしまって………羨ましいですね。あんな風にわがままを言えるように育てられるなんて」

 

 こっちは無限の剣製とか王の財宝とか魔術王の力とか欲しいの沢山あったのに選ぶ権利なく桜だぞ。しかも女に変えられるし……。

 と、不意に扉が勢いよく叩かれる。すぐに構える俺とシトナイにチョッパーとシロウ。Dr.くれはは落ち着いて酒を飲んでいる。

 

「Dr.くれは、居るなら開けてくれ!」

「………開けてやんな」

「え?う、うん……」

 

 シトナイは困惑しながら扉を開ける。そこには息を乱した大男がいた。

 

「ドルトンかい……どうしたんだい?」

「避難してくれ」

「はぁ?」

 

 大男、ドルトンの言葉に首を傾げるDr.くれは。避難?まさかワポルにこの場所が見つかったのか?原作じゃそんな話はなかったが、描写されてねーか俺やシトナイみたいなイレギュラーが居るから起こったってとこか?

 

「海賊が現れた。その海賊が行ったという破壊行為のあった森を見たが、酷いものだった。ワポル達は既に国を捨てて逃げたが、海賊はまだこの島にいるらしい。一度、避難を……」

「「「……………」」」

 

 Dr.くれは、シトナイ、チョッパーの視線が俺に突き刺さる。ドルトンは釣られ俺を見て、君は?と首を傾げる。そして髪と目の色を確認すると何かに気づいたような顔をする。

 

「シトナイ君の姉、かい?」

「「………え?」」

 

 確かに改めてみれば髪の色や目の色は一緒だ。顔の造形は当然異なるが、珍しい髪と目の色を持ってるとなれば似てない姉妹と思えなくもない。

 

「違うわ。この人はサクラ、ドルトンさんが探してる海賊」

「…………へ?」

「こんにちは、海賊です。海賊名は………そういえば決めてなかった」

 

 黒桜海賊団?いや、何かなぁ……漆黒海賊団、もあまり語呂がよくない……ヤミヤミ……闇……

 

「闇夜海賊団船長、クロ・D・サクラです」

「では、君があの破壊を?いったい、何の目的で」

「目の前でこんな幼気な子供が襲われていたんですよ?国王と名乗っていましたが、つい……」

「何だと!?ワポルめ、王妃を娶らないから実はそちらの趣味ではないかと疑っていたが、まさか本当に……!」

 

 くっ!と歯軋りするドルトン。シトナイはえ?と此方をみる。何だよ、嘘は言ってないだろ?

 

「病人を見つけ、Dr.くれはの下に向かおうとするシトナイを隠れて襲い、いきなり抱きしめていたんです。複数の部下も用意して………シロウが居なければどんな目にあっていたか」

 

 片方の手で涙を拭う降りをしながらあいた手でシロウの頭を撫でてやる。おお、フワフワ……。

 

「本当なのかい、シトナイ君………」

「へ?ええっと……まあ、嘘ではないけど、なんか…違う、ような………いや、確かにサクラの言うとおりだけど」

「やはり!おのれ、ワポル!今まで見過ごしてきたが、もはや許せん!帰ってくれば即行海に沈めてくれる!」

 

 おお、ドルトンが燃えてる。ま、俺は嘘はいっさいついてないから責められる要素は何にもないな!

 

「では、島民達には安全だと伝えてこよう。ワポルを追い出してくれてありがとう」

「?責めないのですか?」

「ふ、奴が居なくなって困るような奴は、奴と一緒に逃げてるよ」

 

 

 

 ドルトンが去るとDr.クレハは俺の世話をシトナイに任せ病人の下に向かった。シトナイは片付けが終わるとお茶を持ってきてくれた。

 

「ところでシトナイ」

「ん?なあに?」

 

 シロウにしなだれながらふぁ、と欠伸したシトナイは目を擦りながら顔を此方に向ける。

 

「私と一緒に海に出ませんか?」

「!?良いの……!?………あ」

 

 と、口を押さえるシトナイ。海には出たい、けどここから離れたくないといったところだろうか?

 

「外は楽しいですよ?空に浮かぶ島だってあります」

「空島?本当にあるの!?」

「何時か本物の桜も見れるかもしれません………それに、チョッパーと、あまり仲良くできてないみたいだし」

「……………」

 

 さっきチョッパーが心配してよってきた時、何とも言えない顔をしていた。原作を思い返せばDr.ヒルルクはチョッパーが持ってきた毒キノコをチョッパーの為に食べて、チョッパーの毒キノコで死なないために自殺したからな。

 

 

 

 

 

 

「あの、師匠……」

 

 サクラが宿を取りに行って、戻ってきたDr.くれはに話しかけるシトナイ。チョッパーは寝てる。

 

「あの女に海に誘われたかい?」

「………わかるの?」

「何年アンタ等を見てると思うんだい。それぐらい解るさ」

「…………」

「行ってくりゃ良いさ。あんただってあの男に聞かされたいろんなものを見たいんだろ?それに、チョッパーとは一度離れた方がいい」

「………うん」

「行くんなら早朝にするんだね。チョッパーがついて来ちまうよ」

 

 

 

 

 ワポルを追い出したことで感謝され宿代はただになった。ついでに昨日の夜に城から高く売れそうなもん全部かっぱらっといた。

 さて、船医はどうするかな。原作キャラNTRはしたくないし、シトナイみたいな原作にいないキャラか、原作でルフィの仲間にならなかったキャラがいいんだけど……。

 と、その時扉が叩かれる。こんな早い時間に、何だ?

 

「はーい………あ」

「お、おはよう」

 

 シトナイだった。屈んで視線を合わせる。

 

「あの、私も……ついて行って良い?」

「もちろん!大歓迎です……けど、何でこんな早く?」

「………チョッパーも来たがるから。あの子も、海に憧れてる」

「そっか……じゃあ、急がなきゃね」

 

 一応この島では英雄扱い。時間が時間なら間違いなく見送りが大量に来る。なら、チョッパーに気づかれるな。

 外に出るとシロウが待っていた。シトナイはシロウに乗ると振り返る。

 

「………乗る?」

「良いんですか?」

「うん!」

「では……ほわぁ」

 

 フカフカ。気持ちいい。シトナイはふふん、と誇らしげな顔をする。

 

 

「……船は?」

 

 港にたどり着くと船がないことに首を傾げるシトナイ。俺は闇を広げる。

 

「ここにある」

「───へ?」

 

 闇の中から船を取り出す。シトナイもシロウも顎がはずれそうな程大きく開く。

 

「……お姉さんも、能力者なの?」

「ええ。それと私のことはサクラで構いませんよ。それか船長でお願いします」

「あ、うん……じゃあ、これから宜しくねサクラ!」

 

 

 

 闇の引力で引っ張らされる俺の船は風があろうと無かろうと関係ない。帆の調整も必要ないから楽だ。時折ログポースを確認すればいい。

 

「そろそろ冬島も見えなくなります。最後に一目みては?」

「そうね……」

 

 まあ、大砲を移動させる都合とチョッパーにバレないように、って考えると桜は咲かないだろうな。見たかった。

 

「ね、ね……それで、次はどんなところに行くの?」

「空島です……せめて見聞色だけでも覚えたいんですけど……」

 

 と、冬島も見えず気候の外に出たのか暖かくなってきた。防寒コートを脱ぎ捨て黒ひげコートを羽織る。

 

「………サクラ、何その格好」

「私の普段着ですが?」

 

 ついでに下には水着をつけている。下だけ……。

 

「その格好恥ずかしくない?」

「恥ずかしくないですよ?」

「や、私は恥ずかしいんだけど」

「そうですか……じゃあ仕方ないですね」

 

 と、コートを脱ぎ捨て闇で作った帯を纏う。これで完全に黒桜だな、見た目は。

 

「………それ、今能力で作ったよね?」

「ですね」

「じゃあサクラって今全裸なんじゃ………」

 

 細かいところに気づくな。と、その時、何かが飛んできたので黒帯で飲み込む。

 

「ほら、こう言う時便利じゃありません?」

「いやそれより攻撃されてる事に気づこうよ!」

 

 ああ、そういえば。振り返ると海賊船が見えた。海賊旗は、若干斜め横を左右にそれぞれ向いた二つのドクロ。片方はウインクしており片方はウサ耳が生えている。交差した骨の代わりに交差したカトラスとマスケット銃が描かれている。

 

「か、かか、海賊ぅ!!」

「落ち着いてくださいシトナイ。私達も海賊ですよ?まだ海賊旗つけてないけど」

「それって……商船とかと間違えられて襲われたんじゃ」

「海賊同士が争うことも珍しくないでしょう。大丈夫、此方には能力者が二人もいるんです。相手してやりましょう……賞金首だったら、首を切り落としてお金に換えれますしね」

「私が想像してた海賊より血生臭い!」

 

 と、文句を言いながらも氷の弓矢を構えるシトナイ。しかし、あの海賊旗………何かを連想させるような?




い、いったい何処の海賊なんだ(すっとぼけ

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