ヤミヤミの桜   作:超高校級の切望

4 / 13
二度あることは三度ある

「海賊が撃ってきた!どうするのサクラ!」

 

 慌てるシトナイかわいい。けど既に氷の矢を放つ準備をしているあたりは流石だ。

 

「取り敢えず私達の船には金目のモノはないと伝えてみますか。それで駄目なら、倒しちゃおう。そして傘下に加えてみよ?」

 

 そう言って闇で砲弾を飲み込む。空気と一緒に。

 

『解放』(リベレイション)

 

 吸い込んだ空気と共に砲弾を放つ。先程より遙かに速い砲弾は海賊船のマストに向かい、二つに切り裂かれた。

 切り裂いたのは男物の黒いコートを羽織り、その下は白のハイレグ、頭には黒いウサ耳。

 

「なんですか、あの珍妙な格好は。恥ずかしくないんですかね?」

「さっきまであれより大概だったし今に至っては実質全裸のサクラには言われたくないと思うけど」

「ま、まさかシトナイ、私が脱いだり見せたりするのが大好きと思ってません?」

 

 違うの?と首を傾げるシトナイ。心外だ、見せたいなら隠さない。

 

「これは攻撃への対策ですし。いえ、攻撃そのものに対する対策、かな。私の体は、人一倍痛みに敏感なので」

「対策?って、また撃ってきた!」

 

 シトナイが不思議がっているとまた爆音が聞こえてきて、砲弾が飛んでくる。狙いは俺。狙撃手、いい腕してるな。欲しい。というかさっきの女の子を見るに、そういうことなんだろうなぁ。

 今度は防御しない。シトナイが慌てて撃ち落とそうとするが手で制する。砲弾は、俺の纏う闇に飲まれた。

 

「………へ?」

「ヤミヤミの実は他の自然(ロギア)系と違い、体を食べた実によって得る能力その物にしてかわす、なんて事は出来ないけれど、応用は意外と利くんですよ?」

 

 ようするに全てを飲み込む闇を纏って全ての攻撃を飲み込む状態な訳だ。まあ原作黒ひげが街全体に広げても直ぐに飲み込まなかったように、普段は本当に纏っているだけ。飲み込むには意識しなくてはいけない。そういえばこれ、覇気にはどんな反応をするんだろ?覇気はあくまで流動する体の実体を捉える力であって、悪魔の実の無効化能力はない。

 これは悪魔の実の力を発動している状態で実体を解いている訳ではない。流石に覇気使って炎を散らせても消し去る、なんてどこかの不幸少年の右手みたいな事は出来ないだろうし───

 

「サクラサクラ!さっきから撃たれまくってるよ!?」

「あ」

 

 考え事しすぎていた。放たれた砲弾は全てシトナイが矢で撃ち落としてくれていたらしい。俺の顔に向かって飛んできた砲弾は黒帯を動かし飲み込む。

 

「しかしここまで撃って効かないのに引く様子がありませんね。余程の自信家か、ただのバカか、あるいは……」

「あるいは?」

「死も恐れない狂人か───」

 

 狂人、なんだろうな。彼女達は前の世界では有名な女海賊。私掠船の襲撃を受けていた。船長を始めとする男連中が最後まで戦わずに怯えて隠れている中、最後まで戦い続けた女傑だ。本人ではないのだろうが、シトナイのようにそっくりさんなんだろうが、本質は同じはず。

 というわけで、会おう。袖を伸ばして向こうの船の一部に引っかけ、パチンコのように飛んでいく。ヤミヤミのロケット!なんちゃって──

 

「──おっと」

 

 かなりの速度で飛んでいる筈の俺に向かって銃弾が飛んでくるが体勢を変え上に飛び、乗っていた二人の頭上を飛び越えマストに足を着ける。そのまま跳ねる………なんて事はせずに闇を足の裏に生み出し吸い込むことでマストに垂直に立って見せた。

 

「能力者?」

「の、ようですわね」

 

 感情の起伏と体の凹凸が乏しい先程見た少女と、赤い海賊コートを着たドエロい体型の色っぽく、それでいて上品さを感じさせる女性。間違いなくネットを与えたら堕落するアン・ボニーとメアリー・リードだ。此方で言うならボニー・アンとリード・メアリー、か?

 

「なんか今、失礼なこと考えられた気がする」

「奇遇ねメアリー、私もよ」

 

 銃とカトラスを向けてくる2人に警戒を解こうと笑顔で手を振ってみる。警戒は解けない。当たり前か。

 

「あの船の護衛ですか?」

「いえ、船長です。闇夜海賊団船長クロ・D・サクラ。宜しくお願いします」

「………僕は、メアリー……こっちはアン。それにしても、同業者?今は近くに島ないけど、偽装してた?」

「いいえ。まだ発足して間もなくて、海賊旗が決まっていないんです」

「あら駆け出しですの?私達と一緒ですわね……ではあの船にはお宝ない、と?」

「ある、と言ったらどうするんですか?」

 

 その言葉に2人はニコリと笑う。メアリーは微笑だが。

 

「「海賊らしく、略奪」ですわ」

「じゃあ、あります」

「「…………」」

 

 その言葉に二人はキョトンとする。顔を見合わせ、アンが口を開く。

 

「そこは普通、無いと言うべきでは?」

「ええ、まあ……実際お金と食料ぐらいしかありませんけど、あったと言った方がお二人もここに残ってくれるでしょ?」

「生憎と私たちも食料とお金ぐらいしか持ってませんわ」

「私が欲しいのはお二人ですよ。なにせまだ船長と船医しかいない小さな海賊団。船員が欲しいんですよ」

 

 と、顔の横を弾丸が通過する。敢えて外されたな。

 

「お前が欲しい、だなんて何とも情熱的なお誘いですこと。確かに私達も船員は欲しいですし……では海賊らしく行きましょう」

「戦って、勝った方がボス」

 

 その言葉と同時に銃弾が放たれる。頭に向かって……。即座に闇の中に取り込み、先程飲み込んだ砲弾を取り込んだ空気と共に放つ。メアリーはカトラスを振り切り裂く。

 鉄を切るとかこの時点のゾロより強くね此奴?

 

「やぁ!」

「──ッ!」

 

 速い!

 切りかかってくるメアリーのカトラスを避けて黒帯を伸ばすがアンの銃弾が向かってくるので防御行動に切り替えざるを得ず逃げられる。

 マスケット銃だから連発式ではない筈なのに連射してる。何かの能力か?

 

「何で、そんなに、連射できるんですか──!」

「ふふ。何でもジュウジュウの実を食べさせた銃という、よく解らない道具でして、弾を何度でも撃てますの」

 

 何それ分けわかんない。ていうかそれ、Dr.ベガパンク製だよな?此奴、海軍のお偉いさんの娘か……。

 

「面倒くさいですね………黒渦」

「「───っ!?」」

 

 両手に黒渦を生み出しメアリーとアンを引き寄せる。アンは即座に体勢を整えながら切りかかってくるが無数の黒帯でどちらも縛り付ける。

 じたばた暴れるがふりほどけるはずもなく、アンが銃を撃とうとするが悪魔の実の力である以上闇に触れている間は能力は発動できない。

 

「なかなか面白かったですよ。私の力が初見じゃなければ、もっと苦労してたでしょうね」

 

 さん、と乾いた音が聞こえた。見ればメアリーが黒帯を切り裂いていた。って、嘘!?

 慌てて足下に闇を流すが距離を取られる。ので、船全体を覆う闇を生み出した。甲板も手摺りもマストも、だ。慌ててマストに立てかけている網にぶら下がるが闇から大量の黒帯が伸びる。

 

「───こーさん」

 

 メアリーはそう言うとカトラスを放り投げる。チラリとアンを見るとムグムグ唸っていたが、肩を落とし引き金から指を外す。俺は闇を解除する。服以外のな。

 

「能力者の厄介さは話に聞いていましたが、これほどとは……お父様のコレクションから海楼石の弾丸を持ってくるべきでしたか」

「あー、そういうの知ってるってことは、海軍の?」

「正確には世界政府と繋がりがある貴族の、武器コレクターの娘、ですわ……駆け落ちで飛び出たんですけど、彼ったらだめだめで、別の男を見つけたんだけどそれも、ね……だからメアリーと一緒に海賊団を作ろうってなったのですわ」

「ん……初戦、敗北だけどね」

「まあ私が強すぎたと思って諦めてください」

 

 なにせ痛みに人一倍弱い設定があるくせに白ひげの攻撃ゼロ距離で食らって生きてるような黒ひげスペックだ。能力を消すとはいえ白ひげの拳も受け止めるし、駆け出し海賊にやられるほど弱くない。

 取り敢えず食料や火薬、砲弾などを闇に飲み込んだ後、天輪を二つ作り俺と二人を浮かせる。二人の上には少し巨大なの。上から引っ張られるという妙な感覚に戸惑っていたが暴れはしないのでやりやすい。

 

「空を飛ぶのもなかなか悪くない」

「そうね。ねえ船長、これ夜にやってくださらない?」

「その日の夜私と寝てくれるんなら考えてあげますよ」

「あらやだ、船長だからって変なことしないでくださいまし?」

 

 と、顔をしかめるアン。メアリーはそっちの趣味?と首を傾げる。船に戻るとシトナイが警戒を解かず矢を弓につがえていた。

 

「シトナイ、彼女たちは仲間になりましたから、安心してください」

「見てアン、おっきい熊」

「本当。それに真っ白な毛……この船、白い毛の人多すぎません?肩身が狭いんですが……」

 

 と、おちゃらけるアン。確かにシトナイも俺もメアリーも白髪なのにアンだけ金髪だ。

 

「ふふーん、シロウは可愛いでしょ!」

「うん。すごく……撫でて良い?」

 

 幼い少女達が仲睦まじそうに笑い合う姿に俺もアンもにっこり。しっかし、四人集まって全員女か………いっそ女だけの海賊団とか作るか?

 

 

 

「「「クォウ!」」」

「そうではない。槍を穿つ時、槍先よりもまず槍を握る手を意識しろ」

 

 物資の補給に近くの島、アラバスタ王国がある砂漠だらけのサンディ島の海岸、その二人は居た。

 

「「「クワァ!」」」

「はい、そうです。それがパンクラチオンです」

 

 クンフージュゴンに槍を教える白髪のイケメンと格闘技を教えている長髪のイケメン。此奴等絶対仲間にしよう。




いったい何処の英雄と英雄の師匠なんだ!?(白目

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。