ヤミヤミの桜   作:超高校級の切望

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空島の秘密

 (ダイアル)の研究をしているという女性の拠点に赴く。

 (ダイアル)は空島終了後でも色々役立つアイテムだ。それを研究している技術者となれば当然欲しい。

 

「ここです。レオナルドさん、失礼します」

 

 …………今レオナルドって言った?

 

「やあやあパガヤ君、コニス君。どうしたんだい?」

「こんにちはレオナルドさん。実は貴方が(ダイアル)の研究をしてると聞いて、この方達が会ってみたいと」

 

 と、パガヤの言葉に視線を俺達に移すレオナルド。ふむ?と此方を見る。

 物凄い美人だ。左腕にはメタリックな籠手をして、肩には金属製の鳥。じっと此方を見たレオナルドは唐突に手を伸ばし───

 

「───ほぉ」

「………へ?」

 

 俺の胸を揉んだ。

 

「───!?な、何を!?」

 

 慌てて胸を押さえ距離を取る。いきなり胸を揉まれた!何なの此奴!?

 

「いやすまない。そのいっさい光を反射しない謎の布に興味があってね……ふむ、布ではない。かといって、皮でもない……感触的には皮膚に近いような、それでいて靄でも触ってるような……」

「これは、能力で造ってますから」

「ほう、能力?いったいどんな?」

「ヤミヤミの実です」

 

 ヤミヤミ?とオウム返しで首を傾げるレオナルド。

 

「闇って、あれだろ?光がない状態……それが物質か?悪魔の実というのは、本当に理不尽だね」

「この闇は光をも吸い込む、らしいですが」

「ああ、光が無くなる闇じゃなくて光を飲み込む故の闇なのか。確かにそれなら、引力が発生する以上質量が存在しても不思議ではないか……となると君は所謂全てを飲み込む闇粒子とも呼ぶべき物を操ると考えて良いのかな?普段は光を吸い込むだけのようだけど」

 

 と、俺の腕を持ち上げ腕に絡まる黒帯を眺める。

 

「吸い込んだモノを収納も出来るみたいですけど」

「ほう?では、この闇は引き寄せ、その空間に飲み込む入り口でもあるのか。ますます興味深い……」

 

 ズズイと近付いてくるレオナルド。いい匂いがする。

 

「………と、すまないね。興奮しすぎた。改めて、私の名はレオナルド・ダ・ヴィンチ。気軽にダ・ヴィンチちゃんと呼びたまえ」

「よろしくお願いしますダ・ヴィンチちゃん。それで、貴方はここで1人(ダイアル)の研究を?」

「元々仲間が居たんだけど、何か、何時の間にか居なくなってた……」

 

 あはは、と頭をかくダ・ヴィンチちゃん。置いてかれたな。

 

「まあこの島での研究はだいたい終えたんだけど、帰るタイミングに恵まれなくてね。暇つぶしに発明なんかしてみたんだけど……ダ・ヴィンチちゃん印のウェイバー、買ってくかい?」

「研究は終えたと言いましたが、噴風貝(ジェットダイアル)斬撃貝(アックスダイアル)の研究は?」

「絶滅種に希少種じゃないか、流石に市販に出回っていない物の研究は出来てないよ」

「私、ある場所知ってますよ?」

「………何だって?」

「アッパーヤードにあるんですよ」

 

 嘘ではない。すでに神官や神兵の持ち物になってる、という言葉が足りないだけだ。いっさい嘘は吐いてない。

 ダ・ヴィンチちゃんの目がキラキラ輝く。

 

「ほほう!?その話は本当だろうね?アッパーヤードに、絶滅種の貴重な貝があるというのは」

「ええ、本当です。宜しければ取ってきましょうか?」

「いやいやそれなら私も行くよ。それで?その情報はもちろん、ただじゃないんだろ?」

「ええ、私達の仲間になって欲しいんです」

 

 ふむ、と顎に手を当て考え出すダ・ヴィンチちゃん。

 

「君は旅人なのかな?」

「海賊です。だから、政府が禁止するようなことでも出来ますよ」

「それを貫き通すだけの強さが、君達海賊団にある、と?」

「…………さあ」

「………へ?」

 

 肯定しなかった俺にきょとんとするダ・ヴィンチちゃん。まあだけど、肯定しようがないしな。

 

「私はこの世界全ての強さを知るわけじゃない。能力を知る者も、過去を知る者も多いけど、直接戦ったこともない相手を必ず倒せるなんて言えない。それに、海賊ですよ?好き勝手生きて、敵対されたら自分の責任。仲間ですから守りますが」

「ははは。危険な目に遭うのは自己責任か、いやいや全くその通り。適当な言葉で飾らないのは気に入った。良いよ、君の仲間になろう。中々面白そうだ………それで、君たちの海賊団の名前は?」

「さっきまで夜桜海賊団だったんですが………この顔ぶれ………そうですね。どうせまだ名も知られていないわけですし、名前を変えましょう。構いませんか?」

 

 ここまで仲間になった面子が全員英霊そっくりさんだ。なら、名乗る名は一つしかあるまい。超

 

「カルデア海賊団。それが新しい、私達の名です」

 

 

 

「さて、それではそろそろ空島の憲兵が来るので、適当に痛めつけましょう」

「何故だ?」

「そうするとアッパーヤードに向かえるので」

 

 俺の発言に訝しむカルナにそう説明する。抽象的だが間違いではないはずだ。と、その時匍匐前進する変な集団が現れた。

 

「全隊、止まれ~~~!!」

 

 止まった変な奴らは立ち上がり人差し指と小指を立てて頭の後ろに持って行き角のように見立てる。

 

「へそ!」

「へそ」

「どうも、へそ」

「やあ、へそ」

 

 相変わらず変な挨拶だ。ダ・ヴィンチちゃんは空島生活が長いからか普通に挨拶してるけど。と、変人の隊長が俺達に向き直る。

 

「貴方達ですね!?青海からやってこられた、不法入国者6名というのは!」

「ええっ!?不法入国!?」

「おや君達不法入国者だったのか」

 

 パガヤとコニスが驚きダ・ヴィンチちゃんはどうでも良さそうに言う。カルナは何を考えているのかジッと男達を眺める。

 

「…………まさか!そんな馬鹿な!何かの間違いではマッキンリー隊長!!彼等はそんな悪い人には──!」

「まあ海賊だから悪くはあるんだけどね」

 

 と、ダ・ヴィンチがクスリと笑う。見た目は超絶美人で、こういうどこか子供っぽいと言うか自分に素直というか、こういった態度が可愛いな。

 

「妙なものだ」

「………何がでしょう?」

 

 不意につぶやかれたカルナの言葉に隊長が反応する。

 

「俺達が犯罪者だと言うことは解った。それは認めよう。で、あるならば、お前達は何を恥に思う」

「───っ!」

「お前達の目は、民を守ろうとする兵士の目ではない。己の所行の浅ましさに耐えきれず、しかしその罪を告白する勇気もない、そう言った者達の目だ。お前達は犯罪者である俺達を捕らえに来たのだろう?ならばそれは国を守る誇るべき行いだ。罪悪感など覚えず、誇りを持って職務をまっとうすればいい」

「────ぐ、うぅ」

 

 カルナ、悪気はないんだろうけど自分の行いを今まさに恥じているホワイトベレーの連中にそれは完全に煽ってるようにしか聞こえんな。と、マッキンリーが片手をあげる。

 

「今のは間接的に神官侮辱罪に当たり、()5()()()()に値している………“(ゴッド)・エネル”の御名に置いてお前達を雲流しに処す!」

「………そうか。恥を貫くか、残念だ」

「「「────!?」」」

 

 カルナの言葉とともに風が吹き抜けた。次の瞬間ホワイトベレー達は全員気絶した。

 

「────覇王色?」

「おや、博識ですねサクラ」

「へぇ、話には聞いていたけど、実際使用されたのを見るのは初めてだ。カルナ、今度私にもやってみてくれないかな?」

「船員に、か?気乗りはしないな……船長にやってもらえ」

「え、私も持ってるんですか?」

「ああ……」

 

 それは、黒ひげとして?それとも俺として、か?わっかんね。まあ良いか。しかしダ・ヴィンチちゃんよ、そんなにキラキラした瞳を向けてくるのに悪いんだが……

 

「私、使い方解りませんよ?」

「そうなのかい、残念だ………」

「そう言えば覇気についてまだ教えていませんでしたね。能力の特性上、自然系(ロギア)にも有効だから忘れてました。修行に組み込まなくてはなりませんね、何せ新世界を目指す海賊なのですから」

「………………」

「はは。どうしたのですか変な顔をして。何、目隠しして私の矢を避けさせたり、覇気を纏わせた矢を生身で受けさせたりするだけです」

 

 おぅ……。

 

「カ、カルナは教えてくれますか?」

「俺は……初めてやったら出来た。参考にはならないと思う」

 

 畜生天才め。そう言やこの先には生まれた時から見聞色………心網(マントラ)が使える奴とかもいるんだっけ?羨ましい。

 今に思うと映画のお祭り島の末っ子も生まれつき見聞色が使えたのか?それも心の声が聞こえるレベルの……。

 

「まあこれで私達も第2級犯罪者。そのうち迎えがきますから、準備だけすませておきましょう」

「あ、なら私の発明品を持って行こう。きっと役に立つ」

「じゃあ私達は船で待ってるね~」

「船長が帰ってきしだい、迎えに関係なく向かいませんこと?」

「ん、黄金が僕達を待ってる」

 

 船に残るのはシトナイ、シロウ、アン、メアリー、ケイローン先生。ダ・ヴィンチの荷物取りにダ・ヴィンチちゃん本人と荷物運びが便利な俺と護衛のカルナ。

 

 

 

 

「あれ、船が出航してる」

 

 ダ・ヴィンチちゃんの宿に向かう途中、ダ・ヴィンチちゃんが不意に呟く。本当だ、超特急エビに捕まり運ばれている。

 

「あれが船長の言っていた迎えか」

「はい。まあ、運ばれている途中は手出しされませんよ。私達も私達で向かう足を見つけましょう」

「あ、あの……それなら私が船を用意できます」

 

 

 

 

「……………」

 

 エンジェル島の船着き場に向かう俺達。周りの視線になにを思ったのかカルナはしきりに無言で彼等を見つめ、カルナの目を見た者達は皆見透かされたくない何かを見透かされたかのように視線を逸らす。

 

「カラス丸です」

「はっは!見事な小船だ、こんな事なら私も船を造っておくべきだったかな。ダ・ヴィンチ印の改造ウェイバー乗れるの私ぐらいだからね」

 

 カラス丸を見て笑い出すダ・ヴィンチちゃん。皮肉でも馬鹿にしてるでもなく、単純に楽しんでるなこの人。

 コニスは二番ゲートから出て巨大なミルキーロードに乗ればいいと教えてくれる。と、不意にカルナが口を開く。

 

「コニス、感謝しよう。お前のおかげで仲間達を迎えにいける。助かっている、これは紛れもない本心だ。故に聞かせてほしい、何を悲しむ」

「────ッ!」

 

 カルナの言葉に唇をかむコニス。核心つくな此奴。

 

「………おかしいと、思わなかったんですか?「試練」のルートを丁寧に説明したり、ここに自ら案内したり……まるでここへ貴方達を誘導しているみたい」

 

 と、コニスの言葉に周りの白海人達が目を見開き慌て出す。

 

「貴方!おやめなさい!馬鹿なことを口にするもんじゃない!」

「………ああ、なるほど。彼等全員……何となく距離があると思っていたが、てっきり私が変人として見られてるのかと」

 

 ダ・ヴィンチちゃんの事だからそれもあったりして、と目の前で泣き出したコニスがひざを突く。

 

「……逃げてくれませんか……?」

 

 また、周囲の者達がざわめく。中には既に距離を取り始める者でいる。

 

「ごめんなさい……!!」

「よせ!」

「何を言うんだ!」

「超特急エビを……皆さんの船を運んだエビを呼んだのは、私なんですよね!」

 

 周りの騒ぎがピークに達した。カルナは、相変わらずコニスを見ている。

 

「犯罪者を確認したら裁きの地に誘導しないと、私達が殺されてしまう!」

「やめたまえ君!自分が何を言っているか解っているのか!?神への冒涜だぞ!」

「あの女を抑えろ!」

「──これが国民の義務なんですよね!ごめんなさい!!……おかしいですよね?何も、かも…」

「………そうか」

 

 カルナはコニス慟哭が終わるとポツリと呟く。

 

「その自白に免じて、お前を許そうなどとはとても言えん」

「っ!───はい」

 

 コニスは絞り出すように呟く。と、周りの白海人達はもはや止めようとする者も無く全員が距離を取った。神の裁きとやらが来るのだろう。

 空が光り───

 

 バチィィン!!と言う音と共に降ってきた光が弾け飛び遅れて爆風が吹き荒れる。

 

「………え、何………が」

「だが、良く話してくれた」

 

 何て事はない、カルナが槍の一振りで人一人簡単に消滅させる威力を持った雷を消し飛ばしたのだ。ダ・ヴィンチもおー、と口を開けて呆けている。

 

「………なんと」

「あ、空の騎士………」

 

 不意に聞こえた声に振り返ると鎧を着たおじいさんが翼の生えた馬に跨がり目を大きく見開いていた。ていうかダ・ヴィンチちゃんは知ってるのか。

 

「御老人。今この瞬間現れた貴方は、神とやらに敵対する者と見て構わないか?」

「あ、ああ………スルーズから聞いておる。来たばかりの、青海人」

「いえ、オルトリンデでした」

「あ、そうじゃったすまん………」

「で、あるならこの娘を任せたい。守ってやってはくれまいか?」

「うむ、そのつもりだ。お主等はどうするのかね?」

「船長の判断に従うまでだ」

 

 と、カルナ。

 

「もちろん仲間を迎えに行きます」

「あ、そうだ。そのウェイバー、調整がまだなんだ、後で直しておきたいから預かってくれないか?」

 

 元神をパシりにしてるダ・ヴィンチちゃん。空の騎士も戸惑いながら、それでも運んでくれるらしい。良い人だ。

 

「ところでカルナ、さっきの許すとは言えない、というのは………もしかして攫われたシトナイ達が許すか断言できないという意味で、貴方自身は許してたりします?」

「?許すも何も、俺は彼女の行動に怒りなど覚えていない」

「………ですよね」




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