ミルキーロードを下っていると巨大な木々の森が見えてきた。
「大きな木だねぇ。樹齢何年なんだろ?これも空島の環境によるものかな?」
「動物も巨大化してますよ」
「へえ、楽しみだね」
本当に楽しそうに笑うダ・ヴィンチちゃん。これから向かうアッパーヤードに一切の恐怖を覚えてなさそうだ。既に入り口付近に差し掛かる。
「カルナ、向かってくるもの全て焼き払ってください」
「了解した」
その言葉と同時に向かってきた巨大な振り子が焼かれ、鎖が溶け雲の川に落ちる。ドボォォン!と水面が揺れ船も揺られる。
一つが動けば他のも動く仕掛けなのかどんどん動き出すが進行先に動いてるのはちょうど良い。全てが重なった瞬間、カルナの放った目からビームが貫いた。
「凄いね、能力者かい?」
「ああ。オレはサンサンの実を食べた、太陽人間だ」
「太陽って、あの空に浮かぶ火の塊の?凄いね、推定何億年と光り続けるエネルギーの塊じゃないか」
ダ・ヴィンチちゃんが感心する。この世界、太陽について詳しく解ってるのか知らんが少なくともカルナは数億年分のエネルギーを宿したモノの化身というのは解るだろう。
「しかし太陽か、間違いなく炎熱系最強の悪魔の実だろうね……何で有名じゃないんだろ?」
「サンサンの実に関する文献はオレの国に残っていた。大抵は、その力を扱えず焼け死ぬそうだ……」
「つまりカルナ君の才が歴代を上回っていたわけか」
「………ところで、その鎧もその能力に関係あったりします?」
fate……というか原作インド神話においてカルナの纏う黄金の鎧は太陽神スーリヤから授けられた鎧だ。この世界では、どうなのだろう?
「船長と似たようなものだ。オレは
「へぇ、でも君覇気が使えるんだろう?その覇気を突破されたことはあるのかい?」
「…………ないが」
此奴鎧着てる意味あんのか?まあサーヴァントじゃないからマスターの魔力なんて必要としない完全姿なんてレアだが…………此奴四皇に勝てんじゃね?
「しかし太陽と闇、か。何とも奇妙な組み合わせだ………おや?」
お、試練の入り口が見えてきた。沼、鉄、紐、玉の試練。生存率は確か沼から順に50、0、3、10だったか?
まあカルナが居る以上生存率100%の気がする。さてどれにするか。取り敢えず
「───ひ!?」
ビクン!とシトナイが震える。グルゥ?とシロウが心配そうにすり寄ってきた。
「な、何でもないよシロウ……なんか、ちょっといやな予感がしただけ」
シトナイはキョロキョロと周囲を見回す。何だったんだろう、今の悪寒。単なる気のせいだと良いのだが……。
「皆何処かに行っちゃうし………この船も底に穴が空いちゃうし……そろそろ換え時かなぁ」
まあ愛着がわくほど乗ってもいないし、今回黄金が大量に手に入るらしいからそのお金でさっさと次の船を買おう。なんか、仲間がどっか行っちゃったし……黄金を持ってくると信じよう。
「…………」
チラリと笛を見る。これを吹けばオルトリンデか彼女の姉妹達、もしくは主が飛んでくるそうだが……と、不意に影が差す。
ゆっくりと振り返る。そこには───
「───何処に消えた?」
「白目むいてる!?」
蜘蛛みたいな髪型をした白目をむいた男が立っていた。何で白目向いてるんだろう、前が見えないのに。変な奴だ……。
「……白目?はっ!うっかり白目をむいてしまっていた!」
「………………」
「娘、おれは『空番長』ゲダツ!全能なるんんんん、んんんんんん!!」
「………………」
ピィィィッ!と、笛の音が響き渡った。
「これはこれは、玉雲か……随分な量だね。けど、これ加工雲は大した面白味もないんだよなぁ」
周囲に無数に浮かぶ玉雲を見てダ・ヴィンチちゃんがつまらなそうに言う。まあ加工雲なんてスカイピアでも確認できるしな。とはいえこの玉雲は中に何か色々入ってるびっくり雲だけどな。
「カルナ、進行の邪魔なので全部消しとばしちゃってくれません?」
「それは出来ない。あの玉の中には、生物が居るものもある。彼等の巣だ…縄張りに進入しているのは此方なのに、彼等を脅かすのは道理にあわん」
まあカルナならそう言うわな。予想してたから特にショックとかはない。
と、その時カルナが上を見上げる。
「ほーう!ほほう!青海にも
その声にカルナの視線を追うように上を見上げると、玉のような体型の男が居た。
「ほっほほう。へそ!よくぞ我が玉の試練を選んで───」
「ケイオスタイド」
「────ほ?」
俺は闇を津波のように放つ。台詞?聞いてないよ。如何に攻撃が読めるからといって、雷の速度で動けるエネルでもないんだ。範囲攻撃ではい終わり。が、慌てた気配を感じない。
「アイイイイイイイッ!!」
ドプンと突き出された腕が飲み込まれた。
「───へ?」
「残念ながら、それに
だって実体のない闇だしね。驚愕したデブは、そのまま闇に飲み込まれた。
「や、闇が───」
デブの精神が壊れた。そういやインペルダウンで飲まれた奴もこんな感じになってたような、なってなかったような。
「
ダ・ヴィンチちゃんは残念そうだった。
「沼雲バーガー!」
「わ、とと!剃!」
シトナイはゲダツが放つ沼雲という沼のような性質を持った雲をかわす。さっきシロウが食らった。沼雲を凍らせて引っ張り出したけど。
相性は、一応良い。雲……水分の塊である以上凍らせてしまえば最早雲として成立しない。だからゲダツの沼雲は効かないし
(ありがとうケイローン先生!鬼とか悪魔とか鬼畜とか思ってごめんな───や、そっちは事実か──)
彼の修行が無ければ今頃やられていたと言う自覚はあるが、修行内容が修行内容なので素直に喜べない。
「えい!」
「ふぬん!」
氷の矢を放つが弾かれる。やはり致命打にかける。というか───
「助けはまだなのぉぉぉ!?」
笛を吹いてからだいぶ経つ。まだ助けはこないのだろうか。と、シロウがゲダツに向かって爪を振るう。
「ぬお!己、畜生風情が邪魔を!」
「……っ!危ない、シロウ!」
と、ゲダツがジェットパンチを放とうとしたのを見てシトナイが叫ぶ。如何に強靱な肉体を持つ熊のシロウでもあの一撃は危険だ。
「ジェ───ぬぅ!?」
が、その拳は放たれることはなかった。空から現れた騎士が放ったランスの一撃をかわすためだ。
「少々待たせた」
「知らない人!」
「我が輩、空の騎士である」
「え、じゃあオルトリンデさんの上司?」
「ガン・フォール!」
ゲダツが叫ぶ。どうやら空の騎士の名はガン・フォールというらしい。
「なかなかの相手だ。不足はない、少々手荒に行こうぞピエール」
「ピエ~~!!」
「老いぼれめが、んんん、んんんんんん!!」
「唇を噛んでいては何と言いたいのか伝わらんぞ」
「────ッ!」
雲を放出する靴で空を飛ぶゲダツはガン・フォールの言葉にはっとする。あれはうっかりというか、最早単なる馬鹿だ。あんなのに負けたくない。
氷の弓に氷の矢をつがえ、力を溜める。
「おのれ!姿を消すとは卑怯なり!」
白目を向いて何を寝言言っているんだろうこの馬鹿は。だが、丁度良い。まずは一発。
氷の矢が飛んだ軌跡に巨大な氷柱が生まれる。
「無駄だ!姿が見えずとも
「なら、こう言うのはどう!?」
氷柱の上をシロウがかける。その背中にはシトナイ。
「……ぬ!?」
シロウの速度が上がる。ゲダツの予想を超えて……。
「ジェットパンチ!」
「きゃあ!?」
氷が砕かれる。投げ出されたシロウとシトナイ。ゲダツがさらにジェットパンチを放とうとする。
「させぬ!」
「邪んん!」
ガン・フォールが間に張り込み、殴り飛ばされる。だが、十分。
「
再び放たれる氷の矢。ゲダツはかわすが矢の軌跡が凍り付き足が固まる。シロウがシトナイの足場となりシトナイが跳ぶ。
動きが読めようと、動けなければ意味がない。シトナイの手の平がゲダツの顔に触れ、ゲダツが凍り付く。そのまま陸地に向かって蹴りつけた。
「お、とと………あ、あの人どうしよ……」
近くの蔓を掴むシトナイ。ゲダツのジェットパンチを食らったガン・フォールは雲池に落ちた。この中には大量の雲ザメの巣だ。そうでなくともシトナイは泳げない。さて、どうするか、と………
「ジョー!」
「………へ?」
迷っていると変な鳥が雲池に突っ込みガン・フォールを咥えて浮かび上がってきた。
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