どうもちゅーに菌or病魔です。そらのおとしものが終わってから約5年経ったという現実を受け止めきれない作者ですが、中々ご好評なようで何よりです。
その前にそもそもエンジェロイドとは何かという説明が必要かもしれない。
エンジェロイドとはそらのおとしものに登場し、背中に羽が生え天使のような見た目で鎖のついた首輪をしたガイノイドである。
首輪の鎖を
また、用途としては愛玩用、戦闘用、介護用等、様々な種類のエンジェロイドが存在する。そして、マスターの命令には基本的には逆らえなかったり、羽が水を吸うので水に浮かなかったり、基本的には眠れなかったりと色々な制限を持つ。そして、特に戦闘用のエンジェロイドに関しては、仮にドラゴンボールの人造人間と戦わせても特に劣らないレベルの戦闘力を持つスーパーマシンと言えよう。
まあ、要するに――。
束さんはマスターで、私は奴隷のようなものなのである。
◇◇◇
「Zzzz――」
「………………」
まず、起床して私を抱き枕にしつつ眠るマスターを引き剥がす方法を考えるところから始まる。カオスの設定なので、夢を見れるようにしたのは幸いだったな。寝れない身体は個人的に辛い。
マスターは私が来るまで睡眠なんて不要という、とんでもない生活リズムをしていたのでそれを正すところから始まった。結果は睡眠は世界の損失だの、凡人には必要で束さんには不要だのと小癪なレパートリーに富んだ反論を、隈の深い眼でしてきた。
そのため、もうどうしたら寝てくれるのかと逆に聞いたところ、私を抱き枕にすれば寝てもいいという大変迷惑なことを言われたが、仕方がないのでそのようにした。
こんな美少女と眠れることに最初はどぎまぎしていたが、そんなものは淡い現実であった。
「おぉぉぉ……!」
「Zzzz――」
万力だってもう少し可愛いげのある締め付けだと確信するほど、ガッチリとしたマスターのホールドをどうにか抜ける。馬鹿力とかそんな次元じゃない。腹立たしいことに私の身体が小さいので抜けれていたりする。
ちなみに寝る前はきっちり3時間だけ寝るとか言っているクセに、朝は起こさないとぜったいに起きない。放っておくと10時間以上そのまま寝て、起きたら寝過ぎたと言って私に泣きついてくるのでウザい。
「うーん……今日は和風かな。あっ、マヨネーズ切れてる……キュウリもなくなってる……夜食にしたな
どうにかラボにある台所についた私はエプロンを付けてから冷蔵庫を開ける。中身を確認して朝だけでなく、今日1日の献立や、買い足さなければいけないものを考える。
ちなみに来た当時はラボにキッチンどころか、流し台や冷蔵庫すら無かったので、ラボでの初仕事は最新式のシステムキッチンを建築することになったという経緯があったりする。
「~♪」
そして、背が107cmしかないので踏み台に登って料理をする。もちろん、髪が邪魔になるので後ろで結ぶことも忘れない。
ちなみに料理をしながら特に理由なく歌っている曲はRing My Bell。
「さてと……」
お味噌汁の匂いに釣られて起きるような奴なら苦労はしない。再び、束が眠るベッドへと向かった。
「Zzzz――」
「起きろー、マスター」
そこでにはヨダレを滴ながら眠っているマスターの姿があった。試しに揺すってみるが全く起きる気配がない。
「………………(つんつん)」
「Zzzz――」
可変ウィングを展開して、鋭利な先端でそこそこ強くつついてみるが、払い除けることさえしないレベルで反応がない。
「ふぅ……」
仕方なく手元にハート型の手榴弾を出現させる。これは攻撃する対象を絞ってそれだけにダメージを与える識別効果という摩訶不思議なモノが掛けられた手榴弾だ。つまりは部屋やベッドには一切傷をつけず、マスターだけを吹き飛ばすというギャグ時空に足を踏み入れた爆弾なのである。
基本的にマスターには逆らえないように設定されている私だが、こういった裏をかく大義名分さえあれば日頃の仕返しを出来ちゃったりするのだ。
まあ、その辺りはそらのおとしもので、智樹くんもイカロスに壁に埋められたりしているからな。
「………………(ポイッ)」
俺は眠るマスターに手榴弾を投げつけるとダッシュで部屋から出て扉を閉めて耳を手で塞で目を瞑る。そして、ワクワクする面持ちで爆発する時を待った。
「…………?」
しかし、いつまで経っても爆破音が聞こえない。不審に思って目を開けると、眼下にさっきマスターに投げつけた手榴弾が転がっていた。しかも貼り紙が付いており、こう書いてあった。
《君を対象にしておいたよ!》
次の瞬間、手榴弾は吹き飛び私は軽く宙を舞って壁に叩き付けられた。ちゃんと識別効果は機能しており、床や天井には一切ダメージを与えていない。
「ぐぇッ!?」
「おはよー、かーちゃん!」
叩き付けられた衝撃で潰れたカエルのような声を上げていると、いつの間にか起床したマスターが私の側にいた。ピコピコ揺れる機械のウサミミが勝ち誇っているようで癪に障る。
私の呟く言葉は決まっていた。
「
「ちょっと逆!? 副音声漏れてるよ!?」
なんでコイツのいる空間は何をしてもギャグ時空になるんだ……いや、身体能力やら頭脳やらがギャグの領域まで達しているんだよこの天才は……。
ちなみにかーちゃんというのは私の愛称らしい。というのも前世の名前を思い出そうとしたが、名無しの人造人間でいた期間が長過ぎたせいなのかは不明だが、全く思い出せなかったので、仕方なくイプシロンか、カオスを名前にすることにしたのである。
マスター曰く、"イプシロンだといっくんと響きが被るからかーちゃんね!"とのこと。よくわからん。
◇◇◇
「~♪」
朝ごはんを食べた後、私はいつもの修道服を着て、ラボの近くの商店街を歩いていた。勿論、冷蔵庫やら日用品やらを買い足しに来たのである。
ちなみになんとなく歌っている曲は俺のベルッが鳴る。
「お、カオスちゃん今日もおつかいかい?」
「あ、八百屋さんのおじさん! こんにちわ!」
私は全力で猫を被りながら商店街の住民との会話に興じていた。日本の年齢別平均身長で言うと、5歳児以下の身長であるこの身体は、周りから見ればいつでもはじめてのおつかい状態なのである。
100cmで5歳というワードに驚く人間は、きっとクレヨンしんちゃんの頭身の見過ぎであろう。まあ、頭身と言えば私の頭身もどう見ても5歳児ではないので、もう少し上に見られていると願いたいものだ。
「よし、これはオマケだ」
「えへへぇ、ありがとう!」
ちなみに全力で猫を被っている理由は、たまにオマケしてくれたりするからだったりする。人間は
◇◇◇
「~♪」
買い物から帰ってからお昼前まではラボの掃除の時間である。マスターはお世辞にも片付けが得意とは言い難い状態であり、ラボ全体が巨大な物置小屋のような状態だったので少しずつ片付けている。この時間は割烹着姿に箒が標準装備である。
ちなみに掃除しながら歌っている曲はハートの確率。
「ふんッ!」
リサイクルしようもない粗大ゴミはエネルギー球で跡形もなく粉砕するので地球にも優しい。ちなみにマスターも粗大ゴミなのではないかと思ってエネルギー球を向けたことがあったが、撃ち出せなかったのでマスターは粗大ゴミには分類されないらしい。
「うーん……やっぱりこうじゃないなぁ……」
「………………」
すると重たい音を立てて新たな鉄屑がラボに放置される。どうやらマスターの満足のいく出来ではなかったらしく破棄された物体らしい。こうして目の前でゴミが増えていくため、いつまでも掃除が終わらないのである。
色々言いたいことはあるが、健気な私は逆らうことも出来ず、ジト目でマスターの背中を見るばかりであった。
◇◇◇
昼食を作り、マスターに食べさせてからの午後は、私が一番楽しみにしている時間でもある。
「かーちゃんは
「はい、マスター」
それはマスターの研究やら開発などの手伝いだ。今は"暮桜"というISの製作を行っている最中である。なんでもこの暮桜は、第1世代型ISという名の実質第3.5世代型ISという反則もいいところのISらしい。
これをモンド・グロッソなるISの世界大会で実際に使用するというのだから酷い話である。まあ、ISの実用化に躍起になっている世界からすればマスターの技術なんて雲を掴むような話なので、ルールもクソもないのだろう。
「ん……? かーちゃん雪片になにしてるの?」
「ブレードから光波が飛ぶように改造している。なのでまず出力を上げることで、緑色のエネルギー刃を持つ大剣の形態を取れるようにし、その状態で更に出力を高めることで更なる緑光を纏い、光波を撃ち出すのだ」
「かーちゃん待って、手を止めて、ステイ! ダメだってばぁ!?」
ムーンライトソードみたいに! 月光の聖剣みたいに!
◇◇◇
「ふぃー、今日も疲れたねぇ」
「マスターは気ままに機械弄りしてただけだろうに……」
勿論、私が作った夕食後。マスターと私はお風呂に入っていた。私はかつて普通に男性だった筈なのだが、何故かマスターは当たり前のように共に湯船に入ることを強要するので仕方なく、一緒に入っている。
最初は美少女とのお風呂に心踊らせていた私だったが、よく考えれば1000年の恋も冷めるようなダメ人間のマスターである。なので2日目か3日目で急に気分が冷え、疲れるという感覚の方がよほどに感じるようになり、それからは特になんとも思わなくなってしまった。自分の身体も、そもそも自分の身体だし、その上ここまでツルペタに興奮するほどロリコンでもない。
それはそれとして雪片のムーンライトソード化計画はマスターに止められた。解せぬ……そちらの方がぜったいカッコいいのに。
「いや、あんなの実際にやったら一撃で暮桜のシールドエネルギーが空になるからね!?」
「ぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶく(ロマンの前に効率や勝ち負けなど不要)」
「モンド・グロッソは勝ち負けがあるんだよ!?」
湯船に口を付けて話しているのに当たり前のように聞き取れるマスター。最早、聴力とかそういう次元の話ではない気がするが、マスターなので仕方ないと諦めの境地に達するぐらいは、マスターが細胞レベルで天才だということが理解できるようになっていた。
元々、あんな産廃機体にしておいて何を言うのか。よくよくスペックを見てみれば、確かに機動力は最高クラスだが、武器は展開中にエネルギーを喰らい続ける
それならいっそ、ネタにしても更に突き詰めてしまえばいいと思って、月光にしようとしたのに……したのに……。
まあ、別にそんなに惜しんでもないんですけど。私が乗る訳じゃないし。
「さて、マスター。髪洗ってやるから湯船から出ろ」
「はーい!」
返事だけはいい私のマスターは、湯船から出て椅子に座った。座高なら私の背でも届くのでマスターの頭を洗う。マスターは気持ち良さそうに目を細めており、時より声を上げていた。
「あ゛ー、気持ちぃー」
「
「うーん、つむじと生え際」
「はいはい」
住んでいてわかったが、なんというかこのマスター。大きな子供なのだ。よほどに今よりも子供時代に親に叱られなかったのか、社会生活を拒絶したのか、果てしない引きこもりだったのか、まあ兎に角、そういう何かがあったのだろう。
私が子供のような身体で、マスターに比べればまだ大人な中身をしているので不思議なものである。
◇◇◇
その日の夜。寝る時間になり、私はパジャマ姿で抱き枕のようにマスターに抱かれていた。私の身長はちょうどSサイズの抱き枕と同じぐらいなので抱き心地がいいのか、背中からガッチリとホールドされている。気分はテディベアである。
こんな感じで私の1日は終わるのだが、何故こんな生活に甘んじているかと言えば単純なこと。エンジェロイドの設定の通りに設計してしまったせいで、
そんなこんなで、よほどに問題のある待遇でもされない限りは、マスターに対しての反骨心ぐらいしか抱けない始末だ。我ながらとんでもないモノを作ってしまった。
「ねぇねぇかーちゃん!」
「なんだマスター?」
どうせまた下らないことだろう。その時はそう思っていたため、話し半分に受け流す気満々であった。
「モンド・グロッソに出てみない?」
…………………………ゑ?
~登場人物紹介その1~
かーちゃん
正式名称:スピリット・オブ・マザーウィル。ARMORED CORE for Answerに登場するBFF社保有のアームズ・フォートの愛称。代替えの利くハードウェアと人員によって動く、圧倒的スケールの超巨大兵器。PVやOPにいるため、パッケージのアンサラーよりも有名かもしれない。
しかし、見た目とは裏腹に、機体に付いているミサイルハッチや砲台を破壊すると、弾薬が誘爆し、内部から自壊するというとんでもない弱点を持つ。また、分かりにくいが、マザーウィルにも幾つかの秘孔が存在するため、アームズ・フォートの例に漏れずとっつき数発で倒せなくもない。