がんばれカオスさん   作:ちゅーに菌

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 どうもちゅーに菌or病魔です。

 皆さんそらおとのカオスちゃんが好きなのようで何よりです。このカオスさんもお楽しください。お気に入り、評価、感想などありがとうございます。個人的にとても励みになります。



モンド・グロッソ

 

 

 

 モンド・グロッソ。

 

 アラスカ条約に参加している国を中心に行われるIS同士での対戦の世界大会。格闘・射撃・近接・飛行など、部門ごとにさまざまな競技に分かれ、各国の代表が競うことになる。

 

 しかし、第1回大会となる今回のモンド・グロッソは難航していた。

 

 理由は至極当然のこと。開発者の篠ノ之束を除けば、誰もISについて深い知識を持たないことだ。それも開発や実用化段階から、ISのレギュレーション、競技の定義やルールなどの細かなところまで、ありとあらゆることが手探りなのである。

 

 それもそのはず、技術の推移で言えば、それまで戦国時代で刀を手に取り戦っていた者たちが、突然第二次世界大戦の真っ只中に放り込まれて零戦に乗せられるレベルの変化である。しかもそれが男性ではなく、女性で起きたのだから混迷を極めるだろう。

 

 それでもどうにか開催まで漕ぎ着けたモンド・グロッソ。そして、熱狂と歓喜の中、送られる筈であった開会式典(オープニングセレモニー)は――。

 

 

 

『ハロハロー! 世界各国のみんな! 天才の束さんからの挑戦状だよ!』

 

 

 

 突如として、モンド・グロッソ会場の中心に現れたアリス服を纏い、ウサミミのカチューシャをつけたインフィニット・ストラトスの開発者こと、篠ノ之束が乱入してきたことによって波乱の幕開けとなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 篠ノ之束。

 

 ISを製作し、世界のパワーバランスを粉々にした張本人である。また、神出鬼没なため、友人の織斑千冬ですら全く足取りが掴めない奇っ怪な女性でもある。

 

 

 

『じゃあ、早速、束さん枠の出場者をここに呼ぶね!』

 

 

 

 モンド・グロッソ会場の音声機器をジャックしながら世界に向けて高らかに叫ぶ篠ノ之博士。

 

 ちなみに大会委員会に対して、あらかじめ篠ノ之博士から大会参加の特別枠を1つ設けて欲しいという主旨の相談があった。そのため、一応これも大会側としては想定の範囲内ではあるが、今の今まで篠ノ之博士には一切の動きがなかったため、大会側としては寝耳に水であろう。

 

 

 

『これが()()自律型IS――"カオス"だよ!』

 

 

 

 そして、それは空から降ってきたかのように篠ノ之博士の隣へと降り立ち、その全容が露になる。

 

 それは修道服を着て、金髪の長髪にアメジストの瞳をしており、篠ノ之博士と()()()()()()()()()()()()()()()()の外見をしていた。

 

 また、最も特徴的なのは、背中から生える身の丈以上の大きさの翼であり、それは鋭利な刃物のように禍々しい形状の3対の紫色をしている

 

 そして、女性の首には無骨な首輪がはめられており、そこから伸びる異様に長い鎖が篠ノ之束の手に巻きついていることがわかる。それは主人と奴隷のような関係性を想起させた。

 

 

 

『彼女は世界初の自律型ISにして、感情を持ったガイノイドなのさ!』

 

 

 

 ガイノイドとは人間の女性に似せて作られた人間のようなもの(ヒューマノイド)のこと。アンドロイドとも呼ばれ、篠ノ之博士の言葉を信じるのならば、彼女はまた新たな偉業を達成したことになる。

 

 会場が騒然となる中、篠ノ之博士の隣にいるガイノイド――自律型ISカオスが動いた。

 

 カオスの瞳がアメジストから血のような赤に染まり、瞳孔がカメラレンズのように散大した上、瞳そのものが妖しく発光する。明らかに人間のそれではない。

 

 そして、カオスは服の端を掴み、恭しく挨拶をすると口を開く。

 

 

 

『ごきげんよう皆様。私は自律型ISのカオスと申します。この度は私の稼働テストを兼ねての参加と相成りました。どうぞ、お好きなように私を攻略してみてください』

 

 

 

 口の端をつり上げて妖艶に笑うそれは、まるで人間のようにしか見えなかった。

 

 時はモンド・グロッソ開催前まで遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私を世界に公表したい……?」

 

「そうそう! 束さんはそっちの方が後々いいと思うんだよね!」

 

 マスターの話をまとめるとこういうことであった。

 

 今のところ、私を客観的に見ると無所属かつオーパーツ染みた自律型ISである。そのため、仮にポッと出の私の存在が何かの拍子に露呈すれば、世界各国から狙われることは目に見えている。

 

 なので、天才科学者である篠ノ之束(マスター)が開発した自律型ISだということにしつつ公表すればいい。何せ、人類で類を見ない天才であるマスターが造り上げたものであり、凡人には模すことすら烏滸がましい天上の技術で作られたということになり、逆に狙われないとのことである。

 

 マスターが私のことをわりと考えていたことに驚きであった。

 

「ちょ!? 普通に酷くない!? そ、そりゃあ、初めての()になる友達なんだし、それぐらい考えて――兎も角! "おっきい姿"で参加してね!」

 

 徐々に言葉が尻すぼみになったと思えば、突然元気になったマスター。それは置いておき、やはりインプリンティングを知られていたため、他にも付けたカオスの機能を知っているようだ。

 

「どっこいしょっと」

 

 そう呟き、機能から数値を設定すると、瞬く間に私の身体は幼子のようだった姿から、豊満な体つきの美少女へと変貌した。着ていた修道服ごと成長しており、依然としてしっかりとシスターのような佇まいである。

 

 今はそらのおとしもののアニメ版で、カオスが深海魚を食べて成長した姿そのままの見た目をしている。まあ、髪だけはマスターのせいでピンク髪なので、後で金髪に染め直しておこう。

 

 アニメではPandoraによる間違った進化だったが、個人的にどちらの姿も甲乙つけがたいので、いっそのこと機能に落とし込んで、身体を可変できるようにしたのだ。幼女モードと、美少女モードになれるのである。これには小さいモノ好きの大きなお友達も、大きなモノ好きの大きなお友達も満足であろう。

 

 ただ、一見、非常に便利に見えるこの機能なのだが、ひとつ大きな欠点がある。というのもやはり身体の主は幼女モードの方なので、美少女モードはちょっと無理があるのだ。

 

 具体的には……あ、やべ……目眩が――。

 

 

「きゅぅ……」

 

「ちょ!? デメリットの"お腹が空く"って、そのレベルなの!?」

 

 

 私は空腹で倒れた。

 

 美少女モードは、脂肪を作ってエネルギー溜めれないため、1日に尋常じゃないカロリーを摂取しなければ死んでしまうラッコ並みにクッソ燃費が悪いのである。

 

 お陰で基本的には幼女モードなのだ。誰だこんな無駄に洗練された無駄のない無駄なこだわりをつけやがった奴は。バカじゃないか……バカじゃないかッ! ひぐっ……お腹すいた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「束……これはどういうことだ……?」

 

「いやー、ちーちゃん顔がこわいよ」

 

 時は戻り、現在、篠ノ之束はモンド・グロッソ日本代表の控え室におり、日本代表であり、束の友人でもある織斑千冬の目の前で正座させられていた。

 

 束はひきつった笑みを浮かべており、千冬の背には鬼や阿修羅が見えるようであった。

 

「えーと……その手に持ってるIS用実体剣は何かな? バット感覚で持つようなモノじゃ――」

 

 次の瞬間、見事なまでの踏み込みからの抜刀が炸裂し、束がいた場所を薙いだ。当然のように束は正座の姿勢から跳び退いて回避するが、髪の毛が数本舞い落ちていた。

 

「ひっ!? カスった!? 束さんのキューティクルヘアを切っ先がカスったよ今!?」

 

「どういうことだと聞いている」

 

 千冬の視線の先にあるソファーには、とてもいい笑顔で束と千冬のレベルが高過ぎるコントのような光景を眺めている世界初の自律型IS――カオスが大人しく座っていた。

 

「ちょっと! かーちゃん!? 説明してよ!? このままじゃ束さんはちーちゃんに3枚下ろしにされちゃうよ!? せめて主人を守らないの!?」

 

「うふふ、私はマスターの忠実な僕。マスターのご意向に口を挟むことはいたしません。それに見たところ親しい間柄のご様子。ならば私のような浅慮の輩が出る幕はありません」

 

「日頃の復讐!?」

 

 ドロイドの反乱だー!とよく分からないことを叫ぶ束をよそに嫌みったらしい笑みを浮かべているカオス。2人の何とも言えない関係に千冬は自分だけ構えているのが馬鹿らしくなり始めて剣を下ろした。

 

 時を同じくして、束も真面目な話を始める気なのか、幾らか真剣な表情になり、カオスへと口を開いた。

 

「さーて……かーちゃん"命令"だよ。ちーちゃんとの話が終わるまでちょっと席を外してて」

 

「……? 了解しました」

 

「おい、待て――」

 

 不思議そうに首を傾げながらもそのまま控え室から出ていくカオス。千冬はそれを止めようとしたが、それより早く束の口から呟かれた言葉に千冬の動きが止まる。

 

「――――――」

 

 それは簡素な数字と英語の短い羅列であった。しかし、その羅列の意味を誰よりも知っている千冬は束を睨む。

 

「なぜそこで"アイツ"が出てくる……?」

 

 それは千冬を造った研究施設で、彼女とは別アプローチで生み出された成功体の型番であった。

 

 千冬はかつてクロステストを兼ねて、その成功体の男の助手を務めていた時期があり、またその男のお陰で今の自分があると言い切れるほど、彼女にとって大切な者だった。

 

 しかし、その男は少し前に殺されたという報告を誰でもないこの束から聞かされたのである。

 

 それを聞かされたとき、千冬は子供のように泣いた。彼は千冬にとって、とても強く大きな存在であり、彼が他者に殺されるなど想像すら出来なかったのだ。

 

 それは言うなれば、篠ノ之束が誰かに殺されるようなもの。あり得ない出来事に他ならなかった。

 

 そんな男の死を無闇に掘り返されれば千冬は黙ってはいないだろう。

 

「うん、実はね。あの自律型ISは、その人が造ったモノなんだよ」

 

「なに……? だが、お前は開会式典で――」

 

「んー? 私は一言も自分が造っただなんて言った覚えはないよ?」

 

 千冬は開会式典での束の言動を振り返る。彼女は自分の自律型ISを披露したが、それを自らが開発したとは1度も言っていなかったことに気づく。

 

「…………仮にそうだとして今さら私になんだというのだ?」

 

 死者は戻らない。当然の話だ。故に最早、千冬にとって彼が残した自律型ISであろうと意味のないことである。

 

 すると束は悲壮な面持ちで眉を顰めながら、何の変哲もないブルーレイディスクを何処からともなく取り出し、中央に空いた穴に指を絡めた。

 

「ところでここにさ。彼が死ぬまでの一部始終が映った映像を、私が独自に入手したんだけどちょっと見てみない? かなり興味深いものが映ってるよ? ああ、でもゴメンね! 束さんものすごーく……頑張ったけど! "音声"は入手出来なかったんだ……ぐすん」

 

 そう言って束は間を開けずに再生プレイヤーにブルーレイディスクを挿入し、映像を再生し始める。

 

 そして、この後の展開を思い描きながら束は心の中で2人に謝罪した。

 

 

 

(ゴメンね! ちーちゃん! かーちゃん! でも束さんは好奇心が抑えられないのさ!? こんな機会はそうないだろうからね! "完璧な肉体"と"完璧な頭脳"。同じ土俵で()()で戦ったら……いったいぜんたいどっちが勝つんだろうねー?)

 

 

 

 篠ノ之束――彼女はどこまで行っても善悪の区別のない純粋な探究者なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃。

 

 モンド・グロッソの選手及び関係者用の食堂にて、選手及び大会関係者は唖然とした表情で一様に角の席に座っている人物を見ていた。

 

 

「~♪」

 

(あ、アンドロイドなのにご飯食べてる……)

 

(しかもあんなに沢山……それも超大盛!?)

 

(スッゴい幸せそうな顔してるし……)

 

(あっ! 今、羽で食べた!?)

 

 

 カオスに自身を喰わせ、カオスとなった天才は、へにゃりと情けない笑みを浮かべながら、何も知らずに飯を喰らっていたのであった。

 

 

 

 

 

 








※作者の中の束さん像はこんな感じの方です。
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