第1回となるモンド・グロッソにエントリーしている
例えば水着姿に手甲足甲をつけて武器を持たせただけのように見える機体がある一方で、
そのようなことになっている理由は、現在では
その上で極論だが、ISに求められる技能を射撃・近接・飛行の3つに分類するとする。その場合、現状のISではそもそも3つのうち、ふたつを満たすことが精一杯であり、
そして、そんなモンド・グロッソの現状で、抜きん出た者が2体いた。
片方は日本代表である織斑千冬とそのISの"暮桜"。
暮桜は武装が特殊なブレード1本のみかつ超加速型という異様な特化の仕方をしており、一瞬で相手との間合いを詰めて一撃で相手を沈めるという絵に書いたような超人のプレースタイルで、近距離戦闘と短距離飛行の競技を総なめにしていった。
それに対するのは世界初の自律型IS"カオス"。
こちらは武装どころか、固定ユニットの翼以外の装甲すら見当たらない見た目にも関わらず、手元どころか、自身の周囲にすらエネルギー弾を瞬時に生成でき、あり得ない弾速と破壊力を持つ"
互いにこれまでの競技では戦う土俵が異なり、1度も競い合うことはなかったが、点数上は得意レンジの広さから参加している競技が多いカオスが一歩リードしており、現状1位の得点を持つ。
ハッキリ言って、既に総合優勝は織斑千冬とカオスの二択になるほど3位との点差が開いているため、決着はモンド・グロッソの最終競技でありメインイベント。無差別級のIS同士のトーナメントで決するだろう。
また、互いに決勝でしか当たれないブロックにいるため、モンド・グロッソをあらゆる媒体を通して見ている人間は、1人と1機による頂上決戦を今か今かと待ち望んでいた。
◇◆◇◆◇◆
現在、トーナメントにて自律型ISカオスとアメリカ代表のISが対峙していた。カオス側のブロックの決勝であり、トーナメントの準決勝に当たる試合である。
「よろしくお願いいたします」
カオスは張り付けたような笑みのままそう呟くと、試合が開始され、先手を取ったのは、開始の合図と共にカオスへと飛び込んだアメリカ代表だった。
アメリカ代表のISは軽量化された装甲に、エネルギー刃の鉤爪とショットガンで武装した近距離特化型だ。また、開始時に行った行動は、ISの後部スラスター翼からエネルギーを放出、その内部に一度取り込み、圧縮して放出して爆発的に加速するものであり、後に"
未だ発展途上のISに、瞬時加速を使いこなせる機体とパイロットは稀であり、それだけでも賞賛されるべきものである。また、カオスは今のところ近距離型のISを相手にしておらず、参加競技から見ても得意レンジの差から距離を詰めてしまえば分があるのではないかと思われていた。
しかし、カオスは迫るビームクローに対して拳を引き絞り、攻撃に合わせて放った。
「――――!?」
瞬間、カオスの拳はビームクローを軽々と粉砕した。威力はそれだけに止まらず、腕部装甲にすら亀裂を入れている。
単純な話だ。カオスは大会の参加競技や何もかもを
せめてもの切り返しにとアメリカ代表が放ったショットガンは、到達する前にカオスの背中から生える刃のような翼が目の前で交差することで防がれる。
カオスから距離を取ろうとするアメリカ代表だったが、開かれた翼の奥には、黒紫色のエネルギー球――"
「ありがとうございました」
次の瞬間、アメリカ代表とそのISを容易く飲み込んでしまうほど極大の光線が放たれ、その有り余る威力はただの一撃で全てのシールドエネルギーを削りきった。
ただの暴力による機械的な処理。凡人が必死に培ったものを土台から蹴飛ばすような所業。それこそが、篠ノ之束の自律型ISカオスである。
まさに天災から凡人への挑戦状に相応しかった。
◆◇◆◇◆◇
『ハロー、君が俺の助手か。これからよろしくね』
『名前……って言っても両方無いものな。じゃあ、俺は助手ちゃんって呼ぶからそっちも適当に呼んでくれ』
彼に会った最初の印象はあまりよいものではなかったことを覚えている。今にして思えば不気味なほどに雰囲気が軽かったのだろう。そのせいで、束とはまた違った苦手意識を持っていた。
『部屋は……女の子なんだから個室がいいよな』
『助手ちゃんさ……少しは自分で片付けしようよ。嫁の貰い手が無くなるぜ?』
その上、同じ人造人間だから名前すら無かったというのに妙に人間臭い。だからこそ、様々な人間らしさを説いて、私を人間にしてくれたんだとも思う。
『んー? 弟だけでも連れてここを出たい?』
『ほほう、どうしてまたそんな?』
彼に話を切り出した時も、彼はいつもの調子で私の話を聞いてくれた。その頃の彼は職員らとの長年の取り引きによって、監禁状態にも関わらず、幹部に近い待遇を受けていたため、メリットなど何もないというのに。
『今日のアイツらの動きはこれにある通りだ。極力見つからないように、この順路で行動し、この爆弾を起爆しろ。そうすればお前らだけが死んだ不慮の事故に見える』
『俺は行けない。事後処理をする人が必要だし、ここ気に入っ――なんでもない』
その1日後、脱出計画を彼から教わり、爆弾を手渡された。我が儘にも私はこれだけしてもらっているにも関わらず、彼は来ないのかと言ってしまった。当然、それは叶わなかった。
その頃はわからなかったが、きっと私は彼とずっと一緒にいたかったのだろう。
『ああ、そうそう。ほれ、忘れ物だ』
『じゃあな、達者で暮らせよ』
そして、忘れ物と言って私のクローン――
それが私が彼を見た最後の記憶。
いつかまた彼に会えたときに、今度は言えなかったことを伝える。それが誰にも言えない私の小さな夢だった。
◇◆◇◆◇◆
モンド・グロッソ決勝戦。
広大なアリーナでは暮桜に搭乗する織斑千冬と、自律型ISカオスが対峙していた。
(随分、美人に成長したなぁ……)
開始まで僅かに時間があるため、カオスは千冬を眺めながらそう思っていた。彼女の幼少時代を知るため感慨深いというものだろう。
『…………ひとつ、聞きたい』
『――――――はい?』
すると千冬から突如、プライベートチャンネルでの通話が来たため、カオスは少々滑稽に呆けた声をあげながら反応する。
『お前は……どうして殺したんだ?』
(どうして殺した……?)
何をという疑問がカオスに浮かぶ。そして、特に殺した相手に思い当たる節がなかったために少々考え込んだ。
(えーと……私のことはお喋りなマスターが
返答を決めたカオスは言葉を返す。
『そうすることが最善でした』
『どういうことだ……?』
『あの場にあったものを最大限有効活用したまでです』
『――ッ!? お前は……お前は!』
(お、おう……やっぱり助手ちゃん怒ってらっしゃる)
仕方のないことであったが、自らを喰わせてこのような身体になったことを知られたら当然の反応だとカオスは閉口する。
そして、なんと言ったものかとカオスが考えていると、試合開始を告げるブザーが鳴り響いた。
(ほぇ?)
その次の瞬間、既に千冬は瞬時加速を遥かに上回る速度でカオスの目の前におり、雪片を振り上げていた。考え事をしていたカオスは呆けていたが、戦闘用にプログラミングされている身体は自動的に回避を選択する。
しかし、既に攻撃体勢に入っている千冬から逃げることは叶わず、雪片はカオスの片腕と1枚の翼を半ばから断ち切った。
(え……ちょ……)
身体が自動的に千冬から離れる中でカオスは困惑する。そして、思考よりも先に――痛みのフィードバックがカオスを襲った。
◆◇◆◇◆◇
「あ……ああ……あぁぁぁ……」
千冬から大きく距離を取ったカオスはその場で顔を伏せて佇みながら千切れた腕の断面を押さえる。
今大会でカオスがダメージを受けたことはこれが初めてのであり、観衆からは大きなどよめき声が上がっていた。
千冬は追撃はせずに何か言ってやろうと言葉を探したが、カオスの腕の断面から溢れ始めた血のような真っ赤な液体と身を震わせ始めた様子に言葉が詰まる。
そして――。
「痛い痛い……痛いイダイいだい痛い痛い痛い゛――!?」
カオスは絶叫した。両目からは止めどなく涙が溢れており、到底これ以上戦闘が可能な状態には見えない。
自律型ISが訴えている非常に人間的であり、当然の様子に観衆の熱気は冷めていった。あれほど強い機械だから問題ないと誰しもが考えていたが、現実はそのようではない。
「クソクソッ……!? ふ、ふざけんなッ!? あ――」
カオスが叫びながら痛みを訴え続ける最中、突如としてカオスが完全に動きを止める。まるで人形のようにその場に佇んだまま動かないため、淡く輝いている瞳のみが起動していることを示している。
《機体状況を確認――完了。想定以上のダメージのフィードバックにより、プライマリAIを緊急停止しました。再起動まで11分42秒》
口を開かずに無機質なマシンボイスが響き渡る。それに驚いていると千冬のプライベートチャンネルに束からの通信が入った。
『うふふ、やっぱりこうなっちゃったかー。来るよちーちゃん。彼が作ろうとしていた
『おい、束! お前何を隠して――』
《敵対反応尚も健在。再起動まで緊急防衛機構を起動します。プライマリAI内の"
千冬が束を追求する前に、カオスから駆動音が響き渡り、ブラズマボールのように身体から赤黒い何かが絶えず発生する。
《殲滅用エンジェロイド・タイプ"
そして、それが終わるとそこには――。
「ねぇ……おしえて、おねぇちゃん――"愛"ってなぁに?」
一桁の年齢に見える姿になり、酷く無邪気で狂ったような笑みを浮かべるカオスの姿があった。
※緊急事態でもなければ普通は腕飛ばされて泣き喚かない人間なんてそうはいません。カオスさんは中身は普通の人なのです。カオスな主人公ですが、カオスを出さないとは一言も言っていないので悪しからず(謎の文面)
Q:カオス場違い過ぎじゃね?
A:第1回のモンド・グロッソにカオスがいる状態を例えると、最強のヒヨコを決める会場に、1匹だけ狼がいる感じです。狼の名前がヒヨコなので出場出来ました。