君の為に変革す   作:サボテンダーイオウ

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こういう日常的な描写は好きです。逆に戦闘シーンは難しいと思う。中々上手く表現できない……。


アカデミー卒業
1


私の朝はまず抱き着いて眠るサスケからどうやって起こさずに離れるかを考えることから始まる。

アカデミーの女子たちの間で大人気のサスケ君がまさかお姉さんに引っ付いて眠るなんて予想にもしてないでしょう。

 

ええ、私もそうですよ。

事件当初の頃はサスケも精神的に不安定だったし年頃の男の子だけど私しか受け止められる存在はいないって一緒に寝ることも拒否はしなかった。

 

でもサスケってば今現在はちゃんと自室もあるし自分用のベッドを買ってあげたのに私のダブルベッドにもぐりこんでくる。しかも誘い方がシンプルというかストレートすぎる。

 

夜、準備してさぁ寝ようとすると枕抱えて準備万端と言わんばかりに、

 

「姉ちゃん、寝るぞ」

 

と私のベッドにもぐりこんでくる。そしてもぞもぞ自分の定位置を決めて私が入らないで立ったままでいるとひょっこり布団から顔を出して

 

「寝ないのか?もしかして狭いとか?」

 

と端っこに寄ってくれる。

違う、そういう優しさが欲しい訳じゃなくて自分のベッドで寝なさいと言いたいのだ。

 

だが結局私はいつも通りにサスケの隣に入って二人並んでおやすみとなるわけ。ここはビシッと言わなきゃいけないのになんだかんだいってサスケに甘い私。

毎日毎日明日こそは!なんて決めてるけど同じことの繰り返し。少しは進歩しないと駄目だよね。今からサスケのお嫁さん探しも本格的に始めないと!

 

私は寝起きの頭で変わり身の術の印を切って引っ付いてくるサスケから離れる。ボフンと私の代わりに現れたのは、身代わりヒカリ人形である。

 

主に対サスケ用として作ってみた。

手作りで肌にも優しい綿100%だ。

顔は……ま、愛嬌があっていいかも。サスケは尚更身代わりヒカリ人形を絞め殺さんばかりに抱き着いている。

足まで絡めて寝相悪すぎ。

 

私はパジャマから私服に着替えて朝食と三人分のお弁当を作るために台所に向かって部屋を静かに出た。

 

昨日のうちに下ごしらえの準備はしておいたのでぱぱっと手早く朝食を作る。基本和食、時間がない時はパン食になるけど栄養バランスは崩さないように気をつけている。育ち盛りの食欲は半端ない!作り甲斐があるしお弁当も残さず食べてくれるから嬉しい。

 

洗濯機を回して風呂掃除。

 

さて、そろそろサスケを起こさなきゃ。

 

今日は無事アカデミーを卒業したサスケとナルトにとってのスリーマンセルを決める大切な日。そのメンバーで基本的に一緒に行動しなくちゃいけないのだから。遅刻は厳禁。

 

「サスケ、朝だよ」

 

カーテンを開けて太陽の陽射しを部屋の中に入れる。サスケは眩しそうに呻きながらなおさら身代わりヒカリ人形に抱きついて動かない。

こりゃダメだ。私は乱暴に身代わりヒカリ人形を取り上げる。

 

「う、う」

 

「ほら、起きた起きた!」

 

「……はよ、姉ちゃん」

 

「はい、おはよう」

 

私とサスケは視線を合わせて挨拶を交わす。そしてサスケはもう用事は済んだと言わんばかりに布団をかぶった。

 

ぷちっ。

 

私はガッと布団を引きはがして身を縮こまらせるサスケに再度

 

「おはよう」

 

と声を掛ける。だがサスケは聞こえないふりをして身代わりヒカリ人形に抱き着く。

 

「サスケ、朝から私のお色気の術を見たいのね?」

 

「起きた!」

 

魔法の言葉を頭上から囁けばサスケは見事シャキンと起き上がる。その際、ぶつけられないようにサッと避ける。

朝から顔を青くさせてそんなに喜ぶなんてお姉ちゃんドキドキしちゃうぞ。

 

っていうか私がお色気の術を使うとなぜかボディービルダーに変化してしまうという謎の性転換。これだけはいくら練習しても成果が得られない。どうしてだろう?ナルトオリジナルの術だから?

私だってボンキュッボン!の水着おねーさんになりたいのに。

 

サスケが顔を洗っている間にベッドメイクして綺麗に整える。ついでにささっと掃除機を使って部屋の掃除。

サスケが自室で着替え終わるのを見計らって掃除を終了させてから台所に戻り人数分の茶碗を並べる。

 

「サスケ、ナルト起こしてきて」

 

「分かった」

 

サスケは玄関に向かって『となり』のナルトの部屋へ向かう為、靴を履いて出ていった。そうお隣さんはナルトです。

火影が『事前』に用意していたアパートから早々に引っ越しした。あんな監視されやすい部屋なんてごめんだわ。

まぁ、ナルトの所も一緒なんだけど隣の大き目の部屋が空いてたしちょうどいいかなって即決断した。

 

サスケはいつもナルトを起こしに行くときはやたら好戦的でイイ笑顔になる。その起こし方も独特だ。昨日は殺気を浴びせて飛び上がらせて起こしたし、その一昨日は……ああ、気の毒ねって起こし方されたみたい。

とにかく毎日ユニークな起こし方をするからナルトも応戦的になって枕の下にクナイとか普通に常備してる。

 

仲が良いのか悪いのか。切磋琢磨し合える好敵手なはずなんだけど漫画のキャラのような関係とはちょっと違うみたい。

 

さて、隣の部屋で賑やかな声と暴れるような激しい音が繰り広げられている。長続きするようなら止めに行かなきゃいけない。ご近所迷惑だしね。と言ってもここのアパートには私達うちは姉弟とナルトだけしか住んでない。

 

厄介者は一か所に、民間人は近寄らせない。

実に合理的で計算高い。そういうのは嫌いじゃない。でもただでやられるつもりはない。倍返しにして返してやる。

 

三人分のお弁当の荒熱は取れたので色違いの弁当の包みにそれぞれ包んで忘れないように目立つところに置いておく。

隣が静かになってあ、終わったなと思ったらサスケが帰って来た。遅れてナルトも入ってくる。

 

「おはよう、ナルト」

 

「おはようってばよ!」

 

ニカッと今日も元気よく挨拶するナルトはテーブルに並べてある朝食に飛びつこうとしたけど、その前に私がお鍋の蓋でガードする。

 

「顔洗った?」

 

「洗ってません」

 

「ゴー」

 

「イエスマム!」

 

ビシッと敬礼したナルトはいつものように家の洗面所で顔を洗いに行く。自分所でやればいいのに。

サスケはいつものことなのでさっさと朝食の席に着く。だがまだ食べない。三人そろってから食べることが何となくルールになっているから。

 

ナルトが忙しなく朝食の席に着く。私もご飯をもって自分の席について「それじゃ食べましょ」と一声掛ける。

 

「「「いただきます」」」

 

三人声を揃えて手を合わせる。

 

食べ方はそれぞれだけど基本食べてる時は口を開くな。

食べ終わってから存分に喋れで今まで通してきた。今後変えるつもりはない。それぞれが家庭を持った時に自分らのやりたいようにすればいいけど、今は私が二人の保護者だから従ってもらう。

 

お行儀よく食べるサスケに対してナルトは馬鹿みたいに口の中に入れ込む。そしてもぐもぐもぐもぐ。

私は二人を観察しながら静かに食べる。それぞれのペースで食べ終わって壁に掛けている時計を見上げればそろそろ出かける時間帯になった。そこから慌ただしく二人は準備を始める。

 

「ヒカリねーちゃん!俺のクナイってどこやったっけ!?」

 

「ナルトのは壁に刺さったまま」

 

「そうだった!」

 

「姉ちゃん、ポーチない」

 

「ああ、ちょっとほつれてたとこあったから縫って置いた。サスケの部屋の机の上」

 

「サンキュ」

 

毎日何かしら忘れ物が多くて影分身で荷物届けに行ってた頃が懐かしい。今はそれなりに成長したからそういうことも無くなった。

 

「行ってくるってばよ」「行ってくる」

 

「行ってらっしゃい」

 

ピカピカの木の葉の額当てをして二人は元気よくアカデミーに向かった。道路を歩くより人様の屋根の上を走って行った方が早いということで見送っている間にぴょんぴょんと跳んで行く二人の逞しい背中を手を振って見送った。

 

一人静かになった部屋で手慣れた化粧をして少しゆったりした後、私も出かける準備をする。今日は人手不足を理由に別の仕事に駆り出されることになっている。上忍という立場である以上、それなりに重要な仕事を任される立場だけど私の場合はサスケとナルトの成長を側で見守り続けていたいので主に事務仕事、デスクワークを担当している。

それでも仕事がくれば嫌とは言えない。だが喜んでーとも手放しで歓喜することもない。無表情できっちり17時上がりで帰れるようお願いします、残業は無しですと火影に圧を掛ける私に知り合いの忍びからは命知らずのクール女子と揶揄われている。

 

なんと言われようとこの条件は譲れない。だって夕飯作らなきゃいけないんだから。育ち盛りの子供を育てるってのは本当に大変だ。お金を稼ぐことも大事だけど二人平等に愛情を注ぐのはもう一人私が欲しくなる時もある。

けどナルトはサスケにとって大切な存在だ。サスケにとって背中を預けられる、もしくは重大な決断に迫られた時身を挺して諫めてくれる存在になって欲しい。

これは私のただの希望でしかなく、未来は確定ではない。けれどサスケとナルトの成長のためには……。

 

きっと近い内、私達には別離の道が待っている。

 

それまでどうかこの仮初の平和が続きますように。

 

 

そう、私は心の中で願いながら必要最低限の通勤バッグに自分の弁当を入れた。あれ、なんで弁当三つ並んでるんだ?

 

「あ」

 

あの二人、肝心のお弁当忘れて行った!

 

「ああもう!」

 

私は大慌てで二人のお弁当を自分のバッグに無理やり詰めて窓は閉めてある・電気消し忘れ・水道水出てない・ガスの元栓よし!と指さしチェックして急いで玄関を出てしっかり戸締りをして二人の後を追いかけた。人様の屋根に上がって。

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