「行ってきます」「張り切って行くってばよ!」
「はい、行ってらっしゃい」
サスケとナルトは朝早く荷物を持って出かけて行った。しっかりと朝食を食べて行きましたよ。どうせカカシ先生のことだから遅れて行くんだろうな。
私も今日は非番だからお休みだし手土産買って挨拶に行こうと思う。
サバイバル演習とやらを張り切る二人にバレないようにコソコソしながら素早く挨拶してその場からドロン!イメトレはオッケー。やるべきことを終えた私はさっそく手土産の御団子を買いにお店まで走った。
だが行く道中、あれ、そういえばカカシ先生って甘い物食べれたっけ?と疑問に思う。
任務を共にしたころはそう言った好みの話をすることもなかった。
もし嫌いだったら手土産チョイスとしてはマズいことだ。本人の苦手なものを差し入れして誰が喜ぶというのだ。
散々悩んだ結果、私は来た道をぐるりと戻って家へ向かった。
一人暮らしも長そうだからおふくろの味というものに飢えてると勝手に予想して私が漬けておいた沢庵漬けを手土産にすることにした。
ご飯のお供には欠かせない一品である。ついでにお握り二、三個握ってアルミホイルで包み使っていない弁当包みで包んで縛る。ついでに飲み物も用意していくかと温かいお茶を水筒に入れて準備万端。手土産どころか弁当の差し入れ状態になってしまった。
けどいっか。今日は生徒同士で鈴を取り合わせる演習だろう。
その間カカシ先生もお腹が空くだろうしと楽観的に考え私は家を出た。
サスケ達が演習を行う場所は殉職した忍びの名が彫られている石碑が置いてある平原だ。そこには私の実の両親の名も彫られている、が実際に目にしたことは一度もない。
親と言われてもその自覚すら感じないのだ。まるで赤の他人のようにへー、そうなんだと流せる自信はある。薄情言うなかれ。所詮私にとって血の関係=家族という定義はないのだ。私が、私の家族だと思える人達こそが家族。それ以外は他人。
長年生きてきて学んだ結果だ。
さて、近場に着いた私は見晴らしの良い木の上に移動する。暗部の先輩からよくそんなヒールで移動できるよなとか言われるけど慣れればなんてことはない。逆にぺったんこなサンダルでよく滑らないなと感心できるくらいだ。とにかくそこからこっそり気配を絶って様子を伺えばナルトは大人しく木の棒に括りつけられている。気絶してるみたいだから手加減できなかったみたい。
私に鍛えられたナルトを甘く見ちゃいけない。あの子は原石の塊のようなもの。
磨けば磨くほど光を強く放つのだ。
「ナルトは失敗。サスケはっと」
サスケの気配を辿って木の上から木の上へ移動してみると、今度はサスケが地中に埋まって気絶してる模様。生首状態で傍にはサクラちゃんが白目で倒れている。
カカシ先生のトラップにでも引っ掛かったのかしら。
今先生はフリーね。渡すならチャンスと思いカカシ先生を探すことにした。
気配は……うん、近くにいる。平原の近くでいつもの愛読書中な先生を見つけた。私はわざと気配を出させてカカシ先生の意識を自分の方へ向けさせる。
手をヒラヒラと振り愛想よく笑う。
「先生。久しぶり」
先生は最初こそ目を見開いて驚いて見せた。
「……ヒカリ…」
でもそれは最初の反応ですぐに愛読書を下してポーチにしまって若干緊張してる様子の先生にああ、警戒されてるだなと少し残念な気分になった。
私はある程度の距離を作って安心感を持たせる。
「元気でしたか」
「……うん。ヒカリも元気そうだね」
「サスケとナルトがお世話になるって聞いたんで、これ差し入れです。最初は甘い物にしようかと思ったんですけど先生が甘い物大丈夫か知らなかったんで結局無難なものにしました」
そう言って紙袋をカカシ先生に渡す。こちらから一歩踏み出すことはない。あくまで先生からこちらに来てもらえるように腕を伸ばす。
先生は躊躇する真似をしたけどこちらに歩み寄って受け取ってくれた。
紙袋を少し広げてタッパの中身を見下ろし目を丸くする。
「……お握りと沢庵?」
「演習中だとお腹空くでしょ?だから」
「……ハァ、なんか相変わらずヒカリって感じだな」
そう言ってカカシ先生は苦笑した。少しだけ緊張がとれたみたい。
「それ褒めてますよね」
「まーね」
片手に紙袋を持ち直して先生は気が抜けたようにぐしゃぐしゃと私の髪を遠慮なしに撫でまわす。前もよくやってくれたよな。
あの時は嫌がる素振りを見せたけど、最近こうやってくれる人はいないから少し懐かしくなっちゃった。されるがままぼけーとカカシ先生を見つめているとカカシ先生は逆に困り顔になった。
「いや、なんか悦に浸られるとそれはそれで困るっていうか、顔、緩んでるぞ」
「え、私顔崩れてますか?」
「うん。こう、今にも蕩けそうな感じ」
「あはは、スイマセン。頭撫でてくれるのって久しぶりで気持ちよくて、つい」
「よくやったな。そういえば」
「はい。それに……イタチもよくやってくれました」
ついぽろっと出た私の本音に先生は押し黙ってしまう。
「………」
私はしまったと内心舌打ちしたながら謝った。
「ご、御免なさい!今のは聞かなかったことにして下さい。……でも」
「ん?」
「私、先生の手、好きです」
「!?」
「なんか安心するんですよね。不思議と」
こう、父さんの手みたいで。昔よくいい子良い子してくれたよね。
「………」(この子、素で恐ろしいことをサラッと!しかもその警戒心のない笑顔は何!?)
「先生?」
カカシ先生の様子がおかしくなった。なぜ二、三歩後ろに後退して距離を取るのだろう。
まるで動揺しているようだ。だが何に?
私は理解できずこてんと首を傾げる。カカシ先生は私から視線を逸らして頬をポリポリと掻く。そして後半声を小さくさせてた。
「あのね、そう簡単に好きとか言わないの。俺だからいいけど……他の男なら簡単に誤解しちゃうから」
「好きなものを好きと言って何が悪いんですか?それと声小さすぎです」
私の方から距離を再度近づけるとなぜか先生は仰け反った反応をする。
「あ、ぐ!」(もう、ホント勘弁して~~!俺が好きって言われてるわけじゃないんだけどマジヒカリのいい方は反則だから!)
「もう!なんなんですか!?そんなに離れないでくださいよっ」
まるで私が爆弾扱いされている気がして尚更ムキになって先生に近づく。というかズンズン行く!すると先生は条件反射でズササ――!と下がる。その身のこなし、流石上忍だけある風を斬るがごとく。
「いやだからこっちこないでって!」
「なんで!?」
しばらくこの意味のないやり取りを続けた私達だが、一方的に避けまくる先生についに部ちぎれた私がムカついてカカシ先生を地面に押し倒した時に丁度気絶から回復したサスケとナルトとサクラちゃんにその現場を目撃されることによって別のサバイバルが始まるとは、この時の私は考える由もなかった。
【アカデミー卒業編完】
(姉ちゃん!?)(ヒカリねーちゃん!)
(え、あら二人とも。や!)
(ちょ、ヒカリ退きなさい!)
(え、やだ。だったらさっきの避けてる理由教えてくださいよぉ)
(いいから退きなさいって!後ろの二人が般若化してるからっ!あれは絶対下忍の出す殺気じゃないっ)
(ア、 ん、先生、どさくさに紛れて胸触ってるぅ~。私の胸育てる気になったの?)
(オワッ!違うからっ!変な声出さないっ)
(殺す!!)(羨ましいってばよ!!)
(サスケ君のおねーさん!?昼間からカカシ先生を押し倒すなんて大胆っ!どうしよう挨拶するべきかしら?でも!取り込みの最中みたいだし首突っこむのも失礼よね?うーん、悩むわ!でも今後の為に勉強にもなるかも?)