サクラside
好きな男の子にはすでに好きな人がいた。
しかもまさかの身内だった。しゃーんなろといつもの気合を入れるための口癖も力なくため息にように出る。
カカシ先生のまったく不思議な自己紹介の後、私達も順番に自分の好きなものとか将来の夢を話すことになった。
私の隣には憧れのサスケ君がいてちらちら視線ばかりいってしまう。胸がドキドキして今にも口から飛び出してしまいそうになるのを必死に抑えてカカシ先生の話を右から左で聞き流す。
アカデミーでもナルトとばかりつるんでいるからサスケ君狙いの女子たちの間で不穏な噂が流れた時もあったけど、その噂はとある人の存在によってかき消された。サスケ君には歳の離れたお姉さんがいることが分かった。って言っても遠目から野次馬根性丸出しの皆と一緒に見てただけなんだけど、綺麗な女の人だった。二人が忘れて行ったお弁当を届けに来たみたいで、イルカ先生も鼻の下伸ばしてデレデレして話してたっけ。サスケ君とは似てない雰囲気だったかな。というかスタイル抜群だったわ。……胸は、少々寂しいようだったみたいだけど。
と思考を過去に飛ばしていた時、ナルトの自己紹介から始まった。
「オレはうずまきナルト。好きなものは肉たっぷりの肉じゃが!んで二番目が一楽のラーメン。将来は火影を目指す!んでもってヒカリねーちゃんを火影の嫁にするってばよ!」
ナルトの気合の入った将来の夢?はどうでもいい!
え、ヒカリねーちゃん?誰だっけ……。そういえばサスケ君のおねーさんの名前知らないわ。私生活を一切語らない寡黙なサスケ君の日常を情報収集するのは極めて困難だったもの。
こっそり探りを入れてみないとね。
次、サスケ君の番だわ!
一体どんな自己紹介をするんだろうと耳を大きくさせて期待に胸を膨らませた。するとサスケ君は静かにでもハッキリとした口調で話し始めた。
「オレはうちはサスケ。好きな食べ物は肉じゃが。好きなタイプというか好きな人は姉ちゃん。嫌いなものは姉ちゃんに手を出す男と自堕落してる奴。そして目標はうちは再興と、とある男を殺すことだ」
……カッコいいけど後半の台詞が物騒だわ。
でもカッコいい。やっぱりサスケ君は何を語っても様になるわ。………ん、今好きな人って言わなかった?
好きな家族ってことかしら。ううん、でも姉ちゃんってしっかり言ったのを私が聞き逃すはずがないわ。ってことはサスケ君はお姉さんlove!?ええ、シスコンってこと!?これは予想外すぎてショックすぎるぅぅ。
私は突然の事にパニックになるけどサスケ君に悟られないようにカカシ先生から自己紹介を促されて自分でも何を喋ったのか記憶に残らないくらい。気が付けば家の前で呆然と立っていて買い物帰りのお母さんに驚かれたっけ。
次の日の演習の日。待ち合わせの場所でムカツクくらい仲良く現れたサスケ君とナルト。どうして一緒に来るの?
やっぱりあの噂って本物?ああ、こんなもやもやした気持ち抱えて演習なんてとても無理だわ!しかもダイエットの所為でお腹もすいてるし。朝も当然抜いてきてるからこんなんで頑張れるのかな、ってちょっと落ち込み気味の私にサスケ君はまさかまさかのお握りを差し出してくれた。
「サクラ、これカカシが来る前に食っておけ」
「え、これって」
つい条件反射で両手を差し出して待機状態で待ってしまったわ。サスケ君を驚かせてしまった。あ、でもその顔も好き。
「……姉ちゃんが作ってくれた。お前の分にって。オレ達は朝メシ食ってきたから」
「え!?」
「ヒカリねーちゃんが朝は何があっても抜いちゃいけないってさ。」
ニシシと笑うナルトからまたヒカリねーちゃんという言葉。まさかサスケ君のお姉さんの名前ってヒカリっていうの?
サスケ君からもらったお握りの中身はおかかだった。
悔しいけど美味しかったわ。
カカシ先生が遅刻してからの流れでようやくサバイバル演習は始まった。各自、まず散開してから距離を取ってそれぞれ単独でカカシ先生を狙うことになったんだけど……、まさかのカカシ先生の変化の術で私は気絶させられた。
だってあんなの卑怯じゃない!
血まみれのサスケ君なんて夢にでも魘されそうな勢いだった。もう二度とゴメンよ。
でもあのおにぎりのお陰でお腹空かせて動けない、なんて間抜けな状況だけはならなかったからお姉さんに感謝しなくちゃ。それにしても準備が良すぎるお姉さんって一体何者?
上忍であるカカシ先生の言いつけをさらっと無視するなんて。
と、色々悶々考え事してる間に今度はサスケ君の生首を見てしまってまた気絶しちゃった。これで二度目。
ああ、今度こそサスケ君に嫌われちゃうなんて覚悟してたけど私を起こしてくれたサスケ君は鈴を取ることに集中しててそれどころじゃなかったみたい。そうこうしてる間にタイムリミットがきちゃった。私達は結局先生から鈴を取ることが出来なくて肩を落としてナルトが括りつけられている場所に戻った。でもカカシ先生の姿は見当たらなくて三人で探しに行った。そ、そしたら、イケないものを見てしまったわ!
あのカカシ先生を昼間から押し倒している女の人。
それがまさかのサスケ君のお姉さん、ヒカリさんだなんて!
しかも!カカシ先生ったら生徒の目の前で、女の人の胸を、も、揉むだなんて!!キャー!昼間から見ちゃいけない光景だわ。つい私ったら手で目元を隠しちゃったけど隙間からチラ見しちゃったもの。
でもサスケ君とナルトの態度は私みたいに恥ずかしがるとかそんなんじゃなかった。むしろ、殺気飛ばしてカカシ先生に飛び掛かる勢いで素早い動きで走って行った。驚くカカシ先生が態勢を整えて二人に制止を掛ける前にお姉さんはさっと逃げる動きは素早かった。まるでああなることがわかってたみたい。それだったら確信犯ね。
カカシ先生が男子二人から一方的に粛清されているのを見守っている間、隣に腰かけてるお姉さんからこそっと耳打ちされた。
「あのね、サスケってちょっとシスコンこじらせてるけどちゃんと姉弟愛だから。安心してね」
「え」
見透かされてる?え、どうして、私の悩んでることに気づいたの。そう、驚く私にお姉さんは目を細めて微笑んだ。
「好きなんでしょ。サスケの事」
「あ、その!」
ズバリそうです!
「いいのいいの。若いんだから堂々としてなさいって」
パタパタ手を振って隣のお節介なおばさんみたいな動きをする。お姉さんも十分若いと思うんだけどどうしても自分のお母さんに見えてしまうのはなんでかしら。
でもサクラ。ここは仲良くなってサスケ君と家族ぐるみのお付き合いをするチャンスだわ。
「……あの、お姉さんって」
「ヒカリでいいわよ」
「あ、ヒカリさんってカカシ先生と仲いいんですか?」
「いいもなにも私カカシ先生とツーマンセルで組んでたのよ」
「え!?」
「意外でしょ?私の時『たまたま』同年代の忍びがいなかったから例外ってことでそういう感じになったの。あの時は任務任務って下忍以上の働きしてたような。今となっては懐かしいわね」
そう言ってヒカリさんはボコボコにされているカカシ先生を懐かしむように見つめていた。あ、虫の息の先生がヒカリさんに助けを求めてるけど逆に手を振ってあげるんだ。意外と鬼畜だわ。
「………そうだったんですか」
色んな意味でヒカリさんという人は謎な人物だと私の中で印象深くなった。
「うん。あ、そろそろ終わったみたいね。行きましょうか」
「あ、はい」
促されて先に立ち上がって歩き出すヒカリさんの揺れる長くて艶やかな黒髪を見つめながらやっぱり思った。
ヒカリさんは凄く綺麗だと思う。
同性の私からみても憧れのお姉さんって感じで確かにサスケ君が好きだっていうのも理解できる。さっきも私の気持ちすっかり見透かされてたし。
でも私は自然に頬が緩んだ。
そっか、サスケ君はシスコンが過ぎて家族愛が強いだけなんだ。
じゃあまだまだ私にもチャンスがある!
よーし、春野サクラ。負けてられない。
しゃーんなろ!絶対サスケ君に振り向いてもらうんだから!