サスケとナルトに内緒で支度をバッチシ終えた私は二人が長期任務ということで暫く家を明けることを残念そうに話してくるのを仕方ないけど任務頑張ってと励ました。ただ怪我だけはしないようにと言い聞かせた。怪我して帰ってきたら首根っこ引っ掴んで全力鬼ごっこしてあげると脅すと二人はプルプル震えてコクコクと頷いた。素直だね。
「じゃあ、行ってくる」「行ってくるってばよ」
「うん。気を付けて、行ってらっしゃい!」
すっかり旅支度を整え、どこか誇らしげに胸を張るサスケとナルトを手を振って見送り、二人が完全に視界から消え去ったのを確認してから私も隠しておいた荷物を引っ張り出して意気揚々と家を出た。
えへへへ、そうなのです。二人には実は内緒なのです。
どうしてかって?そんなの二人の成長を見届けたいからに決まってるでしょう!
タイミングを見計らってさも偶然を装いサスケ達と合流するという手筈になっているのだ。
このシナリオなら完璧に私の我儘で強引に任務に付いて行っているとバレる心配もない!
ルンルンと気分よく鼻歌唄いながら人様の屋根の上を跳んで移動する私に屋根の上の野良猫が不審者扱いするようにフシャー!と毛を逆立てて威嚇してくるのもまったく気にならない。そういえば最近屋根の上を跳ぶ方が多いな。まぁ、苦情が来てるわけじゃないからいいかと納得して里の入口を目指す。
実は里の外へ出るのは今回が初めてではない。
以前、一度だけ出たことがある。それは古い友人と会うためだ。
勿論、火影も知らないことでもし、私の計画がバレたら容赦なく暗部を仕向けられるだろう。もしサスケを巻き込むようなことがあればと不安もあった。それくらい危険な話し合いだったわけだが、私にはどうしてもやる必要があった。
だから危険を承知で出た。出来るだけサスケを巻き込まずに済むように手配をしたうえで入念に準備をした。結果は上々、話し合いは無事にまとまりバレることもなくひっそりと里に戻ることができた。
ああ、こうやって淡々と話せる自分が恐ろしいよ。その時の恐怖をこれでもかっていうくらい味わせてやりたい。私だって人間で生身の体だ。いくら何度でも転生して何度も同じ貧乳体型に悩まされたとしても人間である以上、恐怖というものから切り離されることはない。もしそれが無くなったら私は化け物になる。
普通の人生を歩めるのならとっくに歩んでいる。
だが私が犯した罪はそれを決して許さない。
今のうちはヒカリという私も最初はたんなる赤子に過ぎなかった。それが私という自我を得て、パンクしてもおかしくない記憶持ちの所為で写輪眼を幼く発動させ元々エリート忍びであった両親の遺伝子を受け継いだ体は思った以上にハイスペックだったのが何よりの幸運だが活かせなくて意味がない。それも度重なる修行のお陰だ。まぁほとんど遊びから学んだこともあるがそれも実行してこそ意味がある。精々反則技なのはチートである万華鏡写輪眼くらいか。
それも使い手次第でいかようにも変わる。様は、罪を背負う覚悟があるかないか。
それだけ。
私は、ある。イタチに託されたサスケを必ず幸せにする。
それが私の指針だ。
誰に何を言われようが、構やしない。その為に払った代償だ。
言いたい奴には言わせておく。それでもその減らず口叩くなら私の生き様真似してみてからもう一度同じ口にしろと言ってやる。
おっと、話が逸れてしまった。一人下らぬことを考えている間に門の近くまでたどり着いていた。里の門は私の身の丈よりもずぅーっと大きさはある巨大な門だ。見上げると首が痛くなりそう。
サスケとナルトはっと。……いた!
敏い二人に気づかれぬようコソコソと気配を消して門の上に掲げられている忍の看板上にひょいひょいっと移動し、そこから注意深く見下ろす。結構距離があったけど目は良い方なのでよく見える。ナルトのはしゃぎっぷりに依頼人は呆れているようだ。
それはそうだ。あの子は里の外に出るのは初めてだもの。誰だってそうなるよね。
サスケは相変わらず冷静のようだけど……少し口端が上がってるわね。
ワクワクしてるみたい。
サクラちゃんは、あー、ナルトの喜びように若干引いてるわ。
カカシ先生お疲れ様です、まだ始まったばっかりですけどと心の中で労う。
意気揚々と元気がいいナルトを筆頭にしてそれぞれ歩き出す。その背中を見つめながら私は深いため息をついた。別に疲れからくるため息ではない。
「………ハァ……」
あからさまな待ち伏せのやり方にもう少し気配を完全に遮断させてみろと言いたくなる。
私の登場はまだまだ先の予定なんだけどなぁ。
と愚痴っていても仕方ない。きっとカカシ先生の場合、敵情視察と依頼心の素性や理由を知ろうと少し里から離れたところで襲撃をわざと受けるに違いない。後は皆に経験を積ませる為、かな。それも必要なことだ。
「でーも」
最初の内は人数少ない方が心に余裕を持てるでしょう。まだまだ先頭に不慣れなサクラちゃんもいることだし。
私はヤンキー座りの状態から立ち上がる。不安定な足場で少しでもバランスを崩せばあっという間に地獄行だ。だがそんなことでは忍びはやってられない。
「いーち、にー、さん、しー、ご!」
手で丸を作って双眼鏡のように覗き込む真似をして人数を数えてみる。
えーと、皆の前方に二人待ち構えて、そこに丸見えな三人がいると判明。
じゃあ後ろの霧の忍びを減らすことにしよう。情報を吐かせる為に生かしておいた方がいいのだろうが、それはカカシ先生がやることなのでこちらはサクっと終わらせて皆の後をストーカーしなければ!
そうと決まれば全は急げ。
暗部で普段被っているお面を顔に着けて顔バレ対策はバッチシ。
おっと、髪を結んでおくのを忘れた。急いでゴムで一つに縛り上げる。だって血でベトベトになるの嫌だもの。すぐお風呂入れそうにないし。
ねーちゃん血が付いてるぞ!なんてサスケを心配させたくないし、返り血だから大丈夫よ!なんて言い訳もできない。
しっかりと準備をし終わったのを確認してからいつもの気分を変えるための口癖を呟いた。
「うちはヒカリ、参ります」
クナイ片手に奴らに向かって一気に跳躍した。
◇◇◇
「よし、完了」
パンパンと手の汚れを払うように私は手を叩く。だが私は実際直接手を出してはいない。
けど足元には先ほどまで魂を所持していた霧の忍びの抜け殻が三体転がっている。
造作もない奴らだ。いつもの拷問の仕事ならじっくりと構っている時間もあったが、今はサスケ達を追いかける身だ。
出来るだけ時間を掛けずに同時に討ち取る必要がある。そっちの方が手っ取り早いし。
なら一番楽なやり方。同士討ちさせればいい。
自分の手を汚さずクナイも汚さない。なんて簡単なやり方。
それは万華鏡写輪眼を使います。三人に幻影を使いそれぞれが敵同士だと思わせる。
あとは勝手に殺し合いをしてもらい私は観察するだけ。でもただ観察するだけじゃない。しっかりと時間を計ってそれ以内に生き残っているような手を出して消す。
『今日は』時間オーバーしなかったから気分も良い。なんせ里の中じゃ使う機会がないから訛ってないかなと心配だった。いざ使用するって時に不調だと困るので使用できる機会があるなら積極的に使って行こうと思う。
「ふむ」
さて、死体をごろごろこのまま森の中で野晒ししておくのも悪趣味というもの。
だがその点は心配無用。里が近い分、不審な者には里の警護の忍びが動くはず。なのでこの死体処理もお願いできる。押し付けのようだが処理に関してはプロにお任せした方がいい。素人な私には無理な話だ。
「よいしょっと」
見つかりやすいようにまとめて重ねておき今頃別の忍びを片づけているであろうサスケ達の後を追う為、地を跳び蹴った。