君の為に変革す   作:サボテンダーイオウ

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その才能消すには惜しい存在であると気づいちゃったからにはどうにかなるかもしれない。


3

サスケ達がいたであろう現場に駆けつければしっかりと忍び二人は大きい木に括りつけられて気絶させられていた。

しかもすぐ側にはなぜかいつも私が愛用している木の鍋の蓋そっくりな物も落ちている。

 

なんでこんな森の中に?

 

首を傾げつつも私は忍びの前にしゃがみ込み、しっかりと胸が上下していることを黙視する。

 

殺しはしなかったようだ。そう簡単に情報は吐かないだろうに、カカシ先生がサクラちゃんとタズナさんの手前指示を出さなかった可能性が高いと判断した。でもこのままというのも勿体ない。私は親指を噛み切って慣れた動きで術式を組み右手を地面につける。

 

「口寄せの術!」

 

煙と同時に現れたのは私の両手に収まるくらいの白蛇。名をイオウという。大蛇丸が契約しているマンダの弟蛇だ。兄が気性が荒いのに対してイオウは物静かな性格だ。口調も穏やかで彼が怒るということは私自身目にしたことはない。

彼を両手に乗せて立ち上がり目線を合わせて挨拶をする。

 

「イオウ、久しぶり」

 

イオウはチロチロと長い舌を出して人語を喋った。

 

「ヒカリ、健勝そうで何よりだ。なんだ、仕事の最中であったか」

 

後ろの忍び二人のことを示しているのだろう。私は苦笑して顔を横に振って否定した。

 

「ああ、これ違う違う。それよりもマンダは元気にしてる?」

 

「いつもの同じだ」

 

「そう。変わりないみたいね。突然で申し訳ないんだけどアレ大蛇丸に送ってあげれる?勿体ない実験体になりそうだし」

 

「それで我を呼び出したか」

 

「うん。ゴメン忙しかった?」

 

「いやそうでもない。構わん。我と主の仲じゃ。喜んで引き受けよう」

 

イオウは大抵のお願いは聞いてくれるので助かっている。

後でイオウの好物を差し入れしとかなくちゃ。

白蛇の彼だけど意外にも嗜好は人間並みで甘い物が好きだという。その中でも饅頭が大の好物な彼。丸のみせずに口の中で暫く味を堪能してから奥へと運ぶとのこと。

 

さて、どうやってイオウが忍び二人を大蛇丸の元へ運ぶかというと彼の独自の能力。空間送りというものがある。イオウが丸飲みしたものはある特定の法則を経て指定した場所へ転移させるというもの。それが武器だろうが人だろうが種類に関係はない。彼が飲み込めないものはない。攻撃さえ受けなければね。

流石に抵抗する者を丸のみするというのは分が悪い。なのでよほどの展開がない限り彼にはお願いするつもりはない。私はクナイを飛ばして二人を括りつけている縄を切った。

 

「じゃお願いするね」

 

「任された」

 

イオウはそう言って私の手からするりと地面に降りていく。そして小さな体から徐々に人を丸のみ出来るだけの大きさへと変化させていく。イオウは元々マンダと同じく大きいサイズだが私の呼び出しに合わせて体を小さくさせてくれているらしい。至れり尽くせりで感謝してもしきれないくらいだ。

 

丁度良いサイズになったイオウは大きな口を開き、忍び二人を順番に頭から飲み込んでいく。あっという間にお腹が膨れたイオウは術式を展開し忍び二人を腹の中で転移させた。

今頃大蛇丸の研究所(ラボ)に放り出されているだろう。後で大蛇丸から説明を求む手紙が飛んできそうだ。

 

「何度見てもマジックよね」

 

「マジックなどではない。転移だ」

 

「そうね。それほどスゴイってことよ」

 

変な所で頑固なイオウにウインクを飛ばし機嫌を取ってザラザラな肌を撫でてみる。

イオウは気持ちよさそうに目を細めた。

 

「用はこれで終いか」

 

「うん。これだけだけど……なんで?」

 

「いや、我も暇だ。しばしヒカリに付き合おう」

 

「いや悪いよ。イオウに付き合ってもらうなんて」

 

ブンブンと手を振って断るがイオウは「我と主の仲に遠慮などいらぬ」とぐいぐい押してくる。

私は「本当今回は手を出さないと思うからイオウの出番はないと思うよ」と説明するもイオウは別に構わないと手ノリサイズに戻って私の手から腕を伝い動いて首元に巻き付いた。

一瞬ヒヤッと感じるイオウの肌に背筋がゾクっとした。

 

「イオウ」

 

咎めるように彼の名を呼ぶと何処かいつもよりも若干気分がよさそうなイオウが言い訳をした。

 

「いいではないか。ヒカリの働きぶりを拝見するいい機会だ」

 

「今回のはほとんど私用なんだけどね……。ま、いっか。カカシ先生にバレないように潜めてて」

 

「承知した」

 

心強い友と共に私はまた移動を始めた。

きっとサスケ達は船を使用して波の国入りを果たす頃だろうか。少し距離が開いてしまったけど速度を上げれば追いつけるだろう。

 

「しっかり巻き付いててね」

 

「無論」

 

首を絞め殺されそうな具合で絡まるイオウに「マジ絞まるからもうちょっと緩めてよ」とお願いして次なるポイントを目指した。

 

◇◇◇

 

軽快な足取りで水面の上を跳ぶように移動してたどり着いた波の国は噂通り貧富の差が激しい場所だった。ここに来るまでに見た大きな橋も建設途中だったけど

というのも実際に目にしたわけじゃないけど。降り立った民家の前にある桟橋は所々腐っている部分があった。定番の流れで腐った木に足を取られて落ちる!なんてパターンはないけどね。

 

「なんか人気が少ないわね」

 

「元々こうなのではないか?」

 

「活気がないって意味よ」

 

「ふむ」

 

興味深そうにあたりを見回すイオウの頭を軽く撫で、サスケ達がここを通った事を確認する。実は密かにカカシ先生が私向けに印をつけていてくれているのだ。それを目印に辿っている。

 

水と共に共存する国。

もっと町の方へ近づけば生気を失った人間達が路上を徘徊していることだろう。

 

今回の七班の依頼主であるタズナさんを暗殺目論む親玉が海運会社を運営するガトーという男。

この男大富豪という肩書だけでは飽き足らず裏の世界でも甘い汁を吸おうとその手を黒く染めている。裏マフィアという奴だ。波の国の一切の海上交通や運搬ルートをその権力と金で独占している状態でタズナさんが建設途中の橋の存在はガトーにとって何が何でも阻止させたいだろう。

 

前回は中忍。今度は上忍が出るか。ガトーが雇うごろつきなんて相手にならないくらいの奴かも。サスケとナルトはまだ相手の力量を計るだけでの戦闘はこなしてない。相手を全力で殺すという行為はあの子達二人にはまだ早い。出来れば加勢なしで見守りたい気持ちだけど、万が一を考えて行動しなくちゃ。

 

「さて、なんだか面倒ごとになってきたわ」

 

つい愚痴の一つぽろりと漏れてしまう。イオウは可笑しそうに

 

「主が持ってくる面倒ごとのほうが厄介ではないか」

 

と痛い部分を突いてくる。私はワザとらしく胸を抑えた。

 

「それもこれも私が美人故の宿命(さが)ね」

 

「美人である事は認めよう。だがな、少々さびし……」

 

私は有無を言わさずイオウを鷲掴みし、宙ぶらりん状態で視線を合わせる。

 

「蛇のまる焼けって美味しそうね。栄養満点かも」

 

「……なんでもない」

 

「うん。だよね~」

 

それ以上は言わせない。乙女の眼力パワーで黙らせちゃう!

 

イオウは大人しく私の腕に巻きつきなおした。

ちゃんと分かってますよ。わざと会話の空気を軽くさせるためにわざわざ禁句を言ったってことを。

 

さすが私の相棒、イオウだ。

 

でも次はない。

 

◇◇◇

 

サスケとナルトの危機に駆け付け参上仕った!

 

なんて台詞を言えるわけもなく遅る現場へたどり着いてしまった。少し距離を置いた木の上からコソコソと様子を伺いすでに戦闘は佳境へ突入している模様である。

 

予想通り写輪眼を使ったと思われるカカシ先生は、水牢の術で水球の中に閉じ込められている。わざとかしら?

 

相対するは……OH!なんてこった!

 

あれは霧が暮れの抜け忍、桃地再不斬じゃないか。

霧が隠れの鬼人として名を馳せた無音殺人術(サイレントキリング)の達人だともいう。抜け忍になった経緯は簡単に知っているがあまり興味はなかったので頭から弾き飛ばしていたけど、今必死に情報をかき集めて思い出した。

 

人相は最悪だが殺しの腕はピカ一という男には腹心の部下がいたはずだけど今は一人しか見たらない。どこかに潜んでいるのか?

 

まぁ今はサスケとナルトの奮闘ぶりを見守ろうとしようか。

 

肝心要なカカシ先生が再不斬によって人質に捕らえられている今、動けるのはサスケとナルトの二人。サクラちゃんはタズナさんの守るだけで精一杯だろう。それが最善の策だ。下手に動かれてまたさらなる人質や犠牲者になられても困るし、そうなると私が介入しなければならないから。

 

私と修行している時と本物の忍びの殺気を浴びせられた二人はどこか武者震いのようなものを全身で感じて場違いな笑みを浮かべている。

 

「サスケ、これが忍びなんだ。どれだけヒカリねーちゃんが手ぇ抜いてくれたか痛いほど分かったってばよ!」

 

「っチ!言わなくても分かってるよ。ドベ」

 

強敵を前にしてなんという剛毅な態度。再不斬は小馬鹿にするように目を細めた。

 

「所詮忍者ごっこなんだよ、お前らは、な!」

 

そして叫ぶなりもう一体影分身を出して素早い動きでサスケに襲い掛かる。体術を仕掛けられ再不斬の拳がサスケの腹にめり込むかと思ったが、ギリギリのところで防いだサスケ。だが体格差やパワー不足もあり防御するだけで精一杯で再不斬の次なる一手を避けることはできずまともに蹴りを喰らい血を吐いた。

 

「サスケ君!」

 

サクラちゃんの悲痛な叫びにナルトが「影分身の術!」を使い陽動を含め、再不斬の意識をサスケから自分へと強制的に向けさせた。私との修行でかなりの数に分身できるようになったが、まだまだ千人まで到達できていない。それでも再不斬の意表を突くには十分だった。

 

「ほう、結構な数じゃねぇか」

 

感心しているようだが、この数は敵ほどでもないと余裕そうな再不斬にナルトはニヤリと意味ありげに笑った。

 

「数だけじゃないってばよ。『其の一、術式に頼らず頭を使え』サスケ!」

 

そう言って複数で一気に影分身の方へ攻撃を仕掛けるナルトに

 

「おう。『其の弐、直感に従え』!」

 

サスケは別のナルトから受け取った風魔手裏剣を使い、地面を一気に跳躍して勢いよく風魔手裏剣を投げ飛ばす。それは影分身の再不斬をスルーしてカカシ先生を捕らえている本体へ向けられた。だが

 

 

「甘いぜ!」

 

余裕綽々と再不斬は避けるが、実はサスケが投げたのはただの影風車ではない。風魔手裏剣の陰に二枚目を忍ばせていたのだ。

 

「なんだと!?だが、まだまだだ!」

 

再不斬の体を真っ二つに切裂くと思われた風魔手裏剣はやはり再不斬の動きで避けられてしまう。だが実は攻撃の一手だと思われていた手は実はナルトが手裏剣へと化けた本体だった。

 

ボフン!と変化の術を解いたナルトは驚愕する再不斬の背後をしっかり取りつつ、隙を逃さずクナイを再不斬へと飛ばす。

 

「なっ!」

 

再不斬は動揺を抑えきれず、飛んでくるクナイをよけきれずに腕を掠めた。溢れ出す鮮血と解かれる水牢の術。

 

だが高々ひよっこ忍びに先手を取られたことに激怒した再不斬は全力でナルトを殺そうと風魔手裏剣を手に取って襲い掛かった。

 

危ない!ナルト!

 

と駆けだす過保護な私ではない。しっかりと現状を見極めている。私が手を出さずともカカシ先生がしっかりとナルトをその身を挺して守ってくれた。風魔手裏剣の刃を右腕で受け止め、再不斬をゾクリと怯えさせるような殺気を瞳に宿していった。

 

「よくやった。ナルト、サスケ」

 

カカシ先生も今回の件で生徒たちの成長っぷりを肌で感じたことだろう。私も自分のことのように鼻が高い。チャクラの消費が激しいド派手な術を使うことも大事だが何より忍びとの戦いは頭脳戦が命。常に相手の裏の裏を読み取り考え実行しなければならない。それが一瞬一瞬求められるのだ。

だからこそ直感に従えとも教えている。

 

一気に自分のペースを狂わされた再不斬はメンタル的にも余裕がなくなりあっという間にカカシ先生に踊らされる。

 

水遁水龍弾の術は完璧にコピーされ相打ちとなり、次なる一手水遁大瀑布の術でもオリジナルを遥かに凌駕され再不斬は水の勢いに流され木にその身を打ち付けられた。こっそり見守っている私の方にも水の勢いが襲ってきたからね。ついつい、別の木へ避難した。すると、初めて感じる別の気配に遅いながらも気づいた。

 

殺気はないが、動きを観察されている。私が動くと考えているのか。全然そのつもりなんだけどなぁ。彼に聞こえない程度の小さな声で相棒にこれからの動きを伝えた。

 

「……イオウ、もしかしたら顔だすかも。手は出さないけどね」

 

「ほぅ。気づいたか」

 

イオウが感心したように腕の裾から頭だけをひょっこりと覗かせた。

 

「うん。再不斬は部下の子に随分と慕われているね。あの子、私の存在に気づいてるわ」

 

「迎え撃つか」

 

「まさか!相手は今の所動くつもりはないみたいよ。それにあの子も訳ありそうだし。そもそも私はついでみたいなものよ。これはあくまで第七班の任務なんだから」

 

今回の私のお忍びはあくまで私用であって仕事じゃない。好き好んで人ばかり殺したいわけじゃないし。ただあの子たちの妨げにならなきゃいいだけの話。

 

「ではどうする」

 

「先にあの子を行かせましょう。どうせ動けない再不斬を回収しに来たはずだもの」

 

「ではまだ高みの見物は続くのか」

 

少し不服そうなイオウの頭を軽くポンポンと触れた。

 

「そう言わずに特等席で楽しみましょう。どんなやり方であの場から連れ去っていくのか見ものだわ」

 

私との力量の差をしっかりと見極めた上で牽制をしつつ、もし私が再不斬に止めを刺すつもりならその身捨てることも厭わない彼の自慢の技を。

 

その証拠に私が腰かける枝のすぐ後ろにある木の幹には彼が誰かに使うであろう『千本』が何本も刺さっている。

あと数センチずれていたら私の頭は剣山みたいにとげとげしくなっていたはず。ワザとずらしているのが小憎たらしいがその才能、消すには惜しいと思った。

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