さて、カカシ先生によって再不斬が息の根を止められようという時、彼はタイミングよく千本を数本再不斬に向かって飛ばした。それは再不斬の首にグサッ!グサッ!とグロテスクに貫通する。
「フフッ、呆気ないなぁ~」
ナルト達と年齢に差はあまり感じられない声変わりしていない少年はカカシ先生たちからの視線を一気に集める中、太い木の枝の上に立ち上がった。まるで注目しろと言わんばかりの行動である。実際その意図はあると思う。
術の影響で水から木の枝に避難していたカカシ先生が瞬身の術で止めをさされたらしい再不斬の脈を確認しては、
「死んでいる。一発か……」
と仮面をつけた少年を訝し気に見上げた。
少年は仮面越しに涼やかな声でその姿に不釣り合いな言葉を続けた。
「ありがとうございました。ボクはずっとその男を殺す機会を伺っていたんです」
「そのお面、霧隠れの追い忍か」
「はい。さすがカカシさん。よく知っていらっしゃる」
お互いに驚いた様子はない。情報収集も手抜きなし、か。
でも私の情報は里で極秘扱いだしlistには載ってないはず。
ナルトとサスケは自分達とそう歳の変らない少年の登場とあっけない再不斬の殺され方を見て感情的になった。
「なんなんだよ!お前はっ」
「ナルト、よせ」
「でも!カカシ先生!アイツ、アイツあんなにあっさり殺されるなんておかしいだろ!?そう簡単に納得できるか!」
さすがナルト。勘が鋭い。でもカカシ先生はナルトの言い分を子供の駄々っ子と思い、ナルトを宥めながら
「俺よりも年下で強いやつもいる」
とナルトの頭にポンと手を置いた。けどナルトはもどかしそうに首を振った。
「そういうことじゃなくて」
「ナルト、やめとけ。今はソイツに何言っても無駄だ」
「サスケ……クソッ」
じれったいよね。自分の意見が違う意味で受け止められちゃうのは。でも余計なことを喋らせないよう止めたサスケは正解。彼は味方だとは名乗っていないからね。
少年は再不斬を回収する為、下に降りたのに続いて私も瞬身の術で後を追いかけるようにカカシ先生たちの前に姿を現した。
「みんな、久しぶり」
ヒラヒラと手を振って皆に挨拶をする私に対して、
「ヒカリ姉ちゃん!」「ヒカリねーちゃん!」
サスケとナルトは目玉が飛び出そうなほど驚いて声を上げた。サクラちゃんは吃驚して表情が固まってるし、タズナさんはまた変なのが沸いたって困惑してそうな顔ね。
カカシ先生は安堵感半分呆れ半分という具合に私を見つめては
「中々来ないから心配したよ。どこかで寄り道でもしてるんじゃないかってね」
「やだなぁ。ちゃんと後ろから追いかけてましたよ?」
えへへ、色々下準備とかしてたけどねと内心続ける。
「ならいいけど」
まだ何か言いたそうなカカシ先生と文句言いたそうなサスケとナルトに軽く手を振って、後でねというサインを送る。
二人は渋々納得して静かに頷いたのを確認してからやっと視線を彼へ向ける。
再不斬を抱えて私を警戒する少年に初対面として挨拶をしなければいけない。ここで一つの『フラグ』を立てねば今後に支障をきたしかねないからだ。
「『初めまして』、追い忍の少年」
「貴方は……ええ、そうですね。『初めまして』。狐のおねーさん」
互いに初めてを強調してて可笑しいと密かに笑うのは袖の下に隠れているイオウぐらいだ。こら、笑いすぎ。
「フフッ、このお面意外と気に入ってるの。顔を隠すのに便利だからね。……その遺体、何処かへ持って行くの?わざわざ?大変だね。私が首を落とすのを手伝おうか?」
わざとらしく太ももに装備しているクナイを片手に持ち手の中でクルリと回転させる。
「……っ!……いいえ。お構いなく。これはボクの仕事ですから」
一瞬だけ少年の殺気が膨れ上がった。だがそれも先ほどまでの落ち着いた声音に戻った。私は残念そうに肩を落としてクナイをホルダーに戻す。
「―——そう。余計なお節介だったわね。ゴメンナサイ」
「いいえ。お気になさらずに」
と言いつつきっと少年の隠された顔には余計なお世話だって書いてあるんだろうなと思いつつ、手を振って見送った。
「じゃあ、気を付けて。『またね』」
「……失礼します」
少年は軽く会釈をして死体の再不斬を担いでその場から消えた。
「姉ちゃん!」「ヒカリねぇーちゃん!会いたかったってばよー!」
それから我慢しきれずにサスケとナルトがダッシュで我先にと飛びついてきて、あら可愛いじゃないとあふれ出る母性愛とこの豊かな胸で受け止めてあげようと思って腕を広げてみたけど、よく考えれば子供とはいえ、男子二人に真正面から一気に突撃されて耐えきれるわけもなくその勢いに負けてしまった私は二人に押し倒される形で地面に倒れ頭を強打してしまった。
「イダッ!ってか重いっ!」
私の叫びを無視して二人はなぜここにいるのか説明しろと矢次に質問攻めをしてきては二人がかりで私を押しつぶそうとする。しまいにはジタバタ暴れる私の腹の上でサスケとナルトは言い合いを始めた。
「おい、お前が退け。姉ちゃんがウザがってるぜ」
「それはサスケの方だろ!」
「いやお前は普段から姉ちゃんにベッタリすぎなんだよ。姉弟の感動の再会くらい邪魔すんなよ。な、姉ちゃん?」
「なっ!?俺だって、ヒカリねぇーちゃんの弟みたいなもんだってばよ!なぁ、ヒカリねぇーちゃんそうだよな!?」
勝ち誇った顔で同意を求めてくるサスケと反対に泣きそうに顔を歪めて必死なナルトはさらに私の腹に圧力を加えてくる。ぐ、ぐるじいぃ……。
いくら豊かな胸を所持している私でも溢れる母性愛に満ち溢れていたとしてもこれは駄目だ。
「二人ともウザいわ!!ど、けっ!」
押さえつけられた体だが地面に掌をつけ上体を安定させつつ二人の腹目がけて膝蹴りをお見舞いする。二人の完全に無防備な腹に強力な一手が襲い掛かる。
「ぎゃっ!」「ぐっ!」
悲鳴を上げて二人は体を後ろへ仰け反らせる瞬間を見逃さず、軽くなった体でそのままバク転をニ、三回繰り返して二人から距離を取り無事に着地する。
そして素早く印を切り腹を抑えてへたり込む二人を標的にさだめる。
「土遁・泥地獄!」
途端に二人の周囲は地面が泥化し抵抗する余裕もなく、ずぶずぶと泥に動きをとられてそのまま固まり身動きできなくなる。
「固まって反省でもしてなさい」
「そんな~酷いってばよ~」「ドベの所為だ」
「カッコいいです!ヒカリさんっ」
「ありがとうサクラちゃん」
キャーと黄色い悲鳴を上げるサクラちゃんににこやかに手を振って礼を言った。タズナさんは面白そうにカチコチに固まった二人の体を興味深そうにつつき始めた。
ふとカカシ先生に視線をやれば力尽きたようで地面に倒れている。
私はカカシ先生の傍へ歩み寄り、顔のすぐ近くでしゃがみ込んで顔を覗き込んだ。
「カカシ先生、写輪眼の使いすぎ。気をつけなきゃ駄目だよ?」
「わかってるよ……」
と返すがその声は精根尽き果てような声だった。仕方ないとため息をついて手を伸ばした。
「はぁ、おんぶして運びましょうか。それともお姫様抱っこ?」
「………お願いだから肩貸して」(男の意地でそれだけは勘弁だ)
遠慮しなくてもいいのに。
結局、カカシ先生は全力で私の善意を拒んでヨタヨタ歩きながらタズナさんの家まで向かうことになった。
ああ、サスケとナルト?
ちゃんと術は解きましたよ。暫く近寄るなと言いつけて。
【さて、初戦は上手くいったな】