カカシside
なんか、想像してた展開と違ったなぁと木に括りつけられ気絶している忍びを前にして首をひねる。
自分が考えていたよりもウチの第七班は優秀だった。いや、ナルトとサスケ、か。
なんせあっさりと霧の忍び二人を捕らえるのだから。
こう、オレの予想だと晴れの日なのに水たまりができてるなーって横目に見つつのんびり歩いているオレ達の後ろから霧隠れの中忍二人から奇襲かけられてまずオレが皆の目の前で八つ裂きにされるグロテスクシーンが発生してサクラの悲鳴を皮切りに生徒たちに標的に合うって感じだったんだけど。まずサスケが水たまりを目にするなりピタリと立ち止まり、後方を歩いていたナルトに指で軽く合図を送り、ナルトはそれに頷き返しサクラとタズナさんを庇うように自分が一歩前に出る。それから目にも止まらぬ速さで印を切り影分身の術を使う。ボフンと現れるもう一人のナルト。
あ、オレは守備範囲には含まれてないのね。
それに不思議がる二人の反応を待たずして霧の忍びが水たまりから飛び出るのを隙を逃さず、サスケが高速でクナイを飛ばし先手を打った。あれは陽動だろう。軽くそのクナイを避けた霧の忍びがくりだす拘束具をするりと避けて相手の懐に一気に飛び込み体術で仕掛ける。その動きはまるで一瞬のもので避けることができない霧の忍びはまともに連打される拳をまともにくらいトドメの回し蹴りで木に全身を打ち付け動かなくなる。もう一人の忍びも同時に動いた俊敏なナルトの体術であっけなくやられる。なんて一心同体な動きだ。
元々潜在能力が高い二人だと考えていたが、甘く見ていた。
これもヒカリのスパルタ教育による賜物だろう。
末恐ろしく感じる二人の鮮やかな戦闘にオレだけでなくサクラやタズナさんも驚愕し言葉を失うしかない。
サスケとナルトは手早く動き気絶している忍びを手際よく木にまとめて括りつけた。
そしてオレに指示を仰ぐナルトの声でふと我に返る。
「カカシ先生!コイツらどうするってばよ?」
「決まってるだろ、ウスラトンカチ。情報を吐かせてから消せばいい」
サスケは忍びの近くに座りこんでクナイを手に取りその刃を忍びの喉元に押し当てる。皮膚一枚切るか切らないかというギリギリのところで押しとどめている。
だがナルトは慌てず騒がず、過激なサスケのストッパー役に徹する。
「サスケ~。ヒカリねーちゃんならそういうかもしんねーけどサクラちゃんやおっさんもいるんだって」
「フン、見なければいいだろ」
そう吐き捨てるようにサスケはちらりとサクラと依頼主に一瞥した。すぐに興味を失くして目の前の獲物に取り掛かろうとするのをナルトは呆れたように手で待ったをかけた。
「そりゃそうだけど……。カカシ先生っ!何呆然と突っ立ってんの」
早く指示をくれってばよ!と文句を飛ばすナルトと今にも殺しかねないサスケの雰囲気に圧倒されつつもオレは頷いて二人の向かって歩き出す。
「あ、ああ…」(部下にテキパキ指示求められる上官ってのもいないよな)
たぶん、後ろの方でヒカリはすでに他の忍びに天誅を喰らわしていることだろう。これはその余りということか。
やれやれ、スタートから疲れる任務になろうとは。
幸いにも男子二人はヒカリが後ろからストーカーしている事実には気が付いていない。今騒がれるのはあまりオレの心境としても良くないので助かった。
サクラなんか恐怖と驚きで固まってるし、タズナさんも唖然としたままの状態でオレは男子二人に指示を出した。
「とりあえず……」
「殺るか」
準備万端のサスケは情報を吐くのは一人で十分だと別の忍びに手に掛けようとする。
「まずサスケはそこから離れて!」
「そうそう。短気すぎんだよ、サスケは。ヒカリねーちゃんがいたら鍋の蓋が飛んでくるって」
面白げにナルトがそう口にするとオレが止めさせようとする前にサスケの頭に目がけて鍋の木の蓋がぱこーんと何処からか飛んできた。サスケは殺気でも感じたのか、シュっと頭を避ける。それが敵の顔面にヒット。
ズルズルと顔面からずり落ちていくお鍋の蓋はぽとりと地面に落ちた。皆の視線が一気にお鍋の蓋に注目する。
「………何処からこんなのが」
「やべー、ヒカリねーちゃんもしかして里から投げてきたとか?」
「いやいやまさか」
オレはついパタパタと手を横に振った。だがサスケとナルトは気の毒なほどにプルプルと震えだし顔を真っ青にさせていく。
「カカシ先生はヒカリねーちゃんを知らないからそんなこと言えるんだよ!」
「ああ、姉ちゃんならあり得るぜ。千里眼でも持ってるんだ。———あれは忘れもしない。七歳の頃だ……」
なんかサスケの回想が始まりだした。
「オレは姉ちゃんが貧乳であることに傷つき悩んでいる姿を見るのが辛かった。毎日吐きそうなほどの牛乳を飲んではまったく成長の兆しが見えないのに姉ちゃんが狂ったように飲み干していく。山のように積まれていく空になった牛乳パック。……オレは姉ちゃんの胸が少しでも育つようにと幼心に良かれと思って牛乳にプロテインを混ぜておいた。勿論、しっかりと姉ちゃんがアカデミーに行っている間を狙って新品の牛乳に分からないように針で穴をあけてそこから入れた。きっとこれで姉ちゃんも喜ぶに違いないと。……だが次の日、姉ちゃんはあれだけ牛乳を飲んでいたのに朝は飲んでいなかった。それどころかオレにやたらと笑顔でプロテイン入り牛乳を飲ませようとするんだ。「ほら、サスケ!ちゃんと自分で飲まないと駄目よ?お姉ちゃんの牛乳に手を出したんだから」ってな」
「マジかよ」
「その時のオレは恐怖しかなかった。姉の目の間で牛乳一リットルを完全に飲み干すまで許してもらえずオレは当然腹を壊して一日トイレと付き合う羽目になった」
「………こわっ」
えげつないやり方だ。さすがヒカリ。貧乳のひ一文字だけでも口にしただけですぐに反応する恐ろしさは既にそこから始まっていたのか。
「それからオレは姉ちゃんの第三の目、千里眼を恐れている……!」
サスケの密かな告白(恐れ)を聞いたオレはどうフォローすればいいのか非常に困った。
無難な言葉で大変だったなと言ってもどうせオレには理解できないだろとかクールに返されるだろうし、じゃあオレも気をつけなきゃなと逆におどけて見せればヒカリ馬鹿のサスケに姉ちゃんと接触するつもりか!とか襲い掛かられそうだし。すでに前科もあるしな。
というわけで、オレがサスケに贈った言葉はこれだ。
「とりあえずクナイをしまいなさい」
いまだに忍びから手を離そうとしていないのは殺す気満々だからだろう。
ヒカリ、タイミングを狙って合流するつもりだろうけど早く回収に来てと言いたくなった。
それからオレ達は正気に返ったタズナさんに色々釘を刺して護衛続行ということにして波の国へ急ぎ向かうことになった。
だがそう奴さんも易々と行かせてはくれないみたいだ。なんせ次の相手はあの再不斬なんだからな。
【写輪眼を使う時が来たみたいだ】