君の為に変革す   作:サボテンダーイオウ

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うっかりタズナ爺

タズナside

 

超、超、超ついてないかもしれん、わし。

そう心の中で己の選択を誤ったことを心底後悔した。だが後悔先に立たずというように既に遅いのだ。

その事実が今わしが盾となり恐怖におびえる娘のツナミと孫のイナリを守る為に身を挺して防波堤となっていることで証明されている。

 

今ワシの目に前には狐の仮面をつけた女が現在進行中でナルトを絞め殺しているのだ。これ真昼間からやることか?しかもわしん家で。

 

「もう!ナルトったら!あれだけ散々自分の夢を語るのはいいけど!火影の、嫁ってのは言いふらすのはやめなさいって言ったわよね~~?もう本当にしょうがない子なんだから~」

 

「ヒカリ怒ってるのは分かったからその辺でやめときなさい」

 

あの再不斬に対して恐ろしい気迫で挑んでいたカカシが小娘一人に怯えながらも仲裁に入ろうとしている。戦闘で力を酷使したとかで体が全く動かないらしい奴は布団に横になっている状態で小娘に話しかけているのがまったく様にならない。

サスケは慣れたように隅の方で隠れ身の術_じゃっけ、それやっとるし、サクラは小娘から超離れてガタガタ震えて縮こまってるし。

 

一体どれだけ注意人物なんじゃ。早く帰って欲しいと直接いえないわし。

 

小娘はもはや白目向いて気絶しているナルトからカカシへと視線を向けた。そして少し仮面を浮かせて赤い唇を見せた。そこから想像もつかないドスの効いた声を出した。

 

「カカシ先生はいいから黙って寝てろ」

 

「了解(ラジャー)」

 

そう言ってカカシは現実から視線を背けた。

カカシもついに逃げたか。どうする、わしは超腕の立つ橋職人じゃがこの現場であの小娘にツッコミを仕掛けられるほど腕っぷしが強い訳じゃない。かといってこのままナルトがあの世に送られるのを黙ってみているわけにもいかん。

ああ、これもわしが資金なさゆえにランク料金偽って依頼したのがそもそも間違いだったんじゃろうか。

いや、じゃが凝奴らの護衛なしではこの波の国を変える橋は作れん!

 

「………気絶しちゃったか、根性足りない……。里に戻ったらスペシャルメニュー組んでやる」

 

なんか物騒な首を突っ込んではいけない呟き聞こえたがわしは本能でスルーする。

 

小娘はナルトを床に寝かせると(意外と優しい)警戒するワシ達に顔を向けた。

 

「タズナさん、ナルトが言ってた火影の嫁とか私じゃないんでよろしくお願いしますね~?子供の戯言ですから~。スルーでお願いします」

 

「超分かった!」

 

「ありがとうございます」

 

そう小娘から礼を言われてようやく殺気が収まった。

小娘は仮面をまた付け直して立ち上がる。

 

「それじゃカカシ先生と子供達のことお願いします」

 

するとサスケがバッと壁から飛び出てて焦ったように小娘に駆け寄った。

 

「姉ちゃん!どっか行くのかよ!?」

 

ねーちゃん?ああ、そういえばサスケの姉じゃったか。

雰囲気はまったく似てないもんじゃが。

 

「ちょっと【野暮用】を思い出してね?カカシ先生もアレ、気づいてるでしょ?」

 

意味ありげな言葉を投げかける小娘に対してカカシも言葉の意味に気づいているのかこちらを向くことはせずに「まーね」と短く答えた。

 

「そう、良かった。それじゃ後の事よろしくお願いしますね。タズナさん、お邪魔しました」

 

わし達に丁寧に頭を下げて小娘はサスケに手を振って背中を向けた。

 

「待てよ!アレってなんだよ!」

 

不満そうにサスケが小娘の腕を取って引き留めた。

 

「そこはカカシ先生からゆっくりと説明してもらって」

 

「でも」

 

なんとか引き留めようとする幼子のようにわしには見えた。

小娘は自分の腕を掴むサスケの手をやんわりと外しながら言った。

 

「初めてでしょ?今回の護衛任務は」

 

「……ああ……」

 

「頑張りなさい。おねーちゃんサスケとナルトに期待してるから」

 

言い聞かせるようにサスケの頭をよしよしと撫でる小娘にサスケは

 

「………ズルい……」

 

と不満の声を出しながらも若干照れている様子じゃった。

 

 

「それじゃあ、またね」

 

「気をつけろよ、姉ちゃん」

 

仲が良い姉弟なんじゃろうが足元には気絶したナルトが転がされている状態じゃとあんまり絵面的によくないのう。

小娘は最後に名前をうちはヒカリだと名乗って家を出ていった。

 

―——しかし、わしに対してナルトが宣言した

 

『いずれ火影の名を語る。最強の忍者うずまきナルトだ!覚えとけ!んでもって絶対ヒカリねーちゃんを火影の嫁にするってばよ!』

 

の台詞を訂正させる為にあんな暴挙に出るとは。

確かあの時小娘の姿はなかったはずじゃが、どこかに潜んで聞き耳立てていたとしか考えられん。まったくもって恐ろしい娘じゃ。

それにしても「貧乳じゃな、あの小娘」。

 

ドスッ!

 

「は?」

 

今高速でわしの横を何かが霞めていったような。

振り返り壁を確認すると絶句してしもうた。

 

「く、クナイ?」

 

そう、わしのすぐ真横を掠めて行ったのは小僧共が使う忍びの道具。なぜ、そんなものが?と疑問を口に出す前にすぐわしの後ろでついさっき出ていったはずの小娘の声がした。

 

「あ、スイマセンスイマセン!なんか忘れものしちゃって~」

 

といって背後を振り返れないわしの横から手をクナイへと伸ばす。その際、小娘が小声で

 

『次貧乳って考えたら、どっかに刺さりますよ』

 

と呟いてツナミに「お邪魔しました~」と会釈して出ていった。

 

「吃驚した。ヒカリさん、出ていったと思ったら父さんの背後に立ってるんだもの……。父さん?どうしたの?」

 

「………」

 

わしを心配するツナミの声に答える余裕はなかった。

娘は気づいていない。わしにだけ向けられた刃の様な殺気を。

 

ドッ、ドッと激しく心臓が胸打つ。呼吸が乱れ体全体が重く感じる。

 

あれが、忍び。

自分のコンプレックスに非常に敏感でたとえ心の囁きだったとしても読み取ってしまう人間離れした存在。わしは改めてうちはヒカリという女が心底超恐ろしく感じた。

 

【ついうっかり声に出てただけ】

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