君の為に変革す   作:サボテンダーイオウ

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まさかまさかの彼視点


生きる為の選択肢

ハクside

 

傷だらけのボク達に彼女は救いの手を差し伸べた。

 

はたけカカシとの戦いで傷ついたザブザさんを背負ってガトーから提供されたアジトへ戻ったボク達の所へ雇い主であるガトーがごろつきを引き連れてやってきた。今回の戦闘のことが奴らの耳に入ったみたいで、茶々入れに来たのかな。

速攻追い返したけど。

 

次でケリをつけなきゃもうボク達には後がない。また追われる生活が待っているかもしれないと考えると正直憂鬱だった。でもザブザさんと一緒にいられるならどこでもいい。

 

ずっと一緒にいられるならと願うボクは安住の地とは程遠い場所にいる。誰かに必要とされることがボクの存在意義。

ザブザさんはボクを道具だと思って使ってくれる。それは嬉しいことだ。今まで誰かに必要とされることが怖かった。すぐに捨てられるんじゃないかって。

 

彼女と初めて出会ったのは、木の上でザブザさんとの戦闘直後に霧の追い忍のフリをしてザブザさんを救い出そうとする前だ。ボク以外に彼らの戦闘を見守る者がいたんだ。

最初に気づいたのはこちらであれは暗部の仮面だとすぐに分かり、相手との力量に圧倒的に差がありすぎていることは重々承知の上で彼女を牽制した。

どうか邪魔しないで欲しいと意味を籠めて。

 

まさか彼女の方から挨拶されるとは思わなかったけど。

彼女との会話は完全の此方の作戦を読んでいるみたいだった。わざとらしい台詞でボクを動揺させてその様子を陰で楽しんでいる下種な奴だと腹立たしかった。けどここで刃向かうわけにはいかないと自分を律してザブザさんを担ごうとした。けどそこでも揶揄うようにクナイを出してみてボクを試した。首を落とすのを手伝おうかと問われる。

 

殺気が一気に膨れ上がった。

 

たとえ冗談だろうとそんなこと言わせてなるものか!

 

けど今のボクに勝機はない。立ち向かった所ですぐに瞬殺される。それは駄目だ。

握りこぶしを作り必死に自分の中に怒りを抑え込もうと無理やりに会話を終わらせた。

 

そうだ。次のチャンスを生かして今は生きる。その為に手を出すな。

 

どれだけ侮られたっていい。ザブザさんの役にたてるなら。

そんな思いでボクはアジトへ急ぎ戻った。

 

でも、まさか彼女の侵入をあっさりと許してしまうなんて。

しかも、予想外の誘いを受けるなんて考えもしなかった。敵であるはずの暗部の彼女に。

 

「ねぇ、生きたい?」

 

「え」

 

戸惑うボクの前にそういって彼女は白い手を差し出す。その手は穢れていないようでいてボク達以上に血で染められていた。

見えない血の痕だ。深くしみ込んできっと消えることはない。

 

「私なら君達二人を助けられる。それだけの力がある。でも勘違いしないで。君たちを助ける気になったのは気まぐれじゃない。私は生きたいと願う人を見捨てるほど根性は腐ってない。なんだかんだ理由つけて諦めるような腑抜けな人間じゃない。けど私の道を進むうえで邪魔になるようだったら簡単に斬り捨てる分別はある。それが私のエゴと言われようとも構わないと思っている。けど、それでもどんな手段でも生きたいと願うなら私の手を取りなさい。……里に連れてってあげる」

 

「木の葉の里に?」

 

まさかあり得ないって思った。だって今まで敵だったのに、あっさりとボクたちの根城までやってきてこんな提案をするとか罠だと思うしかないじゃないか。

 

いつでもザブザさんを庇えるように椅子から立ち上がって構えを取るボクに彼女は気にする素振りも見せずに軽い調子で会話を続けた。

 

「そう。だって他に行くところないでしょう?追われてる生活だっていつまでも続くものじゃないし。火影の事気にしてるの?大丈夫よ、なんとでもなるから。っていうかなんとかするし」

 

「……でも」

 

「迷うならまず私の手を取ってしまいなさい。その後で悩めばいいわ。時間もたくさんあるでしょう。でも今の貴方達なら間違いなく死ぬ。それでもいいのならこの手を突っぱねなさい」

 

まるでお節介の押し売りだ。きっと彼女は嘘をついていないのだろう。

だってわざわざボク達の元まできてこんな大ぼらをついてところで彼女にメリットがない。いや、そもそもこの話自体彼女に何の得にもならないはずなのに。

 

なのに、信じてしまいそうになる。その手を取ってしまいたくなるのはどうしてなんだろう。彼女の雰囲気がそうさせるのか。言動が全てが

 

「……強引、ですね」

 

警戒心さえも何処かに飛んで行ってしまうくらいに彼女は自分勝手だった。こちらの心を見透かしているように甘い誘惑を口にするなんて。

 

「どうせ死ぬ気だったんでしょう?どのみち一度は死ななきゃいけないんだから後はチャレンジしてみる気でもう一度アタックしなきゃ。どうしても死にたくなったら私が二人まとめて殺してあげるわ」

 

そうだ。どうせもう一度戦闘をしたって生きている可能性はないかもしれない。なら今彼女の手を取っても問題はないんじゃないかなと考えた。でもあくまでボクに決める権利はない。ザブザさんがボクの軸だから。でもいつか、ザブザさんと対等な立場になれたらって思う。

 

ベッドの中でクナイを手にしていた再不斬さんへ苦笑しながら意見を求めた。

 

「……だ、そうですよ、ザブザさん。親切な提案ですけど、どうしますか?」

 

「余計なお世話だ」

 

「……ですよね。……じゃあ、おねーさんには悪いけど」

 

死んでくださいと続けるつもりだった。けど、ザブザさんの口から予想もしなかった言葉を聞く。

 

「……と言いたいところだが……構わん」

 

「え」

 

聞き間違いかと思った。耳がおかしくなったのかな?

 

「ハク、お前と共に生きられるなら」

 

動かすのも辛い癖に、ベッドの中から腕を動かしてボクの方へ手を伸ばす。ボクは震える両手でその手を握り返した。

 

ザブザさんの言葉が嬉しかった。これは、現実なのかな。

 

「ほんとう、に?」

 

「……ああ……」

 

ボクはゆるゆると表情を崩して視界を潤ませ何度も頷いて言葉にした。ボクの気持ちを。

 

「ザブザさん……。はい、ボクももう一度ちゃんと生きてみたいです。貴方と一緒に」

 

「決まりね」

 

弾んだ声で彼女は早歩きでボクたちの所へ歩み寄ってきて、もうボク達が木の葉へ連れていく作戦を説明しはじめた。

 

「すぐに発てるよう荷造りはできる?それと二人がしっかりとカカシ先生たちと戦って死ぬようガトーたちにも印象付けさせなきゃいけないからその辺の裏工作も必要ね。ハク、悪いけど活きの良い忍びの死体を二体用意できそう?」

 

「……何か術を使うんですか?分かりました」

 

「大丈夫そう?唐突で悪いわね」

 

「いいえ」

 

これくらいなんてことはない。ボク達が生きられるチャンスを作る為なら。その上で生まれる犠牲が必要ならボクは殺る。

 

「あ、再不斬は体が動かないんだっけ。途中で大けがしちゃいそうね。じゃあ私の万華鏡写輪眼で体が動くように幻覚を掛けるね。里に着いたら反動で動けなくなっちゃうかもしれないけどその時は我慢してよ」

 

「万華鏡写輪眼!?お前、うちはの者か……?」

 

「そう。あ、そういえば自己紹介がまだだったわね」

 

彼女はここで初めて仮面を外した。そういえば何度か会話はしていたけど彼女の素顔を見たことはなかったな。少しばかり興味があった彼女の素顔は第一印象が綺麗な人だ。

 

「うちはヒカリよ、サスケは義弟なの。木の葉でもサスケやナルトと仲良くやってくれると嬉しいわ。まぁすぐに秘密をばらすつもりはないけどね」

 

そう言って茶目っ気たっぷりに舌を出してウインクする姿は様になっていた。言動からして大人っぽい印象だったけどなんだか可愛らしい人だなと思う。

 

「ザブザさん、それじゃあボクは一仕事行ってきます」

 

「おう」

 

ボク達はこうして彼女の手助けによって木の葉の里に身を寄せることにした。というかそんなこと可能なんだろうかとふと考えたけど、彼女なら不可能を可能にするような気がした。ゴリ押しかもしれないけど。

 

何より、彼女の言葉が胸を強打った。

 

死ぬ気でチャレンジ。

 

ふふっ、本当に死ぬわけじゃなくて死ぬための計画を立ててドロンと姿を消す。

 

暗い未来しかなかったボク達の行く末に僅かな光が射した気がした。

【生きたいと願うのは誰だって当たり前だ】

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