ナルトside
波の国で体験した初めての戦闘で得たもの、失ったものはオレの心の中に深く刻み込まれた。
あれだけ再不斬を慕っていたハクは最後の瞬間まで再不斬の役に立とうとしてた。道具だって言われたってそれが当たり前、必要とされることが僕には嬉しいってさ。アイツ、泣いてた。カカシ先生に胸をこじ開けられて死んだ。再不斬を庇って。
オレはアイツの死に顔を忘れない。アイツが笑ってたことを忘れない。
◇◇◇
任務から戻って暫く眠れない夜が続いた。原因はやっぱアレだよな。けど相談したい相手は暫く顔も見合わせていない。っていうかここ二週間ぐらい会ってないから落ち着かねぇ。
目の下に隈なんか作ってオレは夕食を食べにサスケ家にお邪魔した。
「チェ、今日もヒカリねーちゃんいないのかよ」
「仕方ねぇだろ。姉ちゃんアレから夜帰ってこない日もあるし。それでもオレ達の飯つくってくれたんだ。文句言うな」
ヒカリねーちゃんはアレから仕事が忙しいみたいで中々オレ達そろって夕食を囲む日がなくいつも冷蔵庫にあるねーちゃんがオレとサスケの為に作った作り置きをレンジでチンして食べる日が続いた。確かに美味しいんだけどさ、なんか味気ないっていうか。物足りないっていうか。サスケが言うには影分身で家の家事をこなしてそのまま消えるようだ。波の国から帰って二、三日はマジで帰ってこなくてサスケと一緒に一楽にラーメン食べに行ったりしたっけ。オレは全然会えてないのに一緒に暮らしてるサスケが羨ましく思う。
たとえ影分身でも顔見たい!
色々愚痴りたいところを我慢して黙々と食べた。あー、早く帰ってこないかな~。
悶々とした日々は2週間も続いた。突然部屋に突撃してきたヒカリねーちゃんに驚く暇もなく、一階の空き部屋を掃除するから手伝えとの有無を言わさずに首根っこ引っ掴まれて掃除へと駆り出されたことで、ここ数日のもやもやは一気に吹き飛んだ。
「オレ達以外に住人って嘘だよな、サスケ?」
オレと同じで掃除要員として確保されたサスケについ尋ねてみた。しっかりと三角巾とマスクを装着しているサスケは
「いや嘘じゃねぇぞ」
とホコリ叩きやら掃除道具担がされても嫌そうには見えず、むしろヒカリねーちゃんと一緒にいられることを喜んでさえいた。マスク越しだけどもう雰囲気で察したオレ。
そりゃオレも久しぶりに顔見られて嬉しいしヒカリねーちゃんの頼みなら断れないけどさ。変じゃねとか思わねぇのかよと親友にアイコンタクトを送る。
「なんだよ、ジロジロ見るな」
まったく伝わってねぇ。がっくし。
いつもは阿吽の呼吸のオレ達もヒカリねーちゃんが絡むとライバルに早変わりだってばよ。
でもマジでおかしいだろ。
ここのアパートって今まで誰も引っ越してこなかったんだぜ。ヒカリねーちゃんとサスケ以外は。それが突然新しい住人さんが引っ越してくるから部屋の掃除やろうね!なんてヒカリねーちゃんからのお願いもとい、指示についつい首を傾げて怪しいと疑ってしまうオレはまともだと主張する。
夜勤明けという割にはオレよりも超元気なヒカリねーちゃんが雑巾が入ったバケツをオレに押し付けてきた。
「ほらほら、そんな顔しても部屋は勝手に綺麗にならないわよ!今日顔合わせで来る予定だからちゃっちゃとやる!」
「今日かよ!?」
なにそのハードスケジュールは!?
驚くオレに対してヒカリねーちゃんはサスケと同じく三角巾を装備してマスクをつけ始める。
「うん。だってようやく手続きもろもろの作業が終わったんだもの。今日頑張れば私の苦労も報われるってものよ。引っ越し蕎麦頼んであるから顔合わせの時に食べましょ」
「えー?蕎麦?ラーメンがいい~!一楽のラーメン!」
あわよくばヒカリねーちゃんと一緒にいきたい!
ヒカリねーちゃんはオレの心の叫びに気づかず、面倒くさそうな顔になってポケットのお財布からごそごととお札を取り出した。
「じゃあお金出してあげるからナルトだけ食べてきなさい」
ほらと渡されるお金を突っぱねて返した。
「ヤダ!じゃあオレも蕎麦食べる」
「じゃあ働け男子二人!君たちに任務を与えよう。今回の任務は11時半までに部屋を完璧に綺麗にすること。以上Start!」
「「了解」」
掃除道具もってオレ達はそれぞれ指定された場所へ散らばった。
◇◇◇
分担しながらなんとか時間までに掃除を終えることができた。本当の引っ越し作業は明日らしい。今日は本当に顔合わせなので家具がない部屋では食べづらいということでサスケ家で新しい住人さん達と一緒の食べるって言ってたけどよ。
どう見ても幽霊が真昼間から蕎麦食いに来てるとしか見えねぇってばよ。
まったくの変装という変装をしてない二人は兄弟だとしらじらしい挨拶をしてきた。
いかにも初対面だってな。
「………」
「どうも初めまして。今日からこちらでお世話になります。桃村真白です。こっちは兄です。ほら兄さん、挨拶挨拶」
「……桃ち、『ドス』ぐっ!」
明らかに強烈な肘鉄が脇腹に入ったのをオレは見た。滅茶苦茶早すぎだってばよ!?
「やだなぁ、兄さん。自分の名前間違えないでくださいよ」
絶対コイツハクだと思うんだけど。真白って偽名だろ?
「桃村、再不太郎だ」
オレはつい条件反射でツッコミしちまった。
「再不斬の間違いじゃなくて?」
ピクリと蟀谷が動いた。ばっちし反応してんじゃん。
でも弟の手前強気になれないらしい兄は
「桃村再不太郎だ」
と絞り出すような声で言った。ハク改め真白は、再不斬、じゃなくて再不太郎のフォローをするようにとびっきりの笑顔で誤魔化した。
「ヒカリさんとは縁あってこちらの部屋が空いていると教えてもらったので引っ越すことにしました。これからよろしくお願いしますね。ナルト君、サスケ君」
「というわけでこれからよろしくね♪」
笑顔で最後を締めくくるつもりだろうけどさ、ヒカリねーちゃん。
そうは問屋が卸さないってばよ。
「一体何がどうなってんのか説明してくれってばよ!!」
オレは頭抱えて絶叫した。
「ナルト、ご近所迷惑よ」
「そういう問題じゃないって!」
「まぁまぁ、ナルト君も混乱してるみたいだし、とりあえず食べませんか?せっかくの引っ越し蕎麦だし」
「そうね。説明は後にして食べましょ!」
「もうやだこのマイペース!!」
ちなみにサスケは少し前に二人のことを聞かされていたから驚くことがなかったのがむかつくぜ。
【でもまた再会できたのは奇跡のようだ】